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今ICCサミットでデビュー。参加者の満足度が高かった「ワークショップ」とは何か?寺田倉庫ワークショップに密着【ICCサミットKYOTO 2018レポート#11】

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ICCサミット KYOTO 2018の開催レポシリーズ11回目は、今回のICCサミットから初登場したワークショップについて。寺田倉庫がスポンサードした「新しいプラットフォーム・ビジネスをともに議論」ワークショップを見学し、どんな形でディスカッションが進んだのかをレポートします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

新しい試み ワークショップ

盛り上がるカタパルト、白熱するパネルディスカッションはICCサミットの醍醐味であるが、それに加えて、セッションの新しい試み「ワークショップ」が今回投入された。7月に寺田倉庫へ打ち合わせで訪れ、それをレポート化したことがきっかけとなり、先方の懐へ入ってみることで学ぶことが多いのではないかというのが発想の原点である。

それで生まれたのがMellowやクラシコムのスタディツアーとなった。その企業へ訪問して見学させていただき、企業のビジネスモデルを学び、聞きたいことを根掘り葉掘り聞く。課題を設けてスモールグループでディスカッションというのが流れだが、それが好評だったため、今回のICCサミットでもトライアル的に配することになり、合計5つのワークショップを実施した。

「裏に見たいセッションがある」という声もあるだろうし、プログラムからは何をやるのかは想像できない。ディスカッションリーダーには魅力的な人たちがアサインされているが、それで参加者は集まるのか? さまざまな懸念はあったが、蓋を開けてみるといずれも盛況で、満足度の高いものとなったようだ。

今回はそのひとつ、ワークショップが生まれるきっかけとなった寺田倉庫がスポンサードしたワークショップ「新しいプラットフォーム・ビジネスをともに議論」の様子をレポートする。

熱気に満ちたディスカッションが行われた

ディスカッションリーダーが集合

開始少し前に、ディスカッションリーダーが会場に集められ、寺田倉庫の月森 正憲さんがワークショップ手順を説明する。最初に寺田倉庫のプラットフォームビジネスを説明してから、参加者はディスカッションリーダーが率いる3つのテーマのテーブルに分かれ、新しいプラットフォームビジネスを提案するという流れになっている。

会場に参加者も少しずつ集まってきた。前日のリアルテック・カタパルトで3位に入賞した人工培養肉の開発を行うインテグリカルチャー羽生 雄毅さんもいる。プレゼンでは独自の個性を発揮し「僕はビジネス系に向かっていないので」と謙遜していたが、他のセッションにも顔を出して楽しんでいただけている様子だ。

A~D会場は4階だが、E会場は3階で、他の会場とはレイアウトが異なり、舞台が前方に、客席が中央に、大きな円卓が後方に5つ並べられている。人の流れが上のフロアとは違うので、集客に苦労するのではと思ったが、時間になるとどんどん人が集まってきた。

この裏のセッションでは、前回福岡のICCサミットで満足度1位に輝いた「知性の核心とは何か?「(シーズン2)」が予定されている。実際に参加する人も「知性の核心と迷ったのだけど……」と言う方が多かった。他の人から「ワークショップは楽しい」という、うわさを聞いて来た人もいるようだ。

時間になると、月森さんが壇上に上がった。ワークショップの始まりである。

ワークショップの流れ

まずは前段に並ぶディスカッションリーダーの紹介から始まる。ビビッドガーデンの秋元 里奈さん、クラスの久保 裕丈さん、seakの栗田 紘さん、九州旅客鉄道の小池 洋輝さん、ラクサス・テクノロジーズの児玉 昇司さん、Zコーポレーションの高田 徹さん、オプティマインドの松下 健さん、リノベるの山下 智弘さん、ライフスタイルアクセントの山田 敏夫さんという顔ぶれ。今日のテーマに合致した、新しいプラットフォームを創る頼もしいリーダーが集まっている。

月森さん「ワークショップなので、肩肘はらずにやれればと思っています。『新しいプラットフォームビジネスをともに議論』というテーマですが、勝手ながら、リーダーの方々を3種類のチームに分けさせていただきました。

プレゼンを行う月森さん

食のコマースについて秋元さんと栗田さん、ライフスタイルのコマースについて、住環境系として久保さんと山下さん、ファッション系で児玉さんと山田さん、街づくり場づくりで小池さん高田さん松下さんで、分かれていただければと思います。

ただディスカッションするだけでなく、答えを導き出せればと思いますので、こんなプラットフォームが作れればいいなというのを、みんなで話し合えればと思います。そのときにどんな課題があってどう解決するのか、どんなプレイヤーを巻き込んでいくのか、ワクワク感も意識してディスカッションいただければと思います。

議論は20分間。そのあと各チームまとめたものをスピーチしていただければと思います。

皆さんプラットフォームを作っている方も多いと思いますが、気づきの例ということで、我々の事例もご紹介させてください。倉庫会社ですが、プラットフォームビジネスをやっています。我々はほぼ倉庫を持たない倉庫会社です。持っていたときもありますが、脱倉庫を目指して、拠点も従業員もスリム化してきまして、2011年からプラットフォームビジネスを立ち上げて加速させています。

