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2.Hondaの豊富なリソースがベンチャーの事業開発を加速する

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2018年9月開催のICCサミット KYOTO 2018 では、ピッチコンテスト「Honda Xcelerator カタパルト」を開催することとなりました。

当シリーズでは、「Honda Xcelerator」の理念やそのプログラムの詳細をお伝えするために行われた Honda Xcelerator Japan ローンチイベントでのパネルディスカッションの模様を、全3回に分けてお届けします。

(その2)では、Hondaの豊富なリソースが可能にしたプロダクト開発・実証実験のエピソードを「DRIVEMODE」古賀氏、「Nextremer」向井氏にお話しいただきました。「Honda Xcelerator カタパルト」登壇企業は6月末まで一般募集を受付中です。ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2018年2月9日開催
Honda Xcelerator Japan ローンチイベント
パネルディスカッション

(スピーカー)

古賀 洋吉
DRIVEMODE, Inc.
CEO

杉本 直樹
Honda R&D Innovations, Inc.
CEO

向井 永浩
株式会社Nextremer
代表取締役CEO

中島 慶
本田技研工業株式会社
ビジネス開発統括部 技術主任

(モデレーター)

難波 俊充
株式会社WiL
パートナー

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難波 今回「Honda Xcelerator」と冠を付けたことで、何が変わったのか教えて頂けますか?

また皆さんどういう苦労があって、その苦労がどう解決したのかを教えてください。

契約書はボロボロのガレージでの説得から始まった

古賀 例えば「ちょっと話をしてみましょう」と言うと、法務の人からすごい長い契約書とワンサイド的なNDA(秘密保持契約)が送られて来るわけです。

スタートアップ側のノリだと大企業が相手でも「1ページの契約書でいいのでは? だって何もやらないかもしれないし」というノリです

しかし、「これで絶対に大丈夫ですね!?」というような分厚い契約書が来る。

だから担当の方を我々のボロボロのガレージ(オフィス)に連れてきて「キミ何を言ってるの? え、保険? このガレージを見ろ!」みたいな感じで説明しました。

スタートアップと大企業という根本的に考え方が違う中で一緒にプロセスを作っていきました。

一緒にプロセスを作っていったため結果的にとてもスタートアップ・フレンドリーに対応して頂けるようになったと思います。

我々が1社目の取り組みだったこともあり、大変なこともあったと思いますが、すごくガッツで対応して頂いて良かったなと思っています。

(写真左)DRIVEMODE, Inc. CEO 古賀 洋吉氏

杉本 Hondaは今まであまりスタートアップと付き合ったことがないので、法務担当者も通常のサプライヤーさんにサインして頂くような契約書を雛形として使わざるを得ないんですよね。

それでこんな分厚い契約書の中に「リコールになったら全部責任をとってください」とか色々書いてあるわけです(笑)。

(会場笑)

杉本 当然(DRIVEMODEさんから)電話を頂いて、「ニックさん、マジですか。ベンチャーとやってみようという時に“リコール”ですか。弁護士に契約書をレビューさせる費用だけでうちは倒産します。そんな金はありませんよ!」と言われました。

「それはそうだよね」ということで、Hondaは「現場現物」主義ですから、法務担当者に僕らが仕事をしている現場を見に来てもらうようお願いをしました。

そうしたらサンノゼ空港にスーツを着た彼らが現れて(笑)、それから車で一緒に行きました。

DRIVEMODEさんは本当に一軒屋のガレージでやってるんですよ。

そこに連れて行ったら、法務担当者が「ニック、ここか?」、「そうだ」と。

ガレージの軒先にキャンプ用のテーブルが置いてあって、そこでTシャツを着たCEOの古賀さん、上田さん(編集注:上田北斗氏、DRIVEMODE共同創業者)と我々、それと法務の人間はネクタイを締めていました。

ベンチャーができる事とできない事、得意な事と苦手な事、Hondaにとってそれが何で面白いのか話しました。

「やってみるということが大切なんだから、まずはやってみれる環境を作ろう」と法務担当者を説得して、彼らも理解してくれたんです。

法務というのはコンサバ(保守的)なところですが、その中を全部説得してくれて、我々のために作ってくれたベンチャー用の契約書一式を今は使っています。

そんなすごいことは書いていなくて、「機密は守りましょう」という当たり前のことや、「お互いもともと持っているものはもともとの持ち主のもの、一緒に作ったものは共有」というスピリットでやっています。

もちろん、とても良いものができて、是非Hondaで独り占めしたいとなったら、「これを買わせてください」という話になるかもしれませんが、「まずやってみる」という段階においてはパートナーとしてイコールのスピリットでやってます。

難波 もともとシリコンバレーの価値観を理解していたから、「そちら側(スタートアップ側)」にすぐに行けたんですか?

