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「今、インバウンド・ビジネスが熱い」【F17-2E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その5)は、日本美食の董さんを中心に、数字から考える観光産業を議論しました。「日本の常識は世界で通じない」という言葉が印象的でした。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 2E
注目ベンチャー特集「今、インバウンドのビジネスが熱い」
(スピーカー)
加藤 史子
WAmazing株式会社
代表取締役社長
紀陸 武史
株式会社Huber.
代表取締役CEO
董 路
日本美食株式会社
代表取締役
(ナビゲーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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【前の記事】
【本編】
加藤 訪日外国人旅行者が増えていて、日本国内の色々な地域がチャンスだと考えています。
彼らがそれに対して先ず何をするかというと、対象となる国を考えて対象国の視察に行くことになります。
そして現地の旅行会社に営業に行きますが、同じように売り込みにくる地域は多いので、地域間競争になってしまいます。
また旅行博(展示会)に出席し商談をしますが、これから増える個人自由旅行者はモバイルを利用し自分で探して動いているので、自治体同士で姉妹都市提携をしたり、市長同士が協力を約束したりしても、どこまで効果があるのだろうという気は正直しています。
紀陸 観光を押し上げた大量生産、大量消費の時代と違い、今は8割以上の人がスマホを持っていて、本格的にCtoCサービスを実現できる時代になりました。
そうなってくると、画一的な企画に押し込められる感じを嫌がる人も増えます。町の価値を発信するにしても、ターゲットに定めた国以外の人にも自分の町に興味を持ってもらえる可能性もあるはずです。
昔ながらのターゲットの絞り方では、いつまでたっても人は来ません。
現代のユーザーが何を望んでいるのかに向き合う
井上 インバウンドビジネスに関する記事で、マスマーケティングの古い考え方を良く見ます。
「旅行客の中には例えば台湾人が何人いて、台湾人が良く行くのはデパートで」という発想が多いのですが、観光とか体験価値というのは個人によって全く異なります。食事にしてもそうですよね。
紀陸 体験があってテクノロジーがある。つまり体験は変わらないものである一方、インターネットというのは人の生活を豊かにするためのただのツールに過ぎません。
今のユーザーたちが、何を望んでいるのか?ということに向き合わない限り、時代にフィットすることは出来ません。
今の時代の人たちが求めているものと違うものでアプローチを続けても大きなものにはなりません。次の時代の当たり前のものになる必要があります。
今の時代にはコミュニケーションが求められています。人々が直接結びつくようになり、情報の流れが変わった。
つまり土台自体が変わってきている。
だから当然、ビジネスモデルも、マーケティングも変わるべきで、それを昔ながらの画一的な方法でやるのは合理的でないと思います。
インバウンドビジネスへの外国人参加が少ない
董 「日本のインバウンド対策」という日本語自体がおかしいと思います。悪い言葉みたいですね。
今日のICCカンファレンスで外国人が私だけだった様に、そもそもインバウンドビジネスへの外国人の参加はまだ少ないです。
「インバウンド対策」と思い込んでいるだけで、根本から考え方が間違っていることも多いです。
物事を判断するためには、データ分析やロジカルシンキングにより因果関係を理解する必要がありますが、日本の飲食業界はそれができない人が多く、数字を見ず一方的に「これがおもてなしだ」という押し付けになっています。
外国人が何を考えているか知らないといけません。
何かが起こったらやるでは一呼吸遅れた対策になってしまいます。
「爆買いの波が来た、では対策しよう」となり、そして「爆買いが終わった。ではどうしましょう」となる。
本当の爆買いはまだ始まっていない
董 でも私から見れば、爆買いも中国人の当たり前の行動です。
中国は、1億1千万人が海外旅行をするという世界一のアウトバウンド・マーケットになっています。
パスポートを持っている人は7千万人ですから、一人につき1年間で1.4回出国する計算です。
中国の人口は14億人ですから、5%の人しかパスポートを持っていないことになります。95%の人はまだパスポートを持っていないのです。
パスポートを持っている人は遠隔地に行く人が多く、1億1千回出国する中で、日本には637万人が来ています。約20人に1人です。
この状況ですから、私から見れば爆買いの傾向はまだ始まってもいない段階です。
爆買いは終わった訳ではなく、違うものを買うようになっただけです。ブランドものは一回買えば十分ですよね。
董 中国人観光客は皆日本人よりお金持ちです。日本の1人あたりGDPは4万ドル弱です。日本旅行に来ている中国人の年収は全員これを上回っています。
私は1993年に日本に来ましたが、1993年当時と2015年の日本の1人当たりGDPを比べると下がっています。失われた20年とはこういうことです。
一方、中国の1人あたりGDPは同じ期間で15倍になっています。
1993年に年収400万円だった中国人は、今では6千万円稼いでいることになります。それが社会の平均です。
日本ではマンションだって毎月買えるくらいです。
そんな中ではヴィトンやエルメスを持っているのは当たり前という感覚で、それを日本人は理解できていないのです。
「お金を持っているか持っていないか」「使いたいか使いたくないか」という軸で考えると日本人はお金を持っています。個人金融資産は世界一です。
ただしお金を使いたくないという考え方を持っていて、将来に対する不安からお金を使わないのです。
一方、中国人はお金を持っていて使いたがるのです。
今までの20年間でお金が増え続けてきたので、お金を使ってもどんどん増えるというメンタリティを持っていて、日本人はそこを想像できないのです。
お金を持っていてどうやって使っていいか分からない、だから私達が手伝ってあげましょうか、ということです。
私が言ったことは全て数値やロジカルシンキングに基づいていて、将来どうなるかの予測が出来ます。
例えば、2008年の北京オリンピックを経験しました。
当時はAirbnbがまだ無い時代でしたが、北京市が主催し、市民にラジオ、新聞やインターネットを通じて部屋を貸し出すよう宣伝し運営しました。それでも観光客が入りきらなかったのです。
今、東京都がそれをやってもキャパシティーオーバーになるくらい観光客が来ると思います。
オリンピックで訪日外国人観光客数のピークを迎えます。
ただし、北京オリンピックが終わっても外国人観光客数は消えたわけではなく、2009年は更に増えました。何故なら今まで中国や北京を知らなかった人が多いからです。
アメリカ人でもパスポートを持っている人は10%に達していません。
加藤 今回の米国大統領選挙で初めて知ったのですが、アメリカ人は自分の暮らす州から一生出ない人がとても多いそうです。
私たちは「アメリカ人はグローバル」というイメージを持っていますが、偏見ですね。
日本に一番多く来るのは外国人観光客は中国人ですが、日本は全然、中国のことを見ていないと思います。
先日、星野リゾートの星野社長に誘われて杭州で中国式民泊のカンファレンスに出席しました。
中国国内では、とても洗練されていてお洒落で、若い民宿経営者がクラウドファウンディングで資金を集めて、星野リゾートのようなリゾートホテルをどんどん立てています。
こういうことを日本の観光産業従事者は誰も知らないのではないか。もっと相手のこと知った方が良いと思いました。
董 日本は世界で見ても特殊な国で、日本での常識は意外と世界で通用しません。
世界の常識はアメリカと中国に似ています。陸続きの人の考えは日本人の考えと違っていたりします。その意味でも相手のことを知りデータを見て事実を知るべきです。
インバウンドビジネスはこれから10年、20年、30年先も消えないものだと確信しています。
(続)
続きは 「地方創生」は観光産業で実現したい(WAmazing加藤) をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸
【編集部コメント】
日本美食の董さんの話が熱かったです!改めて統計データなどをきちんと参照して議論することの重要性も感じました。(横井)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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