「創業メンタリティを失った企業に未来はない」ベイン火浦氏が語る成長を阻害する「東風と北風」【K16-5A #1】 – INDUSTRY CO-CREATION

「創業メンタリティを失った企業に未来はない」ベイン火浦氏が語る成長を阻害する「東風と北風」【K16-5A #1】

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ICCカンファレンス KYOTO 2016 において大好評だった「優れた成果を実現する経営者の仕事とは何か?」【K16-5A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!3回シリーズ(その1)は企業の大企業化や官僚化を防ぐ「創業メンタリティ」について議論しました。ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン会長 兼 パートナー火浦 氏に初めてご登壇頂きました。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 5A 
「優れた成果を実現する経営者の仕事とは何か?」
(スピーカー)
熊谷 正寿 
GMOインターネット株式会社 
代表取締役会長兼社長 グループ代表
火浦 俊彦
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
会長 兼 パートナー 
安渕 聖司 
SMFLキャピタル株式会社
代表取締役社長兼CEO
(2016年9月5日より日本GEからSMFLキャピタルへ社名変更)
(モデレーター)
岡島 悦子 
株式会社プロノバ 
代表取締役社長

岡島 悦子 氏(以下、岡島) 今日のセッションのテーマは、「優れた成果を実現する経営者の仕事とは何か?」です。

ご覧頂いてお分かりかもしれませんが、このパネルはICCカンファレンスの中で最も平均年齢が高く、私も含めて全員オーバー50ですね。

(会場 笑)

大人らしい、起業家らしい感じのセッションにしていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願い致します。

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岡島 悦子
株式会社プロノバ 代表取締役社長
経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。成長ステージに合致した経営チーム組成のための「経営チーム診断/開発コンサルティングサービス」を提供。三菱商事、ハーバードMBA、マッキンゼー、グロービス・グループを経て、2007年プロノバ設立。アステラス製薬株式会社、株式会社丸井グループ 社、ランサーズ株式会社、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社リンクアンドモチベーションにて社外取締役を務める。ダボス会議運営の世界経済フォーラムから「Young Global Leaders 2007」に選出される。

さて、このセッションでは、持続的に成長し続け成果を出し続けるための、経営トップの役割について議論していきたいと思います。

私自身は、プロノバという会社で、約200社の経営者のリーダーシップ開発を15年間余り手がけておりますが、今日はインサイトを沢山お持ちのお三方に伺っていきます。

もちろん経営トップの仕事や役割というのは、事業のステージや、他の経営チームメンバーや、置かれている環境などによってかなり違うと思います。

それから、有事なのか平時なのかといったことによっても全く違ってくると思いますが、今お三方が考えておられる「経営トップの役割3つ」というのをまずお話いただき、そこから開いていきたいと思っています。

経営トップの役割とは何か?

では安渕さんからお願いします。

安渕 聖司 氏(以下、安渕) 昨日からSMFLキャピタル株式会社の代表取締役社長になりました安渕です。

その前はGEに10年くらいいましたので、私の話はほとんどがGEにいる時の経験ということになると思います。

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安渕 聖司
SMFLキャピタル株式会社
代表取締役社長兼CEO
三菱商事株式会社、リップルウッド・ジャパン、UBS証券会社投資銀行本部を経て、2006年にGEコマーシャル・ファイナンス・アジアに事業開発担当副社長として入社。2007年GEコマーシャル・ファイナンス・ジャパン社長兼CEOに就任、2009年から日本GE株式会社代表取締役GEキャピタル社長兼CEOに就任、日本における金融ビジネス全般を統括。2016年4月より、三井住友ファイナンス&リース株式会社の傘下に入り、2016年9月5日付で、SMFLキャピタル株式会社代表取締役社長兼CEOに就任。
2014年に「GE世界基準の仕事術」(新潮社)、2015年に「GEの口ぐせ」(PHP研究所)を上梓。経済同友会幹事。HBS Club of Japan会長。一般財団法人KIBOW評議員。社会イノベーター公志園実行委員・伴走者。放課後 NPO アフタースクール アドバイザリーボードメンバー。ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ理事。学校法人インターナショナル・スクール・オブ・アジア軽井沢(ISAK)ファウンダー。アジア女子大学(バングラデシュ)日本支援委員会委員。早稲田大学政経学部卒、米ハーバード大学経営大学院卒 経営管理学修士(MBA)

