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6.「出会って15分で社外取締役を承諾」現レノバ千本会長が、木南社長のオファーに即答した理由

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『起業家よ、大志を抱け!社会課題を解決するビジネスを創るための「志」とは?』全7回シリーズ(その6)は、志を共にする共感者・仲間との出会いについて。レノバ社長の木南さんが、第二電電(現KDDI)創業者の千本倖生さんを社外取締役としてレノバに招き入れた際のエピソードを語ります。千本さんは現在、同社の代表取締役会長を務めます。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ゴールド・スポンサーのクライス&カンパニー様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 5F
起業家よ、大志を抱け!社会課題を解決するビジネスを創るための「志」とは?
Supported by クライス&カンパニー

(スピーカー)
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長

木南 陽介
株式会社レノバ
代表取締役社長 CEO

髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長

田口 一成
株式会社ボーダレス・ジャパン
代表取締役社長

(モデレーター)

小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer

『起業家よ、大志を抱け!社会課題を解決するビジネスを創るための「志」とは?』の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. なぜ今、起業家に「志」が求められているのか?

1つ前の記事
5. 戦略コンサル“マッキンゼー”に集う「高い壁ほど乗り越えたくなる」優秀な人々

本編

正忠 本セッションも残す所あと約25分となりましたので、私から一つお話ししておきたいことがあります。

ここまで、皆さんの「志」の源泉や、次々と生じる壁への向き合い方を議論いただきましたが、一緒にビジネスを遂行し、壁を乗り越える「共感者」を見つけることについて、お話ししたいと思います。

志を持った人が、一人だけで何かできるということはあまりありません。

皆さんは、右腕となるパートナーや同志、さらには部下などの共感者を、どのようにして見つけられましたか?

木南さん、いかがでしょうか?

髙島 木南さんがどのようにして千本 倖生さん(現・レノバ 代表取締役会長)と出会われたのかも知りたいですね。

▶編集注:千本さんは、1984年に第二電電株式会社(現在のKDDI)を稲盛 和夫さんと共同創業し、同社の専務取締役、取締役副社長を歴任されました。2014年4月に株式会社レノバ社外取締役に就任し、2015年8月より同社代表取締役会長を務めていらっしゃいます。以下のレポート記事もぜひお読みください。
大物の持っているビジョナリー、フィロソフィーを、生身で体験!レジェンドが語る経営者の仕事シーズン2! 【ICC FUKUOKA 2020レポート】

「15分で社外取を承諾」レノバ木南社長と千本会長の出会い

株式会社レノバ 代表取締役社長 CEO 木南 陽介さん

木南 では、その点も含めてお話しします。

私たちの事業はやりたいことが割と明確なので、旗を立てて、やりたい人を探すという順番になります。

ただ、自分と全く同じ動機を持つ人を見つけるのは無理なので、「再生可能エネルギーをやりたい」という点は共通だけれども、「既存の勢力をやっつけたい」というドライブの人がいたり、「日本をどうにかしたい」というドライブの人がいたり、「巨大な構造物を海に建てたい」と思っている人がいたりと、動機はさまざまです。

私は、そのような人たちが同じ船で同じ作業をすることに意味があると思っているので、自分との何かしらの共通項を見つけて、まとめていくことを考えています。

会えば共通項はすぐに分かりますし、自分との違いも分かります。

そして、千本さんとの出会いについてです。

経営を進めていく中では順調に進むこともたくさんありますが、5年くらい前に、どのようにこの巨大マーケットでスケールして戦っていくのかについて整理しきれていない時がありました。

同時に、産業をひっくり返すようなことにゼロから取り組んだ人に会ってみたいという思いも以前から抱いていて、そのような話をしていたら、ある方からご紹介があって千本さんにお会いすることになったのです。

そこで、「今、エネルギー産業の転換点に来ています」「このようなことをやりたいのですが、少し力を貸していただけませんか?」というお話をしました。

おそらく千本さん自身も元々そのような部分を持っておられたのでしょう。

通信産業を大転換してきたことと、どこか似ているとのご指摘もありました。

髙島 その時は、力を貸してほしいことが明確にあったのですか?

それとも、何となく力を貸してほしいという感じだったのでしょうか?

木南 明確ではなく、足りないことが束のようにあったという感じです。

その束を投げ込んだら、回答がいただけるのではないかという期待感がありました。

そして、初めてお会いして15分で、「社外取締役をお願いできないでしょうか」とお願いし、「いいよ、手伝うよ」と即答していただけたのは本当にありがたかったです。

正忠 会場に千本さんがいらっしゃいますので、当時のことをお聞きしてみましょうか?

