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「オープン・イノベーションを実現する取り組みを徹底議論」【K17-3E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その5)は、社長を巻き込むことでの進めやすさや、新規事業のKPIの決め方についてデロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤さんが語ります。是非ご覧ください。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5日・6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 3E
オープン・イノベーションを実現する取り組みを徹底議論
(スピーカー)
西條 晋一
株式会社WiL ※登壇当時
共同創業者ジェネラルパートナー
斎藤 祐馬
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社
事業統括本部長
角 勝
株式会社フィラメント
代表取締役CEO
中嶋 淳
アーキタイプ株式会社
代表取締役
(モデレーター)
西村 勇哉
NPO法人ミラツク
代表理事
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最初の記事
【新】オープン・イノベーションを実現する取り組みを徹底議論【K17-3E #1】
1つ前の記事
オープン・イノベーションの成功に必要な2種類のキーパーソンとは?【K17-3E #4】
本編
中嶋 斎藤さんの会社には、色々なクライアント様がいらっしゃると思いますが、経営陣がコミットしている企業と、そうではない企業の割合はどのような状況ですか?
斎藤 基本的には経営陣がコミットしていて、現場に本気の方がいる企業と一緒に事例を作っていく方針です。
中嶋 なるほど。
経営陣とは、どのような立場の方になりますか?
斎藤 少なくとも新規事業を全て統括している役職ですね。
中嶋 社長までということはありますか?
西條さんの会社を横から見ていて、上手くいっていると感じる協業先は、ソニーさんのように社長直轄で動いていますよね?
斎藤 新規事業全ての責任を担っている役員の方と直接話し、社長はそのサポートをしていることが多いでしょうか。
現場の人材についてですが、大企業トップ100社位あるとすると、1社に1人位は起業家のような人がいます。
そのメンバーで横断的なコミュニティを作っているのですが、そこに投入し言い訳ができない状況にすると、現場も変わっていくんです。
トップとオープン・イノベーションのプロジェクトに火をつけるのが大事です。
例えば、人事制度でも困ることがあります。
例えば新規事業を作っても、大体の場合「今までの人事制度的には、人事に話を通さなければ人を採用できない」といわれるように、純血主義の大企業では、なかなか外部から人を採用できません。
そういった部分について、役員の方と話をして、人事に働きかけしていただき採用できるようにするということです。
このような大きな動きを作るサポートでなければ結果が出ないので、そこに集中しています。
オープン・イノベーションは、人材育成でもある
中嶋 オープン・イノベーションをどのように社長に理解してもらっていますか?
Tips(ティップス)というより、マイルストーンについてうかがいたいです。
もちろん私自身も知りたいですし、参加されている事業会社の方や、事業会社と組みたいスタートアップの経営陣も知りたいことだと思います。
斎藤 大企業のどの社長と話しても、人を育てたいと思っています。
その観点から、オープン・イノベーションは意味があるということを伝えます。
岡島さんが最近出版された本にも、修羅場を経験されると書いてありますが、正にそうだと思います。
次世代の経営をどう作るかという議論ですが、特にテクノロジーがあまりにも進化しているので、年齢を重ねていると段々と分からなくなっていくわけです。
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 事業統括本部長 斎藤 祐馬氏
西村 今の段階ではそれほど存在感がなくても良いけれど、「次世代にその人が役を担うような事業を作ってくれるのであれば」という想いで取り組むということですか?
斎藤 そのような人を育てたいと社長は思いますよね。
その観点から、その人材を始めはCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)に送り込む。
そうするとベンチャー経営者との付き合いが増えるので、ある程度ビジネスの目利きができるようになります。
次の段階では、彼が取り組みたい事業を買収させ、社長はそれを任せる。ある程度の段階まで取り組みできたのであれば、本社に戻ってもらい本社の経営に関わる仕事をさせる。
このようにルートを作るということを社長にお願いします。
中嶋 オープン・イノベーションに関わっていないと偉くなれないということですね。
でも、それは現実的に難しいですよね?
