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ICC KYOTO 2023 リアルテック・カタパルトに登壇した、HarvestX市川 友貴さんのプレゼンテーション動画【授粉作業の自動化で、ハチより高い収穫量を可能にする「HarvestX」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはKOBASHI HOLDINGSです。
▶【速報】農作物のアップサイクルで、世界の農地を潤す「EF Polymer」がリアルテック・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2023)
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【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 7A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by KOBASHI HOLDINGS
市川 友貴
HarvestX
代表取締役CEO
HP | STARTUP DB | X(旧Twitter)
2016年4月 千葉工業大学 情報科学部情報工学科 入学、2018年2月 DotRobotics(個人事業主) 開業、2020年3月 千葉工業大学 情報科学部情報工学科 卒業、 2020年4月 Oishii Farm Inc. 入社、2020年5月 Oishii Farm Inc. 退職、未踏スーパークリエータ認定(経済産業省)、 2020年7月 クックパッド株式会社 入社 – 2020年8月 HarvestX 株式会社 設立、代表取締役 就任 – 2021年3月 DotRobotics(個人事業主) 廃業、クックパッド株式会社 退職、 2021年4月 国立大学法人金沢大学 大学院自然科学研究科 非常勤講師 就任 – 2021年6月 異能Vation 異能β認定(総務省)、2022年3月 国立大学法人金沢大学 大学院自然科学研究科 非常勤講師 退任、2022年4月 国立大学法人金沢大学 大学院自然科学研究科 教育教員 就任、2023年3月 国立大学法人金沢大学 大学院自然科学研究科 教育教員 退任。
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市川 友貴さん 皆さん、こんにちは。
我々は「未来の世代に、豊かな食を。」を掲げて、ハチに代わる高精度な授粉ロボットシステムを作っています。
いきなりですけれども、皆さん、イチゴは好きですか?
イチゴは美味しいですよね。
僕もイチゴが大好きです。
今食べているものが未来も食べ続けられるように
イチゴをはじめとした野菜や果物は、今非常に危ない状況になっています。
こちらは、今農業に迫る危機です。
気候変動、自然災害、高齢化、水不足、ハチの減少、これは今後起きることではなく、今すでに起こっていることです。
ですから、今食べているものが食べ続けられるとは約束されていないわけです。
こうした大きな問題に対して、今ある豊かな食文化を未来に残したいと、我々は今事業を行っています。
農業のあり方が変わっても変わらず必要な授粉
農業のあり方は、実はこれまで、その時代の課題に合わせて変化してきました。
例えば露地栽培ですと、どうしても自然災害に弱かったり、栽培地域が限られてしまっていました。
そこからビニールハウスやガラスハウスを使うことで課題を解決してきましたが、今、日射が強くなる中で調整が難しかったり、高騰する石油燃料を使用することから、徐々に今、移り変わっているのが植物工場だったりします。
こういった形で、今農業の在り方はどんどん変わってはいますが、ただ変わらないものがあります。
それが、こちらの写真にある通り、「授粉」です。
どんな野菜や果物でも、共通して必要なのがこの授粉の作業です。
先ほど申し上げたイチゴ以外でも、我々が食べているトマトやスイカ、りんご、メロン、かぼちゃも、昆虫類による花粉の媒介が必要になります。
AI・ロボティクスによる授粉に世界初で成功
では今、授粉作業をどうやってやっているかと言いますと、こちらです。
農家さんや今の果菜類の植物工場では、ハチの巣箱を買ってきて、ハチを放し飼いにし、本当に彼らの気まぐれ、ランダムで花粉の交配を行っています。
ですので、この授粉をするかどうかはハチ次第になります。
その上で、このハチの巣箱1つが活動できるのが4週間程度です。
実は4週間経つと、どんどん働けるハチが減ってきて、少しハチが残っていても全て殺処分してしまって次のハチを購入してくる、どんどんハチを消耗品として扱うような方法で授粉作業を行っています。
