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2. 石川 善樹の主張「SDGsの次は『SWGs』になる」

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ICC KYOTO 2022のセッション「Well-being産業の今後」、全6回の②は、Well-beingといえばこの方、石川 善樹さんの登場です。現在SDGsが叫ばれて久しいですが、これは2030年までのグローバル・アジェンダ。その次は「SWGs」が来るといいます。それは一体何なのか? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2022 プレミアム・スポンサーの住友生命保険にサポート頂きました。

「Well-being産業の今後」の配信済み記事一覧


藤本 今日はそもそも、Well-being産業は何なのか、Well-being産業の過去、現在、未来について話しましょう。

最初の議論のテーマは、Well-being産業が急に注目を集めるようになった背景についてです。

では、Mr. Well-beingである石川 善樹さんから、是非お話を頂きたいと思います。

では、よろしくお願いします。

GDPを指標にして生産を重視した時代

石川 まず、大前提として、Well-beingという分野に専門家はいないと思った方がいいですね。

僕もよく分かっていないですし、「我はWell-beingの専門家なり!」と言っている人がいたら、偽物だと思っていただいていいです。

(一同笑)

 たまにいますよね。

石川 たまにいるんですよ。

僕は専門家というよりも、ただ少し興味があるだけです(笑)。

一旦Well-beingを脇に置くと、今、全ての産業がSDGs産業を目指そうとしていますよね。

Well-being産業はそれに連なるのだろうと思っています。

まず、広義に解釈して、全ての産業はWell-being産業に向かっていく、Well-beingは北極星のようなものになっていくと思っています。

その理由として、まず国際社会がどう動いているのかが重要になります。

1929年に世界恐慌が起こりましたよね。

その後、1944年にブレトン・ウッズ協定(※) が締結され、世界はGDPというものを指標にして動くようになりました。

▶編集注:ブレトン・ウッズ協定とは、1944年7月、アメリカのニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで連合国44カ国国によって締結された経済協定。

GDP(Gross Domestic Product)は、生産にこそ価値があるという考え方です。

ですから当時、家事や研究開発は生産に組み込まれなかったのです。

研究開発がGDPに組み込まれたのは、21世紀になってからなのです。

定義が変わったことによって、日本のGDPはポンと上がります。

それを当時は「アベノミクスの成果である」と言っていましたが、違います。

定義が変わっただけなのです(笑)。

アベノミクス指標に“仕掛け” GDP算出方法変更、不都合な試算拒む 2019/12/29(西日本新聞)

2030年以降は「SDGs」から「SWGs」に

石川 人類の共通理解…というか共同幻想かもしれませんが、「生産には価値がある」というのがGDPです。

それが、2015年から2030年は、「SDGsに価値がある」ようになったのです。

2030アジェンダ(国際連合広報センター)

SDGsはニーズを大事にする価値観であり、その定義は「将来世代のニーズを損なわず、現在のニーズを満たす」というものです。

重要なポイントは2つあって、1つは「将来世代」という言い方です。

「次世代」ではなく「将来世代」なので、時間軸がさらに長いのです。

もう1つのポイントは、将来世代のニーズを損なわないという点を考えると、SDGsの根本的な思想は、「負の遺産を遺さないぞ」ということです。

負の遺産を将来世代に継がせない。

ですから、SDGsには17の分野、200近い項目がありますが、見てもらうと、負の遺産を遺さないぞという項目が多いです。

Sustainable Development Goals(Sustainable Development Goals website)

例えば海については、海を汚さないと書いています。

海と共にある豊かな暮らし、のような項目は、入っていません。

将来世代のニーズを損なわないことがポイントなので、当然です。

SDGsは2030年で終わります。

次、2045年の国連生誕100周年までの国際指標、グローバルアジェンダが何になるのか、もっと言えば何にしたいのかが、すごく重要です。

私は、Sustainable Development GoalsつまりSDGsは、「SWGs」になると思っています。

SWGsは、「Sustainable Well-being for all」という考え方です。

なぜかと言うと、developmentという概念は経済に寄りすぎているからです。

政治的に言えば「平和が大事」ということや、社会的な「地元の文化や工芸品を大事にしよう」という要素は、今SDGsには入っていないのです。

経済優先で、政治的、社会的なアジェンダが入っていないのです。

SDGsには、平和に関する項目(目標16 [平和])が1つだけ入っています。

これは本来、入らなかったはずなのですが、東ティモールが入れてくれと言ったので入ったのです。

SDGs達成は、足元の課題に取り組むことから ~日本政府交渉担当官に意義と課題を聞く(朝日新聞デジタル)…目標16 [平和]が入った経緯など

ですから、developmentではなくWell-beingの要素が入ってくるだろうと思っています。

スライドには、「正の遺産」と書いていますが、負の遺産を遺さないだけではなく、正の遺産を将来世代につなげていくことが重要です。

これからSDGsが、Sustainable Well-being Goalsに進化していくのであれば、全ての産業がWell-being産業になっていくということです。

Well-beingの視点からSDGsの17分野を並べ替えると…

石川 Well-beingの視点は、別の観点からも重要です。

今のSDGsには17の分野、200近い項目がありますが、項目間の優先順位が不明なのです。

ですがこれは、全部大事ということであえてそうしており、それぞれがピックアップしてくださいという形になっています。

▶編集注:例えば、日本が優先課題とする8分野はこちら

このスライドにはSDGsの17の分野が記載されていますが、通常とは違う順番に並べています。

まず9番の「産業と技術革新」が一番上に、次が8番「働きがい」、次が12番の「つくる、つかう責任」、下の方を見ると「海」「陸」となっています。

これは、それぞれの分野が、どれくらい人々のWell-beingに影響を与えるのかの順番です。

棒グラフの棒が長いほど、影響が大きいと考えてください。

見ていただくと、やはり「産業と技術革新」が一番、影響を与えるのです。

というのも、水やインフラを整えるという要素が大きいからです。

「海」や「陸」は、ほとんど影響を与えていません。

先ほどお話しした通り、SDGsは負の遺産を遺さないという考え方で作られており、海と共にある豊かな暮らし、のような項目は入っていないからです。

このように、Well-beingを大前提にすることで、SDGs自体にも、海や陸やパートナーシップなど、もっと入れるべき要素があるのでは?という気づきを得ることもできますし、項目間の優先順位をつけることもできます。

