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【最終回】誰がIoTビジネスを制するのか?【K16-2B #7】

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「クラウド x IoT(センサー通信)の進化とビジネス・チャンス」【K16-2B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その7)は、会場からの質問を受け付け、誰がIoTビジネスで儲けることができるのか?どんな機能を価値とすると儲かるのか?といった点を議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 2B
「クラウド x IoT(センサー/通信)の進化とビジネス・チャンス」
 
(スピーカー)
青木 俊介
ユカイ工学株式会社
代表
 
川原 圭博
東京大学
准教授
 
小林 晋也
株式会社ファームノート
代表取締役
 
玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
 
(モデレーター)
尾原 和啓
Fringe81株式会社
執行役員

「クラウド x IoTの進化とビジネス・チャンス」の配信済み記事一覧

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【本編】

尾原 時間も残り少なくなりましたので、会場の方との質疑応答に入っていきたいと思います。

ご質問がある方は挙手をして頂けますでしょうか。

小林 僕から質問させて頂きたいと思います。

実はIoTという言葉はあまり好きではないのです。それって結局、ただ技術を組み合わせただけの話ですよね。

敢えて言いますけれど、この「IoT大航海時代」とも言える現在の状況で、どういう人達がIoTというテクノロジーを使って収益を上げることができるのか、皆さんがどう感じていらっしゃるかというのをお聞きしてみたかったのですよね。

誰がIoTビジネスで儲かるのか?

尾原 では向こうの方から順番にお願いします。

川原 収益のことはよく分からないのですけれども、IoTという言葉のモヤモヤ感がこの何年間かずっとあり、小林さんがおっしゃっているのもそういうことだと思うのですけれども、多分IoTという名前が悪いんですよね(笑)。

この名前の悪さというのは、恐らく「マルチメディア」に匹敵するのではないかと思っています。

「マルチメディア」というのは90年代くらいの話で、その時に使われた技術は今でも重宝されているのですが、マルチメディアが成功したかと言われると、何だかよく分からないですよね。

自然の流れの一部であったようなことなのですけれども、一方でウェブ、つまり「www」というのは大成功の象徴ですよね。

マルチメディアデータをハイパーメディアテキストで扱ったのがウェブなのですが、我々より少し上の年代の人に言わせると、マルチメディアのコンテンツをインターネットという、世界のネットワークと繋げるという発想がその時代の人にはあまりなくて、ウェブが出た時に「やられた!」と感じたということを結構おっしゃっています。

ウェブというのは具体的に想像し易く、本当に新ジャンルのものとして世の中に受け入れられたのですけれども、マルチメディアというのは、どちらかというと今あるアナログのVHSのテープをDVDにデジタル化しましたとか、マルチトラックで日本語と英語を切り替えられるようにしましたといった、何かそういうふわっとしたコンセプトだったので、よく分からなかったのだろうなと思います。

それぞれの分野で収益を上げられて、DVDもすごく大きなビジネスになり納得感があると思うのですが、そこのふわふわ感がダメだったのではないかと思いますね。

尾原 そうですよね。

本来、IoTというのは今おっしゃったように、マルチメディアのように大きな概念なのですが、本当は、農業における「www」、農業におけるHTTPとは何なのかを考えなければなりませんよね。

そのプロトコルが決まるから、皆がそこの改善に参加することができるというものですよね。

だからそれは農業において何なのか、工業においては何なのか、水産業においては何なのかということを考えることで、広がっていくのですよね。

青木さん、いかがでしょうか。

青木 私は普段家庭周りのことを考えていることが多いのですが、やはりすごく注目しているのは、「Amazon Echo」や「Google Home」のようなデバイスです。

例えばAmazonのIoTデバイスでより簡単にAmazonで買い物ができてしまうとか、それがなくなったら自動で安いものを買っておいてくれるとか、「Google Home」が勝手に安いチケットを提案してくれるとか、そういう形でどんどん入り込んでくるのではないかなと思うんですよね。

