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BuzzFeed Japan(バズフィード・ジャパン) 創刊編集長の古田さん、「DELISH KITCHEN」などの動画メディアを運営するエブリー吉田さん、メルカリの創業期の投資を担当したユナイテッド手嶋さんをお招きし、「今後のメディアは一体どうなるか?」をテーマに議論しました。
(その2/最終)は、分散型メディアを運営する事業者から見えるメディア競争戦略やビジネスモデルの可能性など、メディアの未来に関して真剣に議論しました。長文ではございますが、是非最後までご覧頂ければ幸いです。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016
Session 3
「今後のメディアは一体どうなるか?」
(スピーカー)
手嶋 浩己 ユナイテッド株式会社 取締役
古田 大輔 BuzzFeed Japan(バズフィード・ジャパン) 創刊編集長
吉田 大成 株式会社エブリー 代表取締役
(モデレーター)
小林 雅 ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
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▶前の記事はこちらをご覧ください:BuzzFeed古田氏とエブリー吉田氏が語る分散型メディアの快進撃
料理の動画メディアは急成長分野
小林 後半も早速議論に移りたいと思います。9月6-7日にICCカンファレンス KYOTO 2016を開催します。今回のパネルディスカッションの続編企画もございますので是非ご期待ください。
手嶋 BuzzFeedさんは、BuzzFeedさん自体が、総合的なメディアなので、少し立ち位置が違うと思いますが、料理以外のカテゴリーメディアはやっていますか?
古田 色々やっていますね。海外ですと、美容やコスメでしたら、Top Knot(トップノット)というTasty(テイスティー)と同じようにカテゴリーを完全に分けた動画をやっていますし、他にも動画でしたら、名前が日本ですと重複しますが、Nifty(ニフティー)というDIYのカテゴリーがあります。これを日本に持って来るときにどうやろうかというのを、みんなで議論しています。
手嶋 今、吉田さんがインスパイアされていますけど、大丈夫ですか?(笑)。3日後くらいにDIYのカテゴリーが出来るかもしれません。
(会場笑)
吉田 Niftyが出る前に、ママ向けでDIYはやっているんですよ。
手嶋 逆にインスパイアしたかもしれないですね。
吉田 もしかしたら…(笑)。
(会場笑)
古田 Niftyを作ったハリウッドの人間に、真似ただろうと言っておきます(笑)。
手嶋 話を戻しますと、色んなカテゴリーをやられていますね。
その中でも、やっぱり1番上手くいったのは、料理ということなんですね。
古田 そうですね。成長スピードは圧倒的に違いましたね。
小林 これは、グローバルにおいてもそうですか?料理が分かりやすいから、ということなのでしょうか?
古田 Tastyはアメリカ版の次に、イギリス版も出て、それ以外にもブラジル、ドイツ、フランス版も出ていますが、どこでもすごい勢いで成長していますね。
手嶋 吉田さん、BuzzFeedさんが、今後Tastyも日本で展開されると思うのですが、そこはどう考えていますか?余裕でしょうか?
参考:このセッションは2016年6月25日に行われました。2016年6月29日にTasty Japanがスタートしました。
吉田 余裕は全然ないです。来たらどうしようと思って怖いです(笑)。
古田 日本ではもう大先輩で、巨人になっていらっしゃるので、色々勉強させてもらおうと思っています。
分散型メディアの競争戦略
手嶋 ただ、競争戦略で言うと、分散型メディアは参入障壁が低くて、手軽に始められますよね。
それこそ、エブリーの成功を見て、分散型メディアを始めたスタートアップが日本に100社ほどある気がします。今、100万いいね!まで来たところですが、ずっとこの競争優位性は維持できるものですか?
要するに、先行者メリットはどのくらいあるものでしょうか?
吉田 そうですね。先行者メリットがあるかと言われると、逆に明確なものはないかもしれないと思っています。
マーケティングであったり、配信する手法であったりもあくまでツールですし、同じような料理ジャンルのメディアも出てくると思っています。
その中で、届けているコンテンツに、ファンがついてくるということがあるので、コンテンツのセグメントがもしかしたら細分化される可能性があると思っています。
昔のファッション誌のように、当初は1個のファッション誌しかなかったのが、すごくセグメントが細分化されていったということが、起こり得ると思っています。
手嶋 いいね!数で先行者メリットが築けるというよりかは、コンテンツ制作のノウハウとブランドがストックされて来るものということでしょうか。
吉田 そうですね。
小林 BuzzFeedはここまでグローバルで伸びた大きな要因は何でしょうか?
先ほどおっしゃった、シェアされやすいというのはもちろんあると思いますが、何がここまで成長をドライブさせたのでしょうか?
