9月2日〜5日の4日間にわたって開催されたICC KYOTO 2024。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、このレポートでは、デザイン & イノベーション アワードに出展した11社のブースを紹介します。実際に見て、体験してわかる革新的な技術や、開発の作り手から直接紹介いただくという贅沢な体験と、審査風景とともにぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミットFUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
デザイン&イノベーションアワードは、ウェスティン都ホテル京都の東館、アワード展示会場で2日間にわたって開催された。通算7回目となる今回は、第1回目参加の企業がさらにパワーアップしてエントリー、スタートアップほかICCには初参加のカタパルト登壇の企業などとバラエティに富み、審査員は総勢95名と、大きな盛り上がりを見せた。
▶【速報】デザイン & イノベーション アワードの優勝は、情報一元化と自動照合技術により、落とし物の登録・検索を最適化する「find」(ICC KYOTO 2024)
ここではキックオフやファイナル・ラウンドでの印象的なスピーチと、ブースの模様をご紹介したい。
1位:find
革新性(イノベーション)部門1位、想いへの共感 部門1位、市場性(ビジネスインパクト) 部門1位、社会性(サステナビリティ)部門1位
出品プロダクト:落とし物クラウドfind
キックオフのスピーチでは、あと約2年で、日本の落とし物の30〜40%がカバーされるという計画を語ったfindの和田さんは、ファイナル・ラウンド進出のスピーチで次のように語った。
和田 龍さん「2年半前に友人と立ち上げた会社で、僕も彼もよく落とし物をしてしまう性格でした。皆さんも経験があると思いますが、落とし物をすると、見つかるまで各所に電話をかけ続けないといけず、大変です。問い合わせ窓口が1本で済めばいいのにと思って、この会社を立ち上げました。
月額の提供単価は、いま中央値が100万円、一番大きいところは月額2,000万円もいただきます。なぜそんなに払っていただけるかというと、落とし物管理の課題がものすごく大きい。管理は1円にもならないのに、細かく管理しないといけないんです。警察から細かい指定があるので、従業員は頑張っています。遺失物法にのっとって細かい運用をしなければいけない。
見つからない人からは、なぜ見つからないのかとクレームが来ることもある。先週の大阪の例では、なぜ見つからないかというクレームを4時間受け続けている従業員の方もいました。皆さん本当に頑張っています。そうした方々の負担を少しでも減らしたいと BtoBのビジネスを作りました。
事業者さんが落とし物管理を楽にすると、落とし情報が整備され、返却率も上がることもわかりました。
僕らは落とし物が必ず見つかる世界を実現したい、従業員さんが楽になってもらいたい。それが一致するサービスができました。これは我々の発明であり、これを形にするメンバーが今のfindにはあります。遺失物管理ツールをお客さんに提供する、買ってもらうのではなく、お客さんと一緒にインフラを作っていくパートナーとして我々は考えています。
今日ここにいるみなさんが、いつか落とし物をしてしまって、findを使ってそれが見つかることを祈っています。一緒にここにいる皆さんとそのインフラを作って行きたいと思います」
findのブースは至ってシンプルであったが、今回会場でこの落とし物発見システムは導入されて大いに活用されており、その便利さを実感した方も多かったのかもしれない。部門賞でも総合優勝でもfindの強さは圧倒的で、DXカタパルトの2位入賞とともに、新しい1つのインフラの誕生を印象付けた。
2位:インターナショナルシューズ
職人技 (アルチザン) 部門1位
出品プロダクト:驚きの軽さと履き心地のレザースニーカー「brightway」
カタパルトでも第1回目のアワードでも無冠だったインターナショナルシューズ。ファイナル・ラウンド進出、2位入賞の上田 誠一郎さんのスピーチは観客の心を打った。
「学生時代イギリスに留学していたとき、ルームメートのフランス人がシャネルのバッグ職人の息子でした。会ったその日に、自分の父親はシャネルの職人だ、すごいだろうと、卒業したら自分も養成学校に行って職人になると言うのです。そしてお前はどうするんだ?と聞くのです。
