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経営危機とコロナ禍を越え、自社ブランド創出や新規事業で挑戦を続ける「明利酒類」(ICC KYOTO 2023)

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ICC KYOTO 2023 クラフテッド・カタパルトに登壇した、明利酒類 加藤 喬大さんのプレゼンテーション動画【経営危機とコロナ禍を越え、自社ブランド創出や新規事業で挑戦を続ける「明利酒類」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。

【速報】商品×体験×ビジョンでお酢と地域の未来をつくる「飯尾醸造」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング

加藤 喬大
明利酒類
常務取締役
HP | X(旧Twitter)明利酒類(株)/加藤喬大/明利酒類/雨下uka

14年博報堂入社。消費財、飲料メーカーのマーケティング業務に従事。 2020年4月、コロナ禍の緊急事態宣言の際に、前職の退職を決断し、家業の酒蔵に戻る。 売上が半減し、経営危機の最中、医薬部外品事業を立ち上げ、なんとかコロナ禍を凌ぐ。 現在、構想3年かけてつくるプレミアム日本酒「雨下uka」の発売、更にクラフトウイスキー事業を立ち上げ、総合アルコールカンパニーとして、アルコールに関わる様々な新規事業に取り組む。


加藤 喬大さん 皆さん、こんにちは。明利酒類の加藤 喬大と申します。本日はよろしくお願いいたします。

水戸市で江戸末期に創業の総合酒類メーカー

私の家業、明利酒類は、茨城県水戸市にある総合酒類メーカーです。

明利酒類は、江戸時代末期、私の5代前の祖先が最高の酒造りをしたいと思い立ち、水を求めて全国を放浪した結果、今の本社がある旧水戸藩の土地に土着をしたのが始まりです。

明利酒類の「明利」という漢字には、「明るい利益」という意味が込められています。

これは創業者の「社会に貢献せよ」という強い意志です。

私たちは今、全国の酒蔵240社に酵母を販売していますが、もともと日本酒をせっかく造ったのに腐造してしまうこともあったといいます。

腐造 【ふぞう】(日本の酒 地酒蔵元会)

そのため、安定的な日本酒を造るために酵母を開発したと言われています。

また、震災時には、断水した地域や病院に日本酒の仕込み水を配って回ったり、地域貢献も大切にしてきた会社です。

業績低迷のところコロナ禍で経営危機に

実は私は、家業を継ぐ予定はありませんでした。

大学卒業後、2020年まで博報堂で営業に従事していました。

飲んでいる写真が多く、あまりいい写真が見つかりませんでした(笑)。

しかし、2020年3月、強烈に家業のことを意識するようになります。

既存の事業の業績低迷に加え、コロナ禍で月間の売上が2億円から1億円に半減し、経営危機に立たされました。

私は、この時初めて家業の決算書を見ました。

業績が厳しく、今まさに存続の危機に立たされていること、そして中小企業の信用は個人に紐付き得ることなどを初めて知り、鳥肌が立ちました。

この時にはもう明利酒類という家業を強烈に自分ごと化するようになっていました。

何とか家族を守りたい、江戸時代から続く家業を存続させたいという強い気持ちのもと、前職の退職を決めました。

そして経営危機であること、家族と社員に覚悟を示したいという思いから、無休で働き始めることを決めました。

コロナ対策商品を次々と新発売

家業に戻って1カ月、一番最初に造ったのは、お酒が全く売れない中で、アルコール度数65%のウォッカでした。

国産ウォッカ「65%」が新発売。高アルコール酒が品薄になる中、今注目の商品!(PR TIMES) 