古田 いくつか要因があると思うのですが、3つ挙げるとしたら、1つはテクノロジーです。
ジョナ・ペレッティは、BuzzFeedはテクノロジーカンパニーだと言っているのですが、エンジニアを社内に入れることによって、あらゆるツールを開発しています。
コンテンツを作るためのCMS(Content Management System)など、とても使いやすく出来ています。
それによって、ストレスなく、ライターやレポーターたちが記事を制作することが出来ます。しかも、それがどのように読まれたかというデータを収集出来る。
それを見ることによって、「読者は、この部分で読むのを止めた。ということは、この書き方を改めた方がいい」など、日々学ぶことが出来ます。ブラッシュアップしていくことが出来るので、テクノロジーという点は大きい要因です。
2つ目は、戦略です。我々は、元々シェアされるということはどういうことなのか、というのをひたすら考えてきたメディアでした。
その中で、Facebookが出て来て、シェアの主戦場になったら、どんどんFacebookに出て行って、Twitterが出てきたらTwitterに出て行くということをやっていて、ある時に気づいたんですね。
コンテンツをそれぞれのプラットフォームに最適化させた方がいい、と。戦略を変化させて、ディストリビューションでどんどん外に出して行こうという方針になりました。
BuzzFeedは、編集と経営の分離という社内ルールがあって、僕はビジネスに全く携わりません。なので、一般的なことしか言えないのですが、僕がBuzzFeedに入るときに、優れているなと思ったのは、ディストリビューションをしてもちゃんとお金が稼げるというビジネス戦略を打ち立てたところですね。
そこで、黒字化を果たしながら、ちゃんと外に展開することができたということです。
あと3つ目は、理念がすごく大切だと思うんですよね。チームとして、何を核としながら事業を進めていくのかというときに、ジョナ・ペレッティがポジティブインパクトというのを打ち出しました。
我々は、調査報道もやっています。世の中の悪を暴くということをやるわけです。例えば、アメリカ軍がアフガニスタンにいっぱい学校を建てて、現地の教育を立て直したと発表しているけれども、現地のアフガニスタンに行ったら、10億ドルをかけて建てたという何十もの学校が廃墟になっていたというのを記者が暴きます。
そういったことは、お金がかかります。それでお金を稼げるかというと、全然稼げません。
でも、私たちは、それをやらないといけないと思っている。なぜなら、世の中にポジティブなインパクトをもたらすためです。
そういうデータだけに引きずられない理念。3つが揃っていたのでないかと思います。
デジタル・メディアと新聞社の違い
小林 比較したらいけないと思うのですが、古田さんは旧来型の新聞社にもいらっしゃったと思いますが、何が1番違いますか?
働く環境がまず全く違うと思いますが。
古田 全く違いますよね。僕は朝日新聞に13年いて、入社して最初は、普通の新聞紙の記者で、京都にいたのですが、警察官を取材して事件を書いたり、災害の記事を書いたりしていました。
その後は国際報道部に配属されて、タイで海外特派員として働いていて、シンガポールで支局長をしていました。
その後、デジタルがやりたくて、デジタル編集部に所属して、朝日新聞デジタルの仕事をしていました。
何が違うかと言うと、まず1つは、データをメンバーに対して、オープンに開示しているところが全く違うと思います。
新聞社で働くと、紙がメインです。でも、紙は何がどう読まれたかというデータがとれません。なので、記事を書いた人は、この記事は読まれたかどうかを想像することしか出来ません。
でも、デジタルの世界であれば、自分の記事がどのように読まれたか、どのようにシェアされたか、どのようにコメントされたかも全て分かるわけですよね。
なので、それを元にして、よりよくブラッシュアップしていくことが出来ます。人々の興味関心と常に向き合うことが出来るというところがすごく大きかったと思います。
小林 いま、とても楽しいということですよね。
古田 それはもうとても楽しいですけど、同時にきついですね(笑)。
小林 昔は分からなかったけど、今は数字として見えるということですよね。
古田 新聞は宅配制度があるので、ゼロ部数ということはあり得ないのですが、インターネットの世界は毎朝毎朝、起きたらゼロから始まります。
Yahoo!を始めたジェリー・ヤン氏も、「創業時は毎日吐きそうだった」ということを言っていたそうです。僕も毎朝吐きそうです(笑)。
小林 吉田さんはどうですか?数字が見えますよね。そういうのを見ながら対応するのは、強みになると先ほどおっしゃっていたと思うのですが。
吉田 それは、やっぱり大きいと思いますね。
僕らも同じような形で、何が1番共感を得たのか、シェアされたのか、コメントがどう付いたのかというところまでを一応全部見ながら、次の企画を考えていくので、そういうデータの蓄積はあります。
ただ、それですと、同じような記事ばっかりになってしまうことがあるので、常に新しいことに対して、どんどんチャレンジをするということをやっています。
先ほど古田さんが言われた通りなのですが、理念はすごく大事だと思っています。
例えば、僕らがやっている料理、ファッションなどもそうですが、基本的に見なくても生きていけるものなんですよね。
でも、見ることで少しでも普段の生活やご家庭が、便利になったり、色鮮やかになったりすることによって、これを見て良かったと思ってもらえます。
なので、僕らの場合は、バズればいい、1コンテンツだけでも1,000万回いけばいいということはやっていなくて、日々のコンテンツが、平均すると同じくらいの見られ方をするものに、意図的に厳選しているところがありますね。
データに振り回されるな
古田 今、吉田さんがおっしゃっていた、データをすごく見るけれども、新しいことにもチャレンジするというのは、BuzzFeedも全く同じです。データをチェックするのはすごく大切だけど、データに振り回されて、データドリブンになってはダメだということですね。
必ず、まずライターやレポーターが何をやりたいかを大切にして、それがこれまでのデータとは違うものであっても、それをやってみて失敗したら、失敗のデータがとれると受けとめる。
もし、昨日のデータだけに基づいて、新しいことをしようとすると、だんだん縮小再生産になってしまうんですよね。
なので、よく出来たよく出来たと思っていても、本当は遠いところに正解があるかもしれない中で、見えている狭い範囲で勝負をしている可能性があります。
それでは仕方ないので、データをちゃんとチェックして、少しずつ改善すると同時に、新しいチャレンジも色んなところでやり続けるというのが大切だと思っています。
手嶋 DELISH KITCHENの中で、動画をコンスタントに見られるようにするというのは、具体的にどういうことなのかなと考えていました。
DELISH KITCHENにいいね!を押しておくと、受け身でコンテンツが流れてきて、勝手に再生されることもありますし、それが見られないこともありますよね。見られる回数は、具体的にどうしたら増えるものなのですか?
