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「上場企業の資本市場との向き合い方を徹底議論」【K17-3B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その7)は、企業が上場した後に抱える株式の低流動性の問題を論点に、ポストIPOにおける資本市場での対策について議論しました。是非とも御覧ください。
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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 3B
上場企業の資本市場との向き合い方を徹底議論
(スピーカー)
武田 純人
UBS証券株式会社
マネージングディレクター
藤野 英人
レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役社長・最高投資責任者
安田 昌史
GMOインターネット株式会社
取締役副社長 グループ代表補佐 グループ管理部門統括
米島 慶一
クレディ・スイス証券株式会社
株式調査部 マネージング ディレクター
(モデレーター)
齋藤 剛
SMBC日興証券株式会社
株式調査部シニアアナリスト
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最初の記事
【新】上場企業における資本市場との向き合い方を徹底議論!【K17-3B #1】
1つ前の記事
レオス藤野氏とセルサイド・アナリストたちが語る「このIRが凄い!」【K17-3B #6】
本編
齋藤 ではここからは、残り時間が15分くらいだと思いますので、先に会場からもし質問があればぜひお願いします。
質問者1 グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮です。
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高宮 慎一
グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー/Chief Strategy Officer
グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)ではコンシューマー・インターネット領域の投資を担当。投資先に対してハンズ・オンでの戦略策定、経営の仕組化、組織造り、国内外の事業開発の支援を実施。GCP参画前は、戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに て、ITサービス企業に対する事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略立案などを主導。東京大学経済学部卒(卒論特選論文受賞)、ハーバード大学経営大学院MBA(二年次優秀賞)。支援先には、アイスタイル(東証3660)、オークファン(東証3674)、カヤック(東証3904)、ピクスタ(東証3416)、しまうまプリントシステム(CCCグループ入り)、ナナピ(KDDIグループ入り)、ランサーズ、メルカリ、ビーバー、クービックなどがある。
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ベンチャー投資をやっています。
お話、ありがとうございました。
ベンチャーが上場した時に陥りがちな罠としては、IPOの時はワーッと人気が出て、流動性も出るのだけれど、その後、流動性が出なくて、株価が下がってきて、スタックしてしまうというようなことがあると思います。
それに対して、我々はベンチャー企業と一緒に未上場の段階から、どちらかというと、ハンズオン型の経営支援をしています。
そのため、マーケット側から見た時に「もう少しこうすれば、そのような状況は避けられたのに」というようなアドバイスをいただければと思います。
事業が伸びるタイミングや、IPOタイミングの問題なのか、上場時の浮動株率やオーバーハング(※)などのストラクチャーの問題なのか、その辺りの優先順位的なものがあれば、どのような順番で見ているかなどを教えていただければなと思いますますか。
▶編集注:オーバーハングとは、上場後も株式の大きな持ち分を保有するオーナーや会社が、いずれ株式を売り出すであろうとの憶測が株価の上値を抑えるという現象。オーナーや大株主の会社が株式を売り出せば需給バランスが崩れて、売り圧力が強まるため。
齋藤 では、この質問は藤野さんですかね、お願いします。
上場後に訪れる第2の「死の谷」
藤野 上場するとですね、第2の「死の谷」が来るんですよね。
死の谷というのは、会社を設立すると最初に赤字の時期があり、それを埋めて大きくなるところの赤字の時期を死の谷と言っています。