家業を継ぐかどうか考えているような時期。それを聞いてかっこいいな、いいな、いつかそんな企業になりたいなと思いました。一緒に働いている仲間や、これから入ってくる人に、そう思ってもらえるような、自分の子どもに継がせたい、子どもにもそう思ってもらえるような会社になりたいと思いました。
インターナショナルシューズは、祖父母の2畳の小さな靴工房から始まりました。いつか自分たちの靴を世界中の人に履いてもらって、喜んでもらいたいと思ってつけた名前です。それを3代目の私が叶えたいと思っています。
実はbrightwayの靴底の裏側、完成すると見えないところに、メンズのソールには祖父のギイチという名前、レディースには祖母のサキコの名前が刻まれています。祖父母が海外旅行に行くことはなかったのですが、brightwayを立ち上げたときに、この靴で旅してほしいなと、その思いを叶えて、履く人も、働くひとも皆さまに喜んでいただける企業にしたいなと思っています」
上田さんは、ICCサミットに毎回参加して、新しいものづくり仲間を紹介してくださったり、スタッフからも親しまれている。今回はクラファンを通して発表された軽量EVA厚底ソールのbrightwayがアワード会場に登場した。
「知って下さっている方は履いてくださっていたりするので、EVAソールの履き比べをご紹介しています。厚いソールが欲しい、軽量化をという声があり、1年以上開発期間を経て実現しました。
初めて今回知って下さった方には、brightwayが生まれた背景やブランドとして大切にしていること、私たちはもともとがレディースの工場の出身なので、そのどこが技術として落とし込まれているかというアルチザンの部分をしっかり伝えようと思っています」
おそらくICCサミット会場で最も着用率の高いレザースニーカーNo.1で、気を付けて見てみると登壇者もスタッフも本当に多い。カラーオーダーもできるが、みんなと履き間違えられるのが嫌だからと、友安製作所の友安 啓則さんは赤を履いているのだそうだ。
3位:OUI Inc.
革新性(イノベーション)部門3位、社会性(サステナビリティ)部門3位
出品プロダクト:スマホアタッチメント型眼科医療機器「Smart Eye Camera」
リアルテック・カタパルトで優勝、カタパルト・グランプリで5位、ソーシャルグッド・カタパルトで3位と出れば常勝のOUI.Incがアワードに登場。デザイン&イノベーションアワードでも、3位を勝ち取った。審査会を経て、ファイナル進出が決定した清水 映輔さんのスピーチ。
「皆さんに体験していただいて、我々のやっていることをご理解いただけたのではと思っています。今回が一番楽しかったです。僕はまだ臨床を週に3〜4回やっているのですが、ICCに来ている方って、すごく眼科に行っていますね。海外の大使館の方、ハイソサエティの方も保険がなくても自費で眼科に行くのです。
それに僕はすごく感動しました。そういう目の検査をスタンダードにするという気持ちが、従業員に浸透してほしいなと、今回スマートアイカメラを使ったサステナブルな従業員の検診サービスを作りました。いろんな企業の福利厚生にすることによって収益が生まれる。
お医者さんが相手だけではそんなに市場性がなかったのですが、審査員の方々にはいろいろなアドバイスをいただいたので、実現させていきたいと思っています。途上国では治療につなげる診断目的という意味で広げ、日本や先進国では予防という目的で広げて、世界の失明を半分にする。
最終的には一人ひとりがスマートアイカメラを持ち、目の健康を守っていける世の中になれば」
「カタパルトのプレゼン当時からさらに改良していて、ハードウェアだけではなくソフトウェアもあります。途上国に限らず、先進国も実は皆さんあんまり眼科に行っていないという問題が分かってきたので、企業の目に特化した健康保険のサービスを設定して、それを今回お伝えしています。
ICCに来られている方々は全員眼精疲労だと思います。VDTとは、ビジュアル・ディスプレイ・ターミナルシンドロームの略で、要はPCとか見て、ディスプレイ見て疲れちゃうよとかドライアイになるよとかって総称なんです。
全部定量化できるので、その数値に沿って例えば毎年やって検診内容が変わるとか、そもそも目の健康を損なうことによる経済的損失を企業の人事の方にお伝えして、啓発していく。
紙を渡すだけではなくてオンライン診療でも、企業だけでなく個人でもお話しできます。検診表を貰うだけではなかなか自分ごとにならないので、ちょっと悩みがあったりとかを何回も話すことによって通院や、あるいは安心したりとか、そういったところまで全部包括してやっているような。
