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「おしい!広島県」「デーモン閣下のがん検診キャンペーン」——なぜ行政がこれほど大胆なマーケティングを打てたのか。その原点は、孫正義との競争で学んだ「インパクトの作り方」でした。経営者だからこそ持てる首長の資質とは? そして、ミッションを強く意識する起業家は行政に向いてると熱く語ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 10E
特別企画 起業家・経営者から県知事になる
Supported by EVeM
(スピーカー)
湯﨑 英彦
広島県
前知事
(モデレーター)
三浦 崇宏
The Breakthrough Company GO
代表取締役
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▶『特別企画 起業家・経営者から県知事になる』の配信済み記事一覧
インパクトを生んだ「おしい!広島県」キャンペーン
三浦 湯﨑さんが実行されたことで言うと、例えば有吉弘行さんを起用した「おしい!広島県」キャンペーンとか、特産品のレモンをアピールしてプロダクトの価値を向上させたとか、かなり先進的な取り組みですよね。
▶広島県 / おしい!広島県(MEFILAS)
▶広島県でレモンが有名なのはどうして?(ひろしまラボ)
マーケティングの概念を取り入れた、本職である僕から見てもすごくイケてると思える取り組みをたくさんされていますが、どうして実行できたのでしょうか?

湯﨑 会社を経営していた時に学んだことです。誰からかと言うと、孫さんです。
三浦 ライバルですしね。
湯﨑 ライバルです。
DSLという事業において、僕らが4,000円でサービスを出すと、孫さんは2,000円くらいで出すのです。
今だと難しいかもしれませんが、例えば街中にレースクイーンみたいな人たちを……。
三浦 いましたね、当時。
湯﨑 はい。
三浦 会場の皆さんは想像できないかもしれませんが、街中で水着の女性がサンプルを配っていたのです。
▶22年の歴史に幕。赤い袋で一世を風靡した「Yahoo! BB ADSL」が切り拓いた日本のブロードバンド(ソフトバンクニュース)
今思うと、訳が分からなかったですよね。
湯﨑 パラソル隊と言って、パラソルを持ってレースクイーンのような格好をした人たちです。
僕らのサービスは、家に端末を置いてもらうというもので、(パラソル隊は)その端末を無料で配っていました。
すごくインパクトのあるプロモーションで、すごくインパクトのあるプライシングで、モデムを配るという。
結構なコストがかかるわけですが、そのおかげで需要は一気に3倍くらいの勢いで伸び始めました。
それで、「ああ、インパクトってこういうことか」と理解し、それを作ることの大事さをものすごく学びました。
「おしい!広島県」も、インパクトのあることをしようという考えで始めました。
湯﨑 当時、樫野(孝人)さんという方がいまして…、IMJは分かりますか?
三浦 はい、博報堂の子会社だったデジタルマーケティングの会社ですね。
今はアクセンチュアに併合されています。
湯﨑 なるほど、彼は当時IMJの社長でした。
IMJは、インターネットの黎明期にできた、ウェブ関連会社ですが、その社長だった人が、僕の知事選とほぼ同時期に神戸市長選に出馬したのです。
三浦 そうなんですね。
湯﨑 彼は当選しなかったので声をかけて、僕ら広島県のCMO(広報総括監)になってもらったのです。
三浦 なるほど、行政にCMOというポジションを作り、しかもIMJの元社長を据えたのですね。
湯﨑 そうそう。
三浦 めちゃくちゃイケてる人事ですね。
湯﨑 それで彼が主導しました。福岡のプロデューサーである江口カンさん。
三浦 相撲のドラマ(Netfilx『サンクチュアリ -聖域-』 )のプロデューサーでもありますね。
湯﨑 そうそう、彼を引っ張ってきてくれて、「おしい!広島県」をローンチしました。
▶︎おしい!に関する動画一覧(YouTube広島県公式チャンネル)
三浦 良い企画でしたよね。
湯﨑 戦々恐々としていたらしいです、行政でこんなことをするなんてと言われるかなと。
怒られると思っていたようですが、僕は一発でOKを出しました。
なぜなら、孫さんの作ったインパクトがやはり頭にあったからです。
今の首長に欠けている経験
湯﨑 実は、もう一つ面白いことをしました。
広島県に来ると分かるのですが、デーモン閣下とがん検診のキャンペーンを行いました。
▶「がん検診へ行こうよ」推進会議(広島県)
三浦 悪魔に、がん検診のキャンペーンをお願いするんですね(笑)。
湯﨑 悪魔が出てきて、「がん検診に行け」なんて言われるわけですよ。