杉本 いきなりではなかったですね、法務とのすったもんだはありましたから。

「何でニックのチームは毎回毎回(契約文を)変えてくれと文句を言ってくるんだ? これがスタンダードと何度言ったらわかるんだ」と言われていましたから。

それでなかなか進まなかったので、現場を見てもらって一気に話が進んだ、という感じです。

難波 向井さん、中島さんはどんな苦労がありましたか?

Honda Xceleratorは5分で繋がる「Honda」への入り口

中島 やはり、本当はやりたかった車とのコラボをやるのに5年もかかってしまったということですね。

Nextremerさんの方が苦労されているんじゃないかなと思いますが。

向井 色んなステップを踏んで、ようやく実証実験にこぎつけました。

(写真中央)株式会社Nextremer 代表取締役CEO 向井 永浩氏

恐らく今日の参加者はベンチャーの方が多いと思いますが、「5年後に実証実験をやります」と言われたら、正直ベンチャーとしては有り得ないと思うんですよ。

今後は我々の技術とスピリットが合えば、「5年」と言わず「5分」でできるような感じになるんじゃないかなと思っていますが…どうでしょうか?

杉本 Hondaは大きな会社なので、向井さんは研究部門で繋がりが既にあったから、ある意味ラッキーだったと思いますよ。

でもHondaと今まで全く接点がなくて、でもモビリティを変えたいというスピリットがあるベンチャー企業さんにとっては、どこから入って行くべきか分からない。

これらからはこのHonda Xceleratorを入り口として、Hondaとの色んなコラボレーションを是非5分でディスカッションさせて頂ければと思います。

難波 5分で何をやるか決まるという、すごいですね!

まさに入り口が明確になって、誰と何を実際にやれそうか明確になってくると思うのですが、このプログラムはグローバル展開されているというのも、他のプログラムにない特徴ですよね。

是非こういう風に使って欲しいとか、ベンチャー側から見たグローバルなプログラムによるベネフィットを教えて頂けますか?

グローバルな実証実験を「Honda」のリソースで

古賀 我々のプロジェクトでは基本、シリコンバレー部隊と話をして、日本のチームとは技術的な話をしながら、東南アジアマーケット担当のチームとも話をさせて頂くといったフォーメーションがありました。

我々にしてみれば、エリアごとのデマンドなんてわからないですよね。我々のチームといっても10人、20人の規模の小さな組織です。

それに対して、Hondaの方々と話をすると「こういうデマンドがあったので、もっと話をしてみましょう」など次から次に出てくるわけです。

我々単体では、このようなデマンド調査は絶対できません。

組織がグローバルだから、社内でプレゼンをすると「あの国は興味があった」などそういう話がポンポン来るんですよね。

そこは我々としてすごく助かっています。

難波 地域に責任者がいらっしゃって、そこの情報をやり取りしながら、この部門でこういうニーズがあると吸い上げてくださると。

杉本 そうですね。Honda Xceleratorとベンチャーとのインターフェースになる拠点を、ヨーロッパ、日本、シリコンバレーに今順次設けていますが、Hondaのオペレーションは既にグローバルですから、研究部門、営業部門といった色んなところとの社内ネットワークがあります。

社内向けに運用しているデータベースで情報共有をして、色んな方に見て頂けるようになっていますし、ニュースレターも社内向けに配布しています。

そういったインフラを我々は一生懸命作っていますから、それをベンチャーの皆さんにうまく利用して頂ければと思っています。

(写真中央)Honda R&D Innovations, Inc. CEO 杉本 直樹氏

向井 車というグローバル産業の中で、音声対話というものは言語依存があるものの、やはり人間は音声で色々やっているので、とても可能性があります。

グローバルな意見も結構来るので、それは古賀さんと同じく、とても有難いと思っていますね。

中島 今回実証実験をして強く感じたのが、Hondaブランドを活用すると色んな人にご協力頂けるんだなということです。

今までお付き合いのあったナビ・メーカーさんは当然お声掛けさせて頂いたんですけども、それ以外にもレンタカー、旅行会社、あとは環境協会、実証実験を行う地域の地場企業など色んな方々にご協力頂くことができました。