目の健康はSmart Eye Cameraで、我々が診ます。海外と日本でビジネスモデルは完全に違うので、日本で収益を上げてそれを海外に還元するというのをやっている感じですね。
4位:glafit
想いへの共感 部門3位、職人技 (アルチザン) 部門同率3位、社会性(サステナビリティ)部門2位
出品プロダクト:姿勢制御を搭載した四輪型特定小型原付(16歳以上免許不要で乗れる4輪車両)
glafit 鳴海 禎造さんはアワード4位入賞。極めて初期からICCサミットに参加いただき、このアワードも部門賞に入賞した2年前の京都以来、2回目となる。ファイナルラウンドでのスピーチは、そこから2年、続けてきた法改正への働きかけやモビリティの改良、夢を熱く語った。
「私たちは、和歌山初の日本を代表する次世代乗り物メーカーを目指しています。ベンチャーでモビリティを作っている会社はまだまだ少ないのが現状ですが、Makuakeでは、3回連続で1億円越えの反響を達成して、すでに1万台以上のモビリティを提供しています。
2023年は、私たちが4年がかりでLuupの岡井 大輝さんと続けてきた、免許がなくても乗れる特定小型原付という新しい法整備にも加わってきました。今回発表した4輪EVは、そんな法整備とともに何年もかけて準備してきた新しい私たちのモビリティです。
地方にご両親のいる方いらっしゃいますか? 地方の移動手段は限られていて、車のない生活は考えられないのが現状です。
私の両親も75歳で、免許返納に直面しており、返納するとどういう生活をしたらいいのか、不便は避けられません。毎年60万人が返納していますが、そのあととれる移動手段は何があるでしょうか。
首都圏や一部の大都市でしか公共交通手段は頼れません。
地元和歌山では人口36万人ですが、それですらバスはほとんどなく、GOタクシーも2台だけ。これからどう生活していけばいいのか、自転車しかないという課題にわたしたちは真っ向から勝負したいと思っています。
私たちGLAFITはつくります。自転車に変わる新しいパーソナルモビリティの当たり前を。
私たちGLAFITはつくります。免許がなくても困らない世界を。
私たちGLAFITはつくります。何歳になっても移動が楽しい世界を。
どうぞ私たちとともに、その実現に協力してください」
アワード会場の外で提供した試乗体験は大人気。4輪で安定感があり、意外と小回りも効く。100Vの電源で、フル充電ならば40kmまで走れる。試乗ではちょっとした段差も用意されていたが、衝撃は穏やか。2輪でスタートしたglafitが、ようやく四輪にたどり着いた世界に1台のモビリティだ。
「Luupさんと同様に、ナンバープレートを付ける必要があります。特定小型、性能等確認申請という国交省に届け出る申請があります。販売するためには、求められる基準を満たして、申請を通らないといけないです」
高齢者向けのシニアカーは50万円前後。自動停止のセンサーや、もっと長距離走行をするためならさらに大きい電池など、求める仕様によって価格は変わってくる。まだ市場に出ていないが、こういう新しいモビリティはシートベルトがないことや、事故が目立ちがち。その有用性を証明するには、さらに台数を増やすことが必要と言う。
「間違いなく過疎化地域では非常に重要視されています。車線なら20km/h、歩道は6km/hまで出せます」
試乗体験をした審査員たちは大喜び。免許返納後の選択肢のみならず、スタートアップでモビリティの挑戦を続ける鳴海さんを、glafitを審査員たちはずっと応援し続けている。
nat
革新性(イノベーション)部門2位、職人技 (アルチザン) 部門同率3位、市場性(ビジネスインパクト) 部門2位
出品プロダクト:高精度AI測量で空間記録を簡単に『Scanat(スキャナット) 』
「高精度AIスキャンアプリ、Scanatというアプリを提供しています。
建築業界では、いわゆるメジャー、方眼紙、カメラを使って空間の記録を行います。我々のアプリではiPhoneやiPadで空間の動画を撮影するだけで、3Dモデルを生成して測定が完了します。まるでその場を持ち帰るような感覚でモデルを生成します。そこから業務に使えるアプリを作っています。
建設建築だけでなく、さまざまな業界で使える機能も備わっています。実際にブースで体験いただけます」
「現在は、建設現場などのいわゆるメジャーとかで測定する現状の作業の代わりに使っていただいています。アプリを開いてこのような感じで、開始のボタンを押すと動画で撮影がスタートします。
建築の知識がない方でも直感的に操作できます。撮影が完了すると、Wi-Fiがなくても処理ができます。建設の現場の地下とか解体現場は、通信ができなかったりしますから。
