西暦788年開山(延暦7年)、1200年以上続く比叡山延暦寺から人材育成を学ぶ | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

1. 西暦788年開山(延暦7年)、1200年以上続く比叡山延暦寺から人材育成を学ぶ

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「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」-1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?全6回シリーズ(その1)は、比叡山延暦寺というと、想起される「焼き討ち」の話からスタート。ICC KYOTO 2020のCRAFTED TOURで延暦寺を見学したクラウドワークス吉田さんと、COTENの深井さんが、そのときに聞いた、12年間外界に降りず、山に籠もるという修行について参拝部 今出川さんと星野さんに質問します。その真意とは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 12D
「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」-1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?
Supported by Lexus International Co.

(メイン・スピーカー)

今出川 行戒
天台宗総本山延暦寺
副執行 参拝部長

(ゲスト)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

星野 最宥
天台宗総本山延暦寺
参拝部主事

松下 健
株式会社オプティマインド
代表取締役社長

吉田 浩一郎
株式会社クラウドワークス
代表取締役社長 兼 CEO

(モデレーター)

村山 和正
株式会社オートクチュール京都
支社長

「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」-1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?の配信済み記事一覧


本編

村山 和正さん(以下、村山) 皆さん、こんにちは。今日はありがとうございます。


村山 和正
株式会社オートクチュール京都
支社長

1978年京都生まれ。京都嫌いで中学卒業後は京都を飛び出し県外の全寮制高校へ進学。大学はUniversity of Hawaiiにて天体物理学を専攻。クラブDJ・ラジオ局ディレクター、イベント会社、ものづくり工場を経て、2017年「ルイ・ヴィトン 2018クルーズ・コレクション」のディレクションを機に20年ぶりに帰郷し京都支社を立ち上げる。現在は京都に軸足を置き製薬、自動車、ハイブランド企業のプロモーション施策の企画に加え、比叡山延暦寺を中心に寺社仏閣において伝統文化を活用したイベント企画・PR施策やイベントなどをプロデュースしている。実家は代々京都の社家(神主の家)。

本日は、比叡山延暦寺からお坊さんお二人をお招きしまして、3人のゲストとともに“「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」-1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?”をテーマにディスカッションしていきたいと思います。

ゲストの3人の方々には、一昨日と昨日に分かれて、CRAFTED TOUR(※) で比叡山に来ていただいています。

▶編集注:ICCサミット KYOTO 2020のDAY1(9月1日)とDAY2(9月2日)の2回に分けて、CRAFTED TOUR 「比叡山延暦寺を訪れ、1200年以上続く組織を学ぶ」を開催しました。両日ともに天台宗総本山延暦寺 参拝部主事の星野最宥さんにご案内、解説をいただき、DAY1では本セッションゲストの深井さんとTakram渡邉 康太郎さん、DAY2では慶應義塾大学の琴坂 将広さんがナビゲーターを務めました。

比叡山でお坊さんとお話しされた話も含めて、今日はディスカッションできたらと思います。

比叡山焼き討ちは、延暦寺ではタブーだった!?

村山 まずはじめに、「延暦寺」と聞くと、会場の皆さんからなんとなく共通認識で出てくる歴史的出来事があると思います。

いきなりですが、今出川さん、織田信長(戦国武将 1534〜1582)はお好きですか? 男のロマンとしては、織田信長好きは多いのですけれども。

今出川 行戒さん(以下、今出川) そうですね。小さい頃歴史を学んだり、歴史マンガがあった中で、織田信長はヒーロー的な扱いで描かれることが多かったので、特に男の子からすると、家康、秀吉、信長といったら、信長が好きという思いのときもありました。


今出川 行戒
天台宗総本山延暦寺
副執行 参拝部長

1967年生まれ。滋賀県大津市出身。延暦寺における参拝者向けの様々な企画の立案・実行の責任者。これまで
重要文化財「釈迦堂」本尊特別御開帳ならびに内陣特別拝観、国宝殿においての「至宝展」(比叡山における未公開の仏像などの展覧会)などを開催。昨年末話題になった「ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展」など
、比叡山延暦寺1200年の教え、歴史、文化をふまえ、
今の世に新たなカタチでその魅力等を発信している。

村山 奇しくも2021年が焼き討ちから450年の年にあたります。

比叡山延暦寺はなぜ、織田信長に焼き討ちされたのか?(PHPオンライン衆知)

吉田 浩一郎さん(以下、吉田) やっぱり火をつけると迷惑でしたか?


