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「未来の当たり前」にいち早く出会う!デザイン & イノベーション アワード12社全ブース紹介

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2月13日~16日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2023。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、デザイン & イノベーションアワードに出展した12社のブースを紹介します。実際に見て、体験してわかる最新の技術やデザイン、テクノロジーを、ぜひ写真とともにご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください


デザイン&イノベーションアワードもフード&ドリンクアワードと同様、事前のコミュニケーションや準備を経て、2月14日の朝にキックオフの会場に集結した。フード&ドリンクと違うのは、展示がわかりやすいものやシンプルなものではなく、むしろ説明がないとわからなく、それぞれ見せたいものや、提供したい体験がそれぞれ大きく違うことだ。

福西 祐樹さんがキックオフのナビゲーター

【速報】「デザイン & イノベーション アワード」のグランプリはAI搭載の進化した聴診器で医療革新を起こす「AMI」(ICC FUKUOKA 2023)

キックオフの会場で、前回は展示企業として参加、今回は審査員のglafit鳴海 禎造さんは「五感を動かすプレゼン、体験を」、第1回目優勝のヘラルボニーの松田 崇弥さんは「デザインは人の認識や世界観を変えていく可能性があります」と参加企業にエールを送った。

26名の審査員は、以下の5つのファクターにおいて、出展企業を「とても良い」の 5点から「ややイマイチ」の 1点まで、5段階で評価する。

  • グローバル(国際性)
  • トレンド(時代性)
  • ソーシャルグッド(サステナブル・社会性)
  • イノベーション(革新性)
  • 体験デザイン(機能性)

またフード&ドリンク同様、今回から審査員以外のオーディエンスも投票に参加できるようになった。「素晴らしい」と思った1社について投票し、オーディエンス賞が決定する。

タイトルに「イノベーション」と入っているだけあって、「今までの世の中にないもの」や「すでにあるものの新しい形」「新しい概念」をプレゼンする展示企業たちは、ブースに工夫を凝らして準備をし、キックオフの1分間スピーチではモノがない分、もどかしげであった。

ここからはそのスピーチと、ブースの模様を写真とともにご紹介していこう。

パワーウェーブ

種田 憲人さん「今世界は、Co2の排出を減らすため急速に電動化が進んでいます。電動のモビリティが停まっているときでも、走っているときでも、あらゆるシーンで安定して、ワイヤレスで給電できる装置を開発しています。

いつもはEVで走行中の給電を見せていますが、今日はそのミニチュアとして、乾電池を積まずワイヤレスで走るミニ四駆をお見せしますので、楽しみにお越しください」

キックオフのトップバッターで緊張の面持ちで語った種田さん、審査員ツアーで60分間説明し続けたあとには、Honda Xcelerator カタパルトの登壇が待っていた。見事優勝を果たしたが、種田さんとともにブースに立った本多 亮也さんがその舞台裏を明かす。

本多さん「朝のキックオフで1分間スピーチ、しかもここで2分間×13回ローテーションして審査員の皆さんに説明、そのあとにカタパルトに行って。喋る内容が似ているので、7分間のプレゼンを完全に暗記してたのに、2分間のほうを覚えてしまったので、カタパルトと混ざってしまったみたいです。

1分間スピーチもすごく緊張して、実際ちょっと言葉が詰まってしまった。本番前はもう悲しい、これはもうだめだと言っていて、これで癒されるかな〜と言ってお子さんの動画を見ていた(笑)。だから優勝したと聞いて、すごく嬉しいですね。

展示したのは、ミニ四駆から乾電池を取り外して、コースの下にあるアルミのテープに電気を送ることによってワイヤレスで電気を受け取って走り続ける仕組みです。

現在構想しているのは、遠出をする時は、高速道路のアスファルトの下に敷いて給電しながら走り、下道は高速で充電したバッテリーで走り、自宅に帰ったらまた自動でワイヤレスで給電する仕組みです。運送会社も充電に時間を取られず、青森から九州までどこでも行ける。

電車のパンタグラフは擦れてすごく摩耗しますよね。ワイヤレスなら長時間運転しても、劣化しません。そこが有線と比べて良いところです。工場内のラインに敷いてサービスロボットや、工場のAGV(無人搬送車) などに向けて、置くだけでいいんです」

