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戦国時代の抹茶は現代におけるレッドブル(石川善樹)【F17-7D #6】

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「極めよう、『食』と『心』を。」【F17-7D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その6)は、近年世界的に注目されている「和食」やその習慣について議論しました。是非御覧ください。

ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 7D
極めよう、「食」と「心」を。

【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 7D
極めよう、「食」と「心」を。

(スピーカー)
川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

高島 宏平
オイシックス株式会社
(現オイシックスドット大地株式会社)
代表取締役社長

松嶋 啓介
株式会社Accelaire 代表取締役
KEISUKE MATSUSHIMA 総料理長

(スピーカー&モデレーター)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

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最初の記事
【新】極めよう、「食」と「心」を。【F17-7D #1】

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本編

高島 なるほど。この流れで日本の食べ物、和食というのが世界的に見た時にどういうものなのか、というのを知りたいのですが、どうですか。

松嶋 日本食は今世界に注目されていますが、注目されているのが「アッパー系」なのか「ダウナー系」なのかを見ると、天ぷらや寿司、ラーメンが好きだという外国人が多いので、どう見ても「アッパー系」なんですよね。

▶編集注:Part2の議論で、食の領域でのアッパー系の代表として油や糖、ダウナー系の代表として「旨味」という話がありました。「アッパー」の食はどんどん食べたくなること、「ダウナー」の食は深い満足を得られて落ち着くことが特徴だということです。

高島 和食の中の「アッパー系」が今世界で注目されているということですね。

松嶋 しかし日本人でも和食のダウナー系の味に慣れている人たちが多いかといったら、いないですよね。

しかし「アッパー系」のところで踊らされるというのが実はすごく重要だと思っていて、「アッパー系」が注目されているところで言葉を作りながら文化交流させるのがよいのではないでしょうか。

例えば、日本食とフランス料理を融合させ「フュージョン」という言葉で和を広めていくということをする際に、もっと日本の食材をベースにした中での和食の広げ方、展開ができるのではないかと思います。

川上 ダウナー系だと思うものについてなのですが、最近アメリカでは抹茶がやたらとどこでも買えるようになってきました。

抹茶はどうなのでしょうか。科学的にいうとダウナー系になるのですか。

カフェインが入っているけど、テアニンが入っているからどっち寄りなんでしょう。

僕的には「ダウナー系」だと思うのですが。

松嶋 問題なのは、流行っているのは抹茶ラテで、あれは砂糖入れすぎですからね。

川上 抹茶ラテは確かに急に増えましたが、最近サンフランシスコではストレートな抹茶も増えていて、それがどんどん出ているのが面白いなと思います。

純粋な抹茶が大きく出始めているというのは、マリファナが合法化されたのも合わせて、「ダウナー系」を求めているのかなというのは確かに分かります。

お茶は注意力を高めるためのものだった?

石川 抹茶はおそらく刺激があまり無かった時代、例えば戦国時代における抹茶は「現代におけるレッドブル」のようなもので、抹茶を飲むと気を張れていたのだと思います。

今は刺激が強いものが多くなったので抹茶はむしろ落ち着くという感じで、時代背景によっても変わる気がします。

川上 確かに今おっしゃった通りだと思うのが、お茶に関する一番古い文献を見ていると、中国の万里の頂上など遊牧民族に対する国境の兵士には、飲むのではなくて大きな錠剤のような形で配っていたという話です。

眠気覚ましのため、ずっと注意をもっていくようにするために持っていたので、お茶は高揚させるためのものではなく、注意を高めていくということだと思います。

先日の(石川さんとの)対談でお寺の構造の話をしましたが、お茶会の構造も似たような形です。
http://bizgate.nikkei.co.jp/article/127725921.html

緊張感を高めた入り口から入っていき、路地というお茶に通じる庭を通ることでストレスが下がり、中に入った時に緊張感がまたぐっと上がります。

近い距離感で、顔の表情やちょっとした仕草に対して気持ちを配って、お茶を飲み、それによってまた頭が冴えます。

言葉を介さないコミュニケーションを発展させることによってそれぞれを理解できるようになるというのが茶道じゃないかと思います。

私は茶道は得意ではありませんが、心理学的に見たらそうなると思っていて、緑茶はそのための道具だったのではないかと思います。

石川 そう考えると、現代科学は、細かく分解して、この物質が良いとか悪いとか、狭く見すぎてきたのです。

最初の「和食とは何か」ということを広く捉えて、僕が最近知って驚いた話をしたいと思います。

日本人は箸を横に置きますよね。

韓国人は縦に置くので、箸の置き方で日本人か韓国人か中国人かが分かるというのは昔から知っていました。外国人はよく日本人と韓国人の区別がつきませんが、箸の置き方を見れば横に置いているのが日本人だというのが分かります。

なぜ箸を横向きに置くのかを最近教えてもらいました。

川上 それ知りたいです。

石川 なんと、箸は人間界と自然界を分かつ結界らしいのです。

箸を持ち上げて「命をいただきます」というのは、結界を解くという宗教儀式らしいのです。

「いただきます」は結界を解く儀式

川上 ありがとうございます、目が覚めました(笑)。

石川 そういう意識で箸をきちんと横において「いただきます」とすると、なんだか食事が全然違ったものに見えます。

川上 今仰ったことが確かによく分かるのが、「いただきます」という言葉です。

世界中にも「いただきます」という言葉はありますが、日本の人のいただきますというのは英語でGivenという形になり、他の国は「ボナペティ」(”bon appétit” フランス語。)とか。