吉田 浩一郎
株式会社クラウドワークス
代表取締役社長 兼 CEO

パイオニア、リードエグジビションジャパンなどを経て、ドリコム執行役員として東証マザーズ上場を経験した後に独立。事業を拡大する中で、ITを活用した時間や場所にこだわらない働き方に着目、2011年11月に株式会社クラウドワークスを創業。「”働く”を通して人々に笑顔を」をミッションとして、翌年3月に日本最大級のクラウドソーシングサービス『クラウドワークス』を開始。派生する複数事業とともに、人材ミスマッチを解消し、労働市場をアップデートする事業を展開。2020年9月末時点で、提供サービスのユーザーは410万人、クライアント数は67万社にのぼる。2015年には、経済産業省 第1回「日本ベンチャー大賞」審査委員会特別賞(ワークスタイル革新賞)を受賞、グッドデザイン・未来づくりデザイン賞受賞。2016年には、一般社団法人新経済連盟理事に就任。

今出川 いやあ、普通のご家庭でも迷惑でしょう、火は。すべてが無くなりますからね。

村山 昨日もその話を、星野さんが深井さんにも伝えていました。

深井 龍之介さん(以下、深井) 比叡山焼き討ちのお話は、普段から話題に出てきたりしますか?


深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

新卒で入社した大手電機メーカーの経営企画を2年で退社し独立。新規事業立上コンサルタントとして3年働く。その後福岡でベンチャー企業取締役を2社経験し、株式会社COTENを起業。現在も複数社のスタートアップ・ベンチャー起業の取締役を兼任しながらCOTENの代表を務める。人文学・歴史・社会科学が大好き。3,500年分の世界史情報を体系的に整理し、200~300冊の本を読んで初めてわかるような社会や人間の傾向やパターンを、誰もが抽出できるように世界史の一大データベースを作成するプロジェクトを進行中。また会社の広報活動としてPodcastで「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO」を放送中で2018年末から開始し、2019年にはJapan Podcast Awards大賞とSpotify賞をダブル受賞。Apple Podcast総合ランキング過去最高1位を獲得。

今出川 比叡山の中では、ほぼ出ないですね。どちらかというと、タブー視されていました。

われわれも若い時分、本堂でお参りの方々にいろいろな比叡山のお話をする中で、歴史的なひとつの事実でもあるので、信長の焼き討ちの話をしていました。後で大変上の方々から、「自分の家が焼かれたことを、何を偉そうにしゃべっているんだ」というお叱りを受けたりもしました。

それで若かりし頃、「あっ、これはタブーなんだな」と、そういう思いで長年いました。比叡山でこの話をするのは、ちょっとはばかられました。言われることも分からなくはないのですが、今まではそうでしたね。

深井 なるほど。タブーなのですね。

村山 会場にいらっしゃる方のご年齢であれば教科書に載っていたと思いますが、載っていないという方はいらっしゃいますか?

(会場を見回して)いらっしゃいませんね。確実に燃やされましたね。

昨日のCRAFTED TOURでは、ゲストの方がなかなか突っ込んだ話をされていましたし、エッジの効いた質問が出ていました。今日はそのような話もしつつ、メインテーマは、「1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?」です。

宗教と会社の運営とはもちろん違うとは思いますが、基本的には創業者の方と、788年(延暦7年)に比叡山を開山された、伝教大師(でんぎょうだいし)最澄(天台宗の開祖 767〜822)さんという方は、同じだと思っています。

話を聞いて同じだなと思ったのは、創業の思いがあって、それをずっと長く続けたい、そのためにどうしていくか、どうあるべきかということに関しては、ビジネスも今回の延暦寺さんのお話にしても十分相通ずる、相通ずるどころか、とても活用できるのではないかという思いがあります。

