ママ向けメディア&コミュニティサービス「ママリ」を運営するConnehito大湯さんの、ママリで実践するファン創りをテーマにしたプレゼンテーションをぜひご覧ください。 プレゼンテーション動画も併せてご覧ください。
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登壇者情報 2016年3月24日開催 ICCカンファレンス TOKYO 2016 「カタパルト」(10分間のプレゼンテーション) (プレゼンター) 大湯 俊介 Connehito株式会社 代表取締役 1988年生まれ、慶應義塾大学卒。在学中にアメリカカリフォルニア州に留学し、宗教学を通じ現地の文化を学ぶ。留学中にワシントンDCで政府系ファン ドに勤務後、帰国後にコネヒト社を創業。現在は同社社長として、ITを活用し家族の生活をより良くする「ママリ」を開発・運営している。
大湯俊介氏(以下、大湯氏) Connehito株式会社の大湯と申します。
本日は「ファンを創るビジネス」というテーマにそって、私たちが運営するサービス「ママリ」の紹介と、ファンを創るために行っている取り組みを簡単にご紹介できればと思っています。
最初に、皆さんの中でお子さんいらっしゃる方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか?……結構多いですね。
(男性が多数を占める会場だったため)当然、出産した方はあまり多くはないと思うのですが、出産の時はすごく大変なこと、特に奥様には大変な時期があられたんじゃないかと思います。当時を思い出しながら話を聞いていただけたら嬉しいです。
まずこちらのスライドをご覧ください。生まれた直後の赤ちゃんの写真と、長文のコメントがならんでいます。
実はこちら、私たちが運営するアプリ「ママリQ」でのユーザーの投稿なんです。ママリQの「出産報告」というカテゴリでは、ユーザーが自身の出産体験を投稿することが当たり前になっています。
毎日、何十人以上のユーザーから「出産しました!」という出産報告ラッシュがアプリの中で起きているんです。
こんな投稿があるウェブサービスは中々多くないと思っており、ママリは特長の一つは熱量の高い「ファン」が多いことではないかと思っています。そんなママリについて、まずはサービスの概要をご説明します。
現在のママリは、大きく分けて3つのパーツから成り立つサービスになっています。
一つ目が、女性に向けた情報を提供するメディア「ママリ.JP」。二つ目は、妊娠・妊活・子育て中女性同士のQ&Aコミュニティ「ママリQ」。
最後が「ママリサポーターズ」。こちらは、全国のお母さんに向けて在宅でママリの記事を書いてもらう、クラウドソーシングの仕組みを作っています。
この3つのパーツが補完し合うことで、ママリのサービスとしての成長が生まれていると考えております。
おかげ様で、現在ママリ全体の月間閲覧数は1億回を超えました。会員数も右肩上がりで、2015年に出産予定日を迎える女性の10人に1人がママリQに、会員情報を登録してくれています。
本当にたくさんのお母様たちに使っていただいていて……ここにいる方々は直接のユーザーではないと思うのですが、もしかしたら奥様や奥様の友達の中には使って頂いている方も多いのではないかと思います。
現在、月に訪れてくださるユーザーの数が550万人以上。ママリQへのユーザーからの投稿数は、月間80万件以上にもなります。80万件という数字は、競合の約4倍で文字通り業界最大のコミュニティサービスです。
ユーザーからの投稿内容も様々で、妊娠・子育てに関する悩みはもちろん、家族の買い物に関する疑問などが多く交わされています。家族が生きていく中で、様々なシーンの疑問が投稿されており、ユーザーのサービスへの密着度の高さが特長です。
弊社ではそんなママリを通じ、女性の妊娠・出産のサポートはもちろんなのですが、出産を起点にした女性と家族の「人生観」や「消費行動」の変化についても今後はもっと深掘りできると考えています。
女性にとって出産は、人生の新たに考えなおす大きなタイミングの一つです。
具体的には、子供が産まれて、今まで考えてもいなかった保険を検討したりだとか、子どもが3才になって走り回るから、今まで2人で住んでたけどやっぱり子ども部屋が必要だよねとか。
本当に、人間には、自分が産まれた時と、自分が子どもを産んだ時、人生で2回リセットと「よーいどん」があるんじゃないかなと思います。
ママリは、それがすごく顕著に消費行動や投稿内容から見て取れる場になっています。実際にアンケートをとると、「ママリの口コミをきっかけに買う車を決めました!」、といっった大きな購入の意思決定をしている人がたくさんいたりします。
ママリをきっかけにユーザーが大きな決断をしてくれる、そんなところにママリというサービスの未来があるのではないかな、と思っています。
次に、今回のテーマである「ファン創り」について具体的にお話ししたいと思います。