継続してファンを積み上げる
吉田 ページ自体にいいね!を押していても、Facebookのロジック上、必ずしも動画が流れてくるということはないです。
動画を配信して、ある一定数、アルゴリズム上でリーチされて、その中でもエンゲージメントがいいと、次にリーチするという形です。
あまり良質ではない受けが良くないコンテンツに対しては、あまりリーチさせないというようなアルゴリズムがかかっています。だからこそ、Facebookのタイムラインが綺麗に見えるようになっています。
DELISH KITCHENのコンセプトは、「翌日にすぐ使えるレシピ」というのをすごく大切にしていて、料理がそんなに得意ではない方でも、絶対に失敗しないような、レシピの中身も全てこだわってやっています。
そうすると、DELISH KITCHENをフォローしていて、フォローした時に期待していたコンテンツが配信されて来れば、いいね!をしてくれますよね。
目指しているメディアに対して、コンテンツの軸をぶらさないことが、安定して動画が再生される結果に繋がるのではないかと思っています。
手嶋 Facebookのロジックも、そういった良いコンテンツを、継続して作るロジックになっているということですか?
吉田 そうだと思います。ファンとして付いて下さっている方に対して、ちゃんと安定してコンテンツが届けられているかが重要視されている気がします。
実際に、メディアを作っていく上では、そこが1番大事だと思うんですよね。
例えば、雑誌を見ていて、何でもいいから面白いからいいかということで、すごくかっこいい雑誌なのに、いきなりグラビアが入りましたとなると、一瞬は受けるかもしれませんが、それ以降継続して買ってもらえるかというと疑問ですよね。
なので、どちらかというと、継続してファンを積み上げていく、日々見てもらうということを僕らは大事にしています。
小林 先ほどFacebookのお話がありましたが、メディア企業は、コンテンツプロバイダーとして、プラットフォームへの依存という課題がありますよね。
記事を呼んでいると「Facebookの仕組みが少し変わっただけで、20%数値が減りました」というようなのを見るのですが、振り回されますよね。Googleのアルゴリズムもそうだと思います。
それに対しての向き合い方をどう考えていらっしゃるのかを伺いたいです。
プラットフォームとの向き合い方
古田 それは、よく聞かれます。昨日もドイツのメディアから、インタビューを受けて聞かれた質問の1つが、「ホームレスメディアをどう思う?」というものでした。
小林 分散型ではなくて、ホームレスと呼ぶのですね。
古田 ホームがなくて、不安ではないのか?と言われたので、僕が答えたのは、「我々BuzzFeedは、ホームレスメディアだと思っていません。家がいっぱいあるメディアだと思っている」という答えです。
まず、母屋として、自分たちのサイトはちゃんと持っていますし、アプリも持っています。それ以外にも、Facebookなどの家があって、あらゆるプラットフォームで活動出来るようにしているということですね。
1つのプラットフォームが大きなアルゴリズム変更があって、僕らのコンテンツが読まれなくなるという危険性はたしかにあるわけですよね。
でも、僕らはプラットフォームという家がたくさんあるので、その1つのプラットフォームによって壊滅的な打撃を受けることはありません。
しかも、あらゆるプラットフォームでの経験を蓄積することが出来ていれば、また新しいプラットフォームが出来たときに、そのプラットフォームの特性を理解して、新しいチャレンジがまた出来ると考えています。
手嶋 本当の意味での分散型メディアの場合は、古田さんのロジックでなるほどということで、理解できました。本国のBuzzFeedは、そういう感じで成り立っているんですね。
一方、エブリーさんは、日本の分散型メディアを1年前には概念として定着していない中で、切り開かれてきました。とはいえ、事実上ほぼFacebookとInstagramというfacebookグループメディアで、ほぼ動画の再生数を稼いでるという面で言うと、依存度がどんどん深まっているリスクはあると思っています。
要するに、日本においてはうまく分散出来ていないという課題があるのではないかと思っているのですが、何か対策を打たれているのでしょうか?
吉田 リスク分散のための分散というよりかは、ユーザーがいるところに届けようとしてしまうので、やっぱり利用時間が多いアプリに対しては、注力せざるを得ない傾向はどうしてもあると思います。
ただ、時代時代によって、1番メインで使われるアプリが変わってくると思います。
僕らも、決して自社のアプリを作らないという方針ではなくて、本当に少人数で始めたばかりだったので、強みとして、自分たちが持っているコンテンツ力を守るために、わざと作らなかったというところがあります。
なので、いつかは自社のアプリを作って、誘導をかけることがあるかもしれないですけど、現在はあんまりリスクを分けるという観点では考えていないですね。
ニュースのキュレーションアプリや、メッセンジャー系のアプリがありますが、各社メディアや動画にどう取り組もうということで、少しずつテストし始めているタイミングだと思うんですよね。
必ず、コンテンツは求められると思うので、そのタイミングまでちゃんとしたコンテンツがあれば、先ほどのリスク分散ということが出来るのではないかんという気がしています。
手嶋 BuzzFeedも、Facebookで見る人と同時に、BuzzFeedのアプリを通して見る人もかなり増えているのでしょうか。
古田 それはかなりの数がありますね。バランスが良いです。
最近で言うと、Snapchatからとても見られています。日本では、ちょうど今爆発しているところですね。なので、Facebook依存がとても高いかというと、実はそういうことでもありません。
手嶋 日本で言うと、FacebookとInstagarm以外では、どのプラットフォームのボリュームが増えそうだなという印象がありますか?
吉田 Snapchatが来るかなと思ったのですが、SNOWが来てしまっていますね。
日本の方だとちゃんとニュースアプリを入れている方がいますし、LINEを中心としたメッセンジャーかなと思います。
手嶋 LINEがウェブサービスへプラットフォームを解放しましたが、あれはロジックでいくと入れることは出来るのでしょうか?