3つというと、まず1つは、トップがスピード感を持って変化をドライブすること。

2つ目は、学習する組織・文化を作ること。

3つ目は、次の世代のリーダーを育てること。

この3つが役割だと思っています。

岡島 なるほど。

これも後ほど伺っていきたいのですが、今GEが置かれている状況の中でということでもよろしいですよね?

環境によって、トップの役割がかなり変わってくると思うのですが。

安渕 いえ、あまり変わっていないと思います。

岡島 なるほど。

それも含めて伺っていきたいと思います。

安渕 はい。

岡島 変化対応についての話と、それから学習する組織・人を作っていくこと、そして次の世代、サクセッションプランニング(後継者計画)のようなことも含めて、タレントを作っていくというお話でした。

次に、熊谷さんにお伺いしてもよろしいでしょうか。

熊谷 正寿 氏(以下、熊谷) やはり、1つ目は、企業の行く先、ビジョンや夢を明確にすることだと思いますね。

2つ目は、それを可能ならしめる優秀な人材を集めることだと思います。

3つ目は、企業が成長し続けられる仕組みを構築することではないかなと思います。以上です。

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熊谷 正寿
GMOインターネット株式会社 代表取締役会長兼社長・グループ代表
1963年7月17日長野県生まれ。
東証一部上場企業グループのGMOインターネットグループを率いる。「すべての人にインターネット」を合言葉に、日本を代表する総合インターネットグループを目指し、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット証券事業、モバイルエンターテイメント事業を展開。また、グローバルブランド「Z.com」で世界展開も推進。グループは上場9社を含む88社、スタッフは約4,800名。(2015年6月末時点)
主な受賞歴に、2005年米国ニューズウィーク社「Super CEOs(世界の革新的な経営者10人)」、2013年「第38回 経済界大賞 優秀経営者賞」、2016年、経済誌「財界」による財界賞・経営者賞(第58回)で、「平成27年度 経営者賞」受賞などがある。著書に「一冊の手帳で夢は必ずかなう(かんき出版)」、「20代ではじめる「夢設計図」(大和書房)」など。

岡島 ありがとうございます。

人材のところももちろん出てきましたし、企業が成長し続けられる仕組みというところは非常に面白いなという風に思っています。

そろそろ創業25年ですよね?

熊谷 インターネット事業を開始して20年です。

岡島 インターネット(業界)に入られて20年目ということなので、ずっと成長されてきている熊谷さんならではと思うのですが、次に、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンの火浦さんに伺ってみたいと思っています。いかがでしょうか?

火浦 俊彦 氏(以下、火浦) 3つということで言うと、弊社が最近出版しました「創業メンタリティ」という本とも関係します。

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火浦 俊彦
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
会長 兼 パートナー
東京大学教養学部卒業、ハーバード大学経営大学院修士課程(MBA)修了。日本興業銀行を経て、ベイン・アンド・カンパニーに参画。ベイン東京オフィスのM&Aプラクティスのリーダーを務める。30年にわたり、オーナー企業から大企業、プライベートエクイティファンドの企業変革に関与。食品、飲料、外食チェーン、住宅、高級ブランド品、流通、自動車、銀行、証券、輸送機器、不動産、建設、ヘルスケア、エレクトロニクス、投資ファンド等、様々な分野におけるコンサルティング活動に携わっている。クライアントと共にチームを編成し長期間関与するケースが多く、近年では新たなビジネスモデル構築やイノベーション、M&A、統合支援といった戦略・組織に関するプロジェクトに深く関与している。今年7月に出版された「創業メンタリティ」(日経BP社)の監訳・解説を担当。

岡島 これでしょうか?