軸として2つがあります。ひとつは『リアル×IT』です。倉庫なので、預かっているものがあり物流があったのですが、それを物流のIT化することで事業をすぐに始めたい人、物流機能を利用したいという人が集まってきました。

そのツールとして、minikura+(ミニクラプラス)という誰でも物流を瞬時に使えるプラットフォーム、FUNという誰でも物流のSTOREを瞬時に開けるプラットフォームがあります。

リノベるさんやエアクローゼット、スタートアップ・カタパルトで優勝したオプティマインドさんなど、数多くの企業にご利用いただいています。

もうひとつは『倉庫×人』です。もともと持っていた空間に、人を呼んだり、コンテンツを企画するということをしています。展示会を開いたり、天王洲で毎週末マルシェをやっていたり、最近では新車発表会などもやっています。

プラットフォームを創るのは共創だと思います。この場に集まっていただいたみなさん、短い時間ですがせっかくのご縁なので、何か面白い共創ができたらなと思っています。では、議論しましょう!」

グループに分かれてディスカッション開始

参加者がテーマを選び、各リーダーが座るテーブルに移動すると、場作りが2テーブル、ファッション系、住環境系、食系がが各1テーブルになった。早速各テーブルで自己紹介が始まっている。その途中から、自分のビジネスの延長線上から今回の議論テーマを熱く語り始める人あり、笑い声がしきりと上がっているテーブルもある。

月森さんも議論に参加

ディスカッションリーダーではない参加者に、ミラツクの西村さんや、Mellowの柏谷さん、ナビタイムの菊池さん、一休の榊さんといった登壇者の顔も見える。

ミラツクの西村さん

こういった方々と一緒に議論し、ゼロイチで新しい事業を立ち上げるプランを考えるという、贅沢な時間である。発想、ビジネスモデルの創り方、課題意識の持ち方、アウトプットの出し方など、聞いているだけでも刺激を受け、学びになることが多いのだ。これは満足度が高いこと納得である。

プラットフォーム案を作る議論がヒートアップしたため、予定の20分間はあっという間に経過、少し延長して意見をまとめたあと、各テーブルからの発表となった。

議論その1:どんなプラットフォームを作るか

テーマ:街づくり① 発表者:オプティマインド松下さん
「訪日外国人観光客が増えていますが、日本は鎌倉の大仏とか、京都の清水寺だけじゃないですよね? たとえば手が足りないお店や施設の方から逆提案して、雑巾がけしてくださいとか、秋葉原の店員やってくださいとか、不足している労働力を補いながら、少しだけ働いてもらって本当の日本人の生活を外国人観光客に味わっていただく。シェアサイクルを元の場所に戻すとか、何でもいいんです。観光客の方の隙間の時間とマッチングして、生活を体験してもらうのです。街の活性化にもつながります」

テーマ:コマース、ライフスタイル 発表者:エアークローゼット前川さん
「顧客、事業者の双方のコミュニケーションを促すライフスタイル体験を提案したいです。便利なうえに、サプライズをプラスしたい。ワクワク感は便利以上に大切で、利用者側だけではなく、提供側にもあったほうがいいのではないかと思います。ファッションに限らず、モノ、車でもサービスでも、レッスンを提供する先生とかでもいい。体験を提供している側にもリアクションをすぐ戻す仕組みにして、理解、情報の交換を進めていきます」

テーマ:街づくり② 発表者:九州旅客鉄道小池さん
「このテーブルに集まったのは、比較的東京以外の人間が多くて、東京ばかり見てるんじゃねーぞ、地方はこんなにおもしろいんだぞという思いが強いメンバーです。そんな地方の町について、とくに若い人が行きたい学校がない、働く場所がないと、ないないづくしでその場所に自信がもてなくなったりします。サーファーが地方の町を訪れ、この町はカッコいいと発信したことから注目され、初めて住んでいる人たちがその町の持っているかっこよさに気づくというのがありました。それをヒントに考えました。

長く住んでいる人には、改めて町の魅力は気づきにくいので、外から発掘していかなければなりません。そのためには同業内でもっと情報をオープンにしていき、共創する場に変えていきます。町をオープンにするには、祭りがきっかけになると思います。そしてこの街かっこいいというのを発信していく」

テーマ:ライフスタイル 発表者:クラス久保さん
「不動産や耐久財という、固くて大きくて重たいものという商材で、このプラットフォームはどうあるべきかと話していました。まず、フリークエンシーが圧倒的に少ないですよね。業界も売る人、買う人、貸す人と圧倒的にバーティカルです。業界構造も複雑で、プレイヤーが細分化されている。だから日本での資産価値やフリークエンシーが上がっていかない。