千本さんは、なぜ会って15分でOKと即答されたのでしょうか?

千本 倖生さん(以下、千本) 彼の志が高かったからです。


千本 倖生
株式会社レノバ
代表取締役会長

京都大学工学部電子工学科卒業、フロリダ大学Ph.D。日本電信電話公社(現在のNTT)入社、その後、1984年に第二電電株式会社(現在のKDDI)を稲盛和夫氏らと共同創業し、専務取締役、取締役副社長を歴任。1995年に慶應義塾大学、大学院教授に就任。その後カリフォルニア大学バークレー、カーネギーメロン大学の客員教授を経て、シリコンバレーのエクセレントカンパニーのネットアップや世界最大の通信社のロイターの取締役を務める。1999年にはイー・アクセス株式会社を創業。代表取締役社長、代表取締役会長などを歴任。2005年イー・モバイル株式会社を設立し、代表取締役会長CEOに就任、同社の拡大をリードしてきた。2014年4月に株式会社レノバ社外取締役に就任。2015年8月より代表取締役会長に就任。(上記写真は、翌日のご登壇セッション「レジェンドが語り尽くす!メガベンチャーを創るための経営者の仕事とは?」より)

正忠 15分間でそれを見抜かれたのでしょうか?

千本 そうです。その人を見れば、一瞬でその志が分かりますね。

正忠 やはり熱意が伝わったのでしょうか、たった15分でというのはすごいですね。

木南 言葉で言い表すのは難しいのですが、私にも「この方だ」という直感があり、本当にお力をお借りしたいと思いました。

「意義」と「楽しさ」が事業に人を惹きつける

株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役社長 田口 一成さん

正忠 今、素敵な出会いのお話がありましたが、皆さんの共感者との出会いはいかがでしたか?

田口 人が何かに仲間として参加する要因は、「意義」と「楽しさ」だと思うのです。

僕が25歳で起業した時に最初に会った、今の副社長についてお話しします。

僕はミスミという会社に入ったのですが、当時経営を始めたばかりの三枝 匡さんが「新卒を採ろう」という号令を出し、一期生として採用された中に、僕と彼がいました。

彼は自分でも事業をやろうと思っていたのですが、当時の僕は貧困問題に関心を持っており、社会のために事業をやりたいと話したところ、「あなたと一緒にやりたい」と言ってくれました。

その後、創業期以降にどんどん入ってきた人たちが口々に言うのは、「来年が見えなくて面白い」「常にわくわくできる」ということでした。

たぶん楽天の三木谷さんにもそのような面があるから、正忠さんも一緒にやっていらっしゃるのではないかと思います。

毎年言うことが変わって、毎年持ってくる課題が違って、描くビジョンがどんどん壮大になっていくので、結局そこが楽しくて、共感者が増えていくのではないでしょうか。

逆に言うとただ楽しいだけではだめで、そこに意義があるからこそ、皆が集うのかなと思います。

「この社会問題の解決には、あなたが絶対に必要だ」

オイシックス・ラ・大地株式会社 代表取締役社長 髙島 宏平さん

髙島 社会起業系だと、理念への共感は得やすいのです。

僕たちがそれぞれに思っている世界を実現すれば、良い世の中になることは明らかですから、共感してもらえずに苦労することは無いと思います。

正忠 しかし、「良いよね」「応援するよ」とは言ってくれても、一緒にやってくれるかどうかは別ですよね。

髙島 そうですね。

正忠 「社会課題を解決した方が良い」と皆が皆、口を揃えて言うけれども、皆が一緒にやってくれるわけではありません。

一緒にやる人をどのように見つければよいのでしょうか?

髙島 基本的に、候補者を見つけたら熱心に説得し続けるということに尽きるかなと思います。

正忠 狙った獲物を追いかけるのですね。

髙島 採用というのは、恋愛とは違って二股、三股掛けて、全部うまくいっても誰にも怒られない。

むしろ褒められますよね。志を共にする仲間が増えるのは、すごく良いことなので。

例えば、ある社外の人について「辞めるらしいよ」という情報が来ると、弊社の役員がその人と「飯でも食いに行こうよ」ということになり、行ったお店でたまたま僕が居合わせてしまうわけです(笑)。