AMI

小川 晋平さん「200年前にフランスで開発されてから進化していない、聴診DXの社会実装に取り組んでいます。

先日日本国内で薬事承認された私たちの”超聴診器”は、心音を広い周波数できれいにとるうえに、心電図も同時にとれます。デジタル化だけでなく、医学教育、臨床研究、遠隔医療にも応用できると考えています。思いがたくさんつまったプロダクト、1分間では足りないので、のちほどゆっくりお話させてください」

過去に、そして今回も、幾度となく小川さんがカタパルトで語ってきた”超聴診器”が、ついに薬事承認を取得したということで、その実機がアワードに初見参。医師が首から下げているあの聴診器が、手のひらに収まるサイズのデバイスとなり、治療に役立つデータを取得する。

最近はスマートウォッチなどで心電が取れるものもあるが、この超聴診器ではそれでだけではわからない、大動脈弁狭窄症やうっ血性心不全といった命に関わる心疾患の早期発見につながる心音を取ることができる。

リアルテックの人ではない医師の小川さんがはんだごてを持ち、当直室で始めたという工作。何年もかかった実用化となるタイミングでお披露目となったことに、感慨を覚えた審査員や参加者たちも多かったようだ。小川さんを始め「聴診DX」にかけるチームの熱意も印象的だったという感想が多く聞かれたブースでもあった。

エイトノット

木村 裕人さん「船の自動運転の技術開発をしている会社です。船に取り組むスタートアップは多くありませんが、創業2年弱で自律航行の技術を開発し、社会実装をスタートしています。今回は船に載せているシュミレーターを持ってきました。

船舶は単独では価値を創出できないので、ICCのテーマである共創で価値を発揮したいです。ぜひ宜しくお願いします」

木村さん「操船技術自体が人によってすごくバラつきがあります。車は教習所があって、試験もミスしたら落とされるのですが、船はまだ教習所みたいなところがあまりなくて、気軽に乗れるモビリティでもない。だから免許取りたての人が船に乗ると非常に危ないんです。

舵の操縦は、スロットルを倒せば前や後ろに行くのですが、波があり風があって、船の構造上まっすぐ進まないようになっています。こまめに舵をきって見張りをしながら、目標物を見失わないようにするのはとても難しいんです。

なのでそれを技術で補えれば、誰が乗っても安全だし、操船が簡単になれば新しい人も入ってきやすくなるといういいサイクルを作りたい。誰が乗っても同じ安全性を担保できるようなモビリティに変えていくのが、ビジネスにおいては重要なところです。

 AI CAPTAINという名前ですが、一定の海域の中で、水草が多く生えているところや、進入禁止区域を区切って、最も効率的に行けるルートを提示します。障害物を避けるためにライダーやカメラ、AIで画像処理をしながら目的地まで向かいます」

そんな木村さんが、海に目覚めたのはアメリカで過ごした大学時代。サーフィンやダイビングなどでマリンアクティビティの素晴らしさに開眼し、なぜ日本人は海に心の距離があるのか考え、誰もが簡単に海にアクセスできる手段を考えたという。その情熱が届き、Honda Xcelerator カタパルトではパワーウェーブとともにW優勝となった。

関西巻取箔工業(KANMAKI)

久保 昇平さん「箔は箔でも転写箔、西陣織の錦糸がルーツです。転写箔は実は身の回りにたくさん使われていて、最近の事例では、コロナワクチンの注射器のメモリに数多く使われています。転写箔が既存の印刷より生産性を上げ、環境負荷を下げるからです。70年前に金箔加工から派生して、現代に生き残った京都生まれの絶滅危惧種、KANMAKIをぜひ体験してください!」

私たちが過去3年間お世話になったワクチンの注射器にもその技術が利用されていたという驚きの事実を明かしたKANMAKI。このデザイン&イノベーションアワードの会場で、ボールペンで転写箔をつける体験を楽しんでいた人も多かったのではないか。

久保さん「印刷塗装で使われるインクや塗料に含まれる有機溶剤、シンナーとかアルコールといったものを使わずに装飾ができるというのが、この転写箔の強み。先ほどのワクチンの注射器も、印刷して乾かすプロセスが転写だと不要なので、ワクチンをスピーディーに供給する生産性の面からバックアップしました。

