感動の連鎖を生み出した「宇宙兄弟」のミュージックビデオレター(コルク佐渡島)【K16-2A #3】 – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

感動の連鎖を生み出した「宇宙兄弟」のミュージックビデオレター(コルク佐渡島)【K16-2A #3】

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「ファン作りとユーザーの資産化」【K16-2A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その3)は、コルク佐渡島さんに、ファンと作家が直接つながるコミュニティ作りについてお話し頂きました。「宇宙兄弟」のミュージックビデオレターの事例に注目です。事前人気投票で1位に輝いたセッションです。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております



登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 2A
「ファン作りとユーザーの資産化」

(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長

長見 明
スターバックスコーヒージャパン株式会社
マーケティングコミュニケーション本部 デジタル戦略部 部長

濱野 幸介
株式会社良品計画
Chief Marketing Technologist(当時)
*現在はプリズマティクス株式会社 代表取締役

(モデレーター)
守屋 彰人
株式会社ディー・エヌ・エー EC事業本部長 (当時)
*現在はダイソン株式会社 Head of Direct

「ファン作りとユーザーの資産化」の配信済み記事一覧

【前の記事】

【本編】

守屋 では、佐渡島さんお願い致します。

佐渡島庸平 氏(以下、佐渡島)  僕は元々、講談社という出版社のモーニング (漫画雑誌)編集部で編集者をしていました。


佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。現在、漫画作品では『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『テンプリズム』(曽田正人)、『インベスターZ』(三田紀房)、『ダムの日』(羽賀翔一)、小説作品では『マチネの終わりに』(平野啓一郎)の編集に携わっている。

その後、2012年、4年ほど前に独立して、株式会社コルクというクリエイターのエージェント会社を作りました。

出版業界は自分たちの顧客を知らない

これまでは、出版社も書店も誰もファンについて把握していないという状況がありました。

実はそれは今も変わっておらず、出版業界がよくない状況にあるのは、自分たちの顧客を一切知らないというところに起因しているのではないかなと思っています。

例えばアメリカでは、定期購読を中心に雑誌が販売されるので、それぞれの出版社が顧客について知ることができるのですが、日本ではコンビニや売店で販売されるため、顧客について分かりにくい状況があるのです。

僕がエージェント会社を作ろうと思ったのは…例えば今コルクに所属している『宇宙兄弟』の漫画家 小山宙哉さんが、『宇宙兄弟』を終えて新作を描いたとします。

それで、もしも出版社を変えるようなことをすると、書店での棚も変わってしまう訳ですね。

そうすると、何十万人もいたファンが本を見つけることができず、今の出版不況の時代だと、『宇宙兄弟』を書いた小山宙哉なのに、次の本が3万部からしか始められないみたいなことが起きてしまうのです。

ですから殆どの作家が怖くて連載を切り替えることができず、長期の連載になってしまったり、続編の「2(Part 2)」が始まってしまったりしてしまうのです。

ファンと作者がしっかりと繋がっていさえすれば、作者がどんどん新作に挑戦できるのに、それができないという産業構造になってしまっているのが現状です。

そこで、エージェント会社として介入し、作家とファンを繋ぐお手伝いを長期的にすることでその現状を変えていこうと思うようになりました。

作品を読んで、それに感動してファンになってもらうことは、他のどの作品でも目指していることですが、今までは、深く感動したお客さんと、さらっと読んで面白いと思ったお客さんが、フラットに(一律に)ファンでしかなかったんですよね。

僕達が今やろうとしていることというのは、深く感動した人達に、もっと深く作品に関与してもらい、様々な形でその作品に関わり、感情体験を増やせるようなビジネスの仕組みを作っていきたい、ということなんです。

ファンにしか見られないミュージックビデオレター

ここに今映し出されている「『あと一歩』ミュージックビデオレター」は、つい最近公開されたものですが、一般公開される前は完全に非公開にして、ファンの人しか見られないようにしたのです。

出所:「『あと一歩』ミュージックビデオレター」のWebサイト

クリックで下にいって頂くと、こういう風に手紙が届くのです。

この手紙自体は、20日間すると消えてしまいます。

片側に、小山宙哉がファンに向けて書いた文章があるのですけれども、その横にミュージックビデオがあるんですね。

このミュージックビデオの部分に写っている人達は、皆Tシャツを着ているのがご覧になれますか?この企画は、ファンクラブでTシャツを買った人が、その写真を送ってくれることで、このミュージックビデオに参加できるという特典を用意していたのです。