火浦 よろしければ是非ご購入を。(笑)

「創業メンタリティ」と何か?

これは、持続的に成長し続けている会社の特徴とは何なのか、ということを調べたものなのです。

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スライドに出ていますように、ここに書いてある「革新志向」、「オーナーマインド」、「現場へのこだわり」、この3つを持っている会社が持続的に成長していることが分かりました。

ですから、これが1つの企業の羅針盤だと考えています。

スライドの中に、実は「創業メンタリティ」がある会社とない会社で、財務的な企業の価値が3倍違うのです。

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これは実証的な研究の結果でもあるので、やはり創業メンタリティを持つということが、実は経済的にも財務的にも意味があるということだと思います。

この「創業メンタリティ」を羅針盤を持つこと、そしてこれをテコにして会社を動かすというのが1つ目だと思います。

2番目は、企業というのは、やはり社会の非合理や矛盾や構造的な課題というのを解決していかなければならないと思うので、トップが常に、今の業界であったり世の中にある色々な不条理や矛盾を解決しようという想いを持つことがとても大事だというのが2つ目です。

3つ目ですが、やはり会社は大きくなるにつれて複雑になるんですね。

ですから、経営者の仕事はこの複雑性と戦うことです。

フォーカスしてもらうこと、或いは複雑なものを単純にすること。

この3つが大事かなと思っています。

岡島 ありがとうございます。

この「創業メンタリティ」という本を、ベイン・アンド・カンパニーでお書きになったので、それについてもう少しご説明を頂けないでしょうか?

火浦 会社が創業する時というのは、社会に対してインパクト何かを与えようとか、色々な矛盾を解決しようという、ここの図で言うと右下ですが、「体制に対する反体制派」という形で出てくるわけです。

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これは横軸が創業メンタリティがあるかないか、縦軸が、規模のメリットがあるかないかという、そういう観点で整理していますが、会社というのは右下から出ます。

段々と成長して大きくなると、一番上に上がってくるのが一番良いのです。

つまり、創業メンタリティを持ちつつ、規模とスケールもある、尖った大企業になる。

でも、なかなかそうはいかないわけです。

そうはいかない理由というのが、次のページあります。

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我々が「東風」と呼んでいるのですが、東風が吹きます。

とにかく会社がどんどん成長してしまうので、人の成長より会社の成長の方が早い。

だから仕組みとかルールとかを入れて何とか回そうとする。

そうすると、元々の創業理念みたいなものがなくなって、何となく仕組みやルールだけが会社を回してしまうことになるのです。

例えば、トップと現場が離れて、現場の声が聞こえなくなる。

人が沢山いるので、誰が責任をとっているのか分からなくなる。

それから、会社が大きくなると今まで取れなかったとうな「プロ」と言われる人材、経理のプロ、人事のプロ、そういった人達が入ってくる。

そういう人達のメリットもあるんですが、ともすると、そういう方々が大企業で培ってきたようなカルチャーを中に持ってきてしまうのです。

それからやはり、会社が大きくなって、まあこんなものかなということで安定志向が出てきてしまう。

このように、本当は右上に上がりたいのに、左上の方に上げられてしまうんですよね。

更に左上に上げられると、今度は「北風」が吹きます。

ということで、次の表をご覧ください。

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やはり、先ほども申し上げたように、とにかく複雑性に阻まれてしまい、色々な部署ができてそれらの調整に追われて、もともと会社が創業した時の理念などというものが忘れられてしまうのです。

