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注目ベンチャー特集「今、フィンテックが熱い」【F17-3E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その3)は、フィンテック・ビジネスの難しさや課題について各登壇者が思うところをお話いただきました。ウェルスナビ柴山さんのロンドン前市長のエピソードは必見です。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
井上 先程東後さんのお話もありましたが、皆さんフィンテックビジネスの最前線を走っている中で、やはり誰かがその非効率を壊さなければ変わらないと思います。
環境が整うことを待っているだけではビジネスとして勝てないという側面もあるのかとは思いますが、既存にあるものを壊すことの難しさや苦労を皆さんも感じていらっしゃいますか?
東後 皆苦労していると思います。
今内山さんのお話にあった通り、現在フィンテックが広がりを見せている背景には、「これはおかしいのではないか?」という土壌があるからだと思います。
「これは改善しなければならないのではないか?」ということを、関連する金融機関や、省庁の人達も同じように課題意識を持っているので、全体として「なんとかしたい」という大きな流れがあることはとてもプラスだと思っています。
先程の話しにもありましたAPIも少しずつですが変わってきていると思います。
これが、「変わるつもりはない」という状態であれば、イノベーションは止まってしまうと思います。
徐々にではありますが、変化が見られるということは、とても良い流れだと思っています。
金融庁と顧客両方からフィンテックの要望がある
井上 金融機関側も変化を望んでいるということですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
内山 金融庁も、地銀やメガバンクに対して、バズワードに感じるかもしれませんが「フィンテック」に取り組むようにという指針を出している状況です。
このような気運の中で、入り口としてはAPIや、運用という形で徐々に取り組み始めている状況だと思います。
金融庁とお客様という上下から要望があるということもきっかけになっているのではないでしょうか。
東後 そうですね。
お客様の期待値が変わってきていることは大きいと思います。
ただお金を借りてくれている、ただ口座を作ってくれている方から見た時、それだけだと金融機関の付加価値は徐々に下がってきていると思います。
お客様が今より高い付加価値のサービスを金融機関側に求めるようになった時、金融機関はそれに答えられるかどうか?
そのことに答えられる金融機関がこれから先どんどん伸び、成功するというように、このことが逆に差別化を図るチャンスになると思います。
金融サービスに差を生む一つのきっかけになるからこそ金融機関としても積極的に取り組みたいと考えているのではないかと思います。
井上 ここでお客様とされているのは、BtoCの個人の消費者であり、スモールビジネスの事業者ということでしょうか?
東後 そうですね。
井上 なるほど。
海外で「フィンテック」とされていることが既に実装されている日本
柴山 本質的に、日本の社会はとても便利だと思います。
私自身、大学を卒業してから半分程度海外で生活しているのですが。
東後 どの辺が便利ですか?
柴山 まず電車が時間通りに来ますよね。
(一同笑)
柴山 外国の交通事情と比べると本当に珍しいことだと思います。
電車の乗り降りもSuica等を利用すればワンタッチですし、インターネットの速度も速いし、契約すると回線工事にもすぐ来てくれますし。
イギリスでインターネットを引こうと思うと、私が住んでいた2008年当時は工事まで3ヶ月待つことが当たり前でした。
フランスでも、同じように3、4ヶ月かかりました。
日本ではありとあらゆるもの、特にインフラがとにかく発達していて便利だという印象があります。
(ICCカンファレンスFUKUOKA2017 カタパルトグランプリ登壇時)
柴山 以前、ロンドンのボリス・ジョンソン市長(当時)が来日した際、イギリス大使館でパネルディスカッションが行われました。
彼が「日本もイギリスのフィンテックの取り組みから色々学べるのではないか?我々もぜひ日本の皆さんをサポートしていきたい。イギリスではこのクレジットカードを改札でタッチすれば電車に乗れるようになった。これがフィンテックの成果だ!」といったことを話していました。
すると、日本に長く住んでいるであろう外国人の方が、「そのシステムは日本であれば2000年位からありますよ」と、Suicaを手に取って答えていました。
(一同笑)
ボリス・ジョンソン市長はそれを聞いて絶句していました。
つまり、海外でフィンテックと言われ、新たにできるようになったことの中には、日本に既にあるサービスが含まれていることがあります。
日本は特にインフラ系のサービスが充実しており、その領域に対する期待値も高いと思います。
国民の期待値と金融サービスのギャップこそがフィンテックブームの源泉
柴山 以前、イギリス政府に勤務している時に同僚から聞いた話ですが、統計上では日本よりもロンドンの方が電車の時間が正確でした。
なぜかというと、日本では1分程度遅れると遅延扱いとなり、イギリスでは5分程度の遅延は定時運行扱いとなるためでした。
(一同笑)
日本で電車に乗っていると「今日は45秒ほど遅れて発車しております」といったアナウンスが流れますよね。
イギリスであればこの程度は定時運行となります。
それぐらい日本では期待値が高い所にあるのだと思います。
このことと金融サービスとのギャップがあまりにも大きいと感じます。
働いている世代からすると、金融機関は出勤前に行っても、帰宅途中に行っても、週末に行っても閉まっているので、「一体どういうUXなんだ?」と思う訳です。
実際、弊社の社員をみていると、銀行に行くために有給を取得しています。
(ICCカンファレンスFUKUOKA2017 カタパルトグランプリ登壇時)
ネットバンキングのUI/UXもそうだと思いますが、日本はインターネットによりどんどん利便性が向上し、元々インフラも非常に優れている一方、医療、金融、教育といった規制産業のサービスレベルは変わらないので、それらのギャップがあまりにも大きいものになっています。
その規制産業に新しいイノベーションが起きると、皆「良いね!」と思いますし、当然その事業も広がり、メディアからも注目される。
このことが、今のいわゆるフィンテックブームの裏側にあるエネルギー源なのではないかと思っています。
井上 なるほど。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鎌田 さくら
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【編集部コメント】
続編(その4)では、顧客が抱える「負」の解消の先にある、フィンテック・ビジネスのインパクトについて議論して頂きました。最先端の議論となりました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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