そういったものが瞬時に3Dのデータになり、かつそこから寸法も計ることができるので、本当にさまざまな領域で使う可能性があると思っています」
基本的にはtoBでの展開ではあるが、App Storeのアプリで入手は可能だ。家具店でソファのサイズをスキャンして、自分の部屋に置いてみるシミュレーションなどもできるため、toCでの応用も大いに考えられる。スタートアップ・カタパルトのプレゼンでも語られたとおり、測る体験を革新する技術である。
スタジオプレーリー
想いへの共感 部門2位
出品プロダクト:スマホをかざすだけのデジタル名刺「プレーリーカード」
【キックオフでのスピーチ】
坂木 茜音さん「私たちはスマホにかざすだけで、自己紹介を相手に伝えることのできるプレーリーカードを作っています。
ICCにおいて、お互いにつながること、学び合うこと、共創することが大事だと思います。初対面の挨拶が、人生でお互いに1回しかないのに、その大事な1回目を紙名刺に書いてある肩書を交換するだけでなく、もっとお互いに知れることがとても大事ではないかと私たちは考えています。
私たちのミッションは新しい出会いの文化を創造し、『はじめまして』のコミュニケーションを豊かにすることです。
皆さんに絶対に喜んでいただける体験を作ってきたので、楽しみにしてくださると嬉しいです」
この坂木さんの言葉どおり、スタジオプレーリーのブースで用意していたものは、なんと全審査員分のプレーリーカード。スマホをかざすと、審査員のSNSから、経営する会社のHPなど、さまざまな情報を一瞬にして確認することができる。
カードは定型のデザインの中から選ぶこともできるし、カスタマイズすることもできる。プロフィールを加えたり、他の名刺管理サービスとの連携や内容のアップデートももちろん可能だ。自分を紹介するウィキペディア的な使い方ができ、ビジネスとプライベートの使い分けも楽しそうだ。
惜しくも入賞を逃したものの、プレーリーカードを受け取った審査員たちの反応、コメントは熱く、大量の名刺を持ち歩かなくていいというエコ的な理由より、情報が集約されている利便性やその拡張性に魅力を感じているようだった。
KAPOK JAPAN
職人技 (アルチザン) 部門2位
出品プロダクト:リカバリー加重ブランケット MUSUBI
【キックオフでのスピーチ】
深井 喜翔さん「創業78年目のアパレル企業で、東南アジアに自生する木の実、カポックを使って軽いアウターを作ってきました。今回僕らが持ってきたのは、重いブランケットです。
眠るときに、体重の7〜12%の荷重があると睡眠にいい効果があるということで、そんな商品を開発しています。
これまで発表してきたコートなどは日本でずっと縫製をしてきましたが、産地であるインドネシアで一貫して商品を作りたい。そんな思いから、ユーザー、生産者にも喜んでいただける商品を作ってきました。寝れるベッドを用意しています!」
とにかく軽いのに温かい、それが魅力のカポックから、重いプロダクトが出てきたことは衝撃だった。3年の開発期間を経て、重いブランケットが誕生した理由とは。
「KAPOK KNOTのやりたいことは、軽いコートを届けることではなくて、これまで使われていなかった未活用の素材を使って、新しい消費者の体験価値を生むこと。軽いコートだけでは、通年の仕事がない。農家の方々は実は春夏仕事がなく、カポックは春夏勝手に育つのでやることがなくて。
お互いやることが減る課題と、ユーザーの課題解決をしたいときに、加重のブランケットを考えました。あれはカポックをコートの約5倍使うので重いんです。中の綿にカポックが詰まっています。カポックの消費量も上げながら、農家の方が在宅で網み立てる仕事ができる。手編みなので、現地の雇用も生んでいます。
消費者の課題としても、体重の7~12%ぐらいの重いブランケットは睡眠にいいホルモンが出るというエビデンスがあり、ICC参加者の皆さんもリテラシーが高いのか睡眠にめっちゃ課題があるの分からないですけど(笑)、『重いのいいよね』という人が多くて。
副交感神経が優位になりやすいんです。そうなるとリラックスして血流が流れて回復しやすいというので、そういったブランケットを作れば、消費者の課題解決にもつながるというのでみんながハッピーになるエビデンスが作れるんじゃないかと」
前回このアワードで審査員を務めたときに、最近チャレンジしていないと思い、プレゼンする側に回りたいと思ったという。
「審査員ツアーなどで、33回やらせてもらいましたが、楽しかったです。33回中、多分20回僕がやったのですが、自分の言葉で伝えるタイミングは世の中そうそうないし、こういう感じで話すことはあんまりない。