もしかすると、家族の会話を聞いていて、「旅行に行きたいのだったら、こんなチケットがあるよ」という風に自発的に提案してくれるかもしれないですし、それって怖いと言えば怖いのですが、皆、慣れていくのではないかなと思っています。

ですから、どこが稼ぐかという事に関する先ほどのご質問に対してのお答えですが、やはりデータを使って最終的にお金を払わせる、サービスを提供しているところというのは、すごく強くなるのではないかなと思っています。

尾原 インダストリー系は別ですけれども、コンシューマーに関しては最後は「人」なので、そうすると少し月並みな言葉になりますけれども、「コンシェルジュ」といったところに価値を置いていくというのがIoTの進化の方向性ではないかと思います。

では玉川さんどうぞ。

玉川 どうやって稼ぐのかということに関してですが、IoT自体がバズワードになるかどうかも、それに関係するのではないかと思っています。

特にIT業界ではバズワードが定期的に出てきますが、それがバズワードになるかどうかというのは結果でしか分からないですよね。

例えば「SOA(Service Oriented Architecture)」もバズワードだったのですが、

小林 懐かしいですね。

尾原 懐かしいですね。

玉川 「クラウド」はバズワードではなかったのですよね。

なぜバズワードではないかというと、Salesforce (セールスフォース)や、AWS(Amazon Web Services)といった明らかな市場の勝者が出たから、誰もバズワードなんて言えないんですよね。

IoTも同じで、そういうプレイヤーが出たら多分バズワードではなくなると思います。

若干怪しさは出ていて、Gartner(ガートナー)というアナリストの会社さんも、去年は「IoT」とおっしゃっていたのですが、今年は「IoTプラットフォーム」になっているんですよ。

尾原 プラットフォームになってセンシング系に分かれましたよね。

玉川 我々の時代かなと思っていて。

(一同笑)

尾原 それがおっしゃりたかったのですか? (笑)

玉川 そこは無理やり言いたかったというか(笑)。

だから少しずつ変わっていくのでしょうね。

お金の儲け方というと、IoTだとIoTプラットフォームが一つ注目されていて、あとはファームノートさんやユカイ工学さんのようなバーティカルな(一定の業種に特化した)それぞれの産業の何かなのか、それともセンシングやバッテリーといった間接充電のような要素技術なのか、幾つかのフィールドが必ずあると思うのです。

尾原 そうですね。

Gartnerさんの件に関して言えば、先ほどのお話にもあったように、IoTがマルチメディアと言えなくなったと考えた方が正確で、「IoTプラットフォーム」というのはどちらかというとIoTを支えていく通信や、電力や、センシングという技術ですよね。

今年のGartnerさんで言うと、例えば「コンテクスチュアル・センシング」のような言葉が増えてきたりしているように、IoTの上に乗るようなアプリケーションの領域があるのか?や、IoTの上にくるアプリケーションとプラットフォームの間を繋ぐ、ミドルウエア的なものがあるのか?といったことですよね。

最初にインターネットの広告の比喩を出して言いましたけれども、全てが可視化できると、可視化する間にどういう風にターゲティングするかという技術がミドルウエア的に生まれて、そのターゲティングの結果、アクチュエーションとしてユーザーの行動をどう変えるかというレイヤーに変わるので、多分、ここから2~3年くらいはIoTミドルウエアというか、IoTとしてのターゲティングの領域というのが熱くなってくるのではないですかね。

他にご質問はありませんか?

(NewsPicks)プロピッカーとしてフォロワー数が多い占部さんお願いします。

IoTにおけるバリューチェーンでどこが儲かるのか?

