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お箸にこだわる日本の文化をサステナブルに! 作り手が報われるものづくりを目指す「ヤマチク」(ICC KYOTO 2022)

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ICC KYOTO 2022 CATAPULT GRAND PRIX(カタパルト・グランプリ) – 強者が勢揃い – に登壇いただいた、ヤマチク 山﨑 彰悟さんのプレゼンテーション動画【お箸にこだわる日本の文化をサステナブルに! 作り手が報われるものづくりを目指す「ヤマチク」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはAGSコンサルティングです。

【速報】新時代のアウトプット型オンライン教育で、子どもの好奇心を解き放つ「SOZOW(ソーゾウ)」(Go Visions)がカタパルト・グランプリ優勝!(ICC KYOTO 2022)


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 6A
CATAPULT GRAND PRIX(カタパルト・グランプリ) – 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング

山﨑 彰悟
株式会社ヤマチク
専務取締役

1989年生まれ。立命館大学法学部を卒業後、大阪のIT企業へSEとして就職し、銀行の顧客システム開発に従事。その後24歳の頃に熊本県南関町に戻り、家業である株式会社ヤマチクに就職。
竹のお箸の製造に関わる中で、携わっている人達が働きに見合った対価が得られていないことに疑問を感じる。竹を切る切り子や、竹を材料に加工する竹材業者、そしてヤマチクで働く社員。関わる人全てが物心両面のやりがいを得られるお箸づくりを目指し、自社のリブランディングに着手。2019年にリリースした初の自社ブランドokaeriは、NY ADCやPentawardsなどの国際的なデザイン賞を受賞。現在では国内はもちろん、海外からも多くの受注を獲得し、自社ブランドの売り上げ比率を全体の40%までに成長している。製造やPOP-UPでの接客販売の傍ら、ミシュランの星を獲得した一流シェフたちのお箸や一流企業のサスティナブルなノベルティの企画・設計も行っている。


山﨑 彰悟さん 『今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。』

日本最古の物語、『竹取物語』の冒頭部分です。

竹取物語(コトバンク)

1,000年前に描かれた竹取の翁、実は今も残っています。

彼は「切子」という職人で、竹を切り出して売るのが仕事です。

成長が早い竹は、竹の子からたった3カ月で、こんなに大きくなります。(上の映像0:34付近から)

私たちヤマチクは、熊本で59年間、竹の箸だけを作り続けてきました。

「箸」という漢字には、竹冠(たけかんむり)がついており、日本の箸の歴史は、竹から始まりました。

今日は、身近だけれど意外と知られていないお箸の話に、7分間お付き合いください。

30以上の工程を経て丁寧に作る竹の箸

ここでは、まあるい竹を棒状に加工していきます。

どうやって加工するか、見ていきましょう。

はい、出てきました。(上の映像1:06付近から)

これがお箸の材料になります。

材料ができたら、次は乾燥の工程です。

しっかり乾燥させるために、お箸作りで出た端材を燃やして乾燥させます。

お箸は、言ってみればただの棒ですよね。

でも、それを作る工程は30工程以上です。

長さ、形、太さ、重心、いろいろなことを考えながら、1本ずつ丁寧に削り出していきます。

これが、僕らの工場の様子です。

これは、磨きの工程です。(上の映像1:39付近から)

お箸同士をぶつけてつるつるにし、手触りや口当たりを良くしていきます。

形ができたら、次は塗装です。

ここでは色付けを行っています。(上の映像1:48付近から)

