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地域の魅力を香りで表現し、失われつつある情景を未来につなげる「CARTA」(ICC KYOTO 2023)

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ICC KYOTO 2023 クラフテッド・カタパルトに登壇した、CARTA矢田部 美里さんのプレゼンテーション動画【地域の魅力を香りで表現し、失われつつある情景を未来につなげる「CARTA」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】商品×体験×ビジョンでお酢と地域の未来をつくる「飯尾醸造」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

矢田部 美里
CARTA
代表取締役
HP | STARTUP DB

株式会社CARTA代表取締役。東京都出身。幼少期を米国ロサンゼルで過ごす。慶應義塾大学大学院卒。新卒でDeNAに入社。ゲーム事業部、人事総務部に従事。人事総務部では子会社のオフィス構築に携わり、空間づくりに興味を持つ。後リクルートに転職し、新規事業の立ち上げに携わる。2018年に当時の夫の仕事の関係で、人口5万人の宮崎県日南市に移住。民間人登用の市役所非常勤職に着任する。空き家対策や古民家再生など、地域のまちづくりに携わり、地域の人が自分のまちを再評価する体験をする。2022年に日本のクラフトフレグランス会社CARTAを福岡で創業。単なる香りの会社ではなく、まちづくりをしていくことを決意。日本の地域を訪れ、その土地の文化や風習を作った“香り”をつくることで、失われつつある日本の情景を次世代に繋ぎ、地域のアイデンティティをつくることを目指す。


矢田部 美里さん はじめまして、CARTA(カルタ)代表の矢田部 美里です。

創業して1年の福岡の会社になります。

私たちは「香りで日本を呼び起こす。」というミッションで、地域の素材を使った香りを作っています。

喜界島発、香りのプロダクト

私たちが初めて作った香りのプロダクトは、鹿児島県奄美大島の喜界島という珊瑚でできた島をルーツにしています。

▶参考:喜界島ナビ ~kikaijimanavi~(喜界島観光物産協会)

こちらが「珊瑚ディフューザー」、珊瑚にオイルを垂らして香りを楽しむ商品です。

喜界島は海底の珊瑚が隆起してできています。

年間2mmずつ今でも大きくなっていて、その成長スピードは世界2位。

この独特の土壌のおかげで、この島でしか育たない柑橘が大変豊富です。

中でも人気なのが、「花良治(けらじ)みかん」。

柑橘類最高峰の香りと言われています。

花良治みかん(ふるさとチョイス)

私たちはこの花良治みかんともう1種類の柑橘を使って、2種類のブレンドオイルと珊瑚ディフューザーをセットで販売しています。

今日は実際にプロダクトを体験いただきたいと思います。

※編集注:ここで審査員席に珊瑚ディフューザーのサンプルが配布されました。

お手元の珊瑚ディフューザー、ぜひ香りをお楽しみください。

町並みに感動し日南市に移住、市役所職員に

このプロダクトが生まれる5年前、私は田舎に移住しました。

東京出身でDeNA、リクルートと、ゴリゴリに働くシティガールでした。

田舎に対する憧れがありました。

宮崎県日南市で、この美しい古民家の町並みと出会います。

私はこの景観に非常に感動し、会社を辞めて宮崎へ移住、市役所の職員になります。

そこで、まちづくり再生事業をしていました。

町並みを生かした祭典プロデュースに成功

けれど、町の人たちは、「何もないところ」といつも卑下していました。

そんな中、私は、観光庁での事業で、この町並みを生かしたアートやガストロノミーの祭典を企画、プロデュースしました。

城下町飫肥(おび)のまちなみについて考え、楽しむ祭典【DENKEN WEEK】第二弾開催決定 2018.10.13(土)~10.21(日)(PR TIMES) 

