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クラフテッド・カタパルト登壇決定! パンと日用品の店で年商3億3千万円の「わざわざ」、長野の3拠点を見学しました

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ICC KYOTO 2022でクラフテッド・カタパルトに登壇予定の「わざわざ」。自分で焼いたパンの移動販売から、年商3億3千万円の事業に成長させた、創業者の平田 はる香さんを訪ねて、長野県東御市にある「わざわざ」と「問tou」、現在建設中の新拠点を訪ねました。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


コロナ禍でも成長している企業は数あれど、長野の山奥に、パンと日用品雑貨を軸に急成長している店があると聞き、掘田カーペットの堀田さんの紹介でICC一行が訪れたのが、長野県東御市にある「わざわざ」。

1人で立ち上げた山奥のパン屋が、年商3億3千万円の人気店に コロナ禍でECは出荷待ち、驚異の売上推移の秘訣とは(logmi.biz)

いろいろなメディアで「山奥」と読んでいたのですが、東京を車で出発して2時間半、到着したのは水田に囲まれた、住人しか通らないような道沿いに立つちょっとおしゃれな民家……これが、あの「わざわざ」? どの駅からも遠く、本当にわざわざ車で行かないといけないようなところにあります。

建物の中に入ってみると、漆喰の壁、梁がむき出しの天井、柔らかな電球色の明かりに照らされたさまざまな食材がぎっしりと並んでいます。入ってすぐ正面には、見るだけでおいしそうな「わざわざ」の人気のパンがショーケースに並んでいます。

ICC一行を迎えてくださったのは、「わざわざ」の創業者で代表取締役の平田 はる香さん。家族の転勤で長野に移住し、手作りパンの移動販売を始めた2009年から現在の規模に至るまで、パンと生活雑貨の店を経営しています。

店内を見渡すと、写真左手のガラス張りの工房ではパン作りをしているのが見えます。親子で買い物に来て、子どもがずっと眺めていることもあるのだとか。

その奥にさらに入ってみると、オリジナルの薪窯でパンを焼いています。東日本大震災での電力不足の問題から転機を得て、店主が設計し地元の職人に作ってもらったというこの石窯、350度ほどまで熱し蓄熱がきちんとされた後には、30分ほどで両手で抱えるほどの大きなカンパーニュ(写真左)が焼けるそうです。

さまざまなものが整然と、でも所狭しと並んでいる店内。急角度の細い階段を上がると、秘密基地のような2階にも、選びぬかれた生活用品や本がぎっしり。なんとこの建物、主な屋根と柱と壁を大工さんに立てていただいた後は、壁も床も窓も棚も自分たちで作ったものなのだとか。

選びぬかれた日用品と広い窓から見える緑。絵になります

古道具屋さんがアンティークを月イチでキュレーションする一角もあり、見学している間にも、奥に置いてある黄色い座面の椅子が売れていきました。

古いものと新しいものがごちゃまぜに並ぶ

1階に戻ると、手に取りたくなるような魅力的な食材・調味料の海に再び突入です。どういう基準で選んでいるか? それは下のページにも明確に記されていますが、平田さんに伺ってみましょう。

わざわざの商品選定基準

石壁の向こう側は、さきほど見たパンを焼く石窯

「全て実際に食べて確かめてからしか並べていないので、全部味を説明できます。

伝統的なものから新しいものまで。国内外のものを入れています。

本当にいろいろなところから見つけていますが、他と区別化するために直売所なども。人気商品で、静岡の農家の直売所で見つけたマーマレードもそれです。直接アポイントをとって、売らせてほしいとお願いしました。

独自性のあるものを入れていかないと、商品のラインナップに幅が出ない。出張のときに足で回って見つけていったりとか、最近は売り込みもあります。

5つの商品選定基準を設けていて、5つがゆるやかに守られていればよしと考えています。うちと関係性がいいというものも重要視していて、お互いがウインウィンになる構造で、うちも買い叩かないし、両方とも潤うような構造で決めています」

「わざわざ」はオンライン販売が非常に強いですが(2020年は取り扱い数26,406件)、選りすぐりの商品が実際に一挙に見られるのはここだけ。素敵なものから素敵なものへとたどっていくと、食品から雑貨ゾーンに突入しました。

手作りゆえの”普通でない”店内レイアウトに、”普通でない”品揃え。ひとつひとつ商品説明を読むと、どれも魅力的で物欲をそそられます。何か買いたい、何を買おうか…と悩みながらも店を出ると、焼けたばかりの「角食」を、みんなで食べようとしているではありませんか!

