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人工衛星で”毎日・全世界観測”を目指す「アクセルスペース」の挑戦【F17-3D #5】

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「今、宇宙ビジネスが激アツだ。注目宇宙ベンチャー大集合!」【F17-3D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その5)は、アクセルスペース中村さんに事業紹介をいただきました。美しい衛星写真の数々は必見です。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 3D
「今、宇宙ビジネスが激アツだ。注目宇宙ベンチャー大集合!」

(スピーカー)
伊藤 美樹
株式会社アストロスケール
代表取締役社長

大西 俊輔
株式会社QPS研究所
代表取締役社長

倉原 直美
株式会社インフォステラ
代表取締役

中村 友哉
株式会社アクセルスペース
代表取締役

(モデレーター)
田川 欣哉
Takram
代表取締役

「今、宇宙ビジネスが激アツだ。注目宇宙ベンチャー大集合!」の配信済みの記事

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【本編】

田川 それでは、最後にアクセルスペースの中村さん、(5分程度の自己紹介を)よろしくお願いします。

「アクセルスペース」が目指す毎日全世界観測インフラとは?

中村 友哉 氏(以下、中村) アクセルスペースの中村です。

アクセルスペースは2008年に創業したベンチャー企業です。

学生の頃は研究室で、極小の衛星の開発プロジェクトに関わっていました。

重さ1キロくらいしかないキューブサット※と呼ばれる人工衛星で、当時は世界最小でした。

▶編集注:CubeSat(キューブサット)は大学の研究室などが製作する数キログラム程度の小型人工衛星。打ち上げ費用を極力抑えることができる。(出所:Wikipedia

それまで宇宙には全く興味がなかったのですが、それ以降、衛星を作ることに面白さを感じ、卒業まで合計3つの人工衛星の開発に関わりました。

卒業して、やはり小さな衛星を作り続けたいなと思ったのですが、世界中を見ても、そのようなことをやっている会社がありませんでした。

ないならば創ろうということで、アクセルスペースという会社を設立しました。

中村 最初のお客さんはウェザーニューズ社です。

ウェザーニューズは天気予報を行っている会社、というイメージが強いのではないかと思います。皆さんの中にも天気を知るために彼らのスマホアプリを使っている方がいらっしゃるかもしれません。

ですが、彼らは気象予報のために小型衛星を必要としたわけではありません。

温暖化が進み、北極海の氷が溶けてきているというニュースをご覧になったことのある方が多いのではないかと思います。

そこに船会社が目をつけました。

氷が溶けると当然海になるわけですが、ここが新たに航路になるのではないかと考えたわけです。

例えば日本からヨーロッパへの輸送には、一般的には、南へ向かい、マラッカ海峡を越え、スエズ運河を通るのですが、もし北極海を通れるようになると、その距離が約3分の2になります。

そうすると、当然ながら燃料費が大幅に浮きますし、2週間程度早く着くと言われているので、その分の人件費なども削減できます。

とはいえ、大きな氷の塊があちこちに浮かんでいるので、何の情報もなしにそこを通ることは難しいわけです。

そこでウェザーニューズが、そうした船会社に対してどういう航路を取るべきかの情報を提供する、いわゆるナビゲーション・サービスを始めるにあたり、北極海における氷の分布状況を知る必要があるということで、衛星の購入を決めていただきました。

「マイ衛星」のメリット

中村 これまでにも衛星はたくさん打ち上げられていますので、そこから衛星画像を買えばいいのではないかというご意見もあるかと思いますが、そうした一般的な衛星画像というのは非常に高く、一枚、数十万円から百万円くらいします。一枚ですよ。

そうすると、一隻の船が北極海に入ってから出ていくまでに、画像を買うだけで2,000~3,000万円払わなくてはなりません。

船が北極海を通ることにより浮くコストが大体1,000万円くらいと言われていますので、これだと全くビジネスにならないわけです。

ところが自分で衛星を持ってしまえば、もちろんそれには何億円という初期投資が必要ですが、もはや画像を一枚一枚買う必要がないわけです。

これならビジネスになると判断していただき、プロジェクトが始まりました。

田川 画面上ご覧になっていただいているのはアクセルスペース社のウェブサイトですが、これは全てアクセルスペース社の衛星から取った写真なんですよね。

AxelGlobe「アクセルスペース衛星画像アーカイブ」

中村 そうです、我々の衛星から撮ったものです。

田川 本当にきれいですよね。

中村 そうですね、これは先ほど大西さんからお話のあった九州大学の衛星と一緒に打ち上げられた「ほどよし1号機」という衛星が撮影した画像です。

田川 なぜ「ほどよし」という名前なのでしょうか。

中村 私が付けたわけではないのですが、名前があまりよろしくないですかね(笑)。

由来を簡単にご説明しますと、これまでの国の作る衛星は高い信頼性を求めすぎて莫大なコストがかかる結果となってしまっているのですが、本来はほどほどの信頼性、「ほどよし」でいいはずだよね、という発想ですね。

出所:アクセルスペース社Website

田川 いや、素晴らしい。これはキューブサットですか?

