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ICCサミット KYOTO 2019の特別企画、CRAFTED NIGHT powered by LEXUSは、人数限定の場外イベントで、BnA・田澤悠さんが手がけるBnA Alter Museumにて、アーティストたちとの交流や館内見学ツアー、一部の参加者の方々には宿泊体験をご提供します。それに先立ち私たちICCパートナーズが、5つの部屋に宿泊してきました。その体験をレポートします。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月3〜5日 京都開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
9月4日(水)の夜、開催予定のCRAFTED NIGHT powered by LEXUSの会場となる、BnA Alter Museum。このホテルは、関西を中心に9人のアートディレクターと、16人のアーティストが31部屋の泊まれるアート作品を制作。宿泊者はそのアート作品の中に泊まることで、今までにない宿泊体験ができます。
アーティストが、アートだけで生活をしていく環境はまだまだ厳しい現状、宿泊費の一部はアーティストに還元される仕組みになっていることから、”間接パトロン”となってアーティストをサポートできます。宿泊費は部屋のタイプによりますが、繁華街の四条河原町に近いロケーションなのに全体的に良心的です。
ギャラリーや美術館で作品を眺めるだけでなく、作品の中に滞在するというアプローチは海外からも注目を集め、国内外のアート界隈の人々が宿泊してここから数多くのプロジェクトが誕生しているのは、田澤さんのプレゼンにもあったとおりです。
▶BnAは「泊まれるアート」でアーティスト・コミュニティーと世界を繋ぎ、インスピレーション経済を加速する(ICC FUKUOKA 2019)【動画版】
アートには門外漢の私たちですが、ここからCo-Creationが生まれていると聞けば黙っていられません。男性視点での宿泊体験はICC尾形、女性視点では私、浅郷がレポートしたいと思います。
普通でない!?チェックイン
ホテルに着いたらチェックインです。夜はバーになるという、おしゃれなカウンターを通り過ぎて奥のカウンターへ向かいます。
バーの背面、オブジェに見える丸いものはスピーカー。重低音の振動が壁に伝わらないようにディスプレイ
早速チェックインをして、早く部屋を見たいと心がはやりますが、名前記入などのほかに、なにやら説明を聞いています。
自分がチェックインするときになってわかりました。部屋のコンセプトが書かれた紙には、部屋で滞在するときの注意が書かれていました。
どうやら私が泊まる部屋には、壁画とミニカーや円柱などのオブジェ、持ち出し不可・読書可能の本が展示として置かれているらしいです。部屋のバリエーションによって、この注意事項も異なるのでしょう。一通り規約に同意して、サインをすると部屋に入ることができます。
エレベーターに乗り、自分の部屋のフロアにつくと、通路は真っ暗です。ミュージアムの通路は暗いものですが、そういうことでしょうか。期待が高まります。
ここからは、編集チーム2人、それぞれの視点から滞在レポートをお届けします。
ダブルルーム宿泊体験記①
こんにちは、編集チームの浅郷です。女性目線ということでレポートしていきたいと思います。私が宿泊したのは、中野祐介さんというアーティストによる「鳥は池辺の青樹に宿し 魚は月下の青波に伏す(五条河原の模型楽園)」という部屋です。作品名が書かれたドアを開けて、部屋に入ります。
なななんだ? この空間が歪む感じ。
足元にはパターゴルフでもしたくなるような、ピースフルな空間が広がっていますが……。
頭上にはミニ船舶模型とともに、まじないめいたフレーズが書かれており……。
持ち出し不可・読書は可能な本とはこれだったらしいです(能に関する書籍)。室内にテレビはありませんが、Netflixが観られるタブレット端末、水、ポットにお茶セット、電源タップ、クローゼットの中には購入も可能なバスローブが備え付けられています。Wi-Fiも当然完備です。
天井から吊られているオブジェの缶。うっかりぶつかると、回転してきて2連打されます。
ふと気づきました。この部屋でトイレやバスルームはどこに?