吉田 僕らも入っていきたいと思っています。
まだ、今までのウェブメディアに比べると、1日のコンテンツの提供本数が量産出来なかったので、難しいというところはあるのですが。
動画メディアを上手くアプリに入れることによって、アプリの滞在時間を長くしていきたいという思いはあると思っているので、そのタイミングが合えば、僕らとしては提供していきたいと思ってはいます。
今後のメディアは一体どうなるのか?
小林 セッションのタイトルにもなっていますが、今後のメディアは一体どうなっていくのか?という質問をしたいと思います。
難しいと思うのですが、私見でもいいので、どのようにメディア業界が進化していくのかについての考えを伺いたいです。
古田 この質問もよく受けます。昨日のドイツのインタビューにもありましたし、その前の日は、グーグルのイベントでも同じ質問を受けました。
グーグルで、アジア・パシフィックの編集長が集まる会議があって、その時にニュージランドの人から受けた質問がまさにそれでした。
質問の特に中心点になったのが、動画についてでした。テキストは死ぬのか?というのが、世界的にメディア業界では、話題になっています。
動画だけになるのではないか、Facebookも将来は動画だけになるのではないか、と言われています。
僕は、動画によってテキストが死ぬことはないと思っています。
動画はこれから更に伸びていくし、VRも素晴らしい技術だと思いますが、それによってテキストが死ぬことはないと思っています。
なぜかというと、僕は13年間、文字を中心として戦って来ましたけれども、動画で伝えやすい情報もあれば、動画では伝えづらく、テキストでしか伝えられない情報もあるんですよね。
そういったものを伝えるときは、やっぱりテキストだと思っています。
僕が、すごく好きなコンテンツ、VICEという動画メディアがあります。
あそこは、実は動画だけではなくて、テキストのコンテンツも出していますが、Prince(プリンス)が死んだ日に、VICEが出したコンテンツが素晴らしかった。、Princeがマイクの前で片手を挙げている写真に、1言だけ「Fuck.」と書かれているんですよ。
そのライターにとって、Princeが死んだことがあまりにもショックすぎて、思わず、1言「Fuck.」とだけ書いて流したら、それがシェアされた。
Princeが死んだときに、世界中の音楽ファンが感じた気持ちをこれだけ見事に表現しているコンテンツはないなと思って、それを1分間の動画にされるより、この1言添えられた写真の方が伝わるなと思いました。
なので、あらゆる言葉の表現技法というのは、今後も進化し続けるし、死ぬことはないと思っています。
小林 吉田さんはどうですか?逆に、動画だけではなくて、テキストもやるとか…もう動画にテキストは付いていますね。
手嶋 推測すると、吉田さんはテキストのことは知ったこっちゃないという立場ですよね(笑)。
(会場笑)
古田 テキストを殺そうとしている立場ですよね(笑)。
吉田 テキストもやりたいのですが、人数がいないので、なかなか出来ないだけですね。
でも、実は、DELISH KITCHENでも、こっそり通常のテキストの記事投稿もやっています。それもすごく見られます。
なので、必ず、情報に最適な形があると思っているので、どちらかということではないのですが、僕らが今のフェーズで特化していくかと言われたら、動画ですし、出来れば動画だけであってほしいなという風に、僕自身は思っています。
手嶋 DELISH KITCHEN独自のアプリが出来たら、テキストコンテンツがあってもおかしくないですね。
吉田 そうですね。
小林 手嶋さんは、メルカリなど投資されていると思いますが、分散型メディアや動画メディアの市場はどう見られていますでしょうか? また、注目されている分野は?
手嶋 先ほど吉田さんに、どうやって競争優位を築くのか?と聞いたのは、まさしくその辺りの興味ですね。メルカリに投資したときは、リリースして1週間後くらいに、創業者の山田進太郎さんに会って、「よしやりましょう!」ということで決めました。
1位になる、先行して大勝ちした場合にすごいことになると分かっていて、要するにフリマというのは1社しか勝たないモデルなんですよね。ネットワーク効果がすごく強いので、1社か2社目までしか勝てないと思っていて、もうやり切るしかないということで、一気に広告費も最初から組んでやりました。
なので、フリマは先行者優位がとても高いビジネスモデルなので、ベンチャーキャピタルとしても勝てば旨味がある、負ければ大負けします。
分散型メディアで、BuzzFeedさんは大勝ちしていますが、吉田さんの中で色々なシナリオが描かれているとは思うのですが、大勝ちしたときのイメージはどのようなものですか?
垂直統合の事業展開
吉田 まず、僕が考えているのは、色々な会社が出てくるだろうというのは、もちろん思ってはいます。
テレビであれば放送局数も決まっていますし、24時間という枠があって、競合というと裏番組しかないような中で、インターネットメディアは枠の上限がないので、最初から他社が来るのを前提で、どうするか?というのをすごく大事にしています。
なので、僕らは、エブリーという名前ではメディアをやっていません。最初からジャンルごとに名前を付けてしまって、それぞれが進化していけばいいなと思っています。
今後どうなるかという話ですが、僕らのビジネスモデルとしては、伝えるだけ配信するだけのメディアではなくて、自社のアプリでコンテンツの月額の課金をすることや月額のECといったものを組み合わせていくことをやっていこうかと思っています。
最終的にどうなるかと言うと、メディアもあって、コンテンツ課金もあって、購入まで出来るという垂直統合されるイメージを持っています。
手嶋 クックパッド型でしょうか?
吉田 例えば、セブン・イレブンは元々リアル店舗しかないところから、オムニチャネルで、通販などもやられていますよね。また、自社のオウンドメディアも各企業でされ始めていると思います。
実際販売をする各企業が、オウンドメディアが強くなればなるほど、他のメディアに出稿する目的がなくなりますよね。
そういうことが起こり得ると思っていて、メディアから認知してもらうだけではなくて、メディアから最後の購買までを各社が垂直にやってしまう気がしています。
メディアとしてどうするべきかと言うと、横に広げていくのではなくて、縦に深掘るということをやっていかないとダメだなという気がしています。
手嶋 大勝ちしたときには、色々なジャンルでそれが出来ているということですか?