今回皆さんに体験いただいて、箔を剥がしたときに、『うぉー、すごいな』とか『綺麗やな』とポジティブな反応をいただけました。我々は普段B2Bで、仕事もあまり表に出ない黒子の存在ですので『こういう技術ってあるんやな』と言っていただいたのが非常に嬉しかったですね。 

ITの仕事をされてたり、いろんなお仕事をされている方々が、その業界の垣根を越えてアイデアを出していただいたりとか、興味をもって聞いていただけるっていうのは、我々にとって非常に勇気づけられます。 

今回出展されているAshirase(あしらせ)さんにも、自分達のデバイスに、ロゴマークを転写できますか?と聞かれたり、見に来られた方に『うちのこの商品に箔つけられる?』など午前中だけでも複数ありました」

TopoLogic

佐藤 太紀さん「2016年にノーベル物理学賞を受賞したトポロジカル物質を使った半導体、電子デバイスの開発を行っています。スマホに搭載される半導体チップが100倍以上速くなるような、画期的な技術を使って、半導体のコングロマリットになることを目指しています」

リアルテック・カタパルトで3位に入賞した「TopoLogic」は、最先端のテクノロジーをブースで紹介した。最先端の技術を、最前線のプレイヤーから聞けるという贅沢さもデザイン&イノベーションアワードの魅力である。

佐藤さん「2つのプロダクトをご紹介していて、1つはMRAM(磁気抵抗メモリ)というものです。従来PCのスピードはメモリに依存しましたが、我々の素材を使えば、書き込みや読み込みで、2桁3桁スピードを上げることができる。スーパーコンピューターなどで使えるのではと思います。

PCにX線を当てるとメモリが化けてしまうような電気的なものでなく磁気的なものなので、これからどんどん宇宙開発が進んで、宇宙産業を作っていくときには必須の技術です。

もう1つは熱流束センサーという熱の流れを計測するセンサーです。従来は、熱が流れて溜まって温度が上がるという結果の温度しか基本的に見ていなかったのですが、我々のセンサーを使うと熱の流れを可視化して、どういう経路で流れて温度が上がっていくかがわかる技術です。

例えばリチウムイオンバッテリー。今までは温度が上がったときに初めて気づきますが、それでは手遅れで、時々爆発してたりしますよね。我々の技術ではその前にアラートが出せるので、メーカーさんからお話をいただいていたりします。

他の用途としては現在、たくさん水素プラントが建っていますが、水素の計測精度が高いセンサーがなかなかなくて困っている話をよく聞きます。我々のセンサーは熱になれば何でも測ることができるので、水素ガスセンサーを、というお話をしていたりします。

たとえば光物質、ソーラーパネルのエネルギーをどこか蓄電池に溜めておかなければいけない。蓄電池でなくて、電気分解して水素に変えて溜めておく、ものとして溜めておくことができるのが水素プラントで、ヨーロッパでは進んでいます」

それはもともと日本の技術なのだそうだ。今後さらに増えていくと思われるプラントの安全を守る技術も含め、研究開発の優位性を活かせる2023年2月現在、唯一無二の企業として、トポロジカル材料の社会実装にチャレンジしていくという。

テクノツール

島田 真太郎さん「もしある日突然、事故で首から下が動かなくなったら、どういう生活になると思いますか? 今までと同じように仕事ができるか、不安になりませんか? 僕たちは体の状態に関わらず、個性や可能性が発揮できるような、入力インターフェイスの多様化を進めています。

ブースでは、あごで使うジョイスティックでゲームを遊んでいただければと思います。対戦相手はうちの社員で、神経難病の患者です。彼も首から下が動かないけど、あごの操作は非常に上手いです。僕たちの社会には、まだ活用できていない可能性、個性が埋まっています。それを皆さんに感じていただいて、共創の種を探せればと思っています」

写真左下がお話をうかがった干場 慎也さん

そのゲームの対戦相手になった干場 慎也さんにお話を伺った。

干場さん「重障害をもった方でゲームをしたいという方がいらっしゃったのですが、Nintendo Switchもこれを作るまでは、アクセス技術に特化したコントローラーがなかったので、テクノツールと企業さんと組んで作り上げました。