これを上手く乗り越えやらないと、最初に調達した資金を食い潰して会社が潰れてしまうということになりますから、最初の死の谷をどう突破するか、という課題があります。
レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長・最高投資責任者 藤野 英人氏
そして、株式公開(上場)した後に、日本の場合、「第2の死の谷」があります。
それは時価総額100億ないしは200億円以下の企業ですと、なかなかアナリストがカバーしてくれなかったりして、そこの時価総額帯が真空地帯になっているのです。
そのため、上場はしているけれど、資本調達がしにくいということがあります。
ここをどのように突破するかというのが非常に重要です。
そのためには、「第2の死の谷」を上手く抜けていった会社というのは、実はIRで(株価を)多少割高になりながらも、注目を集めることで上手に資本調達をして、生き延びたという会社が多いです。
なので、そういう面で見ると実はIRというのは重要なポイントになります。
つまり、200億円以内のラインから、下のところに留まるのか、上のところにいくのかというのは、実はIRの腕次第というところが実はあって、PBR(※)が10倍か20倍かで、株価が倍違うわけですよね。
▶編集注:PBR(株価純資産倍率)=株価を1株あたりの純資産で割った数値。
時価総額が100億円なのか、200億円なのかで、可能性が劇的に変わってきますから。
ポストIPO企業群への投資にあるチャンス
藤野 もう1点、この部分というのは、投資家という立場から見るとチャンスがあって、確かにそこは穴が開いているのだけれども、結構成長企業があるんですね。
ですので、私たちはここを結構大きなマーケットだと捉えていて、ひふみではここのところを結構投資しているんです。
なぜかというと、他のライバルがいないのです。
ベンチャーキャピタルさんは、持っていたボール(株式)を上場したら次の投資家にパスしたいわけですが、パスする相手がいないということがあるので、僕らはそのパスする相手になろうぜ、というのが戦略です。
そうすると、今、5%ルール(会社の発行済株式総数の5%を超えて株式を保有した場合には、「大量保有報告書」を提出するというルール)でレオスの名前が出ている会社が20社くらいあると思うのですが、まだ少ないと思っていて、100社くらいを目指そうよと言っているんです。
要するにここの部分の「ポストIPO」マーケットを完全に押さえようとしています。ライバルがいませんから。
成長したいと思っているところに資金を投入していくということで、ベンチャー企業がより成長できたらWin-Winですよね。
これは成功すると思っているし、僕らがものすごく大きく成功すれば、絶対に真似をする人たちが出てきますから。
真似をする人がたくさん増えれば、この100億円~200億円の、ポストIPO市場というのが活性化していく。
それによりベンチャー市場がまた盛り上がるというようになるのではないかなと思います。それは、とても大事だと思ってやっています。
質問者1 そういう意味でいうと、ベンチャーに対するアドバイスとしては、少なくともIPOの調達で100億円か200億円が見えて、第2の谷を越えられる目途が立たないのであれば、もう少し待った方がいいよというような感じでしょうか?
「IPOできる時にするべき」は基本
藤野 そうとも言えなくてですね、公開できるタイミングで公開しないと、会社というのはそこで力尽きたりすることがあるんです。
ですから、よくあるのはある程度の大きさになってから上場しようと思って、時間稼ぎをしながらと思っていたら、結果的にいうと、他の会社がスッと上場してしまうと。
(他社が)上場によって知名度が上昇するとか、先ほどお話しした通り、的確なIR戦略によって、PBR50倍、60倍を維持するほど株価を高くし、それできちんと調達しながら、適切な売り上げで伸びていったというところは結構あると思います。
多分それは業種、業態にも依るだろうし、私が見る限り、一部ではユニコーンのような規模にしてから公開するのが正しいんだ、というような意見もあります。
それは確かにそういう戦略はあるけれども、私が見る限り、恐らく8、9割の会社は出られる時に出た(IPOできる時にしておく)方が、結果的に上手くいくような気がします。
そして上場するとある意味、面で見ると社会インフラなので、この会社を何とか潰さないようにしようというような力が至る所から出てくるわけです。
一方、未上場の会社の場合だと、潰してもいいのではないかというような感覚というか、そのような傾向があります。そういう観点からで見ると、上場して社会の公器になる意味というのはすごく大事なのではないかなと思いますね。