そしてマトリックスの罠ですね。色々な製品や事業が罠になって、それらの調整がすごく重要になる。

そして、それぞれのマトリックスの長のところに、先ほど申し上げた、所謂優秀な、他の会社で経験を積んできた方が入ってくると、お互いエリートだという意識があるので、それぞれのエリート意識を守るために、中途半端な意思決定をするようになる。

相手の分野についてあまり反対すると、今度は自分の分野についても反対されてしまうから、この辺で収めておくかという風になってしまう。

そして遂には、健全なる対立が消失してしまう。

ほぼ大体どんな企業をスタディしても、このパターンでいって、左上に上がってしまって、下手をすると左下に落ちてしまう。

左下に落ちると、これはもう規模のメリットもないし、創業メンタリティも失われてしまっている。

こういう会社をターンアラウンド(再生)するのは非常に難しいことです。どの会社もほぼこのようなパターンで官僚化します。

ご参考までにご紹介しました。

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岡島 ありがとうございます。

私も「創業メンタリティ」を読ませていただいたんですけれども、公開企業で言うと、日本企業は企業経年数、つまり平均年齢が61歳だそうですね。

これは、従業員の年齢のことではなく、日本の企業が創業から平均61年経っているということです。

一方でアメリカは31歳という風に書いておられて、色々なところで言われていますが、やはり、新陳代謝がないのではないかということですね。

一方で、GEさん、GMOインターネットさんは、そういう意味では、そういうことを乗り越えて「尖った大企業」としてやっておられるのではないかと思います。

その中で、経営者の方々は何をやっておられるのかということ、1つずつ伺っていきたいなと思っています。

まず熊谷さんに伺いたいのですけれども、普通に経営されていると、恐らく火浦さんが仰っておられたような企業経年、年数が経っていくに従って、やはり成人病みたいなものも沢山出てくるのではないかと思うんですね。

それは、事業ドメインも複雑になっていくということだと思いますし、後は、後出しじゃんけん的な人も沢山入ってくるみたいなこともあるということだと思うのですが、そこは、GMOインターネットさんではどのように防げているのでしょうか。

GMOインターネットさんも含めて上場企業が9社、そしてその時価総額が全部で5,000億円くらいということですし、連結も80社以上ということだと思うので、ずっと経営者マインドみたいなものが損なわれずに来られているのではないかなと思っています。

どんなことをされて現状があるのかということを、少しご披露いただければと思うのですがいかがでしょうか?

大企業化しないためには「権限の委譲」ではなく「権限の分散」を行う

熊谷 はい、分かりました。

大企業にならないようにする、ということです。

今 社員4,900人でグループ会社は89社、そのうち上場企業は9社ありますけれど、権限の委譲ではなくて、権限の分散を行って、大企業にならないようにするのです。

権限の委譲というのはピラミッド構造じゃないですか。

権限の分散を行うことで結果として経営のスピードを担保しています。

あとは、私共も金融事業などもやっていますので、分散経営することによって、連鎖倒産のリスクを排除したり、様々な分散経営の良いところを採用しています。

ベンチャーマインドも、各社の社長が持っている。

スタッフ数は全体で4,900人ですが、日々1人か2人新規採用が増えており、各社で見ると数百人のポーションですから、これは非常にいいと思いますね。

ただ一方で、分散経営すると悪いところもあるんですけれども、それは仕組みとして排除していくということですよね。

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岡島 これは、仕組みというところで言うと、どんな仕組みで排除されているのでしょうか?

熊谷 グループ会社が増えますと、やはりそれなりに手続きが煩雑になったり、見えなくなったりするので、一言で言うとガラス張りにするということですかね。

岡島 それは数字ということも含めてですよね?