こちらを消毒液代用品として造り、全国に先駆けてプレスリリースし、送料の一部を負担して社会貢献性も大事にしながら、全国へ配送してきました。

こちらが、なんと3カ月で20万本程度、約2億円程度売り上げることができ、一時を凌ぐことができました。

そして矢継ぎ早に1カ月後、大容量の「MEIRI の除菌」を開発し、B2Bの販路を開拓してきました。

酒の会社がなぜ医薬部外品? 社員から不安の声

しかし、それでも売上減少は止まりませんでした。

お酒以外の強い事業の柱が必要でした。

そこで、医薬部外品の新工場の建築を計画し、経済産業省から補助金を獲得しました。

この時、現場メンバーからの声が届いていました。

強い疑念と不安の声です。

「江戸時代から酒を造っている会社が、なんで薬の事業を始めるのか?」

当然だと思います。

しかし彼らの協力を得なければ事業を進めることはできません。

私はすごく悩んでいました。

公衆衛生への貢献を意識

しかしこの時、全国からたくさんのお手紙が届いていました。

こちらは小さな子供からですが、「メイリのみなさんへ みえないてきと戦ってくれてありがとうございます」という手紙です。

本当にありがたくて、私は感謝の気持ちで社員のみんなに朝礼で読み上げ、今我々がやろうとしている事業がいかに社会に必要なのかを社員のみんなに伝えてきました。

そして「明利」という理念を信じ、繰り返し繰り返しビジョンを伝えていく中で、自然と社員の口から「お酒の会社だけど公衆衛生に貢献したいんだ」という言葉が出てくるのを聞きました。

その頃からチームに前向きな「部活感」が生まれ、建築工事もどんどん進めていくことができました。

そしてこのようなお酒造りだけだった明利酒類が医薬部外品の新工場を建築し、指定医薬部外品「MEIRI の消毒」を作ることができました。

博報堂を辞めて戻って1年以内に工場建築、販路開拓までを実施し、国内外1,400店舗のファッションブランドチェーン全店に納入が決まったことにより、コロナ前の売上を大きく上回ることができました。

手仕事の価値がわかるフラッグシップブランド立ち上げへ

そして、ようやく本業に着手できるタイミングが到来したのです。

しかし私たちの本業は、600種類の多くが委託製造で、職人も若い人から辞めていく悪循環でした。

根本的な原因は、自社の明確なブランドが全くないこと、原料のスペックによって価格が決まってしまう状況に甘んじてきたことにあると言えました。

この状況を変えるのは大仕事です。

私はまずセンターピンからということで、圧倒的な職人の手仕事の価値が一発でわかるフラッグシップブランドを作りたいと思いました。

米の旨味が凝縮される「雫落とし製法」を開発

そこで考えたのが、「雫落とし製法」です。

布から一滴一滴の雫だけを拾い集める手間のかかる製法です。

構想から3年をかけ、濾布(ろふ)やタンクをオリジナルで開発し、一滴一滴がまるで雨のように落ちてくる設計を考えました。

一番右下にある写真が、初めて落ちてきた雫たちの写真です。

原料は、当社史上最高峰に磨いた山田錦です。

水は地下35mから汲み上げますが、私の5代前の祖先が見出した水と同じ水脈の水を使っています。

酵母も、独自の酵母の選抜試験を繰り返して、やっと見つけたオリジナルの酵母です。

これらの原料を活用して2カ月、真剣に醪(もろみ)を仕込みますが、落ちてくる雫は半分以下。

それだけ米の旨味が凝縮された味わいが表現できています。

そうしてできたのが、この「雨下 -uka-」になります。

「雨下 -uka-」は一目でコンセプトが伝わるよう、「雫」という漢字を上下に分解してネーミングいたしました。

ファーストロットは1週間で完売。

百貨店の外商様のルート、そして海外6カ国へ輸出の商談中で、出荷が始まっています。

さらに「雨下 -uka-」を伝える活動をしています。

「雨下 -uka-」の温度帯を変え、それに料理を合わせる逆ペアリングディナーや、「雨下 -uka-」の奥深さを伝えるシークレット蔵ツアーを企画し、「雨下 -uka-」の魅力を伝える活動をしています。

一番嬉しかったことは、少しずつ職人の顔に自信が戻ってきたことです。

20代、30代の新しい仲間が10名も入ってくれました。

約60年ぶりにウイスキー製造を再開

さらに60年ぶりにウイスキー事業を立ち上げ、ウイスキー工房やグレーンウイスキーのB2Bビジネス、それから世界を席巻するVTuberとゼロから日本酒を造るプロジェクトを立ち上げ、会社は急成長軌道に乗っています。

明利酒類が約60年ぶりにクラフトウイスキー造りを再開 茨城県水戸市に高藏蒸留所|TAKAZO Distilleryを立ち上げ(PR TIMES)

女性VTuberグループ「ホロライブ」所属「雪花ラミィ」と、明利酒類が共同開発した完全新作の日本酒「雪夜月Favorite Model」が発売決定!(PR TIMES)

私はまだ家業に戻って3年です。

本当にまだ駆け出しですけれども、業界に今までなかった新しい光を差し込み、「酒蔵、ここまでやるか!!!」という事業に挑戦していきたいと思います。

少しでも興味を持ってくださった方、ぜひお話しさせてください。

何卒よろしくお願いします。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/小林 弘美

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