その辺りのお話をお二人に聞きつつ、ゲストから質問をしていただければと思っています。

今出川 普段われわれも法話や説法をするときは一方通行です。こちらからずっと説明や話をするだけであって、そういう機会は多いのですが、今日のような形でざっくばらんにお話しする機会はわれわれもあまり経験がありません。答えられないことはノーコメントと言いますね。

(会場笑)

現在も続く12年間の修業、籠山行とは

吉田 私はおととい比叡山にお伺いしまして、人材育成の面で一番印象に残ったのが、「籠山行(ろうざんぎょう)」です。「籠山行」は12年間山から下りずに、病院にも行かずにやるというお話です。

「籠山行」の位置付けから教えていただけますか。

今出川 比叡山は1200年前に伝教大師最澄という方が開かれた御山であり、お寺です。

最澄さんは人づくりの山を生涯をかけて目指されました。その中で一つのことをやり続けて一人前になるのに12年という一つの期間を定められました。その間比叡山に籠って修行をして勉強をします。

吉田 これはなぜ10年ではなく、12年なのですか?

今出川 なぜ最澄さんが12年と定められたのか分かりませんが、それが今もなお続いています。

12年の籠山行をされている行者さんが、比叡山に今も2人おります。

吉田 その方は生活はどのようにされているのですか? どこまで歩き回っていいのですか?

今出川 山の麓に結界があり、そこから外は出られません。朝3時半に起きて、夜10時ぐらいに寝る生活を12年間続けます。

深井 ずっと同じ生活をされるのですね。

今出川 ずっとそうです。

深井 少し最澄さんの勉強をさせていただきましたが、最澄さんや空海(真言宗の開祖、弘法大師 774~835)さんが世に出られる前は、みんな都市部で仏教の修行をしていました。

山岳仏教という形で山に籠って修行したり、考えることによって真理に到達するという感覚を最澄さんと空海さんが復興させて、そちらのほうが主流になって、平安仏教の主流になっていく流れの中で、「籠山行」が出てきたと勉強しました。

実際に山におられて、山でないと分からなかったということや、山の神聖さによって気づくこと、都市部で本を読んでいただけでは分からなかったという感覚に至ることはありますか?

今出川 山岳仏教というと、仏教は山から発展していっているという歴史的なこともありますが、当然街中にもお寺があるし、修行の道場も街中にもありますが、私は環境が大事だと思います。

例えば坐禅でも何でもいいのですが、教えについて考える、集中するといったときに、街中というのは良くも悪くも煩悩もありますし、ざわざわした環境があります。

しかし山は神聖であり、特に比叡山は昔から神の山と言われていました。私は修行の環境に適していたのだなと思います。ですから山に集い、修行し、学び、でも山にずっといれば籠っているだけになるので、ある程度修行をしたら、今度は里に下り布教して伝えていくというふうな形で発展していったのではないかと思います。

深井 なるほど。里に下りる部分も、非常に大切だと思っていらっしゃるわけですね。

今出川 思います。そうしないと、修行はただの自己満足だけで終わったりしますし、自分が学んだものを今度どう伝えていくかが、次のステージとして大事なことだと思います。

比叡山は人づくりの「総合大学」

吉田 「籠山行」は12年間何をしているのですか?

今出川 修行ですが、簡単に言うと、最澄さんは「総合大学」的なことを目指していかれるのです。

最澄さんが1200年前に12年と考えられた時、「止観業(しかんごう)」と「遮那業(しゃなごう)」という、2つの学部をつくられました。

簡単に言うと比叡山に入学して、「密教」を学ぶ部(遮那業)と、「顕教(けんぎょう)」という法華経、教えを学ぶ部(止観業)のどちらかの学部に入って、12年間学ぶという形です。

それが平安の後期になるにつれ、2学部から5学部くらいに分かれていきます。その5学部が「円(えん)」「密(みつ)」「禅(ぜん)」「戒(かい)」「念仏(ねんぶつ)」です。

「円」は法華経を学ぶ学部で、ここの優秀な卒業生に例えば日蓮上人(日蓮宗の宗祖 1222〜1282)がいらっしゃいます。

「禅」は坐禅の学部で、曹洞宗の開祖道元禅師(1200〜1253)、臨済宗の開祖栄西禅師(1141〜1215)が修行に来られました。

「念仏(ねんぶつ)」の学部では、浄土宗を開かれた親鸞上人(1173〜1263)や法然上人(1133〜1212)が比叡山で修行をされました。

このように、「仏教」と一言で言っても、いろいろな形の仏教があります。自分は何を学びたいかと考えたときに、比叡山に来ればすべてがあります。そういうところから広がっていきました。

吉田 全寮制の大学で期間が12年間という感じですか?

