オフィスを“自分ごと”にして、創業6年間平均190%成長!「生きる」と「働く」の境界線をあいまいにするCRAZYの試み – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

オフィスを“自分ごと”にして、創業6年間平均190%成長!「生きる」と「働く」の境界線をあいまいにするCRAZYの試み

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ICC KYOTO 2018初日のセッション「それぞれのオフィス論から考える『なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?』」に登壇する企業のオフィスを紹介するシリーズ、第二回目は両国にあるCRAZYです。オーダーメイドの結婚式をプロデュースする会社が、なぜ4階建てのビルの内装を自分たちでリノベーションしたのか? そしてその成果とは? ぜひご覧ください。

▶この記事は ICCサミット KYOTO 2018でフロンティアコンサルティングがスポンサーするセッション「それぞれのオフィス論から考える『なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?』」に登壇する企業のオフィスを紹介するシリーズです。
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本編


オーダーメイドの結婚式のプロデュース、演出を手がけるCRAZYのオフィスは両国にある。表参道や白金台ならわかるが、なぜ両国なのか? フロンティアコンサルティングのチームとともに、最寄り駅から両国国技館を背に、歩くこと10分弱。大通りから1本入った住宅街の一角に、CRAZYの4階建てのオフィスが現れた。

入り口の階段では社員の顔写真がお出迎え。カラーだと出勤中、白黒だと不在か外出中

自分たちが本当にやりたいことを実現できる場所

もとは市ヶ谷にあったCRAZYが、人員増に伴い移転を考え始めたのは2015年ごろのこと。業界的に表参道や渋谷という選択肢が上がるなか、自分たちが一番やりたいことは何なのかというところに立ち戻って考えたという。カルチャーオフィサーの小守 由希子さんが説明する。

「カルチャーについて話すのは得意です!」と小守さん。取材チームは社食のデザートのご相伴に預かった

小守さん「移転にあたり、私たちが本当にやりたいことはウェディング会社なのか?と改めて考えてみたのです。すると、『生きる』と『働く』を分けない、意志ある人生を広げていくこと、そういう新しい文化を創っていくことがしたいし、それを広げていきたいということが、一番やりたいことだとわかりました。

では、日本でそういう文化を一番発信しているところはどこだろう?と思ったときに、相撲や町工場文化が根づいているところ、東京の東側が今ホットな場所になっていきていることもあって、両国という案が出てきました。サブカルチャーを創る、新しいものを生み出すところで、あえて普通と違う場所という条件も満たしていました」

社員の反対はあまりなく、この街を盛り上げていくという覚悟をして、皆で移転を決めたという。

オフィスを”自分ごと”にする全社員プロジェクト

物件は、築60年になる元繊維工場。1階は倉庫として使用しており、3階までベルトコンベアが貫いていた。ベルトコンベアを含む工場内の設備はそのままある状態で、長らく使われていなかったため荒廃が進んでいたという。

現在カフェになっている1階の場所には今もベルトコンベアが残されている

リノベーションしてから移転するのではなく、最初は椅子や机の整理から始め、当初は1階を倉庫とし、2階を整理してお客様との面会スペース、3階を執務室にしていたという。

小守さん「暖房なども機能していなかったので、冬はジェットヒーターを入れて暖をとっていました。そんな状態で仕事をしていくと、皆、オフィスに対して愛着がわかないのです。“自分の場所”という気持ちもないし、“誰かの場所”という遠慮もなくなって、オフィスが汚れていくことにも無頓着になっていきました。

そんな空気を皆で感じていたころ、毎年年末に行っている全社員プロジェクトで、このオフィスをちゃんと“自分ごと”にしようという企画が持ち上がったのです」

当時、ママが増えてきていたこともあり、これでは赤ちゃんをオフィスに連れて来られない、働きたいメンバーが働けなくなってしまうということが起こるという懸念もあった。

皆がやりたいときに、やりたいことができるようなリノベーションにしよう、「生きる」と「働く」の境界があいまいなオフィスにするということをコンセプトに、年末年始の営業を10日間ストップし、自分たちの手でオフィスをリノベーションすることにした。