質問者1 そうすると、先ほど割と投資家もお客さんと一緒だというお話があったと思うのですが、ポストIPOのスモールキャップのところでもきちんと投資してくれるお客さん=投資家にターゲットを絞ってIRしましょうということでしょうか。
藤野 そうですね。そう言えなくはない。
絞ってそういう人を探すしかないときもあると思いますね。
質問者1 ありがとうございます。
質問者2 シニフィアンという会社を創業しました小林です。まさにポストIPOを盛り上げようという会社で、ついこの間立ち上げたところです。
先ほどの高宮さんの質問にも重なるのですが、日本で最近、上場している企業を見ていた時に、浮動株の比率が著しく低くて、リクイディティ(流動性)の確保が大変そうな会社が非常に多いと思っています。
結果的に、ちょっとしたニュースで株価がスイング(上下動)してしまったりします。そもそも株式の流通量が少な過ぎるので、機関投資家が入れにくいというパターンが多いです。
よほどロングタームで張る覚悟がある人であれば、それほど気にしないことなのかもしれませんが、一般的な投資信託には組み入れにくい。
結果的に機関投資家の思考の外にあって、ウォッチされないので、上場した企業に集まるのが個人投資家オンリーになり、株価が大きくスイングするというような現象が多く起きているような気がします。
そういう意味で、創業者やあるいは株式を大量に所有するVCがどのように、IPO後、もしくはIPO前くらいから売っていくべきなのか、というのは結構大きな問題なのではないかなと思っています。
日本にマザーズという市場がある上でのテーマだと思っています。
(こうした大株主が)上場した後どうするんだよ、いつか売るんだろう、みたいな売り圧力を見られて、投資家にずっと嫌気されるというパターンも見られると思うので、これはどういう風にしていくのが良いと思うのかという、ご意見を端的にお聞きしたいと思います。
ポストIPOにおける低流動性の問題
齋藤 セルサイド代表で米島さんと、バイサイド代表で藤野さんから、手短にお願いします。
米島 やはり次のステージに向けて資金調達を株で行って希薄化させていった際に、創業者が少しずつ売っていくというのが、1番美しい方法なのかなという風に思います。
他には……、ごめんなさい、あまり大したソリューションを申し上げられないです(笑)。
クレディ・スイス 株式調査部 マネージング ディレクター 米島 慶一氏
齋藤 大丈夫です、では藤野さんお願いします。
藤野 僕は流動性がない株が大好き……ですね(笑)。
小型株がなぜいいのかというと、流動性がないからですよね。
流動性がないから、いい会社の株を安く買えるんです。
ですから、流動性がない会社を安く買うのだけれども、その時に成功するための重要な資源は何かというと、時間なんですね。
時間というものをある程度持てる投資家であれば、流動性がなく、かつ良い株式というのを、極めて安く買えます。
安く買えるのだけれども、安く買った時に「ハゲタカ」などと言われないと。
(会場笑)
むしろ感謝されるんですよね。安い時に、こんなに流動性がないものをよく買ってくれました、と言ってもらえます。
本当は激安で買っているんですよ。ですから、これはとてもいい仕事なんです。
ポストIPO企業への投資に対する関心が低すぎる
藤野 ポイントは何かというと、実はこういったベンチャー企業も集まるディスカッションの場で、ベンチャーキャピタルの人ばかりが議論しているのだけれど、本当は上場株に投資する上場投資信託に対する問題というのがあるんですよ。
公開上場後の世界ということに対する関しての関心が、VC界ではあまりに低すぎるという面があります。
もう少し金融庁や経産省を巻き込んで、時価総額200億円、300億円以内の会社へ投資するようなファンドをどのように作るか・育成するのかということに取り組まないと、結果的に、ご質問で議論してきたような問題がずっと起き続けることになります。
実はこれがあまり議論されていないんです。どう活性化するかという議論をやらなければ、実はベンチャー市場というのはいつまでも成長しません。
せっかく上場している会社なのに、株価が安くなっていて、未上場の時の方がバリュエーションが高くて、上場後の方が安いというような矛盾した現象が起きている。
このようなセッションにおいて、独立した単元でやらなくてはならない重要な問題だと思っています。
齋藤 ありがとうございます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
完全にプロ筋の議論でお届けしました。ポストIPOについて丸々75分語り尽くすセッションがICC FUKUOKA 2018 で企画されています。初日、1Aというトップバッターでの登場ですのでご参加 or 記事化をご期待ください!(榎戸)
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