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「常勝チームには文化がある」中竹 竜二さんが解説する、FCバルセロナに学ぶウィニングカルチャーとは?【ICCアカデミーレポート】

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ICCサミットでリーダーシップ、チームマネジメント、フォロワーシップを語るといえばこの方、中竹 竜二さん(日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター / チームボックス 代表取締役)。2009年6月に解説を担当した『FCバルセロナ 常勝の組織学』を出版した中竹さんをスピーカーに迎え、8月21日、ICCアカデミーでウィニングカルチャーについて学ぶ機会を設けました。その模様をレポートします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


【登壇者情報】
2019年8月21日
ICCアカデミー「FCバルセロナに学ぶウィニングカルチャーとは?」

(スピーカー)
中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター
株式会社チームボックス 代表取締役

(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役


中竹 竜二さんは、スポーツの観点からビジネスを語れる稀有な存在。ラグビー名門の早稲田大学に入学したものの、3年まで補欠で4年で主将に選ばれました。その理由は彼ならではの、フォローワーシップ型の組織づくりでした。

直近では、来たるラグビーワールドカップを目前に、日本チームの成績や評価を担当する理事に就任。ラグビー界の4年に一度の祭典の自国開催に多忙を極めるなか、今回のICCアカデミーとICCサミット KYOTO 2019にご参加いただけることになりました。

今回のICCアカデミーでは、中竹さんが解説を担当した『FCバルセロナ 常勝の組織学』をテキストに、勝ち続ける組織になるためには何が必要かというのを、ディスカッションしながら学んでいきます。活発な議論となり、最後にはワールドカップ優勝予想も飛び出した楽しい勉強会となりました。

コーチのコーチを育成する中竹さん

中竹さん「常勝チームはどんな組織文化を持っていると思いますか?

コーチの世界では、Good to Greatといいます。国内のチャンピオンならGood、Greatは、オリンピックやワールドカップで勝つチームやコーチを、Great team、Great peopleといいます。常勝チームはSerial Winning Teamです。

『そんなチームがどんな組織文化を持っているか?』というのが1つ目の問いです。

2つ目の問いは、みなさんは、どんな組織文化を持っているか?あとは私はICCがどんな組織文化をもっているのかに興味があります。

3つ目は、みなさんは、どんな組織文化にしたいのか?

この3つを頭に置いて、今日は話を進めていきたいと思います」

中竹さんは、早稲田大学ラグビー部監督に就任して2007年から全国大学選手権2年連続優勝、日本代表U20ラグビー監督、2015年のワールドカップで破格の躍進を見せたラグビー日本代表のエディー・ジョーンズ監督が退任後、新任の現監督が就任するまでのラグビー監督代行、そして現在はコーチングディレクターとして「コーチのコーチ」としてコーチの育成を行っています。

この役割を担うきっかけは、自分が早大で経験なしから監督をしてみて初めて、「コーチのコーチ」の重要性に気づいたことからです。

「コーチのコーチ」に必要なスキルは他競技にも転用可能です。現在中竹さんは、野球、サッカー、Bリーグのバスケットチーム、Vリーグのコーチを教え、車椅子ラグビーの代表理事に加え、あらゆるチームの支援も行っています。

「10秒で結果が出るようなスポーツのチーム文化が醸成されることで、結果が変わってくることを目の当たりにしています。非常に興味をもって支援しています」

アスリート、コーチ、スタッフのコーチの文化が醸成されることで、競技のクオリティが上がるとはにわかに信じがたいのですが、極めて早い時点からそれに着目していた中竹さんが結果を残してきていることは、ご存知の通りです。

文化はパフォーマンスに影響する

中竹さん「早稲田大学ラグビー部主将をしていたとき『謙虚』『感謝』『モラル』というチームスローガンを掲げました。この言葉、ラグビーのプレイとは全く関係ないですよね(笑)。

私は3年生まで補欠でしたので、プレーヤーとして引っ張れないことはわかっていたので、ひとりひとりがリーダーとなるチームを作りたかった。たかが学生の部活動で、一軍の選手がいばるような体育会系の人格が嫌だったこともあります。

今ではサッカーのA代表などもやって有名になった、遠征先でロッカールームをきれいにいすることや、1軍ではスポンサーからスパイクやジャージなどをもらえたりするのですが、そういうものを大事にするということを、徹底的にやりました。今考えると、すべてこれは文化づくりだったかもしれません。

スポーツの注目される5つの要素とは、アスリート、コーチやスタッフ、道具・ツール、仕組み・制度とあって、カルチャー(文化)は5番目。とりわけカルチャーは、視覚化されないこともあったので、カルチャーの重要性を伝える論文などのエビデンスも少なく、長らく手がつけにくい領域とされてきましたが、IoTの進化によって、最近データがとられるようになってきました。

この3つのチームスローガンを掲げ大学選手権準優勝を達成した中竹さん。「文化づくり」が、どうプレーやパフォーマンスに影響するのでしょうか。

中竹さん「組織文化とは一体なにか? 組織風土との違いは何か?それぞれの違いをディスカッションすることから始めましょうか」

組織文化と組織風土の違い

近くの席の人と2〜3人組になり、ディスカッションが始まりました。それぞれが考える言葉の定義や違いを発表していきます。

「風土は環境で作られるもの、文化は意識や内面で作るもの」
「風土が場所に関係するハードなら、組織文化は人に関係するソフト」

どれも納得という意見が出るなか、中竹さんの解説は意外なものでした。

中竹さん「根底にあるのは文化で、その上にのっかるものが風土です。その上にあるのが行動/習慣で、一番上がプレー&パフォーマンスとなります。

我々はこうした組織になるぞとか、こうした制度を作ろうというのは風土で、文化は言語化されずにその根底にあるものです。根底にあるからこそ当たり前になってしまい、誰もそれについて言わなくなりますよね。新しい人が増えたからちゃんと言語化しようというのが、カルチャーマネージメントです」