今出川 そのような感じです。

深井 当時、基本的に学校は官僚を育てるための学校しか存在しませんでした。そこに最澄さんが人間そのものをちゃんと育てて、衆生を救うという方向の総合大学的なものを初めて作られました。

吉田 では、リベラルアーツ的なものでしょうか?

深井 (頷きながら)当時学ぶべきものが全部詰まっていました。

今出川 当時は奈良でしかそれが受けられませんでした。最澄さんの頃もそうで、最澄さんも奈良に行ってお坊さんになる資格を得ました。

今おっしゃったように、官僚を育てるものでは違うということで、奈良を出て比叡山に戻ってこられて、それとは違う人づくりの山を目指し、それがきちんと国に認められる機関にしようと、国といろいろなやりとりをしました。

ただ生きている間にそれは認められず、亡くなられた7日後にその許可が朝廷から下りたという歴史があります。

吉田 俗世界で大学をイメージすると、大学は勉強もしますが、遊んだり、サークル活動や恋愛があります。「籠山行」における他の人とのコミュニケーションや俗な恋愛とかというのは……。

今出川 あくまで「総合大学」というのは分かりやすく例えただけで、大学ではありません(笑)。あくまで修行なので、ある程度「籠山行」は俗世とは一線を画しています。サークル活動などはもちろんないです。

深井 当時のお坊さんは国家公務員なので、国家公務員の資格を与えられる人が奈良の都市部の仏教の人たちしかいないという状態があって、その人たちが仏教の権威をすべて掌握していました。

そこに最澄さんが出て来られて、総合大学的なところを作って、そこでもいわゆる授戒(※)ができるようにしたことは、当時の日本において画期的なことでした。

▶編集注:仏教に帰依する証として戒律を受けることや、その儀式など。

今出川 そうですね。そのときの法律を変えたみたいな形ですからね。

深井 そこから鎌倉時代以降の新しい仏教の勢力と言いますか……

吉田 登壇前に今出川さんに、(「籠山行」の12年は)小中高の6・3・3制のもととなったと教えていただいて、すごいなと思いました。

今出川 そういうふうにも言われています。

吉田 しかも途中でやめたら切腹と聞きましたが。

今出川 それはインターネット情報ですね。

覚悟のもと挑む7年間の千日回峰行とは

星野 最宥さん(以下、星野) 12年の「籠山行」の修行をされている方は今現在お二人いらっしゃいますが、一つは「止観業」で、伝教大師最澄様に12年間お仕えしているお坊さんのコースがあります。


星野 最宥
天台宗総本山延暦寺
参拝部主事

1973年東京生まれ 今出川師のもと、延暦寺における参拝者向けの様々な企画の立案・実行のサポートを行う。

もう一つが、「千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)」です。7年かけて千日の修行をしていきます。その途中、道半ばで諦めてリタイアするときには腰に差している短刀で自害をするという覚悟で行に臨むということで、実際に切腹した方が今までいるわけではありません。

村山 最終的に阿闍梨(あじゃり 弟子の模範になれる位が高い僧侶)さんや大阿闍梨さんと呼ばれるようになられる方が山中を歩いて、途中でやめると切腹だというような、やめるという選択肢がないぐらいの背水の陣で臨むということのようです。

1300年に2人だけ達成、命がけの苦行から大阿闍梨が学んだ3つのこと(GLOBIS知見録)

今出川 要するに覚悟です。今でも千日回峰行をする人は割腹用の短剣を腰に差して歩きますし、百日回峰行の人間は短剣は差しませんが、首を括る紐を腰に巻いて毎朝出発します。

(続)

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続きは 修行中の評価、フィードバックは? 比叡山延暦寺の人材育成はどれだけ現代化しているか? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/フローゼ 祥子/戸田 秀成

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