ママリは、リリースからの約2年で業界最大規模のサービスになり、現在も成長を続けています。そんなママリをつくるため、私たちがサービス開始当初から「ファンを創る」という観点で大切にしていたことを3つご紹介します。
まず、1つ目は「感動している瞬間」を内外にシェアすることです。
具体例として、冒頭でお話した「出産報告」というカテゴリについてなのですが。赤ちゃんの画像や出産の報告がカテゴリに投稿されると、自動的に社内のチャットツールに通知がきて、社内にお知らせの音を流す取り組みをしています。
その音が流れる度に、社内のスタッフが、「ああ、今どこかでユーザーの子ども産まれたんだな」というのが分かるようにしているんです。すこし大げさに言えば、自分たちは「命を支える仕事をしている」ということを感じられる瞬間を可視化しています。
目の前の仕事が人の命の誕生を支えている、これはすごくエキサイティングなことで、少なくとも自分にとっては、モチベーションの源泉になっているなぁと感じます。
これは、社内に限ったことではなく外に向けても同様だと思っています。例えば、妊娠中でお腹が痛くて思うような生活ができず苦しんでるユーザーが、「出産報告カテゴリ」で子供を産んだばかりの幸せな声を見たとします。苦しんでいるユーザーは、少し先の幸せな未来を想像でき、今の辛さを乗り越えられる。
個人の感動がママリ内で共有されることで「ママリのみんなと一緒に頑張ろう」と思ってもらえる瞬間をつくる。このような感動の共有の積み重ねが「この場所にもう一度訪れたい」、「毎日見に来たい」と思ってもらえるような仕組みにつながっていると思います。
2つ目が「技術で声を拾う」ことです。
ネガティブな投稿もポジティブな投稿も、とにかく技術を使ってママリQに投稿された声を拾い続ける、ということをやっています。
たとえばママリQではユーザーの真剣度の高さゆえ、まれに赤ちゃんのおむつや肌のかぶれた画像など、人によっては見ることを避けたい画像が添付された悩みが投稿されることもあります。
私たちは、そういった投稿については技術の力を活用し、不快でない形で疑問が解決できるような仕組みを提供しています。
最後、3つ目が「ユーザーの側にいる」ことです。
実はこれが、すごく大事なことだと思っています。特にこの領域(女性向け、妊娠・子育て領域)というのは、WEBサービスをつくる側の人たちとは、普通にしていたら縁遠い世界かと思います。今日来ていただいてる方の中にも、女性はすごく少ないですし、一見するとバリバリ仕事をしている男性が興味を持ちづらい領域に思えるかもしれません。
コネヒトでは現在13人がフルタイムで働いていますが、内10人は男性。そのうち半数はエンジニアです。ただPCの画面に向かうだけでは、気持ちを想像することが難しい相手に向けたサービスだからこそ、「ユーザーを身近に感じる仕組み」を多く取り入れています。
こちらが、弊社の社内の様子です。現在全部で40人ほどスタッフが在籍していますが、そのうち約7割は子どもがいるお母さんです。
彼女たちのメインの業務は編集・ライターですが、開発を行う上でもフィードバックをもらう仕組みをつくっています。当事者であるママスタッフが、私たち(=ユーザー)にとって必要な情報はなにか?その機能は本当に私たちにとって使いやすいか?エンジニアに対して、感想や意見を伝えながらサービスを作っていく、ということをやっています。
すごく地味なんですけども、このようなもの作りをを一歩一歩続けていくことが、ユーザーの側に立ったサービス作りにつながります。
この3つの取り組み【1.感動をシェアすること】、【2.技術で声を拾うこと】、【3.ユーザーの側にいる】ということを常に意識し、自分たちのサービスが正しい方向に向かっているのか点検を重ねることで、ママリというサービスはじわじわと広がってきたのではないかと思っています。
このような積み重ねがあった上で、最近はビジネスの面でも広がりが増えてきていると感じています。
先日ユーザーに向けてとったアンケートで、興味深い結果があるので共有させていただきます。消費に関する項目で「ママリのコメントや情報を参考に買い物をしたことがあるか」質問をしたんです。その回答結果が、私たちとしてもちょっと驚きだったのですが、90%以上の方が「ママリを参考にして物を買ったことがある」と回答されたんです。
運営している身としてはすごく嬉しい結果ですし、責任がある場を作っているということを強く感じる結果でした。同時に感じたのが、やはりユーザーであるお母さんたちは「横を見て意思決定をする」ということです。
「隣にいる、同じぐらいの月齢の子どもがいるお母さんは何を買ってのるかな?」とか、「みんなはどのタイミングで家を買って、どのくらいの間取りに住んでるんだろう?」、「どんな保険に契約してるんだろう?」などです。