2階の執務スペース。写真右手の台の下のV字型の切れ込みは、作業したメンバーの遊び心により創業日の7月2日にちなんで7.2cm分空いている

小守さん「メンバーのお父さんや友人などに大工さんがいて、壁の角の貼り合わせなど難しいところはプロに入ってもらいましたが、それ以外は素人の社員50人と社員の友人やお客様、パートナーさんにも手伝ってもらい全部手作りしました。フローリングチーム、階段チームなど、毎日違うチームで行ったのも面白かったですね。毎朝『はじめまして、今日はどうしよう?』という相談から始めました」

わからないところはインターネットで検索し、動画を見ながら、自分の得意なことを申請してリノベーションを進めていく。しかし「オフィスを作る」は手段であって、真の目的は「オフィスを“自分ごと化する”」ことだった。

執務スペースはフリーアドレス。リラックスできるソファ席や座卓、なかにはメンバーのおばあちゃんの家から持ってきた食卓セットもある

小守さん「朝礼で集まった時に、私たちは何をやっているのかという問いから始めました。最初は皆、『オフィスを作っています』という言葉でしたが、作業が進むうちに『人間関係』『信頼の土台を創っている』『未来の拠点を創っている』という言葉に変わっていきました。

一日の作業が終わるとその日に感じたことを、ポストイットで壁に貼って帰るようにしたのですが、翌朝それを見ると、皆こんなことを考えていたのかと思い、視座の違いを共有しながら、オフィスを深めていくというプロセスがありました」

事業部ごとに毎日行う朝礼の様子。リビングルームで寛ぐようなリラックスした雰囲気の中、チームビルディングをしているそう。

大切な場所だから、掃除も自分たちで

フローリングの床張りは、手が足りなくなった最後には、CRAZYが手がけた結婚式で結ばれたお客様まで駆けつけて完成させることができた(ちなみに社員の20%も元・お客様だそう)。

とはいえ社員は当時50名、4階建ての建物のフルリノベーションを、10日間で完成させることはできなかった。今も未完成で、使いづらいところを直しながら、ずっと作り続けている感覚だという。

飾られている花や、入り口の植え込みもウェディングの装花を担当するフローリストがメンテナンス、家具はアートディレクターがセレクト

小守さん「普通のオフィスの不具合は、ビルの管理会社や清掃担当の人に伝えたりすると思いますが、私たちはメンテナンスも掃除も自分たちでしています。それに、使ってみてわかった不便は自分たちで解消して、使い方を統一しています。

『生きる』と『働く』を分けないならば、自分が大事にしている場所として、きれいに保ちたいというのは当たり前の気持ちですが、それがオフィスで行われているのは、特殊かもしれないと思いますね」

オフィスについて、90通りの説明ができる

小守さんが担当したのは面談室の壁のペンキ塗り。「薄い色はムラになりやすく、何度か塗ってようやくOKが出ました」とのこと

全員がオフィスを自分の手で作ったことで、自分の言葉で自分たちの場所を語れるようになったことも大きな変化だと、広報の五来未佑さんは言う。

五来さん「現在90名いますが、オフィスについて90通りの説明ができるのです。社内でも未だに作ったときの話が出ますし、お客様や家族など、オフィスに誰かが来たときに、自分はここを作ったという話ができる。それがオフィスの強いところ、ひいては組織や会社への愛着につながっているように思います」

タイルをきれいに磨いて壁紙を貼った階段。階段の手すり担当は「頬ずりできるくらいの基準で磨いた」という

小守さん「プロではないので不細工なところもありますが、そこに愛着をもったり、それを見てほしいと皆がいろんな人を連れてくるようになったのです。それまではできるだけ見てほしくないという感じだったのですが(笑)」

個人作業に集中したいときに使う4階の書斎的オフィス

託児所も設置。ママメンバーの育休復帰率は100%で、子連れ出勤制度もあり、専任のベビーシッターが常駐している

自治体、社外、地域の人たちとのつながり

人員増もあり、最近ではオフィスから徒歩10分ほどの場所にもう一箇所拠点ができたそうだ。この地からものづくりを発信する拠点にという趣旨で、墨田区から支援を受けてIDO(アイディーオー)という拠点をオープンした。結婚式やイベントの装飾を企画・施工まで行うアートチームが移転をした。