吉田 そうですね。クックパッドさんのように垂直にやるパターンもありますし、化粧品のジャンルで縦に深掘ることもあると思います。
手嶋 とんでもないことになりますね。クックパッドだけでも1千数百億円の時価総額なので、それを色々なジャンルでやるとおっしゃっているので。
小林 でも、ヤフーさんなんかもそうですよね。
2016年3月24日開催したICCカンファレンス TOKYO 2016の「新しい成長分野を創る経営とは何か」というセッションでヤフーの川邊さん(川邊 健太郎 ヤフー株式会社 副社長執行役員 最高執行責任者)が以下の発言をしておりました。
iPhone登場以降は、ポータルサイト自体は、要するにスマホのトップページになりつつある訳ですから、横展開というよりは縦です。
先程(グリーの)田中さんが仰った、オリックスでいうところの、一列をダダダダダと変えていくというのは、事業の持って行き方としてはそちらの方にかなりシフトしていますね。
だから、「Yahoo!ファイナンス」が強いのだったら、じゃあクレジットカードもやろう、銀行もやろう、FXもやろうというような感じで、縦ですね。
eコマースもモール型をやったら、アスクルさんと一緒にAmazon型もやって、それも決済もきちんとやって、という風に。いわゆる大きな事業体の王道のやり方になりつつあるかなと思います。
金融の会社を買収するとか、ある程度大きな分野で垂直統合していくという考え方ですね。やっぱりそういう流れですよね。スマホの画面は限られているから、そういう風になっていく必然性があるのかなと思います。
手嶋 ビジネスの話なので、古田さんが話せない領域かもしれないんですけど、広告ビジネス以外で、吉田さんが言っていたような課金やEコマースはBuzzFeedさんはやっているのでしょうか?
古田 一般論的にしか言えないのですが、うちの社の収入は、ほぼ全てネイティブアド、コンテンツマーケティングで稼いでいます。
あまり課金という話は聞いたことがないし、より多くの人にコンテンツを届けたいので、少なくとも現時点ではうちには、あまり向いていないのかなと思っています。
小林 どちらかと言うと、グローバルにメディア企業として巨大化していくということですね。
手嶋 グローバルに水平展開していくということですよね。
小林 先ほどエンジニアが200人いるとおっしゃっていましたが、テクノロジーに強みがあって、それをフル活用するという視点では、マーケットを広くしていくというのは妥当かなと思います。
逆に、吉田さんは、基本的に日本のマーケットで、楽天みたいにコングロマリット化していくというのは自然な流れかなと思いますね。
手嶋 ある種、ジャパニーズモデルが出来るかもしれないということですよね。
吉田 そうですね。日本だからこそ、出来るものがある気がしています。
手嶋 1年後くらいになると、MERY(メリー)などのキュレーションメディアとも、競合し合うような市場環境になっていきそうですね。
吉田 そう思います。その中で、どのジャンルをとっておくかがすごく大事だと思っていますね。
人間の習熟コストを下げるツールの重要性
手嶋 吉田さん自身はエンジニア出身ですが、創業するときにエンジニアがゼロで始めたというのは、分散型メディアらしいですが、今はどうですか?
吉田 最近はエンジニアも一緒に働いています。
手嶋 BuzzFeedさんのような強みを持たないといけないと思っているのでしょうか?
吉田 エンジニアによって、データの分析や入稿のための下地をどれだけ作れるかというところもありますが、BuzzFeedさんと似ていると思うのは、やっぱりコンテンツを創るのは人なんですよね。
人の習熟コストをどれだけツールでカバー出来るかが、大事だと思っています。
今まで、動画のメディアをネットで配信された方は人材としていないんですよね。なので、映像制作された方がネットに来るか、ウェブメディアをやっていた方が映像を覚えるかのどちらかしかない中で、彼らが習熟するコストを、どれだけツールで下げてあげられるかがすごく大事だと思っています。そこが1番力を入れていくところですね。
手嶋 小林さんの元々の質問(注目分野)に戻ると、ベンチャー投資の観点で、メディアビジネスを捉えると、いわゆるキュレーションメディアはテーマとして終わっています。
逆に、僕らの立ち位置では、M&Aの案件として入ってくることがあります。
小林 伸び悩んでいるということですね。
手嶋 そういうフェーズかなと思います。売りどきということかもしれないですね。都度判断していきます。
吉田さんみたいなところは、何社かが大型の資金調達をされているので、今旬のテーマかと思います。
もう1つ、LINE LIVEなど(ライブ配信サービス)向けに、動画を作っている会社の資金調達が増えています。
ああいった動画会社は、吉田さんはどのように捉えているのでしょうか?LINEやAbemaTV向けに動画を作るという会社が何社か出ていますよね。ああいう会社と、吉田さんのやろうとしていることは別物でしょうか。
吉田 同じといえば、同じ気がしますね。
手嶋 その辺りもクロスオーバーしているということですよね。
吉田 僕らもそういったライブは試したりしていますし、長尺のコンテンツにも試したりしています。
結局何を伝えたいかによって、全部やり方を変えればいいだけだと思っています。
先ほどの古田さんのテキストは死なないという話でもありましたが、文字と動画という伝え方の違いもありますし、動画も短いか長いかといった違いは、何を伝えたいか、どこで伝えたいかによって変えてしまえばいいと思っています。
なので、そこはあんまり僕らとしてこだわりはないですね。
旧来型のメディアから人材の移動は起こるのか?
手嶋 古田さんは、新聞社からインターネットメディアの世界に来られましたよね。
メディアのビジネスの未来という話で言うと、人材が旧来型のメディアから、インターネットメディアの業界に流れ込んで来るかと思うのですが、動画分野もそうですか?