なんと意外な箇所の壁が開きました。またしても空間が歪む……。
入ってみると、ゆったりしたスペースの洗面台にトイレ、奥はシャワーのみですが、固定と可動のシャワーヘッドがあり、腰掛けられるスペースもあります。シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、フェイスウォッシュ、歯ブラシ、ブラシなどがアメニティも充実しています。
トイレに腰掛けると、「旅寝」とか「げにげに」など、所々に気になる言葉が散りばめられています。不穏です。
この日、空いていた部屋のなかから、この部屋を選んだ理由は、ウェブサイトで見た月の照明がきれいだったからでした。それを肉眼で見てみたいと、ほかの室内灯を消してみました。
おお〜、これこれ! まだ昼間ですが、夜になるともっと周囲が暗くなり、月だけが浮かんでいるように見えます。夏の野外で行う薪能のような神聖な感じもしつつ、その中にショベルカーとか、クレーン車とか、巨大客船などが侵入しているわけで……。
一晩泊まってみた感想としては、この部屋はベッドが低いため、より作品の中に包まれる感じがしました。夜は不思議な夢を見て、朝起きたときの、ここはどこ?感が半端なかったです。思わず窓の外を確認しました。
この部屋を作った中野 裕介さんは、普段は林泰彦さんと「パラモデル」というユニットで活動しており、メタフィジカルな「模型遊び」をテーマにさまざまな作品を発表されています。一部ですが、ホテルのロビーには作品集などの書籍もありました。
ダブルルーム宿泊体験記②
こんにちは。編集チームの尾形です。
河野ルルさんが手がけた「Venus’ Flower Basket」というお部屋の宿泊レポートをお届けします。
直訳すると、“ビーナスの花かご”。調べてみると、「カイロウドウケツ」という海綿生物の学名のようです。
一体どんなお部屋なのでしょうか。
入り口のドアを開けると、ダウンライトで照らされた仄暗い部屋の真ん中に、天井から吊り降ろされた網目状の天蓋が目に飛び込んできました。
壁には色とりどりのサンゴや海藻の絵が描かれています。どうやらこの部屋は「海の底」をイメージしているようです。
壁に近づいてみます。
よく見ると、無数の小さなエビが描かれていることに気づきます。
部屋中央の天蓋の中も覗いてみます。ベッドに置かれた2つの枕に、何かが描かれています。
ノープリウス? ゾエア? 呼び方は忘れてしまいましたが、理科の授業で習ったことがあります!2つの枕には、エビの幼生が刺繍されていました。
そして、ベッドに乗ったらすることは1つ。
外着のままですが、寝てみました。33歳・男性・既婚。天蓋に包まれて寝るのは初めての経験です。
天蓋は天井側がすぼんているため、実際のベッドの広さよりも体感は狭く感じます。身長178cmですが、つま先は網目から少し飛び出てしまいました。
ベッドの外に出て、もう一度ベッドを眺めてみると、ぽっかりと空いた穴がどこか寂しげです。
これは東京に帰ってから知ったのですが、部屋名となったカイロウドウケツは、網目構造をした全長数十センチの体内に、その名も「ドウケツエビ」という小エビを飼っている(正確に言うと、勝手に棲み着いている)のだそうです。
そのドウケツエビはなんと、幼生のときにカイロウドウケツの網目の中に侵入し、そのまま体が大きくなることで外に出られなくなり、残りの生涯をカイロウドウケツ内でまっとうするのだとか。超インドアな運命を背負ったエビ。それがドウケツエビ。
それだけではありません。ドウケツエビは、カイロウドウケツ内にオスとメスの「ペア」で閉じ込められるのです。言うなれば“許婚(いいなずけ)”の関係。自由恋愛は許されない。彼らの世界では、孔雀のオスが羽を振ってメスにアピールするような行動は必要ありません。ドウケツエビは、運命の定めに従って伴侶を愛する、趣深い生き物なのです。
読者諸氏はここで合点がいったと思います。上記の天蓋の中に横たわるとき、私たちはカイロウドウケツ内のドウケツエビになることができるのです。
というわけで、このアートに宿泊して「運命の愛」にまで思いを馳せるためには、1人ではなくぜひパートナーと宿泊することをおすすめします!(最大宿泊人数は2名)
ベッドの足元の方向には、カイロウドウケツの標本が飾られていました。ドウケツエビはこの中で一生涯を過ごすのですね……。
このお部屋を手がけたアーティストの河野ルルさんは、名古屋市在住の壁画アーティスト。
CIRFE X 河野ルル C-TECs1階壁画ドキュメンタリー(YouTubeより)
1階バースペースには、河野さんの著書がディスプレイされていました。
河野さんは、会社員を辞めてチャレンジした世界放浪の旅の最中、宿泊先ホテルのご主人から宿代の代わりに絵描きを頼まれたことがきっかけで、壁画アートを手がけるようになったのだそうです。
以上、「Venus’ Flower Basket」の宿泊レポートをお届けしました。(尾形)
他の部屋も見てみました
CRAFTED NIGHT powered by LEXUSに参加される方は、当日のお部屋ツアーで、解説とともにご覧いただけると思いますが、宿泊したICCメンバーのその他のお部屋もご紹介します。
ICC吉名が泊まったのは、Rhizomatiksの真鍋大度さんによるcontinuumと題されたデラックス・クイーンの部屋。
Rhizomatiksといえば、リオオリンピック・パラリンピック大会の「フラッグハンドオーバーセレモニー」やPerfumeの映像などで一般的には知られています。クリーンでミニマルな空間、壁3面に取り付けられたディスプレイには極めてゆっくりと動く映像が映し出され、今回私たちが滞在した部屋の中では一番寛げそうでした。
ICC北原が泊まったのは、梅田哲也さんによる「だれのものでもない水/なにもみえない場所」と題されたデラックス・クイーンの部屋。実験室!?と見紛う普通ではない空間が展開していました……。
部屋の約半分を占めるのが、この一段高くなったスペース。ぼんやり浮かぶ照明、天井からポタリ、ポタリと落ちる水滴の音が静寂の中で響きます。日常にあるものからインスタレーションを構築し、自作の楽器で音楽家とコラボレーションをしているクリエイターならではの部屋といえるのかも。
朝、スクリーンを上げると、窓の外の緑がきれいだったとのこと。
ICC小林が泊まったのは、デラックス・スイート。ミュージシャン/アーティストとして活動するEYƎさんによる「D/R/M」という部屋。ボアダムスでの過激なパフォーマンスのイメージや、いっちゃっている音楽性から、少々怯えながらお部屋拝見です。
2人並んで使える洗面所、広いバスルームがあります。なお、バスタブはデラックス・クイーン以上の部屋に備わっています。
通路を抜けた広い部屋には謎の段差があり、高いフロアの部分はグレーの畳。思ったより普通では?と思いながら、下の写真の向こう側に回り込むと……。
ふとんの向こう側には、ベルベットのソファーがあります。手前に謎のハンドルがついているので、それを引いてみると、ソファが扉のように開いて、部屋の照明が落ちて真っ暗になりました!
