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生ごみの”たのしい循環”で、人と都市を健康にする「ローカルフードサイクリング」(ICC FUKUOKA 2023)

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ICC FUKUOKA 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただいた、平 由以子さんのプレゼンテーション動画【生ごみの”たのしい循環”で、人と都市を健康にする「ローカルフードサイクリング」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】まちなか留学で子どもたちの世界を広げる「HelloWorld」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

平 由以子
ローカルフードサイクリング株式会社
代表取締役
HP | STARTUP DB

福岡市生まれ。大学で栄養学を学び、証券会社に勤務。大好きな父とのお別れをきっかけに、土の改善と暮らしをつなげるための、安全な食のしくみをつくるため「半径2kmでの栄養循環」を全国にを目指し、平成9年コンポスト活動を開始。平成16年、NPO法人循環生活研究所を設立、国内外にコンポストを普及。生ごみ資源100研究会主宰、生ごみ焼却ゼロプラットフォーム主宰、循環生活研究所理事、NPO法人日本環境保全ボランティアネットワーク理事。令和元年ローカルフードサイクリング株式会社設立。(ボーダレスジャパングループ)令和4年にフランスでも活動開始。2022年までの3年間で、利用者は約4万世帯、2,000トン以上の生ごみを循環させ、削減したCO2の量は約1000トン。また、私たちと地球の健康の持続可能性をつくる「栄養の循環」(LFC)という考えの普及にも力を入れている。


平 由以子さん 皆さん、こんにちは、ローカルフードサイクリングの平です。

皆さん、想像してみてください。

もし、都会のベランダで、自然を感じながら、ごみを減量できたら――。

もし、近所のマルシェで、自分の生ごみからできた堆肥と、野菜を交換できたら――。

もし、屋上で鶏を飼って、毎日、卵が食べられたら――。

もし、自分の健康を考えて美味しい野菜を作ってくれる農家さんが近所にいたら――。

生活者と繋がり、長期的展望を持って生き生きと働く農家が増える、そのような楽しい循環生活で、地域の人が自ら健康に生き、長生きできる、こういった仕組みを作るのが、私のミッションです。

父の病から、食の大切さを知る

活動のきっかけは、約30年前、大好きな父との別れでした。

余命3ヶ月、そのときから始まった、食のチャレンジ。

父は、食が人の存在そのものを左右する、ということを教えてくれました。

食べ物で元気になる父を見ながら、その一方で、不安が膨らみました。

それは、当初、無農薬野菜が手に入らず、焦り、苦労した日々の中で、食が命を支えてくれるのに、環境がさらに悪くなっていき、背中に背負っている娘が、将来、どう生きていくか見えないという不安です。

そのときの漠然とした不安は、的中していました。

土壌や野菜の栄養がどんどん滅っている

この100年間で、土壌の栄養が、約70%も消滅しています。

この直近50年間で、野菜の栄養も、約80%が消滅しています。

さらに最近の問題として、戦争で高騰した肥料が入手困難となっており、危機的状況です。

栄養を、海外にコントロールされているのです。

もはや、安全保障の問題です。

半径2km圏内で、持続可能な栄養循環を作る

原因は、自分自身の暮らしでした。

山と川と海、すべて繋がっています。

土壌がすべてを還元し、命を育み、私たち生命を支えています。

人間と植物は、ほぼ同じ栄養が必要で、土を介して“健康”で繋がっています。

栄養が循環していた昔の暮らしから、資源が戻ってこない、一方通行の現代の暮らし。

この50年間で、便利な暮らしを追求するあまり、有機物を土に戻さなくなり、今に至っています。

農薬や化学肥料によって、土が病んでしまっているのです。

昔に戻ることはできませんが、コンポスト(※)で生ごみの栄養を循環させ、同時に、炭素も土中に貯留させていく――忙しい日々の暮らしの中でも、実行できる可能性が高いと考えました。

