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4. 社会にとって良いことと事業の成功を合わせるのがリーダーの仕事である【終】

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ICC KYOTO 2025のセッション「復活企画 最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?」、全4回の最終回は、短い時間軸で勝負を迫られるスタートアップが理念を前にしてどうあるべきかを取り上げます。「理念を後回しにしなくて済む方法は?」「理念を建前にしないマインドとは?」。議論を締めくくるのは、スピーカーによる熱いメッセージです。最後までぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。

【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 5B 
復活企画 最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?
Supported by EVeM

(スピーカー)

永田 暁彦
UntroD Capital Japan
代表取締役

仲山 進也
仲山考材
代表取締役

松井 しのぶ
ユーザベース
上席執行役員 CHRO

松尾 真継
青曜社(せいようしゃ)
代表取締役

(モデレーター)

麻野 耕司
ナレッジワーク
CEO・CPO

『復活企画 最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?』の配信済み記事一覧


短い時間軸での勝負を迫られるスタートアップはどうすべきか

麻野 先ほどの永田さんの話(前Part参照)はその通りだと思っています。

これまで10年ほどICCに参加していますが、とても印象に残っているセッションがあります。

LITALICOのCEOの長谷川(敦弥)さんが理念の大事さをずっと語っていて、会場にいた経営者の方がが「そんな理念で業績は伸びないんじゃないですか?」と言ったのです。

それに対する長谷川さんの返しが「何を言っているんですか、理念を実践するから業績が伸びるのです。倒産ギリギリの状態でも理念を実践するべきだと伝えるからこそ、理念が浸透するのです」というもので、それがめちゃくちゃ印象に残っています。

トレードオフではなくて直列にあるものだなと。

時間軸というものがありますが、スタートアップはそれをマネージするのが難しいと思っています。

つまり、この月にこれだけ業績を上げなければもうVCから出資されなくなるので、お題を与えて考えさせたいのだけど案件を落としたら終わるので、マイクロマネジメントをしないといけないという状況なので、時間軸が重要です。

ですので、お題を与えられるだけの長い時間を取れる経営をすることが勝ちにつながると思います。

とにかく投資家と信頼関係を作り、多めに資金調達をし、足元の業績ではなく中長期で考えられるようになると理念にも取り組みやすくなると思いました。

でもスタートアップは短い時間軸で勝負をしなければいけないことがあるので、今日出てきたアプローチはスタートアップにとって難しいのではと思います。

先に話した状況から、スタートアップではどうしても理念を後回しになってしまう、それにどう立ち向かうべきかについて聞いてみたいです。

実は1つ前のセッションは新規事業がテーマでしたが、業績のためには経営者がワンマンになるしかないという話だったので、このセッションとのギャップを感じています。

自社成長、株主還元、社会還元が全てつながるヘラルボニー

永田 僕は今、ヘラルボニーの経営にも携わっています。

今月オールハンズ(ミーティング、全社員出席会議)がありました。

ヘラルボニーは、社会にとってめちゃくちゃ良いことをしようとしている会社です。

それは麻野さんのいう理念だと思うのですが、一方、ずっと数字の話をしているのです。

なぜなら、障害のある作家に本当にお金を届けようとすると、売上を上げなくてはいけないからです。

社会にとって良いことと自分たちの目の前のお客様に対する売上を上げることが一直線につながっている状態であり、これは売上の一部が作家に還るという革新的なビジネスだからです。

シンプルに、目の前の売上を追いかけ、年度目標を達成する。

そうすると、自分たちの成長、投資家への利益還元、社会への還元が全てつながるのです。

僕は、社会にとって良いことと事業の成功を合わせるのがリーダーの仕事ではないかと、常々思っています。

松井 先ほど、意味付けの話の際、整合していることが必要だと言いましたが(Part.2参照)、戦略が理念と合っていれば数字はそれに基づいて計画されますよね。

理念は「be true」、バグは公表すべき?

