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ICC KYOTO 2018初日のセッション「それぞれのオフィス論から考える『なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?』」に登壇する企業のオフィスを紹介するシリーズ、第一回目は品川にある日本マイクロソフトです。「働き方改革」には制度と合わせてオフィスの改革も必須だといいます。そのオフィスを写真とレポートでご紹介します。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
▶この記事は ICCサミット KYOTO 2018でフロンティアコンサルティングがスポンサーするセッション「それぞれのオフィス論から考える『なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?』」に登壇する企業のオフィスを紹介するシリーズです。
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本編
日本マイクロソフトがオフィスを構えるのは、品川グランドセントラルタワー。以前は新宿、代田橋、赤坂などにオフィスが分散していたが、2011年に現在の地にすべて移転した。
事前登録のQRコードをもとに、専用のエントランスで入館の登録を済ませてゲートに入ろうとすると、さっそくこの看板が目についた。
「働き方改革推進会社」という大きな看板がゲートに掲げられている。これは一体何なのだろううか? これはオフィスと何か関係があるのだろうか?
近未来的なオフィスに潜入
オフィスフロアに入ると、近未来的なインテリアに圧倒される。
今回、お話しいただいたのは、エントランスの掲示にもあった「働き方改革」を推進するデジタルトランスフォーメーション事業本部長 伊藤かつらさん。各インダストリーを代表する日本の大企業とともに、マイクロソフトのツールを使った「働き方改革」を進めているという。
オフィス施設のグローバル戦略を主にご紹介いただいたのはリアルエステートアンドファシリティーズ シニアポートフォリオマネージャーMCR山本 泉さん。エグゼクティブプロダクトマネージャーの日野成一郎さん、ワークスタイルイノベーション推進本部 本部長の榎本直子さんにもワークプレイス改革の施策をご説明いただいた。
マイクロソフトの推進する「働き方改革」とは
「働き方改革」と「オフィス」には、密接な関係があり、力を入れる理由があるという。まずは伊藤さんが推進する「働き方改革」について聞いた。
写真右奥から伊藤かつらさん、榎本直子さん、山本泉さん、日野成一郎さん、左奥からフロンティアコンサルティングの佐々木さん、稲田さん
伊藤さん 「5年前の弊社は、株価も大きく下がり、ビジネスの転換期にありました。そのときに、クラウドとAIに社運を賭けたのです。ただビジネスポートフォリオを変えるのは簡単ですが、これは、組織のカルチャー、DNAが変わる話です。
そのためにまずは、”地球上のすべての個人と、すべての組織がより多くのことを達成できるようにする”というミッションを創りました。それを単なる題目ではなく、本物にするためにあらゆるところで実行しています。働く場所、人事評価、社員をいかにエンパワーするか、お客様との関係性などもそうです」
「テクノロジーとはよりよき未来を創るためにあるべきもの」という考えに基づき、マイクロソフトはテクノロジープロバイダだが、これからの時代「儲ければいい」ではいけないとのこと。AIも、どういう人工知能を創るのかというときに、倫理的な部分が非常に大事で、企業としても倫理的な正しさが求められる。ミッションとともに、それは全世界のオフィスでも推進されており、山本さんがグローバルのオフィス環境について説明する。
アメリカ本社は都市計画にも入っている
山本さん「イスラエルでもそうですし、アイルランドではビル一棟まるごと、インドの研究開発の拠点も、シリコンバレーで創っているオフィスもあります。
本社があるワシントン州のレドモンドでは、オフィスをスクラップ&ビルドして、2022年までに4つあるキャンパスを壊して作り直すということをしています。キャパシティが足りないのと古くなっているのと、新しいマイクロソフトを表現しにくくなっていることが理由です。
