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純国産・手作り竹箸「ヤマチク」が、廃業危機を賭けても目指す、作る人も幸せな未来(ICC FUKUOKA 2022)

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ICC FUKUOKA 2022 CRAFTED CATAPULTに登壇いただき見事優勝した、ヤマチク 山﨑 彰悟さんのプレゼンテーション動画【純国産・手作り竹箸「ヤマチク」が、廃業危機を賭けても目指す、作る人も幸せな未来】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022プラチナ・スポンサーのMakuakeにサポートいただきました。

【速報】竹のお箸を、もういちど日本の食卓へ。伝統と竹林を守り続ける「ヤマチク」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2022)


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICC FUKUOKA 2022
Session 8A
CRAFTED CATAPULT
豊かなライフスタイルの実現に向けて
Supported by Makuake

山﨑 彰悟
株式会社ヤマチク
専務取締役

1989年生まれ。立命館大学法学部を卒業後、大阪のIT企業へSEとして就職し、銀行の顧客システム開発に従事。その後24歳の頃に熊本県南関町に戻り、家業である株式会社ヤマチクに就職。
竹のお箸の製造に関わる中で、携わっている人達が働きに見合った対価が得られていないことに疑問を感じる。竹を切る切り子や、竹を材料に加工する竹材業者、そしてヤマチクで働く社員。関わる人全てが物心両面のやりがいを得られるお箸づくりを目指し、自社のリブランディングに着手。2019年にリリースした初の自社ブランドokaeriは、NY ADCやPentawardsなどの国際的なデザイン賞を受賞。現在では国内はもちろん、海外からも多くの受注を獲得し、自社ブランドの売り上げ比率を全体の40%までに成長している。製造やPOP-UPでの接客販売の傍ら、ミシュランの星を獲得した一流シェフたちのお箸や一流企業のサスティナブルなノベルティの企画・設計も行っている。


山﨑 「今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使いけり。」

日本最古の物語、竹取物語の冒頭です。

1,000年以上前に物語に描かれた竹取の翁、実は今も存在しています。

竹取物語(コトバンク)

彼は切子(きりこ)という職人で、竹を切り出して売るのが仕事です。

成長が早い竹は、タケノコからたった3カ月で、動画にあるような大きさになります。

私たちは、熊本で59年間、竹のお箸だけを作っています。

お箸という漢字は、竹冠(たけかんむり)です。

日本のお箸は、竹から始まりました。

本日は、身近だけれども意外と知らないお箸のお話に、お付き合いください。

熊本の竹から、箸を作る

こちらでは、切った竹を棒状に加工します。(上の映像0:47付近から)

こちらをどのようにして棒にするか、よくご覧ください。

もうすぐです。

はい、出てきました。(上の映像1:08付近から)

こちらがお箸の材料です。

材料ができたら、しっかりと乾燥させます。

乾燥に使用するのは、お箸作りで出た端材です。

端材を燃やして、熱源に変えています。

箸ができるまでには30工程以上ある

言ってしまえば、お箸は、ただの棒です。

でも、その工程は30工程以上あります。(上の映像1:24付近から)

太さや形、長さをどうするか、重心はどこに持ってこようか、そのようなことを考えながら、一本ずつ丁寧に削り出していきます。

こちらは何かと言いますと、磨きの工程です。

この中にお箸を入れて40分間グルグルと回して、お箸同士をぶつけてツルツルにしていきます。

形ができたら、次は塗装です。これは色付けの工程です。(上の映像3:50部分)

皆様、ここまででお気づきになられましたでしょうか。

実は、ヤマチクは、女性の従業員が多いのです。

お箸を作っているのは、近所に住むお母さんたちです。

さあ、最後に、検品とパッケージです。(上の映像2:03付近から)