緊張しましたよ!アクセラレーションプログラムで指導で出てこられたWiLの松本真尚さんと、アニマルスピリッツの朝倉 祐介さんが同じ組にいて、絶対に手を抜けない雰囲気でした(笑)。でもチャレンジできて本当に良かった。
作ったあとでお客さんから聞いたことですが、実は一部の障害を持っている人や、自閉症の方、ADHDの方々はチェーンの加重ブランケットを使っているそうなんです。重さで安心感を得るために、もっとジャラジャラのステンレスみたいなチェーンで加重する、そうしないと寝られないから。
温かくもないし、快適でもない、それをなんとかしたいというのもあります。お客さんがプロトタイプを体験しに来てくれて、自分の子どもが自閉症でお母さんが例の10万ぐらいするブランケットを買ったのですが、かわいそうでと言っていて。そんなチェーンブランケットを買ったことある人に伝わったりして。
重いものは通気性が基本的にないんですが、重くて通気性があるのをなんとか実現したいと思ってあの形状、中綿のカポックも通気性がすごくあるんです。ご家庭で洗えます」
「MUSUBI」というプロダクト名から、KAPOK KNOTのシグニチャーアイテムのように思えるが、まだこれは完成ではないそうで、さらなる改良とインテリア方面への展開もにらんでいる。
ダイニー
市場性(ビジネスインパクト) 部門3位
出品プロダクト:ダイニーモバイルオーダー
山田 真央さん「日本の外食産業を劇的に変えるオールインワンレストランクラウド、ダイニーです。
ダイニーを使ったことのある方は、まだまだ少ないですね。頑張らないといけません。ダイニーは現在、日本の飲食店に2,500店舗導入させていただいておりまして、飲食店のありとあらゆるソフトウェアを作っている会社です。
皆さんもおそらく使われたことがあるかと思いますが、今回はモバイルオーダー、スマホでQRを読んで注文するCRM、その一番使いやすいものをご体験いただけます。そのくらいいいエクスペリエンスを作っていると思うので、ぜひブースでご体験ください」
QRコードを読み取って、簡単にオーダーできるシステムを紹介していたダイニーのブース。
「今はモバイルオーダーがメインですが、飲食、レストランに関わるものはすべて賄えるようにどんどん領域を広げていきたいんです。新サービスを9月末に出すんですけど、パッションがすごく大きいので全体を変えていきたい」
現在サイトを見ると、モバイルオーダーの他に、POSレジ、顧客管理、モバイル決済、キャッシュレス、勤怠とさまざまなメニューが並ぶ。これから開業するならばどれも導入したいようなものばかりで、人手不足に悩む店舗も待っているサービスだろう。
「強みとして『推しエール機能』というのがあって、チップ機能になるんですが、店舗のスタッフさんへのもの。日本にはまだチップ文化は根付いてないかなと思うんですけど、その文化を創っていくのも私たちがやっていきたいことの一つなんです。
外食産業を盛り上げるところと、やっぱり経営者さんの課題である売上のあたりを伸ばすところをまるっとご支援させていただくのがうちの強みです」
MUSVI
出品プロダクト:テレプレゼンスシステム「窓」
【キックオフでのスピーチ】
阪井 祐介さん「世界中の壁を窓に変える、MUSVIはどこにいても、本当にその場にいるかのように人と人がリアルに会える、”窓”というどこでもドアのようなプロダクトを通じて、人と人、人と世界を結ぶプラットフォームを作ります。
リアルに移動することは難しいとか、オンラインでは伝わらないとか、これまで物理的距離という人類にとって非常に大きな制約があり、そういった数々の壁を打ち抜いて、オフィスや現場、医療や教育、地域創生といったさまざまな領域に、可能性の”窓”を開きます。
ソニーで20年以上の研究開発を経て創業した、”窓”の圧倒的なリアリティと遅延のない未来のコミュニケーションを、ブースでぜひ体験してください」
「4Kの解像度はすごく重要で、画面の向こうにいる人が普通にいる感じが出せます」
しかし回線は4Gで、阪井さんが手にした小さなモバイルルーターでサクサク動画が表示されているのに驚く。画面の中央部分に設置されたカメラは、こちらの映像を相手側に映し出すものだが、この中央にあるというのが一体感のコツなのだという。そもそもこのプロダクトの原点とは。
「僕が25年前に、人と世界をつなぐ窓のようなものをソニーで作りたいと書いて応募したのが始まりです。世界を旅して、いろんな場所に行っていろんな人と会う、そんな感動を旅していない人にもというイメージで思い浮かべたのが窓なんです。窓という字に『心』が入っているように、叙情的な感じがしませんか?