ライトレールの駅を引き込んだり、クリケットフィールド、道路や橋を建築したりなど、街自体がマイクロソフトのようなものなので、自治体と協力して作業しないと進められません。オフィス計画が都市の計画そのものになっており、他の地域拠点とはかなり違います。
マイクロソフトのビジョンを形にして見せられるため、ワークプレイスの作り方は非常に重要視しています。
いろいろなところで働けることを推奨してはいるのですが、人が集まる場所には理由があり、集まったときに機能的に働ける場所は必要です。
従来のオフィススペースは減っていくだろうと考えますが、少なくなったスペースでもストレスなく働けることを重視しています。
この品川のオフィスはフロアを総計して約1万坪です。私の仕事は、社内のスタッフがより多くのことを効率的にできるような環境を創るということをミッションとしています。
広いオフィスは、白い個人用ロッカーやデスクの配置などで集中できるように適度に区切られている
フロア中央にあるこの「Concentration Booth」は、さらに集中したいとき用の個室仕様
7年前にできた当時は最先端でしたが、会社も大きくなっているので、2年ぐらいでまた大きく変わる予定です」
話の後にオフィスを見学させていただいたが、現在のオフィスに古さや動線の悪さ、スペース不足といったことは感じられなかった。おそらくその時の会社のビジョンを表現し、より多くのことを達成するための変化といった意味合いの強いリニューアルになるのだろう。
窓際に配置された業務スペース。パーテーションとヘッドレストのついた椅子で座ると見た目以上に個室感覚がある
AIの導入で自由な働き方をサポート
次に説明いただいたのは、Office製品のプロダクトマーケティングを行っている日野さん。フリーアドレスやリモートワーク推進のためにAIの活用を推進しているという。
日野さん 「昔は一人のスーパーマンがチームを引っ張っていましたが、今はチームプレーを重視しています。共感や多様性と包括性を大事にし『はやく決めて、はやくやる』という価値観を実践しています。『はやく決める』にはデータ化、見える化、可視化をAIなどを使って進め、『はやくやる』には、いつでも、どこでも、誰とでもできることが必要です」
個人のスペースと同様、会議室ではない集まれるスペースの充実が印象的だ
伊藤さん 「そのためには自宅でもオフィスでも、同じように仕事ができないといけません。データをここに入れておいて大丈夫かどうか、PCは持ち出しできるか、フレックスタイムをどうするか、人事制度など、そういうところを一緒にやらなければ、中身が伴わない、見映えのいいオフィスを作っただけの改革に終わります。設備も非常に大切なのですが、制度の整備も重要です」
日野さん 「その制度を支えるテクノロジーを我々も活用していますし、ご提案をしています。いまはAIの導入に力を入れています」
伊藤さん「フリーアドレスや、リモートがOKという自由なオフィスだと、誰がどこでどう関わっているかが見えません。でもウエブ上にそのプラットフォームを創ると、それが見えるようになります。
たとえば、あなたの会議に出席しているときに並行して行っている作業が何%だとか、会議の時間が長すぎるとか、同じ会議にいつも一緒に出ている人がいるが、一人不要では?とか。逆に最近この人とやりとりしていないけれど大丈夫?など、1週間の自分の働きをAIが教えてくれるのです。非常に面白いですよ」
スタンディングの会議スペース。手書き可能なディスプレイの内容は、個人のPCへ送ることができる
日野さん「自社実践を重要視しているので、全社で取り組みを発表したりします。お客様も定量的な効果を出されていて、時間創出、即断即決、リレーションや売上強化など、数字にしっかり効果がでてきています」
人事評価や制度の改革もオフィス改革の一環
顧客に具体的な施策などを提案している榎本さんによると、ワークプレイス、オフィスの改革に必須なのは、すでにある制度のイレギュラーを設定することではなく、アウトプット重視で視点を変えること。マイクロソフト社にはオフィス見学に年間1万人が訪れるそうで、言葉に実感がこもる。
榎本さん 「私はカスタマーサクセスマネージャーというチームの所属で、弊社のプロダクトを使っていただくことでお客様のビジネス課題を解決したり、お客様の新しい働き方をご支援することが目的です。そのためには、今、企業が施設や人事など、どのようなビジネスの課題を抱えているのかヒアリングをし、我々のツールがどのように使われれば解決できるかをお客様と一緒に作っていきます。その一環として、オフィスを見学いただいて、こういう働き方をすると効率的に会議ができる、コラボが活発にできるというような提案をしています」