質問者1 株式会社コーポレイトディレクションの占部と申します。

今日はお話をありがとうございました。

尾原さんのお話とも近いのですが、データを取るセンシングをして、それを送って貯めて、解析して何らかのアクションを起こすというバリューの流れがあった時に、将来的にどういうところの戦いになったり、またどういうところが強くなっていくのでしょうか。

即ち、例えばセンシングであれば、精度が高くセンシングができる、安くセンシングができるというところの戦いもあるでしょうし、それを貯めていった、データそのもののデータ量ということかもしれないし、それをアルゴリズムにするというソフトウェアであったらアルゴリズムのことかもしれません。

ただそれだけだとそれを提示するだけなので、それを踏まえて人間なり機械を使って介入行動をさせる必要があります。

ファームノートさんのビジネスで考えると非常に分かり易いと思うのですが、多分今、牛にああいったもの(センサーデバイス)を付けるという事自体が新しくて、それを農家さんを巻き込んでやっているというのがすごく新しいと思うのですが、ただそれを取るだけであれば恐らく他の会社でもできるようになるかもしれません。

データがすごく貯まっていることなのか、データと実際の映像を見て、こういうデータだったらこういう意味があるのだという意味付けのところなのか、それを更に農家さんに促すというその行動プログラム、そのバリューチェーンの中のコアのバリューというのは、どういうところの競争になるのかなと思います。

その点に関して何かご意見があれば、是非お聞きしたいと思います。

尾原 要するに、IoTの中でどこが一番儲かるのかということですね。

(会場笑)

小林さん、いかがですか?

小林 こんなにカッコよく「センサーを作りました」と言いましたが、実は少しだけ後悔しています。

ベンチャーのレイヤーでハードウエアをやることのリスクは大き過ぎて、とてもお金がかかるし、ハードウエアは陳腐化するし、フィールドに出ていって云々とやるとリスクが大きすぎるように思います。

でも、やってよかったなと思ったのが、本当に本質が見えてきたことですね。

結局、ITでスマートフォンからデータを打つことや、センサーから(データが)上がってくるというのは、会場の皆さんでしたら当たり前に想像できることだと思うのです。

牛だろうが何だろうが、どんなビジネスでもセンサーからデータを取ってスマートフォンで打つ仕組みになると思うのですが、実はセンサーを作ることで、どうすれば今の産業の問題が本質的に解決できるのかについて大いに学ぶことができたのです。

逆に言うと、そのセンサーを必死に売らなければならないから、どうやったら売れるだろうといったことをひたすら考えている過程で、実は農家さんの潜在的な問題がこの辺にあるのだという、農家さんの本質に行きついたんですよ。

そこに気づいて、その本質に対してデータだとか、ソフトウェアだとか、その周辺のものをどうしていくかという発想に及ぶようになったので、そこが分かるかどうかですね。

僕達はよく「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」というマーケティング用語を使うのですが、ファームノートは、そのカスタマーエクスペリエンスをすごく大きく変えてきました。

牛の目の前で牛のデータをスマートフォンで見ることができるという、実は技術的には大したことのないことなのですが。

今までだと牛舎に戻って牛のデータを見なければならなかったのが、スマートフォンで見られるようになったという、たったこれだけなんですよ。

これでユーザーさんは、「Wow!」と。

「びっくり!」みたいな。

「ファームノート、超すごい!」といった感じでユーザーが増えたんですね。

実は農家さんの本質的な、潜在的な課題を何かしらITで解決すると糸口が見えて、それが広がっていくと先ほどの我々のような話になって、最終的にデータを持った人が勝つのではないかなというのが僕の考え方ですね。

考え方が逆なんですね。

IoTビジネスはレイヤーごとに水平・垂直に別れていく

尾原 でも、それってすごくあっていると思います。

結局今回のテーマで一番言えることは、「IoT」というのは「マルチメディア」のような曖昧な言葉で、これからきちんとした分野が沢山できてくるということだと思うんですね。

結局IoTとは何かというと、リアルをインターネットにしていきますということに他ならないので、全てのものがインターネット化していく中で、産業構造がどう変わっていくかということを考えたら、インターネットの歴史がそれをもう証明していて、結局一番儲かるのは最初はインフラ、次がOS、けれども最終的にはアプリケーションなわけです。