文字の説明だと、限界がありますが、説明してみます。
このソファが扉となったふとんの下には、暗黒のスペースが広がっています。これがベッドルームとつながるスイート!? 隠し小部屋!? この暗黒スペースは目に見える以上に広く、大人5人が入って、座って話していても狭さを感じません。四つん這いになって入っていきますが、奥のほうは中腰で立てるくらいの高さがあります。
床や壁面は人工芝のような素材で覆われており、暗さに目が慣れてくると、ところどころ光っているのがわかります。
人の動きに合わせて、音が鳴ります。これは面白い! 閉所が大丈夫ならば、布団を敷いて3〜4人ぐらい余裕で寝られそうな広さの異空間です。もっとも、寝返りをうつと音がするので起きてしまうかもしれません。名残惜しい…と思いつつ這い出てみると、灰色の普通の部屋に戻りました。
ホテルの朝食をご紹介
こちらのホテルには1階にバー、2階にカフェがあり、朝食は2階でいただくことができます。個性的なホテルですが、朝食のクオリティは予想を上回るサプライズでした。洋食でOKならば、ぜひおすすめしたいです。すべて手作りで、新鮮かつヘルシーな朝食が楽しめます。
2階カフェは、イベント当日はアーティストのトークセッションを行う会場となります
写真右に普通の朝食、左にビーガン用の朝食をオーダーしてみました。
スイカのフレッシュジュースに始まり、とうもろこしとライムの冷たいスープ、焼き立てのパンにココナッツバター、梅ジャム、黒みつキャラメルを添えていただきます。
こちらはポークハムの入ったメインプレート。穀物のサラダ、枝豆のフムス、ビーツ、たっぷりのサラダのほかゆで卵など、食べごたえたっぷり。
こちらは動物性食品なしのビーガンメニュー。アボカドやキノコのロースト、豆乳リコッタチーズ、穀物のサラダなど、こちらも食べごたえあります。
食後はコーヒー、カフェラテ、紅茶など6種類から選べます。本当においしかったですよ!
ホテル内のアート作品を観る
お腹いっぱいの朝食のあとは、部屋以外にも観られるアート作品を見学することにしました。
チェックイン時にルームキーとともに渡されたのは、滞在する部屋の写真がプリントされたポストカードと、外階段から見学ができるギャラリーのチケット。2階カフェのドアから外階段へ出ることができます。
BnA Alter Museumは10階建てですが、階段を登りながら観ていくもよし、観ずに上がって降りていきながらじっくり観るもよし。道路に面した壁面にガラス張りのギャラリースペースがあり、その中にペインティングやインスタレーションが展示されています。階段を降りながら観る、目の高さで観るなど、さまざまな角度から眺めることができます。
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1フロアごとに、違う作品が展示されています。写真は中田有美の「Near and Far」シリーズ
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上から覗き込むと別の作品のよう。秋山ブクの「コンポジションNo.13:BnA Alter Museumの備品による」
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ゆっくりとカラフルなディスプレイが動く小林椋「スソスソからのムーマム」
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写真ではお伝えできていないこととしては、作品の右側面になる、普通の日本のビルや道路といった風景とのギャップ。作品のガラス面に少し映り込んでいますが、それと合わせて観るのもまた一興です。
階段には、更地からBnA Alter Museumが建つまでを追った写真が展示されていました
一連の作品は初の企画展となる「TO SELF BUILD」のもの。宿泊者なら無料ですが、ビジターでも500円で観ることができます。なお、エントランス、1階のバーや2階のカフェの壁面にもさまざまな作品が展示されています。
ホテルとしての機能の上に、古都京都という立地、アートという付加価値があり、世界に類を見ない試みであることから、滞在客は外国人が中心というのも頷けますが、イベント当日はICCが全館借り上げて、特別企画にご参加いただく方には、部屋数分の宿泊の提供をいたします(※ご案内はすでに終了)。
CRAFTED NIGHT Supported by LEXUSは、ICCサミット KYOTO 2019の2日目の夜、9月4日、BnA Alter Museumで開催予定です。ぜひご期待ください。以上、現場から浅郷がお送りしました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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