麻野 大前提として、皆さんと同じような立場でそういう経営をしたいと思っています。

この前あった事例として、プロダクトのシステムにバグがあって、それをお客様に言うかどうかについて議論がありました。

営業は、「言うほどの障害ではない、前の会社だったら、こんなことはいちいち言わなかった」と言いました。

でも会社の理念である行動指針の一つに「Be true」で、悪いことも含めて開示するというものです。

SaaSのビジネスモデルなので、少しごまかして短期で得をするよりも、誠実でいたほうが長期的には勝てるという考えがあり、長期でお客様と付き合えることが大事だからです。

法務も、開示義務はないので言わなくていいと言いましたが、僕からすれば迷う余地はなかったのです。

どんなに細かい話でも、企業理念に基づくなら言うべきだと思いました。

でも、僕がいなければ、その声に押されて言わなかったかもしれないと思ったのです。

僕は物事を長期的に見られていますが、現場のメンバーはその月、その半期で戦ってくれているので、目の前の案件を取るには言わないほうがうまくいくみたいなことがあって、短期的に負けてしまうかもしれないと思うのです。

そういうシーンで、どういうマインドを持ってもらうようにすればいいか、どう立ち向かえばいいかについて聞いてみたいです。

松井 それこそ、麻野さんがそういう考えを発言することの繰り返しなのではないでしょうか。

私たちも昔、カスタマーハラスメントを経験しました。

とても大事なお客様から自社の営業がカスハラを受けていて、それについて指摘をすると、そのお客様とのビジネスがなくなるかもしれないからと、現場は我慢していたのです。

でも、「なくなってもいいから、あなたたちの安全を確保するのが会社の役割だ」とリーダーが示すと、現場メンバーも、会社にとっての大事な軸は何なのかと理解しますよね。

具体的な事象の積み重ねなのではと思います。

先ほどの例で言うと、麻野さんの口から開示すべきだと聞いたら、開示してもいいんだと思えるのではないでしょうか。

麻野 もちろんそうなんですけど、そんなに簡単には……。

松尾 先ほど、麻野さん自身が自分で答えを言っていた気がします。

「理念に基づいてこっちに行くと、一時的には業績に響いてしまうかも」と思っても、それでも理念を貫ける余裕を作っておくのもリーダーや経営者の仕事だとおっしゃっていましたよね。

みんなで困難を乗り越えた時のパワー、その後に生み出されるものは大きいからやっぱり貫いて良かったと思える結果になる。

そういう余裕を作って経営してきたとおっしゃっていたので、それが答えなのでは?と思って聞いていました。

Be trueは理念というよりも、行動規範ですよね。

永田 でも麻野さんの人生において、それで勝利した経験を持っているということですよね。

それが何よりも大切な気がします。

僕はいろいろと飲み込んできたものが多く、それを持っていないので……。

麻野さんの場合は、それが理念に対する向き合い方であり、その成功体験を、組織にどう落とし込めるかが大切なのではないでしょうか。

麻野 そのスタンスを持ちつつ、中長期で勝てるイメージですよね。

永田 そうですね、それを想像力に任せるのか、経験に落とし込むかの違いはあるのではないかと思います。

松尾 永田さんもそうだったのではないかと思いますが、どういう社会にしたいか、どういう世界にしたいかという考えが理念になる気がします。

その理念を実現するためには鬼にも悪魔にもなるというのなら、それはその通りだと思います。

僕は先ほどから理念、理念と言っていますが、素晴らしい社会の実現を目指す理念であっても、実現する過程では思うように進まず泥をすすることも辛いこともあると思います。

その過程ではリーダーの役割として周囲が返り血を浴びなくても済むようにガードすることもあるかもしれませんが、、やっぱりどんなに大変でもその理念の実現を通じてみんなを幸せにするのだという覚悟がリーダーには必要なんだと思います。

あともう一つ、感謝がないといけないと思います。

僕は今、チームメンバーという人はいなくて、1人で色々な会社を手伝う仕事をしていますが、一緒に仕事をし、同じ空間で空気を吸って、生かしてくれていたことに対する感謝は、リーダーは一瞬たりとも忘れてはいけないとすごく思っています。

麻野 大事だと思います、ありがとうございます。では、会場から質問を受けようと思います。

Q 属人的な方法で進めるのもよいのでは?

石田 遼さん NEW LOCALの石田と申します、永田さんに質問です。

最高のリーダーは自分がいなくても大丈夫な状況を作るべきだと思う一方で、ソフトバンクやユニクロ、テスラなど、日本やアメリカの時価総額が高い会社はリーダーが強い会社ばかりです。

彼らがそういう姿勢だったら、会社は今の状態にはなっていないだろうという思いもあります。

昭和の時代から儲けている会社は良いのですが、これから事業を始めるにあたっては数十年、属人的なやり方で進めるほうが良いのではないかという気持ちがあるのですが、どう考えられますか?

