「社会課題に対する無関心をなくしたい」 社会起業家の風雲児 リディラバ 安部 敏樹の挑戦 – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

「社会課題に対する無関心をなくしたい」 社会起業家の風雲児 リディラバ 安部 敏樹の挑戦

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「社会課題に対する無関心をなくしたい」 社会起業家の風雲児 リディラバ 安部 敏樹の挑戦を是非ご覧ください。
ご一緒に10分間のプレゼンテーション動画も是非ご覧ください。

登壇者情報
2016年2月17日開催
ICCカンファレンス STARTUP  2016
Session 2
「社会を変える起業家になる」
(プレゼンター)
安部 敏樹
一般社団法人リディラバ/株式会社Ridilover 代表理事/代表取締役
東京大学在学中にみんなが社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム『リディラバ』を2009年に設立。600名以上の運営会員と100種類以上の社会問題のスタディツアーの実績があり、これまで3000人以上を社会問題の現場に送り込む。また都立中学の修学旅行や企業の研修旅行などにもスタディツアーを提供する。その他、誰でも社会問題を投稿できるwebサービス「TRAPRO」や「Travel the Problem」の開発・運用なども行い、多方面から誰もが社会問題に触れやすい環境の整備を目指す。2012年度より東京大学教養学部にて1・2年生向けに社会起業の授業を教える。特技はマグロを素手で取ること。総務省起業家甲子園日本一、学生起業家選手権優勝、ビジコン奈良ベンチャー部門トップ賞、KDDI∞ラボ第5期最優秀賞など受賞多数。第2回若者旅行を応援する取組表彰において観光庁長官賞(最優秀賞)を受賞。著作に『いつかリーダーになる君たちへ』(日経BP)などがある。

安部敏樹氏(以下、安部氏) リディラバという社団法人と株式会社をやっています、安部敏樹と申します。今日はよろしくお願いします。

皆さんはじめまして、リディラバと非常に呼びづらい名前のNPOと会社をやっています安部と申します。このリディラバという名前はですね、もともとRidiculous Things Lover 「バカバカしいことが好きな人」という名前で、僕が大学3年の時に600人ぐらいから構成されるボランティアの非営利団体からスタートした活動です。

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何でこういう名前からスタートしたかというと、後ほど詳しくお話しますが僕はいろいろ問題を起こし迷惑をかけた10代を過ごしたわけですけれども、最近でいうところの「ビリギャル」のような問題児が学年のビリから東京大学に入ったんですよ。そうしたら、大学に入った後に「恵まれた人たちはね、社会に貢献しなければいけない」と言われるわけですね。

「君たちは東大生だから」とか、「大学生までこれて」とか、「エリートなんだから」とか、「だから社会に対してより深い責任をもっているし、世の中よくしていかなきゃいけないんだ」とか言われるわけですよ。

私は元々いわゆるエリートコースを歩めなかった人なので、聞きながら「こいつまじかよ」と思ったわけですね。「ホントかよ、絶対ウソ」だと。ノブレス・オブリージュという言葉はもともと欧米のいわゆる貴族の人たちがどうやって社会を良くしていくかっていうことを考えた時に、貴族の人は働いていておらず、資産をもっているから、だから社会を良くしましょうのような考え方からきてるわけですね。

君ら別に貴族じゃないでしょ? 俺も貴族じゃないわけですよ。ノブレス・オブリージュは精神論だけで、「一億火の玉だ」という発想とあんまり変わらないなと、話を聞いた時に思って。その一億火の玉の精神で本当に世の中が良くなるのか?というふうに思ったわけですね。

そうじゃなくて、世の中がフラット化していく中で、色んな人々が社会を考えることが善意によってやられるんじゃなくて、もっと生活の仕組みの中に組み込まれた「当たり前」な形にならなきゃいけないなと思った。それをしたいなと思って、「ノブレス・オブリージュじゃねーだろ」っていうことで、「バカバカしいことが好きな人」っていう名前で、こういう名前でスタートしました。

(脱線しますが)マグロ漁師の安部です

自己紹介の時、いつもこれから始めるんですけど、もともと私はマグロ漁船に乗ってて、19才ぐらいからオーストラリア、ギリシャでマグロをとるというような仕事をしていました。