微量のドライイーストで20時間という長時間で低温発酵させた、甘くない、皮がバリッとした角食。キメの細かい内側に反して、香ばしく噛みごたえのある外のクラストは国産の圧搾式の菜種油を塗って焼いています。お店を訪れるお客さんも帰り道の車の中で食べて、もっと買いたいと戻ってくる人が多いのだそう。

写真右が「角食」

もちろんICC一行も即購入。買わずには帰れない美味しさです。

現在建設中! 「わざわざ」体験型施設

「わざわざ」から車で走ること約10分。一体ここはどこ?と思う所に着きました。信州といえば蕎麦ですが、元製麺所だった場所だそうです。

450坪の土地に建物は合計3つあり、オフィスに使っている棟、出荷に使っている棟、広々とした元製麺所の工場棟があります。

壁に描かれた「わざわざ」の”大切にすべき精神”

この体育館のような元工場の棟に、平田さんたちは「わざわざ」の世界観を体験できる施設「よき生活研究所」を作ろうとしています。

平田さん「”仮想わざわざさん”の家で、キッチン、ダイニング、寝室、リモートワークの書斎、ランドリーなどがある。リビングには堀田さんのカーペットを敷いて、服もレンタルできるような、『わざわざ』の商品が体験できて、食べられるような、今までやってきたことが全部見られる場所にします。

会員制にして、自由に会員の人達が入って過ごせるようにしたいと思っています」

この入口付近には、キャッシュレスで買える「わざわざ」流コンビニを建設予定

地域の公園内施設に「わざわざ」入ってる!「問 tou」

さらに車で10分ほど走ると、東御市内の「芸術むら公園」に到着しました。平日のためか人はまばら。犬の散歩をしている人を見かけたくらいでしょうか。

訪問予定地は「わざわざ」姉妹店の「問tou」。なのになぜ公共施設の中にどんどん入っていくのでしょうか……?

なんと、「問 tou」は、この「芸術むら憩いの家」施設の中に入居しています。「わざわざ」を創業してから10年がたった2019年に開業しました。

「土地がどうしても見つからなくて、3〜4年探していたのですが、あまりに見つからなかったので、こういう事業がやりたいから、土地が出たら教えてくれないかと市にプレゼンしたんです。何件か紹介いただいたうちの1つがこれで、運営入りませんかとお声がけいただきました」

素敵なのれんは掛かっていますが、見た目は正直、ザ・自治体の施設。さきほど見たような、素敵な空間は果たして期待できるのか? 図書館のようなエントランスを入ると、壁沿いに本棚というか図書館のようなスペースが現れ、外国のような大きなドアを開けて中に入ると……

「わざわざ」が日常ならば、「問tou」は非日常の空間というコンセプトというのが納得の、くすんだブルーの壁にアンティーク家具や美術品、そこここに本や雑貨が並ぶ、カフェスペースが現れました。

バリューブックスと提携して、定期的に選書を変えているという本棚は、平田さん自らの選書も入っています。人文や経営、科学といった本が多く、本は1カ月に150〜200冊も売れるそうです。訪問したときは「経営に役立つ100冊」というテーマのコーナーが設けられていました。

外にも机があり、「わざわざ」のパンを使ったホットドッグ、新潟のツバメコーヒーのコーヒーを味わいながら、1日リモートワークして過ごす人も多いというのも納得。中に入ってみるまでは想像できないような、落ち着いた美しい空間が広がっていました。

ドアを出て、図書館スペースを通り抜けると、どうやら他にも店舗スペースがあるようです。

カフェの外の本のジャンルは間口広め。持参した1冊と交換して1冊持っていける書棚もありました

「広場1」という宴会場のような引き戸の部屋、一歩中に入ると…

衣食住でいうところの、衣と住を中心にさまざまなものが並んでいます。気鋭のブランドの最新作なども並び、東京でもあまり見ないような品揃えです。

ICC一行、口々に気になるものについて平田さんを質問攻めにしましたが、すべての商品についての平田さんの説明が、質問の10倍返しのようなボリュームで凄い! 扱っている商品への愛を感じます。

「もともといちいちこだわりがあって、いちいち全部、自分でやりたいんです。

みんなもそれをやっていたら大変だろうなと、セレクトしてやってみようと思ったのです。全部自分の店で買いたいという欲求があって、突き詰めています」

これから注力したいジャンルは家具で、訪問したこの日の午後は、静岡のソファの会社に試作品を見に行くとのこと。完成したあかつきには、このスペースや先に立ち寄った「よき生活研究所」にも置かれるのでしょう。

「問tou」の1階は商品の撮影スタジオや平田さんのデスクスペースも

大学、ウェブデザイナー、クラブDJという異色の経歴ですが、「わざわざ」に至るまで「受験も仕事も、全部中途半端で1つもうまくいかなかった」と言う平田さん。

「2004年に長野に来て、好きなことややりたいことではなく、やれることをかけ合わせて何ができるかな、と考えました。

料理が好きだから、料理とかパンとか、これをかけ合わせたら店ができるんじゃない?と、パンと日用品の店になったんです」

臆病だから全部リサーチする、予算を立てて実行する、危険なことはしない、と言う平田さんですが、この人里離れた縁もゆかりもないところに、一朝一夕で成したことではないといえ、わざわざ来させるような店を作る、成長させ続けるというのは、人っ子ひとり歩いていないような3拠点を実際に見てみると、あらためて非常に大胆で、奇跡的なことのように思えます。

ここに至るまでに、どんなストーリーがあったのか。平田さんは、ICC KYOTO 2022のクラフテッド・カタパルトに登壇し、「わざわざ」についてプレゼンします。ぜひご期待ください。

平田さん、「わざわざ」の皆さま、ご案内いただきましてありがとうございました。以上、長野県東御市から浅郷がお伝えしました!

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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