以前はアートチームが使用していた4階の執務スペース。椅子は地域の方々やパートナーさんに譲り受けたものだとか

小守さん「いろいろなものとの境界線をあいまいにすることを、意識的に進めています。アートチームの移転は、会社と自治体の境界線をあいまいにすること。弊社のオフィス見学に、他社の経営者の方や社員の家族、はたまた結婚式後のお客様など年間2000人いらっしゃいますが、その方に会社でランチを食べに来ていただいたりするのは、社内外の境界線をあいまいにすること」

五来さん「ウェディングだけではなく、地域の皆さんも参加できるようなワークショップを1階のカフェで開くこともありました。ご近所の婦人会などにも使っていただいているようです。すると、地域と弊社の境界線があいまいになります」

本格的なコーヒーを楽しめる1階のカフェ「BLANK」。取材時もテラス席でお茶を楽しんでいる人たちがいた

経営理念で一番大事なのは健康

現在は株式会社CRAZYが社名だが、以前の社名はUNITED STYLE。個人のスタイルを持った、意志のある人が集まっているという意味で、誰かに従って働くことは必要ないというメッセージが込められているという。そのときから経営理念として大事なのは、1に健康、2に人間関係、3に世界を変えられる仕事、最後に誠実な経済活動となっているそうだ。「普通は逆かもしれません」と小守さんは言う。

上階に登る手段は階段のみ。壁には会社のストーリーを語るものが展示されている。写真は代表の森山和彦氏が会社創業を決意した地、アルゼンチンのパタゴニア地方にあるマウントフィッツロイ

小守さん「第一が健康なので、社長は創業のころ、全社員分のお米を、毎日2時間かけて炊いていました。現在の食堂では最大150人の食事を作ることができて、自然食のお昼ごはんを社員全員で食べています。ごはんをよそうところから自分たちでして、皆で『いただきます』と言って」

2階の食堂スペース。食事の時間に間に合わなければ、取り置きしてくれるという

この食堂スペースでは、毎週水曜日にカルチャーモー二ングという2時間の全社ミーティングがあり、全員と握手をしてからその週の仕事を始めるという(CRAZYは火曜日が定休日のため)。人間関係は、忙しくなるほど希薄になりがちなもの。それを仕組みで解決しようという取り組みだ。

生産性アップの鍵は「一見無駄に見えるもの」

小守さん「会社ってこうだよね、オフィスってこうだよねというのをなくして、何でもできるとしたら、本当はどうしたいのだろう? そういうところを解いていったら、自分たちにとっても発見がありました。

「CRAZYと言いながら、みんな真面目じゃない?」という社長の一言から1日で記事、写真、デザインを創ったという社内雑誌

弊社の特徴は、一見無駄に見えるもの、会社として何も生み出していないところに、生産性やクオリティアップの鍵を見出していること。福利厚生として提供しているランチなど、食事にも莫大な経費がかかっているのですが、その先に社員が交流して、アイデアが重なることでクオリティが上がります。

結婚式は一人で創るものではなく、常に複数の人の積み重なるアイデアからできていきますから、フランクに話せる場が必要です。食事のときも、その場で確実に何かが生まれることを期待しているというよりは、未来の生産性への施策ですね。その意思決定をできていることで、創業から6年間、約190%成長しつづられけているように思います」

スカイツリーが見える屋上。隅田川の花火大会を見に、メンバーの家族も集まるそう

オーダーメイド式結婚式のプロデュースを価格破壊ともいえる値段で提供し、業界の風雲児とも呼ばれるCRAZY。仕事とプライベートをはっきり分けて、生産性を上げるという考えが主流のなか、真逆ともいえる施策で効果を上げ、社員のモチベーションもにもつながっている。

オフィスのリノベーションが目的ではなかったように、事業の成長は目的ではない。それは手段なだけであって、真の目的は「人が人らしく生きる」新しい文化を自分たちから発信していくこと。それが社内の雰囲気からも感じられるのが印象的だった。

【CRAZY オフィスデータ】

所在地 東京都墨田区石原1-35-8
オフィスフロア平米数 1000㎡(約300坪)
設立 2012年7月2日
従業員数 85名(2018年8月現在)
事業内容 イベントプロデュース事業、ウェディングプロデュース事業、地域プロデュース事業

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子

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