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マグロをとるのは、皆さんのイメージだと一本釣りをするとかそういうイメージだと思うんですけど、私は潜って採るっていう仕事をしてまして、マグロを素手でとってるんですね。日本でいうと恐らく、私よりもマグロを素手でとるのが上手い人はそうはいない。

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自己紹介を続けると私は今28歳です。もともと東京大学は文系で入ったんですけども理系に転向して、専門は物理の熱力学からきた複雑系とか、脳神経科学とか社会の意思決定、そういうのに興味があって研究しています。
また東京大学で最年少で授業を担当していて、「ソーシャルビジネスの為のチームビルディング」という授業を24才の時から3〜4年担当しています。受業の内容は「いつかリーダーになる君たちへ」という本になってるからぜひ買ってね。

社会問題を解決できなのはなぜだ?

僕は中学生・高校生のときは本当にとんでもないことを問題児でした。家族にも大変な迷惑と心配をかけたんです。本当に申し訳ないことをしていました。
そんな時は周囲にいる大人も自分が問題を起こしておかしいと思っていたけれど、「声をかけるの怖い」とか「言っても無駄」などあって僕に声かけることは無かった。

僕はそのときに「誰か世の中の大人たちは声かけてくれないのかな」と思ったわけです。

あるとき高校の同級生たちが僕に関心を持ってくれたんです。「ドラゴン桜」というマンガがあるんですけど、そのマンガのプロジェクトを僕のために作ってくれた。

「学年最下位のお前が東大に行ったら、ドラゴン桜を超えるよね」という話になって、プロジェクトを作ってくれたんですよ。

僕はそれで嬉しくなっちゃって、他人に関心を持たれるなんて数年ぶりだったので、「これは頑張るしかない」と。

ほとんどの同級生が僕をけしかけて、悪ふざけだったと思うんですよね。ただ僕は自分に関心持ってもらえた。

ちょっとみんな気にしてくれてるということ自体が、僕の頑張る原動力になって、その結果として東京大学に入ったわけです。

けれど自分のことだけではなく、他のことでも人が関心を持つことで意識が変わるじゃないかなと思って大学生活を過ごすようになりました。

本当にそうかなと思っていたら、本当にそうだった。色んな社会問題の現場に僕は大学生活の最初の頃に行ったのですが、そこにいくとみんな色んな現場で同じように無関心の構造があった。

もっと関心をもって欲しいのにと。例えば障害者の働く施設に行ったことある人いますか? 実は僕らのリディラバはスタディ・ツアーで行くんですね。最初は僕らは「仕事の邪魔して悪いな」と思ってるわけですよ。

ところが実際に行ってみるとと一番元気なのは誰かというと、現場で働いてる人なんですね。みんなの仕事ぶりとか、例えばチョークを切ってるのとか見て「すごいな」と思う。

この「すごいな」の一言が実は働いてる障害者の人には「私の仕事はこんなに認められてるんだ」ということがある。ちょっとした関心を持つだけで、実は現場の人は頑張るというのがあって、そういうこと大事だなと本当に思ったんですよ。

大学3年生になって、僕がリディラバを作ろうと思った時に、社会問題をなぜ解決できないのかなと改めて考え直しました。

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結論としては、まず1つ目は興味がないからですよ。皆さん、全然興味ないんですよ、社会の課題なんて、自分に関係ないから。

2つ目が、可視化されてないんですね。何を持って社会課題とするかわからないから、関わりようもないし、興味の持ちようもないというのが2つ目。

最後、関与の仕方も分からないと。たむろしてる例えば昔の僕のようにオレンジ色の髪の毛の奴に声かけるの怖いわけですよ。

別に不良とかに限らず、です。例えばホームレスの方とこの1年間で5分以上話した人、どれくらいいるか分かんないですけど、すぐホームレスの方に話しかけることははそんな多くの人ができるわけじゃないじゃないですか。こういう関与の仕方がわからないという壁もある。