重度障害を持っていても、考えたり話したりということは全く僕らと変わらないし、一般の方々も変わらない。一般の方々と比べて、障害を持っているがゆえに働く機会がなかったっていう方々に対して、選択肢を広げるような活動をさせていただきたいなと思っていて、ツールを作ることで機会を作って、広げていきます。

体験いただくジョイスティックは、体を正確に使うことができないゆえに、小さいボタンだと手が離れてしまったりするので、大きめのスイッチにしてあり、力がない方のために微弱な力でも動作できるようにしています。

身体障害といってもさまざまで、体がこわばる方も、筋力が弱まる人もいる。そういう人が使えるデバイスを開発しています。症状が本当に人それぞれ違うので、大雑把にまとめて大丈夫な部分もたまにはあるんですが、この人しかできないとかあります。僕らはそれを、本人の持つ才能であるとしています。

ここにいらっしゃる皆さんは、新しいものを作るというベクトルが同じで、まったく違う業種でも同じ気持ちを持っている。普段は家でフルリモートで働いていて、こういった場に参加するのは初めて。企業のトップの方々とお目にかかる機会もなかったので、こういう世界があるんだとカルチャーショックです。これに慣れていける自分でいたいなと思います。

僕らの製品や取り組みを面白がってくださる人が多い印象があって、すごくありがたい。AIやさまざまな技術を使う方々がいるので、そういった方々と一緒にものづくりをしたい。僕らがこうしたいと思っているという熱意を組んでくださる方が多くて、刺激を受けています」

Ashirase

千野 歩さん「視覚障害者向けの歩行ナビゲーションを作っています。みなさんはグーグルマップの地図をご覧になりますが、障害者の方は画面を見れず、耳もセンシティブに使いながら歩いています。私たちは靴にとりつけるウェラブルデバイスで、振動で道順を伝えるものを作っています。

自動運転の制御エンジニアをやっていたのですが、それを活用して歩行を科学し続けながら、人の豊かな移動を実現していきたいと思います。振動で道案内はまったく想像できないと思うので、ぜひブースで体験いただければ」

秋本 敏樹さん「説明してもピンとこないみたいですが、履いてみていただいて、いまからナビゲーションしますねといって振動がきたら、おおっ!とみなさん驚かれますね。女性用のパンプスに着けるものは以前からリクエストがあいましたが、最近は雪国で履くブーツなどにも着けたいというニーズが上がってきています」

サグリ

坪井 俊輔さん「我々は衛星のデータ、そしてAIを使って世界の農業を支援する岐阜大学発ベンチャーです。我々は世界中の農地の区画化というものを自動で行うことができます。ワンタッチで農地を登録できるのですが、そこの土壌のpHや可給態窒素などの土壌分析を衛星から行うことができます。

いま世界では食糧危機、気候変動などさまざまな課題があります。日本の農家さんもそうですが、我々は途上国の農家さんなどにもサービスを届けていきます。ぜひ皆様と会場で話せたらと思っています」

坪井さんは、カタパルトの登壇で入賞するなど実績を残しているが、今回のアワードで「ついに皆さんにプロダクトを触って、見ていただけます!」と意気込んでいた。この2週間前に訪れたアフリカ、ケニアでの農業の課題をサグリのプロダクトで解決できることがわかり、大きな自信になっている様子。

プレゼンのデモで一方的に動画を流すより、インタラクティブに審査員の反応を見ながら紹介できるとあり、審査員ツアーでは水を得た魚のようにプロダクトの紹介を行っていた。

増田桐箱店

藤井 博文さん「増田桐箱店は、創業1929年の桐箱メーカーです。その三代目として私は祖父から事業を引き継ぎましたが、引き継いで一番ショックだったのは私の同級生が桐箱の仕事を知らなかったことです。

中身が主役で脇役だった桐箱をどうしたら若い人に届けられるのか、そこで桐箱にデザインを加え、強みである量産性を活かして開発した商品が桐の米びつです。年間で約1万個販売し、周りの目が変わったうえ、ベテラン職人や長年の取引先まで自分を見る目が変わりました。そんな社内や周りを変えた桐製品をぜひ見に来てください」

