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「極めよう、『食』と『心』を。」【F17-7D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その4)は、自炊することと心身の健康の関わりについて議論しました。普段なかなか料理の時間がとれない方も是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 7D
極めよう、「食」と「心」を。
【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 7D
極めよう、「食」と「心」を。
(スピーカー)
川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職
高島 宏平
オイシックス株式会社
(現オイシックスドット大地株式会社)
代表取締役社長
松嶋 啓介
株式会社Accelaire 代表取締役
KEISUKE MATSUSHIMA 総料理長
(スピーカー&モデレーター)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
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最初の記事
【新】極めよう、「食」と「心」を。【F17-7D #1】
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食には「アッパー系」と「ダウナー系」の2種類がある(石川善樹)【F17-7D #3】
本編
川上 石川さんが今、食事の「量」の話をした時にふと思ったのが、”Mindless Eatng”(邦題『そのひとクチがブタのもと』)という本を書いたマーケティングの教授(ブライアン・ワンシンク氏)が言っていたことです。
それは、「注意を向けて食べることによって体重が減る」という研究結果が出ているということです。
▶︎Brian Wansink, Mindless Eating: Why We Eat More Than We Think
何人でご飯を食べると体重がどれだけ増えるかという研究結果も出ているそうです。
松島さんに振られた質問とリンクして思ったことですが、禅宗の寺の修行道場では食事は三黙業の1つと言われています。風呂と用を足す時と食事の時は黙っていなければいけません。
最近よくマインドフルイーティングという言葉を聞きますが、結局は、少ない糧であっても、食べ物や噛むということ等全ての行動に対して注意を向けることによって満腹中枢が刺激され、満足感が味わえるということです。
それは量にも影響してくると思うのです。その時に、食事は、「糧」と考えるのか、楽しいものだと考えるか、結構そこで分かれて来ると思いますが、皆さんはどうですか。
高島 今の川上さんのお話に関連して僕が知ってることを言うと「人間は自分が食べる量を自分で決めていない」という研究があります。
食べるのを終えるのは満腹になったからではなくて、隣の人が食べるのを止めたから、時間が来たから、待ってる人がいるから等の理由で食べるのを止めているので、極めて1人分というものを自分で認識できていないという研究だったと思います。
そして、1人で食べる時と10人で食べる時では、平均して1.7倍食べる量が違うそうです。
喋ることによって、10人で食べることによって、そして他の人がまだ食べ続けることによって食べる量がどんどん増えてしまいます。
黙業というのは、黙ることによって食べることをコントロールするということですね。
自炊によって食事は自然とヘルシーになる
石川 量をコントロールする時に今一番いいとされているのが、自分で料理をすることなんです。
自分で料理をすると量も減るし、油と糖をだんだん使わなくなるのでヘルシーになっていきます。
高島 それは見るからですか。
石川 そうです。
世界の国々で一日の平均料理時間と肥満率は綺麗な相関関係にあるという研究があります。
その国の料理時間が長ければ長いほど、肥満率は低いということです。
そして、なぜGoogleが最近、料理教室を社員向けにやっているのかという話があります。
Googleは色々と試してみたのです。社員向けにヘルシーなものを置いても、ヘルシーなものはあまり美味しくないので食べてくれず、色々試した結果、料理を提供するよりも(社員を)作り手側にした方が早いのではないかということになったのです。
Googleのマウンテンビューのオフィスにキッチンまで作って料理を教えたところ、すごく上手くいき、ニューヨークのオフィスでの実験も上手くいったので、今度料理教室を世界展開するようです。
料理を自分ですると自然と健康になるというのが今のところ言われている最も有力な説です。
高島 食事を糧とするなら黙って食べた方がいいですし、また会社のことを考えるとみんなにコミュニケーションをとってもらいたいというのがあり、これをどう両立していくのかは、会社から見ると難しいですよね。
石川 目的は健康ではなく社員の交流を促すことなので、Googleでは料理を一緒に作る過程でコミュニケーションを取ってくださいということになったようです。
そして、作った料理で他の社員をもてなしたりすると一石何鳥にもなるぞということのようです。
「これを食べたら健康になる」とか「あれを食べるとパフォーマンスに悪い」とか今まで僕達はミクロに見すぎてきました。
それよりはもっと大きく見たときのこと、つまり自分で料理をするということが、どうやら健康やパフォーマンスに一番効きそうだということが僕達研究者の視点を大きく上げている気がします。
何かこの食べ物をとったら、劇的に健康状態やパフォーマンスが良くなるというようなことはないはずですよね。
高島 個別の食べ物の何が身体に良い・悪いといった栄養素のことよりは、まず食事全体の量をコントロールするというのが非常に重要で、その1つの方法として料理することがあげられますし、他の方法として黙って食べるということもあるということですね。
石川 松嶋さんのところでは今料理教室をやっていますよね。