我々が提案したいプラットフォームは、それが循環するもので、シャッフルするもの。たとえば子どもが独立した老夫婦が3階建ての家を持っているとして、子どもが生まれたばかりの若夫婦がいるとする。そうしたらそのふたつの住居は入れ替えたらいいじゃないですか。3階建てのほうが資産価値が高いかもしれない。そうしたら、若夫婦は老夫婦に少し払ってもいいかもしれない」

明快なプレゼンに「うまいなぁ!」「すごい」と同じテーブルから感嘆の声が上がっている。

テーマ:食 発表者:インテグリカルチャー羽生さん
「食体験のシェアのプラットフォームを考えました。VRで歯ごたえとかが検知できるようなものです。食体験のYouTubeであり、ニコニコ動画です。料理の作り手と食べる人の情報格差は大きいので、そういったものをシェアします。たとえば料理人が新しい創作料理を作って、それを試食するとか、おいしいとみんな言うものを本当においしいのか食べてみる。CoCo壱番屋で一番辛いカレーを食べてみるとか、そういう面白い食体験コンテンツがいいのではと考えました」

発表が終わると、そのプラットフォームに、どんなパートナーと組むと達成できるか?という議論に移った。

議論その2:誰と組むか?

街づくり①のテーブルは、活発な意見が飛び交うなか、松下さんがどんどんメモを作成している。年齢、背景、職種も違う人達が、一つのテーマを対等に話し合って、練り上げていく様子がプロフェッショナルだ。

街づくり②のテーブルは、街の過疎化の原因や、継続的な定着を図るための施策まで話が及ぶ。
「人口が減っていく過疎化の地域も、自信がないことがすべての始まりのような気がします。外から来た人がその地域をほめるプラットフォームを作ってもいいかもしれない」

「自分たちの町に誇りが持てると発信したくなりますよね。すごい人が1〜2ヵ月いれば、変わるかもしれない。そういう着火は外部の人でもいいけれど、燃やし続けるにはやはり内部にもいないと」

食テーブルは、秋元さんと栗田さんが議論を引っ張り、まとめつつ、様々な人達が意見を出すというバランスだ。最後の発表では、社会問題にまで斬り込んでいった。
「食体験の非対称性がフードロスを産んでいるともいえます。この食体験プラットフォームを、食品会社や飲食店とも研究開発できれば」

ファッション系ライフスタイルのテーブルは、議論の時間が足りないことが悔しそうだ。
「通販やアパレルなどで、事業側とインフルエンサーのマッチングプラットフォームを議論しています。あともう1時間あれば、事業になりそうなのですが!」

住居系ライフスタイルは、従来の構造を変えようとする果敢な提案を投げかけた。

「貸すということでは、住居者自身もプレイヤーになれます。たとえば定額制で自ら値付けして住み替えができるようにする。たとえば久保さんみたいなカッコいい人が住んでいた部屋なら、高くてもいい。前の住人の価値を乗せるというのもおもしろいのでは」

ほんの1時間話し合っただけで、次々とビジネスのアイデアが生まれていく。そしてあっという間にセッションの終了時間となった。

密度の高いコミュニケーションができるワークショップ

月森さん「せっかくのご縁なので、ここまで話せましたし、このまま事業化していただきたいと思います」(一同大笑い)

参加者は議論に集中していたため、セッションが終了となったあとでようやく名刺交換が始まっている。まるで夜のパーティくらいの声量になっているし、皆、会場を離れようとしない。その中でも何人かコメントをいただいた。

熱く語るseak栗田さん

柏谷さん(街づくり)「楽しかったです。裏で見たいセッションもあったのですが、こちらも興味があったので来てしまいました。都市開発をしていますが、街おこしのような今回の話題もとても面白かったです」

GMOペパボ佐藤さん(街づくり)「普段の業務で、行政からこういう質問を受けることが多いのです。同じテーブルには地方、地域に関わっていている人もいて、街の人とのコミュニケーションをどうすればいいのかなど、今回参加していろんなヒントをもらえました」

その他、自分の仕事とは他のジャンルのテーマのディスカッションに参加して、気づきを得た人など、どの方も満足げな表情で会場を後にしていた。今回のファシリテートを月森さんと行った寺田倉庫の柴田 可那子さんにも感想を聞いた。

「裏で人気のあるセッションがあったので、こんなに来ていただけるとは思いませんでした。普段の業務とは関係のない、まっさらな状態で新しい事業の話をしていただきましたが、楽しそうにディスカッションをされていたのが印象的でした。今回は新しいビジネスプラットフォームを創るというテーマでしたが、ICCサミット、この場がすでにプラットフォームなのではと思いました」

企画側も、参加側も満足度の高いワークショップ。テーマはさまざまな設定が可能で、密度の高いコミュニケーションや意見交換が可能だ。ICCサミットに参加される方は、もし興味を持てるテーマがあったら、ぜひ参加してみたらいかがだろうか。今までにない学びの体験の場となること間違いなしである。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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