タンスなどでも知られる桐材だが、その特長は、吸湿放湿で、庫内の湿度を一定に保つこと。

藤井さん「そのためにむしろ、反ったりゆがんだりすることがなく、ぴったりと開け閉めすることができるんです。防虫効果もあります」

公式サイトではコーヒーストッカーの売り切れが続いているが、審査員ツアーでは、日本の魅力をお茶を通じて世界に発信するTeaRoomの岩本 涼さんが熱心に話を聴き込んでいた。そのうちティーストッカーも誕生するかもしれない。

ローカスブルー

宮谷 聡さん「我々は3Dデータを使って建設現場の生産性を劇的に向上させるプラットフォームを提供しています。建設現場の3Dデータといってもイメージがつかみにくいと思いますので、今日は実際現場で使われるスキャナーを持ってきました。この会場を実際に3Dスキャンしたデータをお見せできればと思っています。

3Dデータを使って現場がどのように生産性の効率化を図っているのかや、弊社が提供している価値を実際に皆様に体験していただいて、建設現場の人になった気持ちで、その課題とどのように我々が価値を提供しているかを体験していただきたいと思っています」

1分スピーチで宮谷さんが言っていたこの会場をスキャンというのは、右上の写真で三脚に載っているカメラで撮影されている。モニターには点で描かれた会場が3Dの画像で映されており、天井の高さや壁の横幅など即座にわかる。情報が足りないところは追加撮影で付け加えていけるそうだ。

宮谷さん「オンライン点群処理ソフトウェアといいます。見えないところは何もない状態になってしまうんですが、ある程度全部スキャンしてから、角度を変えて何回か撮っていけば像が補完されていきます。ドローンなども使って。

こういった技術を全く知らない方のほうがピュアなリアクションがあって、今回の機会はありがたいですね。自分がいる場所がデジタル化されて見えますからね。博多駅をスキャンしたものもあります。沖縄の首里城のような文化財も、火事の前に撮っておけば復元ができたりする資料になります」

現在、日本地図を作るために土地のスキャンを進めており、2月は静岡県あたりを撮影していたそうだ。技術の進化で今、スキャンし直した日本は、私たちが知っている形とは違うものかもしれないし、山の高さも変わるかもしれない。

ストリーモ

森 庸太朗さん「私たちはこの新しいマイクロモビリティ「Striemo」とその移動体験を作っている会社です。2023年の7月より、こういったマイクロモビリティ、キックボードに代表されるようなモビリティの歩道走行を認める法律が施行されます。

歩道を時速6km以下という制限つきになりますが、自転車ではフラフラしてしまい、押して歩いたほうが楽なスピードです。一方、我々のモビリティは独自のバランスアシストの技術があり、若い人からシニア層まで、日本の移動課題を解決するモビリティになりうるものだと考えています。ぜひとも皆様試乗をご体験ください」

森さんは、カタパルトや試乗体験のアシストなどで大忙し。しかし主なきブースを守るストリーモの皆さんも、モビリティの魅力を伝え、課題はないかヒアリングするなど、プロダクトの改善に余念がない。橋本 英梨加さんに話を聞いた。

橋本さん「安心感があったり、周りを見渡せる余裕みたいなところが特長です。歩行ぐらいの低速から自転車まで、楽しく乗っていただけて、砂利とか石畳、多少の段差があっても、安定して乗っていられます。

『なぜ立てるの?』とみなさん乗る前はおっしゃるのですが、見ているよりも、実際乗っていただくと全然安定感があります。

今は原付モデルで運転免許がいりますが、法改正が2023年7月に予定されていて原付ではなくなるので、歩道も車道も走ることができます。歩行程度のゆっくりから時速25km程度まで安定しています。現状は原付駐輪場に駐車することになりますが、50cm四方のスペースに収まる大きさに折りたたむこともできます。