ユーザーであるママさんの大半は、ITに特別強いわけでも、情報収集能力が極端に高いわけでもない「普通の人たち」です。ものを買うときはパンフレットを見て一人で収集するよりも、自分と同じような境遇の人に感情移入をして、その人たちがどういう消費をしてるのかを確認しながら、実際に自分と自分の家族の消費行動を決めていく。
それも「検索」ではなくて、顔の見えないママ友との言葉のやり取りの中で、納得して購買を決めていくという動きが私たちのサービスの中で頻繁に起こっている。
このような「コミュニケーションによる消費」の場を提供できているという意味で、ママリはユーザーに対してすごくいい役割が果たせているのではないかと思っています。
これはユーザーにとってだけではなく、ビジネスサイドのクライアントの方々からも大きな反響をいただいていて、非常に多くのお取り組みをさせていただいています。
具体的には、新しい商品がでる際の周知や、「ママたちが本当に求めていることはなんなのか?」といった調査をするキャンペーンを企画させていただくことが多いです。クライアントとのタイアップで行ったキャンペーンに対しても、ママリのユーザーはポジティブに長文のアドバイスを投稿してくれます。以前行ったキャンペーンでは100枚以上の子どもの写真が寄せられたこともあります。ママリという場所への熱量と信頼があってこその反応だと思います。
このような密なコミュニケーションをとることができる場所は、現状のWEBサービスの中にはほとんどないのではないかと思います。だからこそ、ユーザーさんがそれを気持ち良く使い、ママリを日常の中の一部としてクライアントのキャンペーンに対しても積極的に投稿してくれる。
まず、ママリというユーザーにとって「自分ごとの場所」をつくることで、クライアントにもユーザーにも、満足していただける広告を届けることができているのではないかと思っています。
最後に、今後私たちが目指す未来についてお話します。
ママリを始めた当初「どうして、”妊娠・出産領域のメディア”をやるの?」と聞かれることが多くありました。たしかにウェブサービスを運営する、特に男性にとって、妊娠・出産領域は自分ごとではないスモールな世界に思えるかもしれません。
しかし私はママリの本質は、「家族の消費を動かす情報」の提供だと考えています。
事業を運営する中で確信しているのが、妊娠・出産、家族が増えるタイミングは大きな消費が生まれる時期だということです。
「保険」「車」「住宅」……。大きな買い物を目前に控える家族の「意思決定主体」の購買を大きく変える場を創造する、しかもスマートフォンの中で。これほどエキサイティングな仕事は滅多にないのではないかと思います。
もちろん消費の世界だけではなく、社会的にも日本の未来に対して私たちは大きな役割を果たすことができる考えています。
少子化が進み人が減っていく世の中で、ママリを通じて新しい命が産まれる前後のママの悩みを解消し、ケアすること。出産報告カテゴリの中で、別のユーザーの命が誕生する瞬間の喜びの声を横で目にする状態を当たり前につくることで、2人目3人目をポジティブに考える機会を生み出すことができるのはないかと思います。
身体に異変が生じ、自分の身体が自分だけの命でなくなる。ある意味「妊娠・出産」は人間が人生の中で一番「困っている瞬間」の一つです。
ママリには将来的にこの国の人口を増やすことができるポテンシャルがあると思いますし、そんな日本を変える領域に今自分たちはタッチできているのだと考えています。
ユーザーが安心して自分の未来を選択することができる世界を創るために。
まずは、日本の家族にとってママリをなくてはならない存在まで成長させていきたいと思います。
本日はありがとうございました。
(終)
プレゼンテーション終了後は第一線で活躍する経営者やベンチャーキャピタリストの方々と積極的な質疑応答が行われました。
(コメンテーター 一覧) 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 パートナー 河野 純一郎 氏 株式会社エニグモ 代表取締役 須田 将啓 氏 株式会社オプトホールディング 代表取締役社長CEO 鉢嶺 登 氏 株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 CEO 吉田 浩一郎 氏 グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー/Chief Strategy Officer 高宮 慎一 氏 株式会社クラシコム 代表取締役 青木 耕平 氏 株式会社ネクスト 代表取締役社長 井上 高志 氏 株式会社フリークアウト 取締役 COO 佐藤 裕介 氏 株式会社Bloom&Co. 代表取締役 彌野 泰弘 氏
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編集チーム:小林 雅/城山 ゆかり
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