今言った話を整理すると、「社会課題」がゴールとしてあった時に、自分に関係無い問題の場合はまず興味・関心の壁がある。その後情報とか可視化の壁があるし、最後に現場に関わる関与の壁もあるよねととなってしまうので、なかなか非当事者が関われない。

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だけど、僕もそうだったように、社会の課題の当事者というのは、当事者だけでは何ともならんから社会の課題なんですよ。

非当事者、関係ない人が、関わらないと、世の中は変わんないですよ。社会問題というのは。それを何とかしたいと思って、この壁を取り払うことを仕事にしようとしたのがリディラバの最初のきっかけです。

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それをこういう形で、例えば現場に行く時に、「ホームレスの方と話しかけやすいようなツアーとか作ったらいいじゃないか」という形で、スタディーツアーを最初は作り始めました。

それをやっているうちに、やっぱりメディアとしての配信することも必要だよねという話になって、社会問題のメディアとして「TRAPRO」というサービスもやっています。新しいジャーナリズムを作ろうと思っています。

最後に、それでも興味がない人もいるよねと。「興味ない人は最初の機会としては強制的に連れて行てしまおう!」ということでして、学校の修学旅行にスタディーツアーを導入してるんですね。

修学旅行をもっと学べる機会にしましょうよという話をして入っていくことをしています。あとは企業の研修をやっていて皆さんが社会課題の現場に行ったりするような研修をしています。

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社会の無関心を何とか壊したいと。僕らがしたい仕事というのは、基本的には社会課題の現場に対するインフラ作りをしたい。つまり道路を作りたいんですよね。

スタディツアーは社会課題の現場へのアクセス

今の社会問題の現場というのは、言ってみたら山奥にある集落みたいな感じなんですよ。獣道しか通ってない。

そこに誰かが道路を通して、誰かが水道管を通さないと多くの人が通っていかないじゃないですか。

僕らがやろうとしてるのは、水道の蛇口を作ったりとか道路を作る仕事と一緒で、いかに多くの課題にちゃんと関心を持てるような道路をつくれるか、というのを仕事にしています。これが僕らのやっていることです。

その活動の1個1個がこういうツアーになっているんです。

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参加者同士の深いディスカッションや交流があるため、参加後に結婚するとか、それを機に移住・定住したり、仕事を変えるという人がいたりだとか、というのが特徴です。

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社会問題をビジネスにするというのは、5〜6年前に絶対無理だろうって言われてたんですが、そこの認識を変えていくためにも積極的にコンテストなどに出ていくこともある時期は多かったです。

リディラバ安部さん受賞歴

結果としては評価された様々なビジネスコンテストから表彰され、昨年度は観光庁の長官賞もらいました。

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また今年度は、安倍首相が推進している観光立国推進会議というところで、6年前に始めたこの活動がそのまま政策になりました。

日本の政策の中では地域課題とか医療とか、幅広い社会問題を観光の要にしましょうというところまで持ってこれました。

また、我々のスタディツアーは一般参加者向けのものだけではありません。スタディツアーは社会課題の現場へアクセスするインフラでありプラットフォームになっています。

その現場へのツアーを修学旅行として取り入れていただいたり、地方自治体の抱える地域課題へ人を送るチャネルとして使っていただいたり、企業の研修として取り入れていただいたり、また、海外の政治家の視察の受け入れにも活用されています。

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スタディツアーを修学旅行のプログラムに導入

修学旅行については、2020年の入試改革などの社会的背景も有り、今学校側からも現在引き合いの強い事業の一つです。私、大学の教員として授業をやっていて感じることが多いんですが、優秀な大学生といっても、問いを解くことには非常に優秀なんだけれども、問いを設定することに関しては、全然優秀じゃないというケースというのがよく有ります。

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それはやっぱり中高生時代の教育の中に課題設定能力を養うプログラムや、課題を解決したいと思わせるような原体験の提供が無いことが原因だろうと。また、仮に解決したい課題を設定できても、チームでディスカッションしながら課題解決を進めていく実践トレーニングのトレーニングもできていない、と。

一方で、学校の先生は教科を教えるプロではあるけど、課題設定能力開発や、ましてや課題の現場に行く原体験の提供なんていきなりやれと言われても難しいし、そもそも全然そのために時間を割く余裕がないんですよね。