時間がない中でも簡単な料理を作ることが役立つ
松嶋 そうですね、料理教室は続けてます。
人間、生きていく中で1日3回食事をすると思います。
3回するのが正しいかどうかという議論も最近出ていますが、とにかく1日最低でも1回は食べますよね。
そして食べ手だから何となく料理の事が分かってるよという人ばかりなんです。
しかし、料理の理をちゃんと親や先生などから本気で学んだことがあるかといえば、今いる世界の人間の90%は誰からも教わったことが無いと思います。
彼らは「食べ手」なのです。
そういう人たちに、プロとしての作り方や料理の考えをちょっと教えてあげるだけで、毎日の生活が豊かになると思いますし、しかも「これだけでいいのだ」というコツさえ教えてあげれば、料理は結構簡単にできます。
時間の配分もしっかり考えると料理をすることも全くストレスにはならず、しかも自分で手間をかけると美味しいものが食べられるので作ることが楽しくなり、作ることが自分のマインドフルやストレス発散になります。
そうして出来上がった料理を食べる方が、野菜の本来の味を感じたりと生きる喜びに繋がり、生き抜く力になればいいなと思ってるので料理教室をやっています。
高島 日常的に料理をする方はどれくらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
料理するのがいいと分かっていても、時間等色んな都合でなかなか作れないといった場合は何から始めたらいいですか。
松嶋 生産性やチーム力の話をしていますが、まずは自分の会社のパーティーの料理を自分たちで作ったらどうですか。
簡単なもの、難しいもの等色々あると思いますが、缶を1つ空けてその中身をトーストに塗って分かち合うという作業だけでも意味があると思います。
まずは朝食の「一汁一菜」から始めよ
石川 料理研究家の土井善晴さんという方が書かれた『一汁一菜でよいという提案』という本がありますが、この本を読むと料理をしたくなると思います。
この方は「とにかく一汁一菜でいい」、簡単に言うと、具沢山の味噌汁を作ればよく、また味噌汁を作るのにわざわざ出汁をとる必要すらないとおっしゃっています。
「旨味は出汁をとらなくても肉や野菜から勝手に出てくるので、まずはご飯と味噌汁と漬物、それさえできればもう十分です。世のお父さん方はまずはこれをやってみたらどうですか。」という本で、まず自分の朝食を作ることから始めるのがいいと思います。
川上 個人的なことで、私には4才の娘がいて今幼稚園に行っているのですが、どんなに忙しくても私はおにぎりを作っています。
おにぎりを私の手で作っているので、それでコミュニケーションになっているのかなと思っていますし、簡単なものだけど中身やのりの包み方を変えるだけで変わってくるので、おにぎり1つでも色々クリエイティブに考え、明日どうやって驚かそうかなというちょっとした喜びを感じるんです。
石川 今の話を聞いて思い出しましたが、幼稚園で子どもたちがお弁当の時間に何を話しているのかを研究している先生がいます。
川上 それ聞きたいです。
石川 日本の先生ですが、聞いてびっくりしたのは、今朝自分のお母さんやお父さんがどうやって自分のお弁当を作ったのか、という話をしているそうです。
川上 泣きそうになります。
高島 頑張ってきて良かったですね。
石川 今日はパパ忙しそうだったからちょっと適当なんだけどありがたいよねといような話をしているそうで、それくらい子どもって親が料理をしている姿を見ています。
人は料理をしている姿を見るのが好き
石川 実は、日本のテレビ番組のほとんどが食の内容です。
世界中そうですが、テクノロジーが発達して、掃除や洗濯等は機械がやってくれるので、人は色んなことをやらなくなりました。
しかし、料理だけはやらなくなっても、(そのコンテンツを)人は見てるんですよ。
人が掃除する番組、洗濯する番組はありませんが、料理はしなくなっているのに料理番組はものすごく増えています。
料理をするさまを人は根源的に求めていて、松嶋さんが仰った自分の組織のイベントを社長が料理するというのは、料理するさまも含めて何か繋がるんだと思います。
なぜ人は他人が料理をするのを見るのが好きなのか?というのは科学の世界でも謎ですが、実際に子どもたちは幼稚園でも話していることなのです。
松嶋 僕は料理することがストレスになっているのが可哀想だと思っています。
川上さんは料理するのが好きだったから典座の修行も楽しかったという話をしていましたが、作るコツを覚えたら、あとは季節がくれる恵みで作るとか、その土地でしかない食材があるといった制限の中で作るとか、自然体でいればいるほどクリエイティブ能力が試されます。
そうやって季節のものや土地のストーリーを込めて作るだけで会話が豊かになるし、そういったところで脳を働かせるには、それだけ自然を見ていなければいけません。
それは僕ら料理人の世界でも同じで、発注表が届いてそれを見ながらチェックだけして料理を作っている人と、市場や山や海に行って料理を作っている人では、全くもって感動の量が違います。
そういったことをするのは、脳を刺激するにもいいですし、手を動かしていると認知症にもならないし、老後にも必ず必要だと思います。
日本みたいに少子高齢化が進む国は、今の年齢で料理を覚えていると絶対老後まで苦労しないと思います。
今こういった年齢の時に料理を覚えていくのが自分たちの家族を構成していく上でもいいと思いますし、料理を覚えてなかったら老人ホームに入れられますからね。
(続)
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続きは 締めのラーメンは横並びで食べよう をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/ 城山 ゆかり
【編集部コメント】
自炊しなければという気持ちにさせられる議論でしたね…!(立花)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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