この研究はたまたま行われたわけではなく、SDGsの後はWell-beingを最優先に据えようという明確な意図のもと、英・Oxford大学のヤン先生と、米・Columbia大学のサックス先生が行った研究です。

今、僕らはそういった方々と組みながら、SWGsに向かって、ポストSDGsのグローバルアジェンダを作っています。

企業側については、例えば住友生命には、「日本版Well-being Initiative」のサポートをしていただいています。

日本版Well-being Initiative始動 2021年3月19日 (PR TIMES) 

何が価値なのかと言うと、生産に価値がある時代から、ニーズを満たしていく時代になります。

でも現在のニーズを満たしすぎて、将来世代にツケを回さないようにしようというのがSDGsです。

ニーズを満たそうとすると、どうしても経済優先になりがちですが、伝統工芸や平和も含めてWell-beingであるべきではないかと思います。

藤本 先ほどの棒グラフで、上位3つは産業セクターに関わるものでした。

まさにSDGsがニーズを満たすものだから、上位に来ていたのでしょうか?

石川 そうですね、それも大きいと思います。

藤本 なるほど。

いかにしてWell-being as a Service/Techを作るか

石川 次に、狭い意味でのWell-being産業について簡単に述べて終わりたいと思います。

それは、サービスやテクノロジー開発に尽きます。

どういう、Well-being as a Service、Well-being Techを作るかです。

サービスあるいは政策を作る際は、とにかく帰納的に、データをたくさん集め、そこから見えてくるパターンをサービスや政策にするということに尽きると思います。

帰納法、演繹法【今更聞けない問題解決のための推論】(リクナビNEXT)

ビッグデータと非常に相性が良いアプローチであり、ここからどんどん色々なことが起きてくると思います。

産業界では、Well-being as a Serviceということで、住友生命やJRがどんどん取り組んでいますよね。

会社の目指す姿から探るWell-beingへの貢献(住友生命)

WaaS®(Well-being as a Service)について(JR東日本)

また、国の骨太方針や成長戦略というものがあるのですが、2021年、そこに初めてWell-beingについて、記載されました。

▶編集注:骨太方針2021では、「政府の各種の基本計画等について、Well-being に関するKPIを設定する」と記載された(経済財政運営と改革の基本方針2021について)。 

国としても、Well-beingを政策の中心に据えていくということで、色々な動きが起こっています。

そのためにデータを獲得しようということです。

Well-being Techは、まだ開発されていないと思っています。

なぜかと言うと、技術は、データから物事を考えて生まれるものではなく、演繹的アプローチで生まれるからです。

例えば、最小作用の原理に基づいて運動方程式があるのですが、Well-beingに関しては、まだ原理が弱いです。

ゆえに、理論やテクノロジーがまだ開発されていないという側面があるのです。

では、そもそもどんな原理かと言うと、脳がどう情報処理しているのかという原理です。

これが分かり始めると、Well-being Techと言われるものが誕生します。

先に、Well-beingサービスや政策が進むと思います。

それを追いかけて、Well-being Techというものが、2030年代には出てきてほしいなと思いますね。

2020年代に出てくるかは分かりません。

Well-being Techはまだ人が気づいていないエリア

 まだ人間が気づいていないのです。気づけていないのです。

藤本 気づけていないエリアですね。

 Techが、これから面白くなると思います。

藤本 Well-being Techですか。

石川 個人的には、世界最古のWell-being Techは、焚き火だと思っています。

焚き火がもつ癒し効果8つの視点(takibi.fan)

藤本 焚き火?

石川 まだ、焚き火を超えるテクノロジーは開発できていないと思っています(笑)。

 今まで認識していない原理や真理に、みんながあっと気づきだすと、わっと広がるでしょうね。

石川 そう、そう。

 それが、ばっと産業になるのでしょうね。言葉が全然足りていませんが…。

石川 あっと、わっと、ばっと(笑)。

(一同笑)

 そうそう、イメージわくでしょ(笑)?

「あっ、気づいてなかった」、「わっ、これ…」、そして「ばっ」と広がります。

そこに目をつけておくと、多分、一大焚き火産業が出てきますね。

藤本 焚き火産業(笑)?

 焚き火だって多分、「わっ、きれい」と気づいて、ばっ、ばっ、ばっ、と広がっていったんですよね。

そんな感じですよね?

石川 まさにそんな感じです。

 Techはこれから面白いだろうな、でもサービスは…。

藤本 サービスはあまり面白くない(笑)?

 うん、僕とTechをやったほうがいいですよ。

▶編集注:丸さんはリアルテックファンドの共同代表を務めています。

(会場笑)

藤本 (笑)。

 やっぱりTechですよ。

石川 どちらかと言えば、自然科学の人は演繹的アプローチが、社会科学や文系の人は帰納的アプローチが好きです。

 そうですね。

石川 どちらがいい、悪いではないです。

ただ、Well-being産業が盛り上がると、その資金を基礎研究に回すことができるので…。

 そうですね、僕に資金をくれれば明日から…。

石川 ですから、好循環が起きてくれればと思っています。

 すごいですよ、これは。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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