だったら、既存の修学旅行の時間を使って、新たに学校の先生への負荷をかけない形で、こういった原体験と学びの機会の提供をしたいなと思っています。

修学旅行や教育旅行に参加している生徒から参加後に手紙やメールが届く事があります。個人的にはショックな事なんですが参加前は「学校では社会とか真面目なことについて話すことが非常に恥ずかしく、後ろ指さされるような事だと思っていた」という生徒が多いわけです。

こういったもじもじしてた生徒たちが、すごい主体的に発言をするようにもなるし、真面目なことについて議論することが楽しいというふうに変わっていくのはやりがいのある仕事だと感じる一方、実際の学校現場では生徒が主体性を持って社会に関わる事に対してネガティブになりやすい状況があるという事に、我々大人側はもっと問題意識を持たなければと思っています。

我々としてはできるか事から進めていくという意味で、今のツアーをもっと教育課程に普及させて、1人でも多くの生徒が、社会を良くしたいという意思とそのための能力を持ってもらえたら良いなと考えています。

同じように自治体向けの事業も最近増えています。いわゆる地方創生と呼ばれるような事業領域ですが、リディラバは別にやみくもに地方に人を送りたいわけではありません。我々がやりたいのは課題解決のための「人材の最適配置」です。

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これまでもスタディツアーでは、課題の現場に人を送客しているわけですが、今までに何人も訪問先の課題の解決を目指して、移住した人がいます。
なぜそのようなことが起きたかというと、それは課題解決能力がある人材と課題の現場のマッチングが起きたからです。自分がそこに行くことで、地域を変えられるという自覚が大事なわけです。

移住を促進するための「TRAPRO移住クチコミ」

今多くの自治体が移住者獲得のために地域の良いところをとにかくアピールしていますが、我々は逆に地域の課題の方にこそ注目してほしいなと思っています。

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その地域をより良くできる体験をしてもらって、それを解決する意欲と能力の有る人がその地域に通ったり住まいを移したりする。そうして地域課題が解決されながら交流人口や移住者が増加していくのが理想状態だと考えています。

それらの支援として地域のリアルなクチコミを集める、TRAPRO移住クチコミというサービスを2月22日にリリースしました。

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仮に、我々のツアーをきっかけに取り組みたい課題を見つけた方がいても、本当にその地域に住めるのかっていうリアルな問題ってあるじゃないですか。

例えば子育て環境とか、医療サービスの充実度合いとか、車が必要かとか。そういうことについて、地元の人からリアルな情報を提供してもらうサービスをやっています。気になる地域に質問をすることもできます。

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こういった地域に関するサイトとか、ツアーとかでまずは地域に興味を持ってもらったり、その地域を体験してもらったり、というところがもっと拡充されるべきだと思います。いきなりうちの地域に来てよなんて話をしても人はそう簡単に移住したりしませんから。

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地域課題にかかわらずですが、社会課題というのはこれまで国や自治体などの行政が扱う事が大きかった分野です。

困っている人はいるし、社会全体として放置しているといずれみんなが困るようになる。

だけど今は当事者を顧客としたところで民間のビジネスとしては成り立たない。こういう分野です。

社会が未成熟な状態、たとえば日本の戦後のように国民全体が食べることにも困っていた、こういう状態ではこれらの課題解決を行政が扱うというのは非常に合理的です。

しかし社会が成熟してくると課題は多様化します。その状態では課題の把握もその解決策の実行に関しても行政だけでは追いついていかない。

これを「新しい公共」として事業性を持ち解決していくのがソーシャルビジネスと言われるものであり、ぜひこの動きを一つの産業そして大きくしていければ、と思っております。

ぜひみなさん一緒に社会を変えていきましょう。

ご清聴、どうもありがとうございました。

(終)

編集チーム:小林 雅/城山 ゆかり


リディラバ安部さんは2016年9月13日開催予定の「ICC/AIESEC ソーシャル・イノベーション・カンファレンス2016」に登壇します。学生は参加費無料です。是非ご参加ください。

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ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。