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「教えてほしい!プロダクトのグローバル戦略」全7回シリーズの(その4)は、IoT向けに簡単・セキュアな通信を提供する「ソラコム」の代表取締役社長を務める玉川 憲さんが、同社のプロダクト開発を語ります。世界5拠点、社員の半数をエンジニアが占めるソラコムは、徹底した「ローカライズの排除」を行っているそうです。その理由とは? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019のプラチナ・スポンサーの日本マイクロソフト様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 6F
教えてほしい!プロダクトのグローバル戦略
Supported by 日本マイクロソフト
(スピーカー)
鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長兼社長 CEO
十河 宏輔
AnyMind Group
CEO
玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
(モデレーター)
濱野 智成
株式会社トレンドExpress
代表取締役社長
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最初の記事
1. スマートニュースが米国進出に見出す勝機とは?
1つ前の記事
3. スマートニュースが米国ユーザー理解のために“一般人100人”に行った現地調査
本編
濱野 それでは玉川さん、改めて御社のグローバル戦略について、その差別化ポイントを教えていただけますか?
玉川 改めましてよろしくお願いします。ソラコムの玉川です。
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玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
1976年大阪府生まれ。東京大学工学系大学院機械情報工学科修了。米国カーネギーメロン大学MBA(経営学修士)修了、同大学MSE(ソフトウェア工学修士)修了。日本IBM基礎研究所でウェアラブルの研究開発、ソフトウェア事業部での技術営業・コンサルティングを経験。2010年にアマゾンデータサービスジャパンにエバンジェリストとして入社し日本のAWS事業の立ち上げを指揮、2012年より技術部長としてアーキテクト、トレーニング、コンサル部隊を統括。2015年株式会社ソラコムを創業。「世界中のヒトとモノをつなぎ共鳴する社会へ」をビジョンに、IoTプラットフォーム「SORACOM」を展開、IoTに不可欠な通信を柔軟かつセキュアに提供。Forbes JAPANが選ぶ「日本の起業家ランキング2017」2位を受賞。『IoTプラットフォーム SORACOM入門』『Amazon Web Services クラウドデザインパターン 設計ガイド』『同 実装ガイド』他、著作翻訳多数。
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まず、ソラコムをご存知の方は、どれくらいいらっしゃいますか?
(会場を見渡して) 半分くらいですね。
我々ソラコムは、IoT機器向けにSIMカードと通信プラットフォームを提供している会社です。
IoT向けに簡単・セキュアな通信を提供するソラコム
玉川 皆さんが使っているスマートフォンのSIMカードをイメージしていただけると分かりやすいと思いますが、ソラコムでは自動車、自販機、それからポケトークなどのIoT機器に搭載あしているSIMカードを提供しています。
IoTでは主にセンサーなどの情報を送信するので、データ量は少ないという特徴があります。ですので料金も使った分だけ従量課金でいただくことで、SIM1枚あたり月100〜300円くらいからリーズナブルにご利用いただけるようにしています。
スマホ向けSIMカードと比べて良い点があるとすれば、一度埋め込まれれば5年、10年と利用し続けてもらえるので、チャーン(解約) が起こりにくい点です。
もちろん物理的にSIMカードを入れていかないといけないので手間はかかるのですが、ビジネスモデルとしては安定しています。
私はIBMからAmazonに転職して、2010年からAWS(Amazon Web Services)の日本事業の立ち上げを担当しました。
そのとき、クラウドサービスをセルフサービス式のプラットフォームとして提供しているそのビジネスモデルと、その社会的意義に非常に魅力を感じました。
AWSのようなサービスがあれば、持たざる者でもイノベーションを起こせるんだ、何て格好いいんだろうと。
そして2014年頃からIoTが注目されはじめて、今度はリアルなものからクラウドにデータを蓄積する時代になったときに、「じゃあ、そのデータ通信のいい方法はあるんですか、玉川さん」とお客さんから聞かれました。
「ええ、それはですね……ないな」と思ったんですね(笑)。
当時はWi-Fiを使ってデータをアップするのが普通で、動いているもの、屋外にあるもの、今後出てくるであろうウェアラブルなどから、クラウドに簡単かつセキュアにデータを送る仕組みがなかったのです。
それで「ないのであれば、自分たちで作るか」と言って立ち上げたのがソラコムです。
ソラコムの徹底した「アンチ・ローカライズ戦略」
玉川 現在ソラコムのIoT契約回線数は100万回線を超え、安定したビジネスになっています。
組織規模としては従業員が80人で、半分ほどがエンジニアです。
50人が日本に、15人がアメリカ、その他は世界に散らばっていて、日本、アメリカ、シンガポール、デンマークなど5拠点です。
開発に関する基本の考え方は、「スーパー・グローバル」です。つまりローカライズはしません。
十河さんも先ほどおっしゃったように、現地担当者は「この国ではこれこれの機能が必要です」のようなことを言うのですが、実際にはほとんどが必要のないものです。
AWSも、プライシングは国ごとに少しだけ変えることはありますが、機能は変えません。変えてはいけないのです。
なぜなら、カスタマイズをしてしまうと、スケールしないからです。
ですから私たちは、プラットフォームとして「ディフェンス」をしないといけないのです。
ローカルチームが「こういう機能が欲しい」と言うのですが、それを「欲しいのはこれだよね、こレで大丈夫だよね」と説得する必要が出てきます。
十河 各国から要望が上がってくるのですか?
玉川 はい。例えばヨーロッパのチームからは「ユーロでなければ売れない」と言われました。
もちろんそのほうがベターですが、それを言いだすと全ての国に対して現地通貨で対応しなければいけません。
日本でも米ドル建てで売っていましたし、お客様が気に入ってくれたらドルでも買ってくれるはずだと伝えました。
逆に、営業やマーケティングはローカルに任せています。
というのも、どのセグメントのどのお客様に、どういうメッセージで製品を持っていくかべきかは、現地の人間にしか分からないからです。
鈴木 我々も完全に同じです。
濱野 世界で成功している会社はどこもそうですよね。
とは言え、ローカライズに走りたくなってしまう衝動はないものでしょうか?
玉川 これは海外進出に限った話ではりませんが、Aという地域でサービスを始めて、そこからBにという地域に進出しようとするとBにいる社員はたいてい焦ります。
本社が見ている売上に対して、自分たちの売上がいかに小さいかが分かってしまうからです。
そこでビッグ・ディールを取りに行こうとするわけですが、その安直な手段こそがカスタマイズなのです。
「これをやってくれれば、自分たちは客をとれる」と。
でもたいてい、そういう案件はうまくいきません。
それよりも、小さくても成功体験を積み重ねること、そのためのKPI設定が大事だと考えています。
最初は、POC(概念実証)の回数とか、アカウントの伸びとか、SIMの枚数が確実に伸びていることなど、売上ではないものを目指してもらうべきだと考えています。
そうしないと、責任感がある担当者であればあるほど、売上を取りに行かないといけないと焦り、ローカライズに走ってしまいがちです。
加えて、ローカライズやカスタマイズに走った段階で、もはやプラットフォームではなくなります。
それは単なるSIerであり、そこに張り付く人員のリソースと、スケーラビリティのなさを考えても、その先にプラットフォーマーとしての明るい未来はありません。
(続)
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続きは 5. ITサービスの海外進出、「GAFAとのガチンコ勝負」を避けるには をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/大塚 幸/戸田 秀成
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