▶編集注:「堆肥(compost)」や「堆肥をつくる容器(composter)」のこと。家庭から出る生ごみや落ち葉、下水汚泥などの有機物を、微生物の働きを活用して発酵・分解させるための容器。

実際に、普及活動を始めた30年前、なかなか自分ゴトとして捉えてもらえないという課題を感じていました。

そこで、すべての物事を、自分ゴトに落とし込める範囲、半径2km圏内で、持続可能な栄養循環を作る、ということを考えつきました。

幸せを実感できる小さな経済圏は、ニホンミツバチの活動範囲と同じです。

世界の人口は、都市に集中していきます。

2050年までに、陸地のわずか2%である世界のおよそ3分の2の人々が都市に移り住み、天然資源の75%以上を消費、固形廃棄物の50%以上を排出、エネルギーの80%を消費していきます。

しかしその一方で、自然の少ない都市には、最高の資源が集中しています。

それは、生ごみです。

生ごみという宝の山があり、ベランダで堆肥という新しい資源ができることによって、資源のない都市で、新しいアイデアやコミュニティが生まれていきます。

まさに、都市の再生です。

この20数年で、NPOとして、80万人以上に、様々なコンポストを普及してきました。

国内外に、リーダーを育成してきました。

1日1分でOK!生ごみの循環を感じられる都市型コンポスト

この実績を生かし、3年前に、都市型のLFCコンポストを開発しました。

生ごみを入れて、混ぜる、ファスナーを閉める、1日1分の作業です。

コンパクトで、虫予防にも優れている、臭いの少ない設計で、継続率はこれまでのコンポストの常識を覆しました。

生ごみが循環していく実感を、各家庭で持つことができるのです。

栄養を各家庭で回収するコンポストを開発し、このコンポストによって、これまで参加していなかった層から、10万人以上の方々が参加し始めました。

都市から動き始めているのです。

LFCプロジェクトから始まる多くの可能性

東京のど真ん中で、半径2km圏内のLFCプロジェクトも広がり始めました。

循環再生拠点である、コミュニティガーデン(※)ができてきたことで、多くの可能性が見えてきました。

▶編集注:地域住民が主体となって、地域のために場所の選定から造成、維持管理までのすべての過程を自主的な活動によって支えている緑の空間や、その活動そのもの。

土に触れる体験価値は、教育と資源の拠点になってきているのです。

今後、この仕組みでグリーンインフラ(※)を作っていき、コミュニティガーデンを大きな役割として設置していきたいと思っています。

▶編集注:自然が持つ様々な機能を生かし、まちづくりを通して地域・社会の課題解決に利用する設備や取り組みのこと。

そこで働く若者が、学歴に関係なく、トレーニングできる仕組みを作っていきたいと思っています。

このように、最先端で、楽しい笑顔のあふれる職場を数多く作っていきたい、それが私の願いです。

たのしい循環生活でパブリックヘルスを実現します。

つまり、地域住民がその暮らしを通じて、自身で病気を予防し、寿命を延ばし、身体的にも精神的にも健康になるという、そういった仕組みです。

2030年までに、都市にコミュニティガーデンの拠点を1,000ヶ所、設置したいと考えています。

体験価値を広げる、意識を変える、このようなコミュニティガーデンを、一緒に作ってください。

私たちは、地球温暖化を「逆回転」できる最後の世代です。

期限は5年から7年、迷っている暇も悩んでいる暇も、もうありません。

生ごみの焼却費用1兆円を教育や福祉に回したい

しかし、大丈夫です。

私たちには、希望があります。

現在、未だに90%の生ごみが焼却処分されています。

現在、生ごみの焼却費用は、約1兆円です。

理由は、生ごみの90%は水分だからです。

生ごみが焼却されなくなれば、この1兆円は、教育や福祉に回すことができます。

コンポストなど様々な資源化手法で手を繋ぎ、生ごみを100%資源化するネットワークを立ち上げました。

ぜひ、参加してください。

子どもたちの未来のために、一緒に取り組んでいきましょう。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子

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