A 自己拡張し続ける組織を作りリーダーシップを発揮

永田 誤解を与えたかもしれませんが、僕が言ったのは、「自分が辞めても伸び続ける状態の会社で、自分がリーダーとして伸ばし続ける」ということです。

そういう状態の会社に圧倒的なリーダーである自分がいる、という状態を目指すべきだと思っています。

永遠にサクセッションができない社長がいるというのも事実だと思います。

今日聞かれた3つ目の問い(Part.1参照)についての僕の答えは、一休の榊(淳)さんです。

彼は『DATA is BOSS 収益が上がり続けるデータドリブン経営入門』という本を書かれていますが、彼のしていることは、誰でも一様に理解できるものに落とし込むという行為だと思います。

けれど彼のリーダーシップは、決してデータにまみれてデータで終わっているわけではないのも間違いないので、そのどちらもできることが重要だと考えています。

ですので、自分がいなくなっても伸びる組織を作りながらも、自分がいるからこそさらに伸びる状態を作るというのが、最初に話した定義です。

麻野 質問を変えると、孫(正義)さん、柳井(正)さん、イーロン・マスクみたいな人がいる会社から、彼らのような人が生まれるのだろうかという問いに近いと思います。

永田さんは、生まれると思っているということですよね?

永田 いや、生まれないです。

生まれないから、仕組みとデータと文化で乗り越えているのです。

それが先に話した、本田 宗一郎がいなくなっても本田技研が伸び続ける理由です。

世界で50年、100年続いていて伸び続けている会社では、創業者のようなすごい人が何度も生まれているわけではないですよね。

それでも伸び続けている理由について分析することが大切で、それでも時々、豊田 章男さんのような人が生まれればブーストになるということではないかと思っています。

麻野 個人が担保していたものを、組織として実現できるようになると。

永田 そうです。

それで、時々、さらにすごいリーダーが現れることはもちろんありえますが、「すごいリーダーが現れないと伸びない組織は本当に強いのか?」という問いが残ると思います。

Q 松尾さんにとって「理念」とは何か

三輪 開人さん e-Educationの三輪と申します、松尾さんに質問です。

スープストックトーキョーが昔から好きで、理念の他に、五感と想いみたいなものがあった気がします。

松井さんのおっしゃった北極星のようなものとは違う、人によってイメージも変わってくるようなものが理念ではないかと思いました。

松尾さんにとって理念というものは、北極星のようなものなのか、核なのか……、理念とは何かについて、どう考えるか教えてください。

A 哲学のようなもので、大きな存在

松尾 僕はもうスープストックトーキョーの人間ではないので、あまり語るべきではないのですが、理念を定めた際は、「どう生きたいか」というようなものでした。

スープストックトーキョーというブランドを、僕はずっと「スープストックトーキョーさん」と呼んでいました。

ブランドを一人の人間だと思っていて、この人間はどう生きているのか、こういう時にはどう考えるのか、目の前に体温が下がっている人がいたらどうするんだろう、と考えていました。

ですので理念は、一つの物差しや寄る辺であり、自分もそう生きたいと思うモデルのようなものとして定めました。

理念に対して「私もそういう人でありたい」と共感する人が集まると、どんどんアドリブが生まれて、理念に基づいた仕事の仕方になっていくという経験を実際にしました。

理念を浸透させていくときの僕は、「自分も一緒に取り組むから、こういう生き方をしようよ」と促すようなリーダーでした。

でも、ピンチの時は違いました。

促す余裕がなく、四の五の言わずにやれ!と言っていた時もあります。振り返ると反省もあります。

理念は、何のために毎日大変な仕事をしているか、仕事を通じて自分は社会にどう貢献したいのかといつも問うている、哲学のようなもので、大きな存在でした。

ですので僕は、これからお手伝いする会社でも、そういう理念を定めていけるといいなと思っています。

松井 最近、経営者は哲学を学ぶと良いとよく聞きます。結構本を読んでいらっしゃるのでしょうか?