ここまで見て、皆さん、お気づきでしょうか。

ヤマチクには、女性社員が非常に多いのです。

お箸を作っているのは、近所に住むお母さんたちです。

最後は、検品とパッケージの工程です。

お箸は2本で一膳ですから、相性を見ながら丁寧にパックしていきます。

こうやってできた竹のお箸は、日本のみならず、アメリカや韓国、フランスなど、世界中の食卓に届けられます。

そして審査員の皆様のお手元にも、届いているかと思います。

▶編集注:当日の審査員席にはヤマチクの箸が配布された。

竹だからこそ兼ね備える軽さ、繊細さ、丈夫さ

ヤマチクのお箸は何が違うのか、実際に試して頂きましょう。

まずは「軽さ」、木のお箸の半分以下の重さです。

たった数gの差、でもそれが分かってしまうのが人間の手です。

次は「箸先」、細く、四角に仕上げています。

これは、木だと折れてしまいます。

しなる竹だからこそ、できる形です。

軽さ、繊細さ、丈夫さ、全て兼ね備えているのは、竹のお箸だけです。

食卓から消えつつある純国産の箸

日本では、食事を残さずきれいにいただくのがマナーです。

だからこそ、米粒がつまめる、魚がきれいに食べられる、そんな竹のお箸が必要です。

箸食文化は世界の30%で、でもここまでこだわるのは日本人だけです。

「さすが、お箸は日本の伝統文化、もちろん日本で作っているんでしょう?」

実は、塗装やパッケージだけは日本で行っている、そんなお箸が市場の90%以上で、産業は空洞化しています。

日本の竹のお箸は、食卓から姿を消しつつあります。

材料に竹を使わなくなったことで、切子の数も激減し、山は荒れ果てています。

前、翁はこう言いました、「世の中が回るには、損する人も必要やけん」

本当にショックでした。

私たちの仕事は、彼らの我慢の上に成り立っていたのです。

「何が“竹はサステナブル”だよ、彼らの仕事が続かなければ、何の意味もない」

日本の箸文化とそれを支える人々の営みを未来につなぐ

竹のお箸を、もういちど日本の食卓へ。

竹のお箸を広めることで、日本のお箸文化も、彼らの営みも、未来につないでいく。

そのために、初めて自社ブランドを作りました。

ブランド名は、「okaeri」です。

竹の箸にもう一度帰ってきてほしい、そんな思いを込めました。

okaeriは、ニューヨークADCなど、海外のデザイン賞もたくさん受賞しています。

「okaeri」が 第100回“ニューヨークADC”でメリット賞を受賞。 「オール熊本」のチームが、国際的な広告・デザイン賞の評価を受ける 2021.06.10(ヤマチク)

自社ブランドの売上がOEMを超えるも…

okaeriを作って3年半、ついに先月、自社ブランドの売上合計がOEM(※) を超えたのです。

▶編集注:OEMとは、製造メーカー(OEMメーカー)が他社(発注元)の名義やブランドの製品を製造すること、もしくはその受託側企業のことを指す。

利益率の良い仕事が増えたことで、竹1本を買う値段も500円から800円になりました。

でもまだ足りません。

切子のほとんどが65歳以上で、若手が増えなければ今の製造量も維持できません。

ここからが正念場です。

でも私たちは今、崖っぷちにいます。

30年作り続けてきた有名ブランドのOEM商品の製造が、(2022年)8月末をもって終了しました。

増産要求にお応えできず、輸入品に切り替わります。

売上の4分の1を失いました。

この穴を早く埋めなければヤマチクは廃業、竹のお箸も途絶えます。

「だったら、増産要求に応えればよかったじゃないか」と言われるかもしれません。

でも、できませんでした。

薄利多売では、彼らを幸せにできないのです。

共感の輪を広げた前回ICCサミットのプレゼン

「下請けメーカーから脱却する」、この決意への応援として、ノベルティのご依頼を頂きました。

▶編集注:上の写真は、山﨑さんが登壇し優勝を飾ったICC FUKUOKA 2022 クラフテッド・カタパルトの登壇中のもの。内容を記事化した純国産・手作り竹箸「ヤマチク」が、廃業危機を賭けても目指す、作る人も幸せな未来(ICC FUKUOKA 2022)もぜひご覧ください。

一緒に登壇した藤田金属温泉道場から、そしてICCのお箸もノベルティとしてご依頼いただきました。

次は、皆さんの番です。

まずは今日、お渡ししたお箸を使ってみてください。

報われるべき人が報われるサステナブルなものづくりを

使い心地、製造背景、でも魅力はそれだけではないのです。

2022年2月24日、ウクライナ侵攻が始まりました。

そのたった4日後、この「平和への架け箸」を作り、販売しました。

ウクライナ支援の箸人気 南関のメーカー 大使館へ売り上げ寄付 2022/03/09(読売新聞オンライン)

これまで160万円以上の売上を寄付しています。

「寄付をしよう」、そう言った時、「忙しいのに」「損をする」などと文句を言う人は、一人もいませんでした。

自分たちの会社がつぶれるかもしれない、そんな時に遠くの国の人を思いやれる。

お手元にあるお箸を作ったのは、こういう良い人たちなのです。

良いお箸に決まっているではないですか。

こういう人たちがちゃんと報われるビジネスモデルにしたい、しなければいけないんだ、それが私が目指す、本当にサステナブルなものづくりです。

今日の話を聞いて、ノベルティを作ってみようかなと思った方、是非お声がけください。

背中の「竹の、箸だけ。」が目印です。

日本のお箸文化を守るために、彼らの営みを守るために、皆様からのご依頼、ご注文、心からお待ちしております。

来年も、「竹の箸だけを。」

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸

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