いわゆるテレビを作っていた人が、吉田さんの会社に入ってくるということもあるのでしょうか?
吉田 あると思います。
小林 実際にもういるんですか?
吉田 まだ、いないです。でも、応募は頂いています。
古田 動画チームを日本で立ち上げようとしたときに、最初にハリウッドにある動画制作のスタジオに研修に行ったんですよね。
モーションピクチャーズのチームの人たちに、「人材はどうやって集めているの?テレビ業界から来るの?」と聞いたら、「テレビからはほとんどない」と答えていました。
モーションピクチャーズの現場を見ると、みんなすごく若かったんですよね。20代の人がほとんどで、バックグラウンドを聞いたら、アメリカは大学の教育の段階で、ウェブ動画に慣れ親しんでいるんですよね。
ウェブ動画は、テレビとやっぱり少し文脈が違うところがありますし、すごくコンパクト化された機材で撮影します。テレビ業界から人材が多く流れ込んでくるというのは、もしかしたら違うかもれないと思います。
吉田 テレビ局に入って1年くらい経って、これ違うかもと思った方などが来るかもしれないとは思っています。
やっぱりスピード感が全く異なりますね。僕らの会社も、メインでコンテンツを作っている人は27、28歳で、更にメンバーとして、大学2年生や3年生が30人くらいいて、編集をやってもらっています。
びっくりしたのが、皆さん動画の編集経験があるんですよね。動画の会社をやっているから、ということももちろんありますが、僕が20歳くらいのときは、写メールが出てきて、写真を送り合っていました。そのくらいの感覚で、今の若い子たちは、簡単に動画を編集加工して、送り合っているんですよね。
動画は編集出来て当たり前というような認識で、これはすごいと思っています。
僕らの世代のウェブサービスのディレクターですと、イラストレーターやフォトショップを使わないとダメで、その上の世代に行くと、マイクロソフトのオフィスが使えないとダメという感覚があると思いますが、若い世代はそもそも動画編集出来て当たり前、という状況になっています。
その人たちが率先してコンテンツを作って、多くの人が見るというような状態になるのかなという気がしています。
小林 残り15分になったので、質疑応答に移りたいと思います。
どなたか質問したい方はいらっしゃいますでしょうか?
手嶋 小林さん、そちらに座っている女性が、DELISH KITCHENのプロデューサーの方なのですが、BuzzFeedさんに質問したそうな顔をしています。(そんな顔はしていなかったような・・・・)
(会場笑)
小林 先ほどもプレゼンテーションの中で動画の声で登場されましたよね。何かご意見、ご質問ありますか?
質問者1 エブリーの菅原と申します。DELISH KITCHENの責任者をやらせて頂いております。質問は特にないのですが…(笑)。
(会場笑)
吉田 Tasty Japanについてはどうですか?(と聞いてみたらという振り)
質問者1 Tasty Japanはいつ登場するのでしょうか?
古田 なるはやです(笑)。
参考:このセッションは2016年6月25日に行われました。2016年6月29日にTasty Japanがスタートしました。「なるはや」でした。
小林 なるはやの早いがどのくらいなのか気になりますよね。
(「北欧、暮らしの道具店」を運営する)クラシコムの青木さんは何か質問はないですか?
コンテンツの同質化についてどのように取り組むのか?
青木 TastyとかDELISH KITCHENとかの料理動画のお話がたくさん登場して、たしかにすごく伸びているのを目にしています。
特に、吉田さんが始められた頃にお会いしてから、次にお会いしたときに、100万いいね!になっていてびっくりしました。
参考:クラシコム青木さんとエブリー吉田さんはICCパートナーズ小林が紹介し、一緒にミーティングしていました。
僕らも実は、動画の編集部を一度立ち上げて、定期的に動画を作ることをやってみました。本当にびっくりするぐらいに、料理とそれ以外の反応の差があって、結局みんな料理を作るのかと思っていたら、C CHANNEL(シーチャンネル)もMINE(マイン)もみんな料理の動画を作るようになっています。
伸びていくジャンルを追求した結果、みんなが同質化していったときに、同質化したストックがあとで役に立つことがあるのかな?と思うようになって、自分たちとしては、1回ペンディングして方向性をずらしました。
受ける動画で、ユーザー母数を広げていく先に、何が待っているのかということを、思い描かれているのでしょうか?
先ほどのブランドやユーザーのロイヤリティーというお話があったのですが、果たして微細な差異に対して、ユーザーがロイヤリティーを持ち続けるのだろうかということに僕の中ですごく疑問があります。
BuzzFeedさんの動画以外のコンテンツでも、国内で似たようなことをして来る人がたくさんいる中で、たしかにレベルは高いかもしれないけれども、差異が微細になっていくことをどんな風に捉えられているのかを、2人に是非伺いたいです。
小林 コンテンツ事業者からの質問として、どう答えられますか?