メインの事業部で頑張っているのに、「あいつらは何なんだ」は、あるあるですよね?
角 ありますね。
西村 本流の新規事業であれば、500億円、1,000億円といった数字が求められることでも、その部分は考えずに人材育成という観点で、「きちんと立ち上げる」という所から進めるということでしょうか?
斎藤 そうです。
社長からすると人が育つということに興味があるので、その観点から進めることが一つ目です。
既存の先輩がいるところで若い人を抜擢するということはやり難いので、国内の事業であるなら、ITか誰も取り組んでいない分野、もしくは海外での事業実績があれば引き上げやすいと社長は良くおっしゃいます。
そのような所であれば、出来る先輩は少ないので、若手にチャンスを与えやすいということです。
皆さん新しいことを始めるのにとても積極的ですよ。
西村 なるほど。
中嶋 オープン・イノベーションのご依頼としては、「新規事業を作りたい」というものが多くないですか?
西村 人材育成と新規事業のバランスが大事ですよね。
中嶋 そうなんです。
「新規事業で売上を増やしたい」というお客様も増えています。
人材育成と新規事業はアウフヘーベン(止揚)するのでしょうか?
「Morning Pitch出張版」で大企業の社長・役員を巻き込む
斎藤 両方あると思います。
完全にゼロイチの事業は、いきなり伸びるかどうかは分かりませんよね?
ある程度期間のある話と、短期で売り上げを作る話、両方取り組みながら「売上のインパクトないよね、やらない方がいいよね」とはならない方向に持っていくことが大きな流れですよね。
外部にいるベンチャー企業の話を、直に聞いたことがある大企業の社長はあまりいません。
4年半前に私たちが立ち上げたイベントに、Morning Pitchというものがあります。
毎週木曜日の早朝、大企業150社に来ていただき、テーマごとにベンチャー企業5社がプレゼンを行います。
4年半で1,000社以上のベンチャー企業が登壇しています。
このイベントの出張版として、大企業の役員会に出向きプレゼンを行なっています。
この時、一番喜ぶのが社長なんです。
中嶋 でも出張するのですよね?
「朝、来い」という感じですよね(笑)?
(登壇者 笑)
斎藤 そこでは、「全役員を集めて下さい」と伝えます。
「社長は絶対に参加して下さい」と言うと、役員の方は皆さん参加します。
事前に、この役員の方はこのことに興味があるとリサーチしておき、僕はモデレーターをしながら「社長、やりますか?」とコミットを取っていく。
そうすると、ベンチャーとの大型の提携が生まれやすくなります。
角 本当にその場でコミットなさりますか?
斎藤 少なくとも「これをやりたい」と言うと、忖度が働くので、一気に流れていきます。
角 なるほど。
忖度文化ですね(笑)。
斎藤 社長が「これ良いね」と言うと、それまで全く手を挙げなかった部長さんがガンガン質問を始めます(笑)。
(会場 笑)
そんなものですから、流れを作ることが大事です。
西村 西條さんはどのようにお考えですか?
事業規模や、会社の中に埋め込んでいくといった点です。
西條 今のお話にあったようなアプローチは良いと思います。
WiLでも出資をしていただく時、大体はその会社の社長さんを握っています。
上の方から落としていくということを行なっているので、それは有効かなとは思います。
西村 事業規模ですと、ゼロイチを重視するのか、ある程度の事業規模を達成するということを重視されますか?