Hondaブランドをうまくスタートアップの方にもご活用頂いて、お互いが世の中での存在感を高め合えると良いなと思っています。

難波 まさに実証実験をグローバルなレベルで、時にはHondaの予算も使わせて頂きながら、担当者に付いて頂きながらできると、そんなイメージで戸を叩いて頂ければいいというイメージですね。

それでは今後、(Honda Xceleratorプログラムを通じて)実証実験をやった先には、夢としては量産や事業化でお付き合いをしていくということがあるかと思います。

ここは色んなチャレンジがあると思いますが、ご期待されていることや、挑戦の部分についてお聞かせ頂ければと思います。

あとはここにスタートアップの皆さんもいらっしゃいますので、これを使ったらいいという意見があれば一言お願いします。

オープンイノベーションとは「いかに学び、いかに変わるか」

古賀 是非これから量産して頂ければと思いますが、やはり量産するためにはプロジェクトマネージメントにとても手間がかかります。

色んなステークホルダーがいて、国によってバラバラな中で、なかなか新しいチャレンジが伴うプロジェクトは進まないことが多いと思いますが、今後色々と支援して頂きたいと思っています。

杉本  決して量産をほったらかしているわけではなく、色んな部隊に提案したり、社内調整をしたり、イベントをやったりすることもあります。

またターゲットがはっきり分かる技術なので、現地法人に我々が直接出向いてアプローチもしていますしね。

我々Honda R&D Innovations、Honda Xceleratorの役責は、第一歩のところを作って差し上げて、Hondaの中に入っていくゲートウェイをプロトタイプという形で一緒にやろうという事なのです。

もちろん、製品開発チームは彼らの制約の中で、ある程度コンサバ(保守的)にならざるを得ないところはあるので、こちらが思うスピードで動かないこともありますけどね。

自分たちに足りないものを何処かから見つけてきてポンと嵌めて終わり、ということがオープンイノベーションだと思われがちなんですよね。

でも僕はそうでないと思っています。

そのプロセスを通じて我々が何を学び、Hondaがどう変わるかということが、オープンイノベーションだと思っています。

それはどの企業もそうだと思いますね。

なぜオープンイノベーションをやりたいかと言うと、どの企業さんも「次の新規事業をどうしたらいいんだ、この先50年どうやって自分達は食って行くんだ」というのが心配だからやると思うんです。

その時に「自分達の事業ドメインはこれだから、この足りないところを探してこい」というやり方でやっていると、多分そんなものは世の中にはないんです。

あっても既に誰かがやっていて、ベンチャーとして大成功していたり、どこか他の会社が買収してそっちの事業になっていたりするわけですよ。

そうではなくて、そういうものを見つけてきたら、そこからいかに学び、いかに自らが変わるかということだと思っています。

なかなか大きい会社なので、そこはチャレンジですが、ベンチャーの皆さんの力を借りて、そういう挑戦をしていきたいなと思っています。

向井 我々も、この実証実験データですごく使えるユースケースを得たと思っています。

是非とも量産に繋げたいという思いはありますし、実際にプロダクション・チームを実装部隊として持っているので、したたかに取り組んでいこうと思っています。

ベンチャーの方に対してお伝えしたいのは、ベンチャーはファイナンス的にも機運的にもすごく盛り上がってきている一方、少しファッション感覚になっていると思うんですよ。

我々は5年間、それこそ伝説的なOBの方ですが、こうやって一緒にやっている担当の方から、マネジメントレベルの方、色んなHondaの方々にお会いしました。

大企業なので当然大きな組織ではありますが、Hondaスピリットというのはまさにベンチャーの原点だと思っていて、是非それを学んで頂きたいです。

そんなスピリットに共感するベンチャーは技術が尖っていくし、すごくいいんじゃないかと思っています。

中島 私はビジネス開発統括部に所属していますが、私の一番のミッションはお客様の価値を検証することで、そのためには実証実験が必要です。

(写真右)本田技研工業株式会社 ビジネス開発統括部 技術主任 中島 慶氏

どんな技術が今後必要になるか分からないですが、このHonda Xceleratorプログラムの事務局にアクセスをすれば、我々が欲しい技術をすぐ案内してもらえて、かつすぐに行動を起こせるというところが一番の期待ですね。

先ほどの話のように、思いついた時に問い合わせれば、5分後に会議が始まっているみたいなことが起きるんじゃないかとすごく期待しています。

我々現場の人間としてもすごく有難い話だと思います。

(続)

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/浅郷 浩子/尾形 佳靖/KYOU MARKETING

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