当事者だからこそ「当たり前」が見えなくなってしまうもの。なので敢えてその当たり前をみつけ、言語化する。そしてその言語化したものが、なぜ今必要なのかを考える問いを投げ、必要なものを伝えていく。これが今必要とされています。

常勝チームの組織文化とは

その後は、自分たちの組織文化や現状について考えたり、自分たちはどんな組織文化にしたいのかを考えて発表するなどのワークが続きました。

ココナラ南さんから「すべての文化は明文化しているつもりだったが、転職者が社内では当たり前だったことを改めて文化として気づかせてくれた」というエピソードが披露されたり、ICC小林からは「ICCは真面目にやる人を馬鹿にせず、称賛したい。真剣であり、お互いに自主的に何かをしようという文化でありたい」などということを発表させていただきました。

中竹さんいわく「みんな組織の成果を考えるのは好きだけれども、文化の言語化は苦手」とのこと、これは常勝チームになるためには、意識して行っていかなければならないことだそうです。

常勝チームとして、スポーツの世界で研究対象の筆頭となるのが、サッカーのFCバルセロナや、ラグビーのニュージーランド代表(通称オールブラックス)で、彼らの組織文化はどんなものなのでしょうか。

中竹さんが解説した『FCバルセロナ 常勝の組織学』には、フットボールには5つの文化があると書かれています。

・スターモデル型……個人スキルの高いスター選手を集めるレアル・マドリード
・オートクラシー型……オーナーの独裁色が強いチェルシー
・ビューロクラシー型……統計分析に基づく移籍・補強。リバプールなど
・エンジニアリング型……規律を重視するボルジア・ドルトムント
・コミットメント型……チームへの献身を重んじるFCバルセロナ

とのこと。常勝チームになるには、一人ひとりのエンゲージメントを求める、スターに頼らないバルセロナ型がよいそうで、この本では、そのコミットメントがどのようなものか解説されています。

その例として紹介されたのは、チーム内に、スタメンではなくてもふるまいを統制する非公式なリーダーがいることや、自分らしさを大切にする、オーセンティックリーダーシップを全員に求めること、下部組織のトライアウトでさえ、コーチングや指示の必要がないほど自主的に全力でやっていることなどでした。

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そのコミットメントとともに、バルセロナの町の文化として研究者が挙げるのが「Humble(謙虚)」であること。いいものはどんなものであれ取り入れるラーニングカルチャー、学びに対する欲が、コーチからトップ選手にまですべて通底しているそうです。

中竹さんが紹介するちょっとした内容だけでもとても興味深いものばかり。詳しくは本書をぜひご覧ください。

バルサの文化を維持する”ロンド”

質疑応答タイムでは、活発なやりとりがなされました。

・非公式なリーダーはどうしたら現れる?自然発生は難しいのでは?
・どうやってチームのスローガンを決めたのか?
・チームワークを尊ぶチーム、不要とするチーム、その2つはどちらも勝てるチームになれるのか?
・行動を変容させるためにアチチュードを治すことが必要というが、そのためには何が必要か?
・戦略は競合他社を見て判断するが、文化は周囲を見て変えたりするものなのか?
たとえば勝っているチームに影響を受けたりすることはあるのか?
・組織文化を維持するための仕組みとは?
・組織と個人の目指しているものが違うときは?

それぞれ、自身の組織にとっての課題、改善目標などに根ざした具体的な質問が上がりました。そのなかでも文化を維持するための仕組みとして、中竹さんから紹介されたのが、FCバルセロナの有名なパス回し練習、”ロンド”です。7対2、5対2などでボールを回す練習で、日本語に訳すと「輪舞」。

中竹さんいわく「まさにカルチャーマネジメントで、アティテュード=マインドが伴った行動と習慣しかない。FCバルセロナなら、アグレッシブさ、エンゲージメント、周りが見えているか、声が聞こえているかなど、彼らの感じているスタンダードが見えてくる、”ロンド”がそれにあたる」とのこと。

それは組織によって挨拶を変えたり、チームでしか使わない言葉を決めるとか、営業のファーストコンタクトはこういう言葉にするとか、ラグビーでいえば、オールブラックスの有名な「ハカ」のような儀式的なものにも、そういった意味があるそうです。

上の図のピラミッドでいうところの一番下、文化を変えようとしたくなるけれども、行動を変えるしかないとのこと。それを徹底的にやりきることで独自の文化が醸成され、それがプレーやパフォーマンスに影響を与えることになります。

9月20日からのラグビーのワールドカップも「勝敗の裏側にある、組織文化を意識しながら観戦してみてください」と中竹さん。

個人のパフォーマンスがダイレクトに勝敗につながると思われている、アスリートの世界。「ウィニング・カルチャー」という見えないところが実は重要であるという、新しい視点での問いは組織づくりに関わる人にとっては重要でしょう。バルサファンのみならず、本書をぜひ手に取ってみてくださいね。

ICCサミット KYOTO 2019では、中竹さんに加えてユーザベース、メルカリ、楽天とともにディスカッションするセッション「組織の『ウィニング・カルチャー』を作り上げるには?」を9月3日のセッション4Cで開催します。さらに実例・具体例をもとに議論が深まること間違いなしなので、ぜひご期待ください。以上、現場から浅郷がお送りしました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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