Tシャツを販売した時点では、そういう特典を用意していると、はっきりとは言っていなかったんですよ。

ファンの人たちには、「Tシャツ姿を撮ったらその写真を送ってきてください」とだけ呼びかけていました。そして、皆が写真を送ってきてくれたところで、「カサリンチュ」が『宇宙兄弟』のために書き下ろしてくれた曲のミュージックビデオでその写真を使うことを発表しました。

それでできた映像は、こちらです。

限定公開にしたのは、これをファンの人たちだけに先に見てもらいたかったからです。

この「あと一歩」は、27巻の『宇宙兄弟』のために作られた曲で、「せりか」という主人公が挫けそうになる時に、心を励ますための曲なのです。

この曲を聴いて感動したら、自分の周りの応援してあげたい2人だけに、この曲にメッセージを添えてWEB上で送れるデジタルコンテンツを創りました。

1人が2人に送り、その2人がまた2人ずつに送り、少しずつ関係者の間だけで手渡しの感覚で広められるようにしていました。今やっと一般公開され、一般公開中にも1人につき2人にメッセージを送ることができるようにしています。

こういった応援ソングで感動を連鎖させ、新しいコミュニティを作っていって、そのコミュニティで出会ったファン同士がまたそこで友達として繋がるようなきっかけを、作品ごとに創っていこうとしています。

いちばん重要なのは媒体の運営ではなく、作家である

守屋 これまでは、出版社が顧客管理を積極的に行っている雰囲気はあまりありませんでしたが、御社ではインターネットを用いたファン作りに積極的に取り組まれているようですね。

佐渡島 そうですね。

マスメディアにとって、一番重要なのは、メディアの運営なんですね。産業として、テレビや出版、新聞はマスコミと言われるぐらいで、メディアが事業の中心です。

2番目に重要なのが、メディアで活躍するタレントになります。

一方で、弊社の場合は、作家が一番上で、二番目がそれを掲載するメディアなのです。

優先順位を変えると、行うことが少しずつ変わってくるのではないかなというのが、僕が考えていることです。

守屋 先ほど『宇宙兄弟』のお話が出てきましたが、最初は男性読者が7割を占めていたという状況だったにも関わらず、仮説的に女性も読者になるのではないかと考えて、美容室に手紙付きでマンガを送られたことがあるというお話を伺いました。

佐渡島 そうですね。

7割というか、初めは9割が男性読者でしたね。男性読者しかいないと、本が売れないんですよね。

やはりある程度女性読者が増えて、5割を越さないと大ヒットにはならないのです。9:1だとあまりにもバランスが悪すぎるので何とかしたいという状況の中で、読者からいただいた葉書の中からは女性読者を選んでポスターを送ったり、美容室にキャンペーンをしたりと、初めのころは女性が増えるような取り組みを細かくやっていきましたね。

出版してみたら、男性読者が7割から9割だったにも関わらず、意図的にアクションを起こすことによって、『宇宙兄弟』の5、6巻目が出たくらいの時には、もう男女比が5:5くらいになっていました。

そういう風に、結果的に獲得できた層は違うのだけれども、それはあるべき姿ではないから仕掛けていくようなところについては、非常に面白いなと思いましたね。

今のコンテンツの状況だと、出版してみないとどういうお客さんが付くか分からないところもあります。そういった状況の中で、どのようにバランスをとっていくのかということについては、課題として取り組んでいかなければならないと思っています。

ただ、今まではすごくあやふやな情報しか取れていなかったのが、これからネットの中でもっと丁寧な情報が取れてくると、取り組めることが全く変わってくるのではないかと思っています。

守屋 なるほど。

ネットを用いて獲得すべきファンと、いかに近づいていけるのかについて、今日は色々と伺えるといいなと思います。よろしくお願いします。

佐渡島 よろしくお願いします。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

続きは タンブラー、全面禁煙、デザインカード…スターバックスが起こし続けてきたイノベーション をご覧ください。

【編集部コメント】

続編(その4)では、スターバックス長見さんにスターバックスが起こし続けてきたイノベーションについてお話し頂きました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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