ゾーンごとにインテリアが分かれているカフェテリアのあるフロア。執務フロア以外にも打ち合わせスペースは多い
マイクロソフトも最初からそれができていたわけではない。7年前に移転してから、それを創り上げていったという。
榎本さん 「もともとのオフィスは新宿のサザンテラスにあり、会議室も足りなく組織感の会話もないという状態でした。それを新しいオフィスに来て、新しい働き方を作っていこうということになりました。
私たちに考えるフレキシブルなワークスタイルは、全社員が制度を利用できることです。たとえば女性社員の産休や育休、または介護をしなければいけないという人がいる場合、その人のために制度を作るというよりは、その制度を全社員に利用してもらえるよう働き方を改革していきます。対象となる社員だけでなく誰でも、どこでも、いつでも、誰とでも働けるように心掛けています。
オフィスに来ない社員をどう管理するのかとおっしゃる日本の企業の人事部の方も多いのですが、私たちは制度的にチームを管理するというよりも、アウトプット、インパクトで評価することを徹底しています。弊社の人事も交えて、そのための評価制度をどう作るのかということを議論するような機会のご提供もしています。
弊社に入社すると、ヘッドセット、モバイル、Wifi一式が与えられて、いつでもどこからでもアクセスできる環境が与えられます。基本ドキュメントはすべてクラウド上なので、紙書類も不要です。
フリーアドレスなので、かばん一つで作業場所へ移動する。相手に居場所を伝えるときは、壁に描いてある番号を知らせる
そうして改革を進めた結果、2015年の結果なのですが、ワークライフバランスの満足度が+40%と大きく上がり、事業生産性は+26%、働きがいのある会社というスコアも上がり、残業時間や旅費交通費は削減、女性離職率はー40%、ペーパーレス化は−49%と、就業環境を大きく改善することができました」
オフィス面と、制度面での両輪改革を推進した結果、多くの成果が上がっている
オフィスはより広く、コミュニケーションはより密に
焼きたてパンから定食、お弁当、ラーメン、お菓子まで揃うカフェテリア。一番人気はサラダバーだそう
お金のやりとりの手間を省くため、決済はSuicaか社員カードで。社内でSuicaのチャージもできる
オフィスを見学すると、人員に対し席数は少なめに設定しているというが、人口密度は驚くほど低い。さすがマイクロソフトという最新テクノロジーに囲まれながらも、人がどれだけ集中して快適に働けるかを追求し、自然の色を配したインテリアもあって、落ち着ける雰囲気だ。
旅費交通費が削減されていることから、終日リモートで働く人も多いと推察されるが、2週間に1度は短めの1on1を、月に1度は1時間程度の1on1を行い、コミュニケーションに欠けることはない。そしてそのための会議室の予約に困ることはないという。
1on1を行うミーティングルーム。対面式でないため同じ画面を見ながらコミュニケーションが可能
R&Dのチームだけは座席のエリアが決まっているというが、国際的なチーム編成であり、開発の度合いによりその編成も変わるとのこと、場所に縛られることなく動けることが、むしろ仕事の前提になる。
就業満足度が上がり、より効率のいい働き方を実現、業績も株価も上がっている状況から、設備、制度が一体となった「働き方改革」が成功例のひとつであることは間違いない。しかし2年後のオフィスリニューアルを見据え、マイクロソフトがその成功に安住するつもりがないことは明らかだ。
【日本マイクロソフト オフィスデータ】
所在地 | 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワー |
オフィスフロア平米数 | 約33057㎡(約1万坪) |
設立 | 1986年2月 |
従業員数 | 2,166 名(2018年7月1日現在) |
事業内容 | ソフトウエアおよびクラウドサービス、デバイスの営業・マーケティング |
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/尾形 佳靖
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