石川 「召し上がれ」ですよね。

川上 召し上がれというか「いい食事をね」という感じになるのですが、日本では「いただいている」という感覚があるのだと石川さんの話がリンクしました。ありがとうございます。

石川 これは食事だけの話ではない気がしています。例えば挨拶とかも。

例えば会社に入る時もみんな迂闊に入りすぎだと最近思うようになりました、「いただきます」という気持ちで入ってもいいじゃないかと。

私は世田谷学園という曹洞宗が運営する仏教学校に通っていたのですが、学校の入り口に白い線が引いてあり、そこで必ず立ち止まって一礼をしてから入っていました。

川上 それは寺の儀式ですよね、山門で一礼して入り、本堂の前をとおる時に一礼して中に入ります。

石川 それでだんだん気持ちが作られていくところがありました。

現代は、会社に「ふーっ」ときて「ふーっ」とデスクの前に座る人が多いと思いますが、たぶん気持ちの準備が整わないと思います。

ですので、オイシックスが入居している「いちごビル」にも白い線を引いた方がいいですよ(笑)。

「いただきます」という気持ちでみんなが自然界に入っていくんだと。

高島 みんなが(笑)

石川さん、和食に関して1つ話してほしいことがあります。

世界では和食の中での「アッパー系」が浸透しているという話がありましたが、一方で寿命や肥満度と食事の関係でいうと、総合的に和食や地中海食がヘルシーとみなされています。

しかし、和食はそれが十分に証明されていない部分があり、そういったところをこれからアメリカ等で発表されていくという話を少し紹介してください。

和食がヘルシーだと世界に認知されるまで

石川 まず、食の研究の歴史を話した方が分かりやすいと思います。

これまで人類の多くは結核等の感染症で死んでいて、日本も戦後直後ぐらいまでは結核が死因ナンバーワンでした。

第二次世界大戦が終わると、人類は感染症の克服にある程度成功し、次に死因ナンバーワンになったのは心臓病です。

日本は癌や脳卒中が多かったのですが、(人類の)やはり一番は心臓病で、当時なぜ心臓病で死ぬのかがよく分かっていなかったので、20世紀に最も研究された病気は心臓病でした。

心臓病が少ない国はどこか、というのが最初に浮かんでくる疑問で、それがギリシャのクレタ島や日本だったのです。

これは当時の時代背景からすると、みんな「あれっ」と思ったはずです。

というのも、1950年、1960年代の日本は経済的にも全然発展していませんでした。

経済的に豊かではないのに、なぜこんなに健康なんだと疑問に思いますよね。

ギリシャのクレタ島はギリシャの中でも特に貧しい地域なので、きっと状況は良くないだろうということで戦後ギリシャ政府や国連が入っていったのですが、島民は意外と健康だったのです(笑)。

また、イタリアは北部が豊かで南部が貧しいのですが、貧しい南部の方が健康でした。

ギリシャ、日本、イタリア南部を調べた結果、20世紀の1つの結論として、どうも食生活にその原因があるのではないかということが挙げられました。

ギリシャやイタリア南部は地中海食なのでオリーブオイルを沢山使った料理ですが、日本は和食、特に1970年台の和食が実は最も健康であるといわれています。

いわゆる和食というのはご飯と味噌汁と漬物の一汁一菜で、それは少し塩分が多くはありますが、洋食が入ってきてミックスされ始めた1970年台が一番健康だったというのが最近報告されています。

これは松嶋さんと一緒に研究しているのですが、地中海食は基本的にオリーブオイルをベースにした料理で、和食のポイントは何かというと「異なる旨味を巧みに組み合わせた料理」だということです。

旨味は肉、野菜、貝、きのこ等色々な食材から由来しているはずですが、ほとんどの国では「肉の旨味」といったように1つの旨味だけに立脚して、それに油等をぶつけるという、ある意味「一本足打法」をしています。

日本だけが複数のものを組み合わせる。例えば、昆布と鰹節の出汁等異なる旨味をどう組み合わせるかということを、松嶋さんはまさにフレンチでやられていて、それがすごく新しいという評価を得ているわけですよね。

そのようなことが分かってきたので、そろそろ(和食は)世界に勝負をかけるかという感じです。

高島 貧しいほうが健康というのは、冒頭で出た「結局は量だ」というのと一致してきますよね。

石川 今からすると信じられませんが、1950年代、1960年代はハンバーガーや肉、フライドポテト等いわゆるアメリカ式の料理が最もヘルシーであると思われていました。

高島 戦争に負けましたからね。

石川 実はそんなにヘルシーじゃなかったというのが僕等研究者が発見したことです。

高島 ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/ 城山 ゆかり

【編集部コメント】

「海外の料理は旨味の『一本足打法』」「和食は複数の旨味に立脚している」という話にハッとしました。そういえば私が2か月ほど海外ラテンアメリカにいたとき、一番恋しかったのは野菜ときのこたっぷりの味噌汁でした・・・。

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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