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7. この時代に求められる街づくりとは?〜ポストコロナに向けて【終】

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「地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?」全7回シリーズの(最終回)は、議論からの学びを登壇者たちが発表。従来の手法にとらわれず、街づくりの当事者を拡大していくことの必要性を訴えます。それぞれのフィールドで、情熱を持って街づくりに携わる現場からの、熱いメッセージもお見逃しなく。最後までぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 4B
地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?
Supported by ノバセル

(スピーカー)

小池 洋輝
九州旅客鉄道株式会社
事業開発本部 まち創造担当部長

髙島 宗一郎
福岡市
市長

他力野 淳
バリューマネジメント株式会社
代表取締役

寺田 航平
寺田倉庫株式会社
代表取締役社長

西高辻 信宏
太宰府天満宮
宮司

(モデレーター)

各務 亮
THE KYOTO
Editor in Chief & Creative Director

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最初の記事
1. 福岡市 髙島市長も参戦!地域の魅力を最大化する街づくりを徹底議論!

1つ前の記事
6. 街づくりの成功率を上げる「分散型ホテル」のモデルとは?

本編

各務 では残りの時間は、本セッションテーマの通り「この時代に求められる良い街づくりとは?」について、お聞かせいただきたく思います。

民間を巻き込む・地元を巻き込む

福岡市 市長 髙島 宗一郎さん

髙島 まさに、今まで出てきた話の中にエッセンスが詰め込まれていると思います。

まず、街は歴史的背景に基づいていますから、街づくりがそのストーリーに則っているかが大事です。

また、民間の力、地域の住民の力を活用することもすごく大事です。

今は色々な手法で人々の声を取り入れることができますし、民間には世界中から良いアイデアが集まっています。

西高辻さんのおっしゃる「良い違和感」(Part6参照)は、何かを生み出したり、気づいたり、考えたりするフックになります。

行政としては、民間をうまく巻き込んだ街づくりが大事だと思っています。

各務 ありがとうございます。

寺田さんは色々な人を巻き込みながらの街づくりをされていると思いますが、何かポイントはありますか?

(写真左から)バリューマネジメント 他力野さん、寺田倉庫 寺田さん

寺田 皆さんのお話にあったように、良質なコミュニティを形成するのが非常に大きなポイントです。

ベンチャーがやるようなディスラプション(破壊)に近い形での街づくりは、山を切り開くなどしない限りはできません。

ですから現実的には、1つの企業体の力ではなく、地元の人やそこにいる企業体と協調し、巻き込むモデルを形成することが大事です。

ただ、協調性を持ちつつも頭が1つ飛び抜けたようなアイデアや実現するには、少なくとも10年、普通に考えて20~30年の道のりが必要です。

一方で今、地域の方々の感覚がコロナによって変わりつつあることを考えると、彼らを巻き込んで新しいことを行える土壌は、むしろ整っているとも言えます。

無から有を生み出すのは難しいので、その場所がもともと持つ魅力をどのように最大化して、スパイスを付加してゆくか。

それを実現する環境が整いつつある今、あとは誰が人々を巻き込んで大きくする力を持てるか、プロジェクトをリードできるか、覚悟を持って臨めるかだと思います。

アートやデザインの力を借り、全体一致で取り組む

(写真左から)福岡市 市長 髙島さん、バリューマネジメント 他力野さん

髙島 寺田さんに天王洲アイルの例を見せていただきましたが(Part3参照)、人が集まる、民間を巻き込む、色々なものを組み込むなどの後、すごく大事なのがアートやデザインの力だと思っています。

みんなの思いをどのように形に表すのか。

立体建築のデザインもあれば仕組みのデザインもありますが、人が集まる街づくりにデザインを取り入れるのが重要な鍵だと思います。

特に行政はそこをおざなりにしてきたきらいがありますが、改めてデザインの力はすごいと感じています。

寺田 その通りですね。

また、1つの地域を生命体として捉えて物事を進めていける人は強いと思います。

我々は15年ほどかけてアートも街づくりもやってきましたが、来年からは全地権者の賛同を得て、一体としてとして行うことになりました。

デザインやアートの力を借りながら、時間をかけながら道を示しつつ、全体一致を考える経営手法を街づくりに活用をするのが大事ではないでしょうか。

各務 ありがとうございます。

私もTHE KYOTOでは京都によそ者として入っていますが、他力野さんも、各地域によそ者として外から入っていく立場ですよね。

地域に巻き込まれる側として、何か感じることはありますか?

課題は、観光街づくりにおけるプレイヤー不足

バリューマネジメント株式会社 代表取締役 他力野 淳さん

他力野 なぜ我々が呼ばれるか、がポイントですね。

我々から髙島市長を訪ねて「やらせてください!」とお願いするようなことは一度もありません。

我々が呼ばれるのは、寺田さんがおっしゃったように、生命体として先頭に立って進めていく人がいないからなのです。

天王洲はおそらく、寺田さんがその役割を担っていたのだと思います。

街づくりは政官民のどれが欠けてもうまくいきませんが、実際それぞれの役割は不明瞭です。

我々はあくまでプレイヤーなので最後のマネタイズのところを担いますが、その入口については最近は「DMO」を作るところから始まることが多いですね。

観光地域づくり法人(DMO)とは?(観光庁)