お箸は2本で一膳ですから、相性を見ながら1本ずつ丁寧にパッケージしていきます。

こうしてできあがった竹のお箸は、世界中の食卓に届けられます。

そして、審査員の皆様のお手元にも、こちらのお箸が届いています。

木の半分の軽さの竹の箸

お待たせしました、 どうぞお渡ししたお箸の包みをお開けください。

ヤマチクのお箸は何が違うのか、実際にご体感いただきましょう。

まずは軽さです。

木のお箸は約17g、対してお手元にある竹のお箸は約8gです。

ほんの数グラムの差がわかってしまうのが、人間の手です。

軽さ、繊細さ、丈夫さ、すべてを兼ね備える竹の箸

次に、お箸先をご覧ください。

細く、四角に仕上げています。

木のお箸では、この形だと折れてしまいます。

しなる竹だからこそできる形なのです。

軽さ、繊細さ、丈夫さ、すべてを兼ね備えているのは、竹のお箸だけです。

日本の食事では、食べ物を残さず綺麗に頂くのがマナーです。

だからこそ、米粒を摘める、魚も綺麗に食べられる、そのような竹のお箸が欠かせません。

塗装やパッケージのみ日本の箸が市場の90%以上

お箸を使う文化があるのは世界の約30%ですが、これほどまでにこだわるのは日本人だけです。

「さすが、お箸は日本の伝統文化。もちろん日本で作っているのでしょう」と、思われますよね。

実は、塗装やパッケージのみが日本といったお箸が市場の90%以上で、産業は空洞化しています。

竹のお箸は、食卓から姿を消しつつあります。

竹の箸作りの課題

材料に竹を使わなくなったために、伐子(きりこ)も激減し、山も荒れ果てています。

以前、翁にこのように言われました。

「世の中が回るには、損する人も必要やけん。」

本当にショックでした。

私たちの仕事は、彼らの我慢の上に成り立っていたのです。

「何が“竹はサステナブル”だよ。彼らの営みが続かないと、何の意味も無い。」――そう痛感しました。

日本の箸文化と関わる人達の営みを繋ぐ

「竹のお箸を、もういちど日本の食卓へ。」――竹のお箸を再び広めることで、日本のお箸文化も彼らの営みも未来に繋いでいく、このことが私の使命になりました。

そのために、自社ブランドを作りました。

ブランド名は、「okaeri」です。

竹のお箸に、もう一度戻ってきてほしい、そのような思いを込めました。

バカ息子の思いつきで生まれた、こちらのブランドは、第100回ニューヨークADC(The ADC Annual Awards)のパッケージデザイン部門におけるMERIT賞など、海外のデザイン賞も受賞しました。

これまで、私たちヤマチクのことなど、誰も知りませんでした。

自分たちの仕事が世界から評価されたと、従業員の皆が喜んでくれました。

「okaeri」の立ち上げから3年、今や売上の4割を自社ブランドが占めています。

利率の高い仕事が増えたことで、竹の値段も500円から800円になりました。

OEM商品の製造を断る決断

しかし、まだまだ足りません。

伐子(きりこ)の大半が65歳以上と高齢であるため、新しい担い手が増えなければ、今の製造量すら維持できないのです。

そのような中、大事件が起こります。

30年間作り続けてきたOEM商品の製造が、今年、終了します。

OEMとは、製造メーカー(OEMメーカー)が他社(発注元)の名義やブランドの製品を製造すること、もしくはその受託側企業のことを指す。

その数は年間200万膳、現在の2倍という増産要求にお応えできなかったため、輸入品に切り替わります。

本当に悔しいですし、お客様には申し訳ないです。

この200万膳の穴を埋めなければ、ヤマチクは廃業、竹のお箸も終わりです。

ならば無理してでも増産要求に応えるべきではないのか、確かにそうかもしれません。

しかし、できませんでした。

頑張っている人が報われる箸作りの実現へ

薄利多売では彼らを幸せにできないからです。

僕は、たとえどれほど大変でも、皆の頑張りをしっかりと報いるようなお箸作りがしたいのです。

僕の決断が正しいかどうかは、まだわかりません。

でも、もし、間違っていないと背中を押していただけるのならば、どうかヤマチクのお箸を買ってください。

飲食店に、ノベルティに、本当にサステナブルなお箸はいかがでしょうか。

来年も、皆が笑顔で竹のお箸を作ることができるように、そのために僕ができることは何でもします。

本日は、その決意表明です。

頑張っている人が報われる、そのような当たり前を実現するために、どうか皆様、ヤマチクの応援をよろしくお願いします。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/中村 瑠李子

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