九州を中心に1万人の集客に成功し、町の人たちが目の色を変えていきます。

自分たちの町を再評価するという体験を、私はこの時にしました。

価値ある日本の眠れる資源を世界に届け、地域の人が自分の町への誇りを取り戻す。

そんな循環を作りたい。

これがCARTAの思いです。

香りは「まちの情景を呼び起こす橋渡し」となる

香りに着目したきっかけがあります。

マラケッシュ」という香水です。

モロッコに行ったことがないのに、この香水を使うとマラケシュの鮮やかな情景が広がります。

香りは、「まちの情景を呼び起こす橋渡し」になるのです。

もう一つご紹介したいのが、こちらのクラフトジンです。

私はお酒が大好きなのですが、こちらは宮崎の日南のボタニカルを使用したジャパニーズクラフトジン(「油津 吟 YUZU GIN」)です。

東京のバーで勧められて、一緒にいた友人が香りにいたく感動し、バーテンダーの話す日南の解説に聞き入っていました。

クラフトジンは「飲む香水」とも言われますが、この友人の様子を見た時に、香りが地域との新たな関係を生み出す、そう感じました。

地域を香りで表現するエッセンシャルオイル作り

地域の樹木、花、柑橘などを蒸留させてオイルを抽出すると、エッセンシャルオイルが出来上がります。

今、地域の特産品としてエッセンシャルオイルを作る取り組みは全国的に増えています。

地域を香りで表現し、都市の生活者が手にとって香りを嗅ぐと、その情景に導かれる。

そんな商品を私たちは作っていきます。

そして産地との関係を深めていけるように、将来的には香りのお土産品、エッセンシャルオイルの蒸留所訪問やホテルなど、観光事業を展開していきます。

ひたすら電話をかけ、最初にタッグを組んだのが喜界島

私はこのアイデアを持って、全国の地域を徹底的に調べ上げ、九州全土の市役所、県の役場、六次産業サポートセンターに、ひたすら電話をかけました。

「香りを作る素材はありますか?」と聞き続けたのです。

そして最初にタッグを組んだ町が喜界島です。

鹿児島県奄美大島の隣にあります。

喜界島では10年前から在来柑橘をエッセンシャルオイルにする取り組みをしていました。

私はいろいろな方に取り次いでもらい、ようやく当時の担当者と繋がりました。

そして、こう言われました。

「もう、諦めたんです。」

通常のエッセンシャルオイルは、だいたいコップ半分の量の100mlで、1万円ぐらいの仕入れ原価です。

しかし、喜界島のこのオイルは、たった100mlで10万円もしてしまう超高級品です。

どんなに香りが素晴らしいと言われても、結局取り扱う事業者は10年間現れなかったそうです。

これは喜界島に限らず、全国の地域でよくある課題です。

大量生産できないために、金額が高騰しがちです。

けれど、少量生産、希少価値が高いということは、チャンスでもあります。

10年間眠り続けた地域の資源で、島の未来を切り開く

それでも電話先の担当者は、畑作りをしている若い夫婦を紹介してくれました。

こちらが園田さん。

おじいちゃんの代から花良治みかんで島の未来を切り拓くことが夢だったそうです。

私は、これは自分が絶対に売らなくてはと思い、園田さんのすべての在庫を仕入れました。

そして、商品開発に乗り出します。

島の珊瑚のビーチを見ていて、珊瑚のその多孔質な素材をアロマストーンのように使えないかと考え、香りを優しく広げる珊瑚ディフューザーが生まれました。

珊瑚の採取には鹿児島県にお断りを入れ、クラウドファンディングに挑戦。

香りものはせいぜい20〜30万円を目標にするといいと言われたところを、目標1,000%達成。

離島へ誘う。珊瑚ディフューザーと喜界島柑橘の香り。”Sleepy Island”(Makuake)

島の方に注目いただけるようになりました。

当初私は、1人で珊瑚をダンボール10箱分拾っていました。

けれど、今では現地の障がい者施設の方にご協力いただき一緒に拾っています。

珊瑚研究所(喜界島サンゴ礁科学研究所)の方にも興味を持っていただき、売上の一部を珊瑚保全活動に寄付しています。

【CARTA、喜界島サンゴ礁科学研究所に寄付】クラウドファンディング1000%達成の珊瑚ディフューザーの売上1%を珊瑚保全活動へ。(PR TIMES) 

そして皆さん、ここが重要です。

10年間も取り扱いゼロだったところを、去年私たちが50ml、今年は500ml、直近で2,000ml作る計画を立てています。

畑がこのまま拡大していき、他の方も同じように畑を作っていけば、間違いなく島の未来の産業になります。

その土地固有の香りでプロジェクトを全国展開

CARTAは、喜界島の事例を全国に作っていきます。

現在、岩手、京都、福岡、鹿児島、沖縄と、私が現地に行ってプロジェクトを進めています。

今年(2023年)4月、福岡にザ・リッツ・カールトン福岡がオープンし、同じビル内にある大名カンファレンスの施設で、福岡の香り(CARTA meets Fukoka)をプロデュースしました。

【CARTA、本日開業の福岡大名ガーデンシティ内のカンファレンス施設「DAIMYO CONFERENCE(大名カンファレンス)」で香り演出】ECサイトにてルームスプレーを先行予約販売。(PR TIMES) 

京都のプロジェクトでは、100年の老舗企業と紙のリードディフューザーを共同開発しています。

失われつつある情景を未来につなげる

喜界島の人口は、現在6,000人。

年間100人ずつ減っています。

10年間動きがなかったところを、今私たちと共に動き始めているのです。

全国の地域で失われつつある情景を、私たちが伴走し未来につなげていく。

香りで日本を呼び起こします。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成

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