今日も午前中、大分県のある市と打ち合わせをして、座組みやスキーム、DMOなどについて話し合いました。

そういった計画を描ける人、描いた計画を背負ってリードしていく人、そして我々のように最終的にマネタイズする人、それぞれの立場のプレイヤーが必要です。

でもパーツが揃わないとうまくいかないし、ほとんどの場合、いずれかのパーツが足りなくて頓挫してしまいます。

ですから我々のようなよそ者が呼ばれて、どうにかしてほしいと依頼されるわけです。

福岡のように進んでいる大きな街もあれば、良いものを持っているのにプレイヤーが足りなくて止まっている街もたくさんあります。

我々はどちらかというと後者の街から呼ばれることが多く、街づくりの上流工程に入り込むことも増えています。

この春からは、我々の社員を各自治体へ派遣し、観光まちづくりを一緒に描くことになりました。

それくらい、あらゆる場所でプレイヤーが足りていないのだなと感じます。

理想像を掲げ、熱量をもって夢を描く

九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部 まち創造担当部長 小池 洋輝さん

小池 我々が置かれている環境も皆さんも同じだと思いますが、それほどトラフィックが多い場所ではありません。

そういう場所をプロデュースするにあたって心がけていること、若手に伝えていることがあります。

それは、我々のビジネスフィールドは「立地に依存できない」ということです。

JR九州が持つ500ほどの駅の1日の乗降人員は、全て合わせても東京の新宿駅1駅分と同じ人数です。

ですから立地に依存できないので、むしろその場所に価値を生み出 し、立地をプロデュースする「立地創造型ビジネス」である必要があります。

もし自分たちにゼロからイチを生む能力がなければ、寺田さんがおっしゃるように色々なプレイヤーとかけ算をすることが必要です。

そうすることで、自分たち発想にはなかった価値が生まれますし、それが先ほど出た街づくりにおける“よそ者”の役割です。

ですから最初から負の資産だと諦めず、常にアップデートしようとする姿勢こそが起点のように思います。

熱量もいるし、考えの違う人たちと色々な調整をしなければいけませんが、それでもめげずに理想像を掲げ、みんなと共有し、巻き込んでゆくことを地道に進めていく。

そして結果的に「あなたに騙されて良かった」と言ってもらえたら、こんなに幸せな仕事はないと思います。

地域の魅力の最大化というのは、まだ気づいていない魅力も含め、そうした夢を描いていくことではないでしょうか。

「小さな成功事例」の共有が発展を生む

太宰府天満宮 宮司 西高辻 信宏さん

西高辻? 太宰府も田舎ですので、変わることに対する周囲のアレルギーがあります。

しかし、例えば先ほどのスターバックスの店舗(Part4参照)が成功した後は、みんなデザインにこだわり出しました。

また、泊まる場所がなかったので築100年ほどの民間住宅を他力野さんのサポートもあってホテル(ホテル カルティア 太宰府)として活用しました。

このような成功事例が出てくると、他のケースもどんどん進んでいきます。

つまり、地方の人は変化そのものをハードルと感じがちですが、まずは小さな成功事例を生み、それを共有することで変化が促され、有機体としてさらに発展してゆく。

そして、街づくりは時間がかかるものです。

我々の場合も九州国立博物館を誘致して2005年に開館しましたが、明治から120年、4代がかりで夢を描き続けてやっと実現しました。

ですから、時間がかかることは前提として、思いを共有できる人を増やすこともポイントかなと思います。

各務 ありがとうございます。それで最後に髙島市長にお願いしたいと思います。

コロナの状況下で市長がこうした場に来るのは難しいのではという話もあったなかで「こういう大事なときだからこそ、ぜひリアルイベントに参加したい」という市長のご意向を伺って、胸が熱くなりました。

コロナ禍だからこそ、リアルに価値がある

髙島 例えば音声SNSアプリでは、リビングルームで普段着のまま無料でこのようなセッションを聞ける状況があります。

今回の緊急事態宣言下において、多くの人がリアルで集まるICCサミットへの参加は辞退したほうがいいのではという議論も内部でありました。

ただ、これほどまでに感染症対策を完璧にして、リアルイベントをアップデートしようと努力をされているICCサミットのチャレンジ魂を受けて、市役所内での議論の末、登壇を決めました。

色々なアプリで同じ内容を聞けるかもしれませんが、参加者の人柄や熱量、思いは、デジタル化すると解像度が下がってしまいます。

リアルの解像度に敵うものはありません。

JR九州の「ななつ星 in 九州」は、どこかに行くための手段だった鉄道が、鉄道に乗ること自体が目的になった例です。

つまり、「ななつ星に乗りたい」という思いをわき起こさせ、乗った時に見える田舎の景色が尊いものに変わるという価値を与えたのです。

リアルイベントの良さは、例えば、今あるものに価値を付与する秘密や街づくりにおいて誰かを巻き込む方法などを詳しく知りたいと思ったときに、終わった後でも人とつながり、学べるというところにあると思います。

今回のセッションではさわりを話しただけなので、こういうプレイヤーがいるんだと知っていただき、この後も話しかけていただければと思います。

そしてそれが、今後につながれば嬉しいですね。

各務 ありがとうございます。

今回の議論が今後の実践につながり、コロナを乗り越えた地域の盛り上がりに寄与できればとっても素敵だなと思います。

本日は皆さまありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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