隣の席で「ええ? 辞めるんですか?」となって話をすることが2週続く、という分かりやすいことをします。

正忠 なるほど。

髙島 もちろん、それで仲間になってくれるという、やさしい話ではありません。

当たり前のことですが、応援するのではなく当事者にしていかなくてはならないので、本気で欲しがっているということを伝える必要があります。

本当に望んでいるということ、この社会問題を解決できたらどんなに良い世の中が出現するかということ、そこに「あなたが絶対に必要だ」ということを伝えます。

そして「あなたが決断できないとこの社会問題を解決できないのだから、もしこの社会問題を解決できなかったら、あなたのせいですよ」と言うのです。

正忠 半ば脅迫ですね(笑)。

髙島 はい。でもそれだけ、その問題を解決するために僕らは真剣なんだ、だからこそあたなに仲間になって欲しいんだ、ということを真剣に伝えぬくのです。

正忠 なるほど。実践に基づいた話なので、大変参考になるのではないかと思います。

盲信的な共感者ばかりが集まることの危険性

株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充さん

出雲 木南さんがお話しされていたことに近いのですが、動機が同じかどうか、不純ではないかを細かく確認して、純度が足りない人をはじくということになりがちですが、ユーグレナでは、かなり意識してそう「ならないように」しています。

先ほど、51%(過半数)を大事にしているというお話をしましたが、弊社の従業員の半分はミドリムシが好きです。

でも残りの半分は、ミドリムシのことにはそれほど興味がありません。

成長企業で自分のキャリアを形成したいとか、途上国の問題解決に取り組みたいとか、新エネルギーに関わることが人生で一番大事なテーマだ、というような仲間が半分くらいいるのです。

当たり前ですが、やはりこのようなことを意識しないと、ミドリムシが好きだという人ばかり来るのです。

するとどうなるか?

ミドリムシが好きな人ばかりが100人集まって会議をすると、全部をミドリムシで何とかしようとするようになるのです。

(会場笑)

正忠 なるほど。多様性も何もない、モノカルチャーですね。

出雲 どんな課題が来ても、「分かりました、それはミドリムシでやります」となります。

「たまにはできないって言えよ」と私でも思うくらいです(笑)。

皆さん笑っていますが、皆さんの会社ではそのようなことはないのでしょうか?

あまりにエッジが立っていて、本当に好きな仲間だけでやっていると、そのようになりがちではないでしょうか。

ユーグレナは元々は「バイオ燃料を、ミドリムシで作ります」と言っていたのですが、「ではミドリムシで水素も作ってください」「ミドリムシで何でもできるのでしょう」「ミドリムシを飲めば病気も治るのでしょう」という話になっていきました。

ミドリムシで健康にすることはできるのですが、「見えなくなった目が見えるようになるのですか」など、「キリストじゃないぞ」と言いたいくらい、いろいろな案件が来ます。

でも皆が真面目でミドリムシが好きな人だから、どんどん「そういう困っている人がいるのであれば、やはりミドリムシで何とかしよう」ということになってしまいがちです。

それで「これは弊社で取り組むテーマではないでしょう」「これは目薬を差せばいいでしょう(笑)」という話になります。

普通に目薬を作ればいいのに、「どうしたらミドリムシの育て方を変えて目薬用のカルテノイドを抽出できるか」となってしまいます。

本当に誰も気付かなくなるのです。

そこで半分は、ビジネスや社会課題そのもの、あるいは地域・ロケーション、弊社の場合であればバングラデシュなど、それらに関心のある人を採用するようにしています。

そして、それぞれの問題を解決するときに、ミドリムシが良いということになればミドリムシを使って一致団結してやりますが、そうではない視点が無くなると非常に非効率になりますね。

正忠 なるほど。盲信者ばかりを集めると、カルト集団のようになって危険だということですね。

信頼関係というよりも、「これさえあれば良い」という信仰のようになってしまいます。

社会課題を解決する際は、ビジネスモデルも極めて大事ですが、志を持ったこの人たちと共に実現したいという「人選び」や「仲間探し」がとても大事だと思っています。

本セッションのスポンサーとしてクライス&カンパニーさんがサポートされているのも、これからは社会課題を解決する上で仲間が大事になってくるからでしょう。

これまでは、いろいろな企業に高く売れる「ハイスペック人材」が求められる傾向があったようですが、これからは、「組織に本当に適した人」を探す時代になるのだと感じています。

(続)

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続きは 7. 山頂からの景色を眺めたら、遠くに見える次の山頂を目指せ【終】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/戸田 秀成

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