ガラス張りの経営

熊谷 例えばお給料も、全員。

グループ会社が 89社あり、役員も全部で120人いるのですが、役員全員の目標、成果、結果、報酬、全てがガラス張りになっていて、アルバイトさんを含む全スタッフが見ることができます。

あとは、一定の目標設定だったりとか、一定のところは共通化しているんですよね。

岡島 ここは、経営者としてはなかなか悩ましいところではないかと思っています。

評価というのは全てにおいて公平とか公正ということはすごく難しいだろうなと思っていて、ガラス張りにすることによっての皆さんの疑心暗鬼みたいなことはなくなるということだと思うのですけれども、一方では、評価を人がやるというところで「なぜあの人は?」みたいな話になる。

熊谷 ガラス張りに必要なのは、「360度の評価」と「立候補」という考え方なんですよね。

やってくれと言ってできなかったら、頼んだ方が悪いのだけれど、自ら「やる」と言ってやって頂ければ、それは本人の責任ですから。

例えば、GMOインターネットの役員には、私から「役員をやってくれ」と頼んだことは一度もないんです。

私は創業者で大株主ですから、本来の立ち位置としては私が役員を指名するのですが、「やってくれ」と言ったことは一度もないです。

「やりたい」と立候補した人の中から、評価の高い方にやって頂いています。

やって頂いて結果が出ない方には退任して頂いて、また立候補者の中から選ばれた方にチャレンジして頂くというやり方をしています。

岡島 ここがやはり経営者としてオーナーシップみたいなものを持つという1つのポイントですよね。

火浦 そうですね。

要するに大企業にならないようにするということはすごく大事だと思っていて、大企業の中でもそういう「創業メンタリティ」を保とうとしている会社というのは、何をされているかというと、ミニ創業の経験を結構たくさんされているんですね。

なかなか分社できない会社も結構あるんですけれども、ある地域にも会社を作りますとか、あるブランドを立ち上げろとか、ゼロからとにかくやってみろということをやらせることによって、自分が何でもやらなくてはならないというところで「創業メンタリティ」が出てくる。

それから、今お伺いしてすごいなと思ったのは、そこまで透明にして、それに基づいて評価すると、変な恣意性が入らないですよね。

これでできたらいい、できなかったらダメ。

そこに変な恣意性が入ると、日本の大企業というのはそうなんですけれども、ずっとその中で働いているから、今日の敵は明日のボスかもしれないから、この辺ちょっと適当にやっておこうかという風にになってしまいますよね。

そこまで透明にされてしまったら、言い訳も何もないですよね。

その透明性というのは、やはりすごいなと思います。

「権力」で経営をしない

熊谷 会社って、ピラミッドになってくると、社長や部長や課長の(タバコの)火をつける人がたくさん出てくるんですよ。

タバコを持つと、パッと火をつける人がいるじゃないですか。(笑)

そういうゴマすり組織になると、一番ダメなんですね。

ガラス張りで評価をしているとどういうことが起こるかというと、そういうゴマすりなんかがなくなって、結果を出そうとするんですよね。

上長にいくらゴマをすっても、上長に人事権というのがないんですよ。

私自身が人事権を持っていなくて、みんなの立候補の中から自動的に良い人が選ばれる仕組みになっているから、僕にゴマをすっても仕方がないんですよね。

火浦 つまり、権力で回していないということですよね。

熊谷 そうです。

人事権というマネジメントツールを捨てることによるパワーというのがあるんですよね。

岡島 でも、そこにはかなりのコミットメントというか、会社としてのコミットメントがありますよね。

全てを詳らかにするという意味で言うと、経営者の皆さんもいつも見られていて緊張感漂う感じにはなるのではないかと思うのです。

GEも、そういう意味では非常に似てらっしゃるのではないでしょうか。

安渕 そうですね、会社が大きくなっても、所謂中小企業が集まっているように運営したいというのが、そもそもの理念ですね。

ですから、もちろんCEOはいて、全体約30万人の中の650人がCEOの直属の部下ですけれども、その人達が、私(つまりCEO)のようにやれということですよね。

その人達は、私も含めてですけれども、自分のリソースについて文句を言う立場ではないわけですよね。

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これでどうやってやれるかとか、もっと何が必要なのだと考えて、全員があたかもCEOのように行動しなさいということになるわけです。