中村 これは少し大きくて50キロくらいです。

これは2014年に打ち上げた少し大きい衛星なのですが、ビジネス実証を目的としており、いろいろな人に使ってみてもらいたいという期待から、こういった画像を掲載して楽しんでいただいています。

これまで2千数百枚に上る画像を撮り、毎週新しい画像をこのページに載せていますので、お時間があればご覧ください。

人工衛星データを毎日更新・掲載する

中村 我々はこれまでずっと衛星を作ってきたのですが、ハードウエアを作っているだけでは将来的に新興国などから新しいプレイヤーが出てきたときに苦しくなるだろうと考えて、2015年の末から始めたのが「AxelGlobe」というプロジェクトです。

これは50機の人工衛星を打ち上げて、世界中を毎日撮影するというものです。

大西さんはレーダーを使って10分ごとに更新とおっしゃっていましたが、我々のプロジェクトでは世界中全てを毎日、1日1回更新します。

一般的には、衛星画像というのは見て美しいなと感じて、それで終わりがちですが、実は多種多様な情報が詰まっているんですね。

例えば、衛星画像を解析することで、駐車場に止まっている車の数を数えたり、森林火災をいち早く見つけたりできます。

解析のやり方によって、その他にもさまざまな情報を抽出できます。これらを幅広い業界に提供するビジネスをやりたいと思っています。

いわゆる「ビジネスインテリジェンス」と呼ばれるものですね。これを衛星画像から抽出していこうと。

もう一点大事なことは、毎日撮影しているということです。つまり変化が分かるのです。昨日と何が変わったのか、気づくことができるのです。

その変化というのは、ある業界にとっては非常に重要な情報であったりします。

例えば農業で言えば、日々の作物の生育状況を見ることで、肥料や農薬の散布の仕方を調節したりすることができるわけです。まさに「精密農業」と呼ばれる分野であり、海外では急速に伸びているビジネスですね。

2022年までに50機を打ち上げ、このプロジェクトを完成させたいと思っています。

田川 チャレンジングな数字ですね。

50機が軌道を全てグルっと一周、囲むような感じでしょうか。

中村 そうですね、我々が作ろうとしているこのネットワーク、言い換えれば観測網というのは、アメリカのベンチャーと比べても結構特殊で、ユニークだと思います。

地球をほぼ南北に回る一つの軌道上に、50機全部を入れてしまいます。この軌道の真下にある場所は、50機の衛星によって常に観測できます。

あとは地球が勝手に東西に自転してくれますから、要は回転する地球を常に輪切りにするような形で全世界をカバーできるようになっているわけです。

田川 そういうことですか。50機完成の目標は2020年とおっしゃいましたか?

中村 2022年です。

田川 ということは後5年ですね。

もう設計は進んでいるのでしょうか。

中村 今年(2017年)の末に3機打ち上げます。

田川 もう決まっているのですね。

中村 はい、決まっています。

田川 素晴らしい。

ビジネス面では、ウェザーニューズとの取引が初期のスタートアップの状態から次の段階に進むためのきっかけになったのでしょうか。

中村 むしろ、ウェザーニューズ社がそのプロジェクトをやると決めてくれたから起業できたという経緯です。

田川 そういう順番ですか。

中村 要は、我々が起業した2008年当時というのは、宇宙でビジネスができるとは誰も思っていなかったんです。

そのような環境の中、学生時代の経験を通して超小型の衛星を作る技術を確立したので、これを使って宇宙利用しようと考えてくれるお客さんがいるはずだと考えたんです。

起業という選択をしたのは結果論であって、もともと予定していたわけではなかったんですけれども。

学生上がりで経営について何も知らないながらも、さすがにお客さんがいない中、会社を始めても続かないよねということは理解していました。

そこで、まずは起業前にとにかくお客さんを見つけようということで企業回りをしたんです。

活動を始めて大体1年たったころ、ウェザーニューズさんとお会いする機会があったんですが、このとき初めて具体的な興味を持ってもらうことができたので、この一点突破しかないと思い説得をがんばったんです。

半年くらいかかりましたが、最終的にこのプロジェクトにゴーサインを出してもらったところで、起業することになりました。

田川 おもしろいですね。

その辺りの話も、後からもう少し詳しく聞きたいと思います。

ありがとうございました。

そうしましたら、冒頭申し上げた通りいったんここで会場の皆さんから、どの辺りに関心をお持ちなのか伺っていきたいと思います。

2、3分、時間を取りますので、ぜひお願い致します。

近くでも前後でも構いませんので、思っていることをシェアしてください。

その後、会場からの質問に答えていきたいと思います。

ではスタートしてください!

(続)

続きは 儲かるのか?宇宙ベンチャーたちのビジネスモデル大研究 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/Froese 祥子

【編集部コメント】

「AxelGlobe」のサイトを見ていると、悩みもちっぽけに思えて癒やされます!ぜひ見てみてくださいね!続編もご期待下さい。(榎戸)

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