吉田 僕が起業するときに青木さんとお話させて頂いて、それをもとにやっているので、アドバイスがなければ今こうなってなかったなと思っています。
たしかに、各社がフード系のジャンルでやられていて、同質化されて来たときに本当に何が残るんだろうというところがあって、「うちとしてはこれをポリシーにしています」ということにこだわらないといけないと思っています。
今の100万人のファン数や月間で何千万回と見られている数が、もしかしたら減る可能性はあるかもしれないと思っているのですが、「ここでしかないよね」という風に思っているコアなファンの方が僕は大事だと思っています。
「何でもやっています。流行っているものはどんどんやります」という会社さんには、ファンは残らないと思っています。
そこだけは絶対にこだわるということを大事にしています。
古田 2つあって、まず1つはクオリティーで差をつけていくことをずっと続けるということですね。ちゃんと丁寧に1つ1つのコンテンツを創り続けるということで、差は生まれると、僕は信じています。
ただ、もしかしたら、「いやいや、そんなことはないよ」ということになる可能性もありますよね。すごく1つのコンテンツに時間をかけて、クオリティーを上げていっても、実際にはそれがCTR(Click Thorough Rate)に変化がもたらされない可能性はあるのですが、その時はその時で違うやり方を考えることですよね。
とにかく、1つ1つ丁寧にやり続けることです。
2つ目ですが、正解が分からない中で、BuzeFeedで、例えば、Facebook Liveのような新しいものが始まったときに、世界中の全エディションの編集長にメールが届きました。
「Facebook Liveに来週とにかく何でもいいから取り組みましょう」というメールで、続けて「2つルールがあります。1つ目はやった方がいいことはやることだ。2つ目はやってはならないことは、やらないことだ」とありました。
それくらいシンプルなことで、チャレンジする姿勢でやるしかないかなと思っています。
だから、ここに波が来るかもしれないと思ったら、とりあえずやるということですね。
小林 なるほど、やはり新しい波に飛び込んでいかないといけないということですね。
ちなみにクオリティーを測定する方は何があるのでしょうか?
自分たちですごく良いと思っているのを、それをどういう風に評価するのでしょうか。
深い記事になると全然読まれないことがありますよね。その中で、内部的なクオリティーの高さは何をもって判断されますか?
古田 指標はたくさんあります。一つは読了率、読者がコンテンツの1番最後まで読んでいる率が5割を切っているのはダメだと思っています。
頑張ってどんなに長い記事でも、色々な仕掛けで、「こうしたらもう少し伸びるよね」ということをひたすら丁寧にやっていくことですね。
それによって、やっぱり他のメディアと同じ記事を書いていたとしても、BuzzFeedで読んだ方が心地良いと言われるモノを作っていきたいと思っています。
BuzzFeedのスタイルの一つとして有名なリスティクル(リスト型記事)も、いろんな切り口で取り組んでいきたい。
なおかつ、このテーマはBuzzFeedでないとやらないと言われるようなモノですね。選挙ポスターを撮っている人に、政治の舞台裏を聞いて来るような記事や、小児性愛者のための人形を作っている人に取材するような記事は他にないと思うので、そういうところで差をつけていきたいと思います。
小林 他にご質問ある方はいらっしゃいますか?では、内山さんお願いします。
ネイティブ広告はビジネスとしてスケールするのか?
質問者2 では、Uneryのウチヤマと申します。有難うございました。僕も2、3年ぐらい、コスメ系のメディアとかをやっていました。
分散型メディアになると、ビジネスとして捉えたときに、ほとんどがネイディブアド、記事広告が中心になると思うんですね。
僕も結構苦しかったのが、記事広告が中心になればなるほど、営業も直販の営業チームを持たないといけないし、1個1個の記事を作るのがすごく大変でした。
お金という意味合いで言うと、全然スケーリングしないなというのが今の悩みとしてあります。その辺りで、皆さんの工夫がありましたら、可能な範囲で教えて頂きたいです。
吉田 僕らはどうしても各プラットフォームに載っていることもあるので、ネイティブ広告でやらざるを得ないというところは、1つの制約としてあるのですが、逆に、そういった広告のコンテンツですらも、僕らとしては、クオリティーコントロールと言いますか、自社のメディアに合わせた形で配信出来るという点があります。
僕らは、メディアを伸ばしていくフェーズなので、すごく手間のかかることをあえてやろうとしています。
その手間自体が、逆にすごく大事だと思っているので、営業でやらないといけないし、直販のチームも作っていかないといけないです。
例えば、料理動画であれば、レシピを提案して、何回もやりとりさせて頂いて、撮影も立ち会って頂きながら進めているのですが、そういったコンテンツすらも、残り続けますし、大事だと思っています。
運用型のような広告を入れれば、自社アプリを初めて、アップサイド出来るかもしれないのですが、今は多くの企業の方が一緒になって作りたいというようなメディアを目指せれば1番いいと思っています。
古田 僕は編集側なので、タッチしていないのですが、たまたま先日バズフィード・ジャパンに、アメリカから出張して来たアシュリーという女性が、バズフィードのアメリカでネイティブアドチームを立ち上げた1人だったんですよね。
彼女たちと六本木の居酒屋で飲みながら、当時アメリカで初めてBuzzFeedがネイティブアドマーケットを切り開いたときは、どうだったのかを聞いたら、すごく大変だったと言っていました。
今と比べて価格も安いし、スポンサーの人たちのオーダーはきついし、本当に大変だったんだけれども、続けていったら、「BuzzFeedでネイティブアドを作ってもらったら、すごくクールなものが出てくるね」という評判が立って、ブランド認知が上がると評判が積み重なっていったという話をしていました。日本でもそうなっていったらいいな、と思っています。
個人的には、僕は広告が大好きなんです。90年代に学生生活を送っていて、広告はかっこいい世界でした。なので、広告が邪魔者扱いされている世界が嫌だなと思っていて、広告は広告で、人々に「この企業かっこいい」「この商品かっこいい」と思ってもらえるなんて、クールですよね。そういう風に広告はクールだという認識が高まっていけばいいなと思います。
吉田 僕らが、実際に広告主とお話していると、やりたいことをざっくりと伝えられます。「この商品を流行らせたいです」「こういったものをバズらせたいです」といった最初の段階から、お話をさせて頂いています。
僕らが出来るのは逆に認知の部分であって、購買に繋げたいとか、ネットで販売したいとかは、僕らは出来なくてもいいかなと思ってはいるんですよね。
それらが得意なメディアを僕らが紹介してあげればいいなと思っているので、広告を担当している人たちには、全てを自社で解決出来なかったら、他社のメディアを紹介するなり、何してもいいよと伝えていて、企業が持っている課題の解決を一緒に取り組んでいくんだ、ということを伝えています。
良質のメディアが生き残るためには?