事業規模の話はあてにならない
西條 ソニーにいらっしゃる十時さんが、「新しいイノベーション始める時に、いきなり規模を論じるのは、新規事業をしたことがない人が言うことだ」とおっしゃっていました。
まさにそうだと思います。
インターネット業界で、ソーシャルゲームは今では誰もが知っている1兆円規模の産業ですが、これを20年前に予期できたかというとそうではありません。
初期にゲームの取り組みをしていた人は冷ややかに見られていたと思います。
当時は「アイテム課金なんてする?月額課金(じゃないとダメ)でしょ?」「パッケージ売り(じゃないとダメ)でしょ?」という時代でした。
恐らく、業界によってイノベーションを目にしてきたかどうかが異なります。
例えば、鉄鋼業界ですと、イノベーションといっても時間軸が長いですし、急に大きなことは起こらないと思います。
インターネットビジネスにおいては、下手をすると10年前に行なっていたビジネスがもうなくなっていたりします。
そうすると常に緊張感があります。
IoTやネット業界からすると、5年後、大手ネット企業全社がIoTの取り組みをしているかもしれませんし、今はまだ遠い世界に見えるAIも、いきなり当たり前に使っている可能性もあります。
良い意味でも、悪い意味でも、そのようなイノベーションを体験してきた人からすると、そんなに規模のことは言わないと思うんです。
何がどう化けるか分かりませんから。
中嶋 そのような変化を見てきた人が取り組むと良いということですね?
西條 そうですね。
ご自身で経験されていたり、変化にさらされている業界の人は割と馴染みやすいと思います。
西村 規模の話を始めたら、西條さんか斎藤さんに来てもらって「違うんです」という話を2時間位してもらうと良いですね(笑)。
もしくはそれを経験した人が社内にいらっしゃるのであれば、その人が取り組めば良いですし、いないのであれば外からサポートするということですね?
西條 そうですね。
Morning Pitchに大企業の方が参加されてまずびっくりされることは、自分の会社では新入社員位の若い方が堂々とプレゼンを行い、大きな資金調達を受けていることです。
衝撃的ですよね?
知っているか知らないかという世界だと思います。
自分たちで新規事業のKPIを決める
角 事業規模のお話ですが、未だにそのようなことを言う大企業の方はいますよね?
本業が大事で、本業を進めるロジックを新規事業にも適用してしまうからだと思います。
そこをどのように無くしていくのかですが、外部の人間が説得できるものではない気がしています。
意志決定のロジック部分をどうにかするという所が大事だと思います。
先程の斎藤さんがお話されたような、社長の同意を得てから忖度に持ち込む方法はすごいなと思うのですが、もう少しカジュアルな方法で仕組み自体を変えることはできないでしょうか?
斎藤 ある程度期限を区切る必要があると思います。
まず、事業は立ち上がるか分からない所があるので、KPIがいきなり全て売上ではない方が良いと思います。
例えば当社は今の事業を始めて7年ですが、一定の投資に対し、事業化するという最低限の目標はありますが、事業化するまでの間は自分たちでKPIを作り報告するという方法で進めています。
特に始めの新規事業であれば、会社全体の売上に対して初めから2割の売上を作るということは時間がかかります。
でも、3、4割のメディア露出を図るということは1年でできます。
ですので、初めにどんどん活動をメディアに発表しました。
日本のデロイトトーマツグループは約1万人程度いますが、メディア露出の3割は僕を含めた5人で行い、グループ内の理解を得るとともに期待値を上げ、一気に人を増やし、事業化を図るということを行なっています。
スタートアップは、その時々で新規事業のKPIが異なります。
大企業の経営側としては、その形を作れるようにしていく必要があります。
他事業と同じKPIで進めていると発表時にいじめられてしまいますので(笑)「我々のKPIはこれなので」と提示して進めていましたね。
西村 KPIを作るにあたり、斎藤さんが一緒に考えていくのですか? それとも「この考え方だから、考えてみて」と指示を出すのですか?
斎藤 大企業さんと進める上でということですね?
「上手く取り組みできている会社はこのように進めているので、このように進めてみませんか?」と、コミュニケーションをとっていきます。
治外法権的に取り組みしていき、事業がある程度立ち上がってきたところから普通の管理をしていけば良いと思います。
管理の枠を変えることがすごく大事ですよね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/立花 美幸/浅郷 浩子
【編集部コメント】
社長のコミットを取り、忖度を利用して一気に話をまとめていくようなダイナミックさに加え、同時に人材育成やKPIへの目配りなど、全方位でのケアが必要なオープン・イノベーション。人材を固定しなければ進まないのは当然だと思いました。(浅郷)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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