それというのも、やはりビジネスというものは、課題を解決するところにお金が宿るものだからです。

残念ながら、インターネットというのは、ベースのものであればあるほど無料化していく流れになります。

もちろんGoogleやマイクロソフトのようにOSを通してユーザーの接点を牛耳って、データを牛耳って、結果的に検索というアプリケーションや、オフィス利用であるワードやプレゼンテーションという、最終的な課題を握っているから儲かるというバンドリング戦略はあるでしょうけれども、やはり課題に寄り添っていくことが一番大事なのではないかなと思います。

そういう意味で言うと、今回のICCカンファレンスではセッション数をかなり増やして下さったのですけれども、来年、再来年は、農業のIoT、工業のIoTといった感じで、どんどん垂直に分かれていくし、水平は水平でどんどん分かれていくのではないかと思います。

リテール(小売)の歴史を考えると絶対二極化するはずで、Googleやマイクロソフトのように、OSのレイヤーを無料化していってアプリケーションで儲けるプレイヤーか、リテールのユニクロのようにSPA(Specialty Store Retailer of Private Label Apparel)という形でバーティカルのところを垂直統合してアプリケーションのところで儲けるプレイヤーに分かれると思います。

ベンチャーの機会は圧倒的にSPA型IoTにあるはずなので、実際にカタパルト(ICCカンファレンス スタートアップ・コンテンスト「CATAPULT(カタパルト)」)でもそういう例が増えてきていますし、多分次回のICCカンファレンスではそういうテーマがどんどん増えていって、僕らがそれぞれ個別に呼ばれるようになることを期待したいなと思います。

最後に、登壇者の皆様に一言ずつ頂ければと思います。

では小林さんからお願いします。

IoTソリューションは産業別に課題を解決する時代へ

小林 皆さん、本日はセッションをお聞き頂きありがとうございました。

このクラウドという技術が発展して、Industry Co-Creation(ICC)という名前のように、僕達がインダストリー別に課題を解決するソリューションを提供できる時代が来ればよいなと思っています。

僕らはそれを上手く体現していきたいなという風に思っています。

本日はありがとうございました。

玉川 本日はありがとうございました。

IoTという言葉は一旦置いておいて、このテクノロジーを上手く使うことによって、企業の課題や、個人の課題や、更には社会的な課題解決ができると思っています。

ファームノートさんもそうですし、ユカイ工学さんもそうですし、我々のお客さんにはそういうもう一段高い視点を持ってやって頂いていて、我々はそれらに対してプラットフォームを提供することに意義を感じています。

日本からも世界からも、沢山、そういう会社が出てきて欲しいなと思っています。

青木 僕達が2年くらい前にBOCCOなどと同じものを作ろうとしていたら、この価格では絶対にできませんでした。

それが、今ではRaspberry Pi(ラズベリーパイ)のようにPCと同じ機能を持つものが数千円で買えるようになりました。

それはやはりすごくワクワクするような新しいことなので、これからはそういう流れはどんどん進んでいくと思います。

僕達はロボットを普及させたいと思っているのですが、ロボットにとっては千載一遇のチャンスなのではないかなと思っているので、沢山ロボットを作っていきたいと思っています。

川原 僕がちょうどユビキタス、今で言うIoTのコンセプトに近いことを研究していたのが、2000年から2005年くらいです。

尾原 そういえば「ユビキタス」という言葉もありましたね。(笑)

川原 ありました。

青木 あれは30年くらい前ですよね。

川原 1990年ですね。

それが、別のキーワードを借りてようやく実になったのが10年、15年後なんです。

ですから、今大学でやっていることも、10年、15年後くらいに実用化するとよいなと思っていまして、そのことは今日は殆どお話しなかったので、是非皆さん、10年、15年後のビジョンをお持ちの方は是非一緒に研究を進めて頂けたらと思います。

よろしくお願いします。

尾原 75分にわたってお付き合い頂きありがとうございました。

IoTがインダストリー別でどんどん広がっていくということで、今日の会を締めさせて頂きたいと思います。

どうもありがとうございました。

(完)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

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