小林 最後に質問1つくらい受け付けたいと思います。では、(弁護士の)伊藤さんお願いします。
質問者3 伊藤と申します。有難うございます。今聞いていると、ものすごくコンテンツを真面目に作られていて、素晴らしいなと思いました。
世の中には、そうではないモノも溢れていて、真面目に作っている人が最終的に勝ち残ってくれればいいと思いつつ、そうでもないこともあるかもしれないと思っています。
良いモノが残って、悪いモノは淘汰されていく流れになるためには、真面目に作る以外に、何か方策はありますか?
手嶋 Facebookのロジックは、今おっしゃったような思想の元に、どんどん変わって来ていると思います。一時たくさんあった、診断アプリでいいね!数を増やすようなことは、今は出来ないですよね。
いわゆるバイラルメディアから、キュレーションメディアになって、分散型メディアになっているという流れも、良いモノが残って、悪いモノは淘汰されていく流れに沿っていると思います。コピペではなくて、独自コンテンツを作らないとダメになっています。
性善説で言うとおっしゃった流れになっている気がします。2chまとめなどは、未だにすごいので、何とも言えないのですが…。
吉田 メディアサイドとしては、ちゃんと作っているということは言っていかないといけないと思っています。
これからの主流としてネイティブ広告が増えてくる中で、結局最終的に企業さんがどういうメディアに広告を入れたいか、と思われるかですよね。
各プラットフォームの方も、明らかに他を真似たようなコンテンツに対しての扱い方を考えるということをやっていかないといけないかなと思います。
人間はどうしても楽な方に流れるので、パクればいいという風に進みがちなのですが、それを止めていく必要性がやっぱりあるかなと思います。
そうしないと、メディアとして、価値のあるものを作っているとか、オリジナルを作っているところが、本当にゼロになってしまう気がしているので、業界で守っていく必要があると思っていますね。
古田 僕は、人に情報を伝える存在として、メディアはとっても大切な存在だと思っています。
僕はデジタルの世界に来て、最初にすごくびっくりしたのが、原稿チェックをしたいと言われる取材先が多いことです、新聞社時代はほとんど経験したことがなかったので、デジタルに入っても、原則的にお断りしていました。
BuzzFeedに来てからも、原則記事のチェックは原則的に受け入れられませんとお答えしています。
先方の確認を通せば、訂正を出すことはなくなる。でも、世の中に溢れている情報が、全て事前チェックを受けているものしか残らなくなると、それは我々1人1人、この世の中に生きている人間全員にとって不幸なことですよね。
そういう世界にはしたくないと思っています。
ただ、ご質問のクリティカルな部分は、良い物が生き残るとは限らないということですよね。そこは本当に必死になって頑張るしかないと思います。
それが本当に世の中のためで、それがポジティプインパクトを世の中にもたらすことだと思っているので。
小林 有難うございました。では、時間になったので、最後に1言ずつ、今後の抱負を個人でも会社でもいいので、お話頂きたいなと思います。
では、手嶋さんからお願いします。
手嶋 吉田さんの次のラウンド(資金調達のとき)に投資したいと思いました。
吉田 有難うございます!
小林 今日聞いて納得されたということですね。では、吉田さんどうでしょうか。
吉田 最後の話に近いのですが、動画コンテンツを1本作るのは、すごくコストがかかるんですよね。楽をしようと思えば、たしかにさっき言ったキュレーションなどの方が早いのですが、ちゃんと伝わるもの、オリジナルのものを作っていきたいという思いで、やっていきたいと思っています。
是非そういうところを応援してもらえると嬉しいです。
また、そういう人材を増やしていくのが大事だと思っているので、誰か身近に興味のある方がいらしたら、是非紹介して頂けると嬉しいです。
最後にもう1つあるのが、コーポレートサイトにあるリンクのついていないジャンルはいつかやりたいなと思っているジャンルで、自分で出来ないジャンルだと思っているので、一緒に組める企業の方がいらっしゃったら、紹介して頂けると有り難いです。
小林 広告を出したいという方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。実際に広告主の方もいらっしゃいますよね。
最後に、古田さんにしめて頂きましょう。
「報道機関」としてのインターネットメディア
古田 メディアとして、報道機関として、ちゃんと認知されたいし、インターネットメディアというものは、世の中にとって大事なものなんだということを世の中の共通認識になるよう、BuzzFeedとしても他のメディアの方々と一緒に頑張りたいと思っています。
例えば、我々が東京都議会に取材に行ったときに、事前に連絡をしていたのですが、当日に、ネットメディアは報道機関として認められませんと取材を断られました。びっくりしました。
つい最近もとある警察署に行ったら、目の前に取材対象の人がいるのに、今から取材内容をFAXで質問を送って下さいと言われました。
目の前に立っているのに、です。今は2016年でしたよね?と言いたくなるのですが、1986年に迷い込んだような気持ちになります。
本当にそういう状況があって、これは世の中の誰にとっても幸せなことではない。新聞社にも生き残って欲しいと思っていますけど、ただ、普通に考えるとダウントレンドというのはそんなに簡単には止まりません。
世の中の人がよりクオリティーの高い情報を摂取していくためには、インターネットメディアが頑張らないと。
でも、インターネットメディアが取材をしようとすると、色々な障壁があります。僕らが頑張って、その障壁を下げることによって、より良い情報を届けて、僕らだけではなくて、インターネットメディア全体の地位が上がるような世界を築いていきたいな、と思っています。
小林 最後に非常に熱いお話を頂いて、有難うございます。今回のセッション3はこれで終わりにしたいと思います。どうも有難うございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/藤田 温乃
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