三浦 めちゃくちゃ余計なお世話ですね。
湯﨑 怒られるのですが、でも、ものすごいインパクトですよね。
だから、認知度がめちゃくちゃ高くなりました。
がん検診の受診率はあまり増えなかったのですが。
三浦 増えなかったんですね(笑)。
湯﨑 あまり増えなかったのです、そこには違うハードルがあったのですよね。
これもパイプライン分析(※)ですよね。
▶編集注:パイプライン分析とは、目標達成(今回の場合は「がん検診の受診」)に至るまでの一連のプロセスを細分化し、「どの段階で、どれくらいの人が脱落しているか」を可視化してボトルネックを発見する分析手法のこと。
認知して、行動変容していく一連の……。
三浦 どのタイミングで止まっているかを分析して、PDCAを回しますよね。
湯﨑 認知までは良かったのですが、その先の、行動が変わるためのワンプッシュ、ツープッシュが十分ではなかったのです。
いろいろ試行錯誤しながらでしたが、経営者としての経験を応用させました。
マーケティングができたのは、経営をしていたからだと思います。
三浦 競合と比較されるうちは少し安くしても全然ダメで、競合に比べて圧倒的に勝つくらいのインパクトを持っていないといけない、あるいはカスタマーやユーザーが驚くような何らかの施策を打たないと、そのコミュニケーションに意味はないと思います。
これは、マーケティングの仕事をしていると当たり前のような大事なことですが、それを経営者あるいは行政の方が分かっていることはめちゃくちゃ少ないです。
ユーザーの、人の心を動かすためのツボみたいなものを分かっている人がリーダーになることが、いかに大事かということだと思います。
湯﨑 そういう意味で、僕は起業して一定のプロセスを経て、失敗してもうまくいっていても、そこから学んだ人は、実は首長に向いていると思うのです。
三浦 その通りですね。

湯﨑 議員ではなく、やはり首長なのです。
パフォーマンスを高めるための組織マネジメントが必要なので、そのためのマーケティング的なもの、ツールや考え方を行政の中で応用していくと、パフォーマンスがすごく向上すると思うのです。
今の首長には、そういう意識が全くない人が多いです。
知事レベルになると意識がある人も多いですが、市や町だとかなり薄いので、そういう考え方ができる人が入っていくと、劇的に変わっていくと思いますね。
三浦 本当にそうですね。経営者として上場したり、M&Aでエグジットしたりした人から、その後何をしたらいいか分からないと最近よく相談されます。
湯﨑 選挙にどんどん出て、首長になってほしいですね。
三浦 そうですよね、資金力もあるし、課題解決する力やリーダーシップもあるし。
上場したりエグジットしたりして、暇になったからと趣味に生きる人もいて良いと思いますが、何をしたらいいか分からない方がいらっしゃるのであれば、ぜひ行政や地域を盛り上げることにその力を使ってもらえると、めちゃくちゃ生きがいのある人生になりますよね。
湯﨑 そう思います、特に若い人ですね。
若くて、いろんな経験をした人が行政に入っていくのを後押しする活動を、僕はこれからしたいと思っています。
ミッションを強く意識する起業家は行政に向いている
湯﨑 政治家の訓練というか……、自民党青年局もありますが、基本的には年功序列になっていますよね。
三浦 完全なる年功序列ですね。
湯﨑 青年局にも、ものすごく優秀な人はたくさんいますが、おじいさんたちには勝てないですよね。
三浦 順番待ちがありますよね。

湯﨑 それがすごくもったいないと思っています。
ですので、起業経験のある人が首長になって、そこでインパクトを作って、地域から変えていくのです。
課題は地域の方が多いので、地域から変えていけば日本も変わります。
そういう育成プロセスを経て、大臣でも総理でも国の政治を動かすポジションに就いていくようになると、すごくパフォーマンスが向上するのではないかと思います。
三浦 湯﨑さんもそうですし、福岡の高島(宗一郎)市長、静岡の鈴木(康友)県知事など、民間でのイノベーション経験のある方が行政や地域のイノベーションを行い、国にとって面白いモデルとして評価されれば、国が変わっていくと思います。
成功事例によって世の中を変えることができる、めちゃくちゃ可能性のある職業ですよね。
湯﨑 今、挙げた2人の名前を聞いて、さすが三浦さんだと思いました。
ああいう人たちが活躍して、影響を与えてくれるとすごくいいなと思っています。
三浦 僕もいろんなスタートアップの投資ファンドを持っており、最近だと、NOT A HOTELや令和トラベルなど、2回目以降の起業にチャレンジしているシリアルアントレプレナーに出資しています。
今、起業という戦いが、湯﨑さんが起業した30年前やメルカリができた10年前に比べて、めちゃくちゃハードになっていると思います。
何か解決したい課題がある、テクノロジーを世の中に伝えたいという方もいると思いますが、そうではなく、世の中に何かインパクトを与えたい、自分の力で社会に貢献してみたいという気持ちで、ジャンル関係なく起業家になりたいと思う人がいますよね。
ああいう人たちは、政治家に向いていると思います。
湯﨑 向いていると思いますね。
三浦 国会議員ではなく、地域行政の首長になり、ライトハウスケース(行く手を照らす灯台のような存在)を作っていくのは、めちゃくちゃ良い人生になりそうですよね。
湯﨑 そうですね、営利事業を行っている場合でも、ミッションを強く意識する人は、お金を儲ければいいと思っている人とは少し違いますよね。
とにかくIPOをして、何かエグジットして、豊かな生活を送れると嬉しいみたいなコミュニティに入りたいという人もいるけれど、そうではなく、こういうふうに変えていきたいなど、ミッションを強く意識する人は、すごく行政に向いていると思います。
三浦 そうですよね。
若い政治家や若いリーダーが今の日本にすごく必要で、増えていくことがすごく重要だと思っています。
湯﨑 すごく大事だと思います。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成