松尾 いや、全然(笑)。

この間、滝行に行ったのですが、ある人に「そんなの水浴びだ」と言われたばかりで、自己修養が足りないなと思っています。

哲学は学びたいと思っています。

麻野 ではそろそろ終了時間なので、最後に一言ずつメッセージを頂いて締めたいと思います。

では、プレゼンと同じ順番で、仲山さんから。

“たまごち”を得られる良いお題が大事

仲山 ありがとうございます。

自律自走という言葉は一緒にして使いがちですが、調べてみると、「自律」は、どうすればうまくいくかのルールを自分で決めながら進めていける状態で、「自走」は動力を自力で得られる状態だと学びました。

ですのでメンバーを、例えば先ほどの、お客様からのありがとうというフィードバック(前Part参照)を自分の動力にして走っていける状態にしてあげられることです。

ビジネスモデルがしっかりしていないと、お題に取り組む十分な時間は取れず、すぐに結果が出る方法を取らなくてはいけなくなりますので、良いお題を作れるかどうかは腕によると思っています。

お客様からありがとうと言われて頑張ろうと思えることについては、僕は「魂のごちそう」、略して「たまごち」と呼んでいます。

たまごちをゲットできるような良いお題を与えることが大事だと思います。

麻野 ありがとうございます。

組織の科学で永続する組織は作れる  

永田 今回セッションのお題を見た瞬間、感覚的、感情的な話にどうしてもなりやすいのではないかと思い、その時から話すことを決めていました。

理念を成長戦略にいかに落とし込むか、そしてリーダーシップとチームマネジメントをどうサイエンスするのか。

Appleは偉大なる創業者を失っても伸び続けているわけで、経営者、リーダーとして、サイエンスできるものには、精神論ではなくサイエンスする形で真剣に向き合うべきだとずっと思っています。

僕は、永続的に続く組織にすることは、できると信じています。

時代が変われば必ずバグや変化が起こるので、それへの対応も組織の科学に巻き込むことがとても大切だと思います。

色々なパターンの答えはあると思いますが、できると思って、自分がいる今の段階でチームにそれを実装する努力をすることが最高の成果を生み出すリーダーシップだという仮説を持って、今も僕は戦い続けています。

皆さんの答えもいつか教えてください、ありがとうございました。

麻野 ありがとうございます。

日本を元気にするリーダーシップの型を探求したい

松井 ありがとうございます、皆さんのお話は全部参考になりました。

今日は、全部自分への宿題だと思いながら話していました。

ユーザベースも、それ以外に携わっている会社もそうですが、私にとっての意味付け、ここにいる意味としては、元気のない日本を元気にしたいという気持ちがすごく強いです。

リーダーシップ理論は、アメリカの男性社会で生まれたものだと思っています。

これを日本らしいリーダーシップ論に展開していくのが自分の中でずっと課題というか、答えはまだ出ていませんが、反芻をしています。

ぜひ、皆さんと一緒に作っていければいいなと思っていますし、先ほど成長戦略について言及がありましたが、まさにその通りだと思いました。

EVeMも型だと言っていますし、人事の世界ではカルチャーも戦略的に生み出すものだとよく言われます。

答えは1個ではないと思うので、日本を元気にするリーダーシップの型のシリーズについて、こういう場でみんなで勉強していければいいなと思っています。

今日はありがとうございました。

麻野 ありがとうございます。

では最後に松尾さん、お願いします。

実現のために動くリーダー像を設定し演じるべき

松尾 ありがとうございました。

やはり社会をどうしたいのか、どう生きたいのかという願いや理念をしっかり定めるべきです。

でも実際は、人間は弱いものなので、できないこととか「そんなこと言っても」と思うことがたくさん起きます。

それでも実現する覚悟を持って、実現のために動くリーダー像を設定し、演じるべきだと僕は思っています。

演じ続けていれば、気がつくと引き出しができたり、そういう人に近づけたりする可能性があるので、これも一つの哲学かと思います。

日本を元気にしたい、世の中の体温を上げたい、人間性を回復したい、など、社会をどうしたいかということを自分に問い続けたいですし、自分が関わる色々な人たちと一緒に考え、話し合いながら仕事をしていければいいと思っています。

これからもよろしくお願いします。

麻野 ありがとうございます。

ということで、最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントについてのセッションでした。

僕もすごく色々なことを考えるきっかけを頂きました、ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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