映像も音も本当にズレがないので、現在は瞬時の判断で安全やアウトプットに影響が出るようなところ、今は鹿島建設さんの工事現場や、セブン‐イレブンさんのバックヤード、金融機関の金融コンサルの現場など、阿吽の呼吸が求められるところに導入いただいています」
阪井さんは2年前に独立して全財産をこの事業に注ぎ込んでいる。その覚悟にソニーは技術をライセンスし、出資もしてくれており現在はビジネスを立てることに邁進中。「事業のレベルでワークしながら、社会的に辛いときや大変なときに、光を差せるような事業もできれば」と未来を展望する。
BoostDraft
出品プロダクト:法律専門家向け総合文書エディタ
【キックオフでのスピーチ】
中西 勇登さん「法的公式な文書の形式的な無駄を自動化効率化して、徹底的に省く文書エディタをグローバルに展開しています。4つの特徴があります。
まずは社会性。長時間労働、人手不足はどこでも問題ですが、それはかなり文書に依存するところが多くて、それをAIで自動的に削除します。
次に革新性。リーガル領域に自然言語処理を適用することで、業務の新しい発見をサポートします。
職人技としては、インターネット不要でオフラインで動くソフトウェアを唯一、リーガル領域で開発しました。非常に開発力が必要です。
最後に市場性。5,000億円のグローバルマーケットに挑戦します。グローバルのリーガルテックのユニコーンと売上ですでに戦っています」
デザイン & イノベーション アワードの展示会場では、手に取って見られるものがブースではわかりやすいが、これは日々の業務で地味に、着実に有り難さがわかるテクノロジー。ユースケースとしては、リーガルや法務に限らず、長いワード文書を使うときに活用していることも多いそうだ。
ACCELStars
出品プロダクト:世界最高精度の睡眠測定ウェアラブルデバイス
【キックオフでのスピーチ】
宮原 禎さん「東大発のメディカルスリープテックです。9月3日は、ぐっすり、睡眠の日ということです。3年前のこの日に睡眠学会で睡眠研修をやると宣言し、今日また睡眠の日にこの場にいることに、ご縁を感じています。
ブースでは、スリープコンパスという睡眠検診のサービスや、AIで睡眠脳波を自動解析するサービス、世界最高精度のACCEL ATRIAというウェラブルデバイスの3つをご紹介します」
「腕時計のようなデバイスは測定の一部で、アルゴリズムを使っています。
腕の動きと脈拍、光で測定するデータをベースに、睡眠と覚醒を分けています。デバイスのACCEL ATRIAは、その測定のために開発したデバイスで、血管の中の光の反射を計測します。我々が呼んでいる睡眠検診とは、機械で測定舌データと問診に答えてもらって評価します」
睡眠の質を高めるとか、深い睡眠などと言われるが、ACCELStarsが考えるその概念は、睡眠中の覚醒の量が少ないこと。覚醒が多ければ、質が悪いととらえており、それは腕だけで測れるものではないと考えているとのこと。複合的にとらえることが必要で、正確に測定するには脳波なども必要ということだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
どの企業も磨き抜いたプロダクトを展示し、来場者に向けて熱い説明と実演を繰り広げた。触れられるものや体験があり、かと思えば概念的に新しいものや未来の社会を創るもの、現在の体験をさらに豊かにするものがあり、審査員たちは頭を悩ませたに違いない。
▶【速報】デザイン & イノベーション アワードの優勝は、情報一元化と自動照合技術により、落とし物の登録・検索を最適化する「find」(ICC KYOTO 2024)
毎回、異業種バトルとなるが、新しいテクノロジーや発明、精緻な技術は手に取ってみる、体験してみることでその凄さがわかったり、理解が進む。そのうえデザイン&イノベーションアワードでは、作り手にプロダクトの工夫などを直接聞けることも魅力であり、参加側にとっても直接伝えられる場である。
日頃思いを馳せないだけで、私たちは先人たちから積み重ねられたものすごい技術や、生活を豊かにするための想いが込められたプロダクトに囲まれて生活している。デザイン&イノベーションアワードはそういったことに気付かされる場でもある。ぜひ次回もご期待いただきたい。
(終)
編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成