そこに対して我々は、AI・ロボティクスによって、これまで難しいとされてきた授粉作業に世界で初めて成功しました。
こちらは我々のテストプラント内にあるロボットです。
こういった形でロボットが工場内、農園内を移動することによって、付いているカメラたった1つで花の状態、花の位置等を認識して、リアルタイムで授粉作業を行います。
ハチの動作を解析し授粉作業を完全自動化
授粉作業を今見ていただいて、非常にシンプルだなと思った方がいらっしゃるかもしれません。
ただ、この授粉の非常にシンプルな動きに秘密が詰まっています。
例えば花の上での動きなど、ハチの動作等を解析して、それを授粉アルゴリズムに落とし込んでいます。
使っている媒体は、耳かきのように見えますが、そうではなくて、授粉に適した特殊な素材を使っていて、回転する振動周波数を調整して、一番良い形で授粉ができるように我々は作っています。
というのも、イチゴやトマトなどは授粉の精度が、商品としてきれいな形になるかに非常に影響するので重要です。
ハチと比べ最大1.6倍の収穫量
ただ我々は、ハチの代わりに授粉をするだけではありません。
授粉の工程は、今までハチだとどうしても取りこぼしが多くありました。
その部分を正しく授粉することによって、収穫量を最大1.6倍増加することに成功しています。
実際、10,000株規模の農園や工場の場合、売上としては1,600万円超も変わってきます。
栽培を変えずに、花の授粉をいかに正確にやるかで、商品として出荷できる量が決まってきます。
平均気温上昇はハチに酷な環境
そして、これはイチゴだけではない世界全体の大きな課題です。
先ほど申し上げた通り、今世界の、我々が食べている食料の9割を占める100種類の作物種のうち7割以上がハチによる授粉を行って実をつけています。
ただ、先ほど申し上げたように、ハチが減る中で、さらに国内でも気温が上がることによって、ハチにとって、どうしても活動しづらい環境になってしまっています。
右側が日本の年間平均気温の変遷ですが、年々上昇していて、ハチがどう頑張っても動けない、最悪死んでしまうことが今起きています。
一次産業と二次産業の組み合わせが日本の勝ち筋
その上で我々は、日本の技術でこの課題を解決して、世界に農業革新を起こしていきたいと思っています。
これまで植物工場や施設園芸で、日本で培ってきた技術ですが、有名なのは海外の企業で、ずっと負けてきた私たちも正直悔しかったです。
ただ、安心してください。
我々は今まで世界で誰も実現できなかった授粉の自動化という、唯一の圧倒的な授粉技術を持っています。
これを組み合わせることで、これから農業、いわゆる一次産業と、このロボットを構成するのに重要な製造業の2つを組み合わせることが、私としては日本の勝ち筋だと信じています。
私どもの技術も、もとは東京大学のプログラムから誕生して、そこから経済産業省、総務省等、省庁の支援を受けながら、世界初のロボットによるイチゴの授粉に成功してきました。
実際、今、我々は東京大学に実証工場を持っているのですが、もうすでにほぼ100%授粉ロボットのみで花粉の交配、イチゴの生産が実現できています。
RaaS事業とTurnkey Solution事業を同時展開
我々のビジネスモデルです。
実際に、ロボット単体のRaaS(Robot as a Service)事業と、今ある植物工場ベンダーさんと協力して、ロボット事業、栽培を積み上げたTurnkey Solution(すぐに稼働できる状態での納品)事業を行っています。
実際の市場は、国内では、まずRaaSでハチ等の送粉サービス(花粉媒介)の市場自体が約6,700億円あります。
その上で、イチゴの市場は、国内1,800億円、海外3兆5,000億円です。
我々としてはまず需要の高いイチゴでTurnkey Solution事業に取り組んで、その後世界に向けて他の作物で展開していき、農業全体で250兆円の市場に挑戦していくことを進めています。
授粉だけでなくさまざまなメリットも
我々は最初、授粉はすごく地味というふうに捉えられていたのですが、実際食品メーカーさんに使っていただくと、廃棄ロスを減らしたり洗浄コストを削減することが可能といったメリットがあることもわかりました。授粉を改善することでイチゴの生産量の増加だけでなく、様々な改善を図ることができます。
HarvestXは農業における不確定要素を圧倒的な技術力で解決し、持続可能な食のインフラを実現。そして未来の世代に豊かな食を継承して参ります。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/小林 弘美