その仕事のやり方がやはりすごく似ていて、そうすると、皆が自分の達成ということに集中してやっていくことになり、規模は大きいですけれども本社の中央集権でも何でもないわけですよね。

皆が良かれと思っている。

もう1つはやはり、お客様の声を聞けということですよね。

何か迷ったらお客さんの声を聞いて、それに対応しなさいと。

それに対応した人が良い人ですというカルチャーを作っていけたらいいと思っています。

岡島 ガラス張りにすると同時に、そうは言っても規模が大きくなって従業員の数が多くなると、熊谷さんのところも、やはり少し大企業病っぽい人も増えてくるのではないかと思うのですが、そこはどうやって担保されているのでしょうか?

熊谷 大企業っぽいところ?

岡島 はい、大企業病のような。

簡単に言うと、調整君がすごく増えるというか。

分散しているとやはり社内調整みたいなことがすごく増えてきますし、どんどんサイロが高くなってくると思うので。

「スピリットベンチャー宣言」

熊谷 それは仕組みで排除するんですよ。

例えば、一番端的な仕組みというのは、社是・社訓にあたる「スピリットベンチャー宣言」というのがありまして、これは読むと15分くらいかかるのですが、それを毎週1回とか、あとは3ヶ月に1回に開催する数千人の全スタッフが集まる会義で読んでいるんですよ。

その中に、実に事細かに色々なことが書かれているのですけれども、例えば、「結論ファースト」という言葉が書かれているんですよね。

結論から先に言うという文化を、20年間この「スピリットベンチャー宣言」を読むことによって会社に定着させたわけなんですよね。

会社では、言い辛いことを、報告を受けることが上長の仕事ですけれども、言い辛いことって結論がラストになるじゃないですか。

そうすると話が長くなるじゃないですか。

岡島 話が、起承転結的になるということですよね。

熊谷 そうなんですよ。

だからもう、「結論ファースト」という文化を定着させることによって、組織の調整の時間だったりとか、面倒くさい手続きを排除していくんですよね。

何と言うか、仕組み作りでその問題点を減少させているという。

岡島 ただ、これも、どこの会社さんも壁に色々貼ってあったり、行動指針みたいなもののカードが配られていたり、社歌が作られたり。(笑)

熊谷 歌詞はないですけれどもね。(笑)

岡島 色々なことがあって、でも、徹底的に浸透していらっしゃる企業、つまり意味とか意義みたいなこと、或いは歴史の中でのエピソードみたいなことが、ちゃんと句で伝承されているということでないと、絵に描いた餅ということになりますよね。

行動指針はあるけれども、やはり大企業病になっていく、成人病になっていくという企業もたくさんあるのではないかと思うのです。

ここで少し伺いたいのは、それは、熊谷さんが創業者としているから浸透しているのか、仕組みだから浸透しているのかということです。

私の質問は、創業オーナーがいらっしゃって、そのDNAがあってそういうことをされているから浸透しているのかどうかということです。

熊谷 きっかけはもちろん僕ですよね。

けれども、その読むと15分かかる「スピリットベンチャー宣言」は、過半の幹部が賛同すると変えてもよいというルールになっていまして、その中の数十のくだりの中には、弊社が2007年度に400億円損失して経営危機になった時に、新入社員が一行入れてくれたものもあるんです。

その時期の新入社員が、「苦労というのは、成長のための学びなんだ」というような一行を作ってくれて、それを採用してからずっと、全スタッフで読んでいるわけですよ。

だから、何と言うのでしょうか、きっかけは僕ですけれども、その「スピリットベンチャー宣言」を読むことも、時代に合ったものに改編していくことも、もう仕組みとして運用されているのです。

岡島 そういう意味では、GEさんの場合は、125年を経て、改編されながらも、リーダーシップとかイノベーションということで、なるべく官僚化しない、大企業にならない取り組みをされています。

理念経営がかなりGMOインターネットさんとも近い感じがするのですけれども。

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安渕 GEの場合は、もう少しプラグマティックなところというか、理念よりも実際のシステムに入れてしまっているところがあって、行動規準を作ってそれで人を評価するんですね。

ですから、こういう行動をすべしであるということが決まっていて、例えば、今の行動規準は「GE Beliefs」もですけれども、その一番最初は「Customers determine our success」ということで、お客様が我々の成功を定義するというのが決まっているわけです。

【参考資料】
GE ― 勝ち続けるための人材育成と企業文化 

従って、そこではもう、一番がカスタマー(お客様)ですから、それに沿ってあなたはどんなことをしましたかということを、常に問われ続けるわけですよね。

それが、実際の人事評価にあって、あなたこれをやったけれどもこれは足りませんよというフィードバックを常に、それも1年に1回ではなくて、割にコンスタントにしていきます。

ですから要するに、繰り返し繰り返し行動規準を叩き込まれて、こういうことがこの会社では求められていて、そういう人材が評価されるということを、従業員は繰り返し言われるわけです。

そして実際にそうなる。

それが合わないと思う人は、自分に合う道を探してください、という話です。但し、行動基準を見て貰えばわかりますが、かなり常識的な内容ですよ。

岡島 ある意味、価値の優先順位みたいなものがしっかり決まっているのですね。

その序列が自分とは合わないなという人は、どこかで出て行くという。

安渕 そうなんです。

自分の腕に自信があるからこんなに煩いことは言われたくないという人は、その腕を活かせるところに行けばよいし、こういう考え方の会社で働きたい、自分を伸ばしたいという人は、ここで働ければよい、会社も全面的にサポートする、という、そのような考え方ですね。

岡島 GMOインターネットさんの場合には、今仰っていた「スピリットベンチャー宣言」の項目が、価値観に割と近いかなと拝見しながら思っていました。

行動指針にもかなり近いものではないかと思うのですけれども、これは評価とはあまり結びついてはいないのですか?

熊谷 評価とは密接に結びついていまして、例えば幹部ですと、その「スピリットベンチャー宣言」にどのくらい自分自身の行動に沿っているのかというのは、報酬規定の中の一定割合を占めていますね。

岡島 なるほど。

熊谷 それはきちんと仕組み化されて、「スピリットベンチャー宣言」が運用される仕組みを定款レベルから作っています。

岡島 だから、やはり経営者が、そこに対してそれだけコミットしているということですよね。

熊谷 私は死ぬまでに最もユニークな定款を作って死のうと思っていまして。(笑)

定款というのは、会社の憲法ですからね。大株主でもないと変えられないので。
上場したりして株主が細切れになったりしたら、定款を変えるのに株主の3分の2の賛成が必要ですからなかなか難しいじゃないですか。

岡島 ちょっと定点観測的にGMOインターネットさんの定款を見たいですね。

熊谷 機会があれば、是非。(笑)

秘密がたくさん隠されていますからね。

岡島 でも、読む人が読むと、前後を見るときっと分かるのでしょうか。

熊谷 まあ、そうですね。

何しろ、全グループの、海外含めて、定款に「スピリットベンチャー宣言」を創業の精神として定めるというのが入っていますから。

岡島 だからやはり、アントレプレナーシップ(企業家精神)、火浦さんが仰るところの「創業メンタリティ」みたいなものをずっと持ち続けることに対してのコミットメントが、定款のレベルというのは、今日はちょっと鳥肌が立つ感じです。

そこまでやっていらっしゃるということですよね。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子


【編集部コメント】

続編ではその1で議論した「創業メンタリティ」を持った組織をどう作るか?について議論しました。GMOグループ代表熊谷さんの後継者計画についてもお話頂きました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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