今までキックボードに乗れなかった方や、高齢者、シニアカーに乗るまでもないという人、膝が痛い方に乗っていただけます。原付、車より安い価格です」

審査員ツアーの試乗体験も大盛り上がり。みんなあっという間に乗りこなしていた

気になる価格は、先行だと約26万円で、通常だと30万円程度を予定しているとのこと。森さんにも話を聞いた。

「元々リアルテック・カタパルトに登壇をする予定だったんですけども、アワードでも試乗体験できるものとして展示させていただけるというお声がけいただきました。

我々のモビリティは見た目からキックボードみたいに見えるのですが、体感すると全く違う体験価値を持っています。ぜひとも皆さんに実際体感していただきたいということで今回は参加させていただきました。

今までの乗り物とは違う乗り物なので、最初はちょっと戸惑う方もいらっしゃいました。一方でこれだけゆっくり走れる、こんなに安定するんだ、という驚きの声ももらっています。

他の乗り物と違うところは、ゆっくり走って、しかも立ち止まるという動作がシームレスにできるところが大きな違いです。低速でのバランスをとるには、自転車ですとハンドルで頑張ってバランスをとらなきゃいけないのですが、それを車両に任せられる。

だから周りを見渡せる余裕ができ、人とのコミュニケーションが走行中も取れる、そういった体験価値を創出できます。左右に動かすことができ、手一つでゆっくり動き出し、バックもできる。非常に小回りもできるという新しい仕組みプラス、人に寄り添ってバランスをアシストしてくれる世界初の技術を搭載しています」

アックスヤマザキ

山﨑 一史さん「皆さん、手作りの物を持っていらっしゃいますか? 持ってないですよね。このレザーの名刺入れは自分で作ったんですが、ミシンって女性がやるみたいなイメージを持っていらっしゃることが多いと思いますが、それをぶち壊そうと思います。自分のモノは自分で作りましょう!

男の人でも興味を示すようなレザー、帆布、アウトドアとキャンプとか、DIYとか、そういうところをミシンで料理する。男の料理みたいなミシン、名前はTOKYO OTOKO ミシンというのを作りました。それを先週金曜日、僕は『ガイアの夜明け』で特集いただいたんですが、ブースで体験できます!」

黒々と光る重厚感が美しい「TOKYO OTOKO ミシン」の展示にあたり、山﨑さんは製品開発部の谷崎 圭介さんと福岡にやってきた。1分スピーチでもあったテレビ出演は大反響があり、本社のオフィスでは電話が鳴りっぱなしだという。谷崎さんは、社長の山﨑さんのアイデアを形にする開発のキーマンである。

谷崎さん「今回の『TOKYO OTOKO ミシン』は、ごついものを縫える、デニム生地を12枚重ねても縫えるようなもの、ということでした。意外とジーンズは一番分厚いところでそのくらい重なっているんです。馬のお尻の皮が一番硬くて、滑革で5mmの厚さがあるんですが、そんなレザーも縫えるようなものということでした。

私自身が好きなので、 要は自分が欲しいものを作ればいいんだろうと思いました(笑)。かなりマニアックな世界に入りました」

デザインも重機っぽくて相変わらずカッコよく、インテリアに馴染むデザイン。糸立て台が別パーツとなり、はずみ車はがっしり握りたくなるような大きなシルバーのパーツだ。

谷崎さん「実際大きな工業用の糸を使う時のために、ここはちょっとこだわったところです。形は昔の足踏みミシンのままに、それを改良しました。

分厚い生地を縫うために、針や針板の部分を仕様変更したので、どんな分厚いものでも縫えます。その代わりジグザグ縫いもなしで、直線だけじゃないとこれはちょっと無理なんで。技術者として、だいぶやりたいことをやらせてもらっています」

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デザイン&イノベーションアワードの審査員である電通の各務 亮さんはこの場の価値をこう表した。

フード&ドリンクアワードの審査員、宮治 勇輔さんと話す各務さん(写真右)

「5分×12ブースでお話を聞き、体験させていただいて、めちゃめちゃ疲れたんですけど、めちゃめちゃ充実したっていうか最高のエンタメだと思います。こんなエンターテイメントはないです。 

まだないものが世の中に生まれる。そのもの自体に触れられて、それを作っている人の話が聞けて。この体験は、プレゼンテーションを越えてエンターテインメントまで行ったと思います。

世の中がこんなふうに、海がこうなったらいい、電気自動車の充電がそんなふうにできたらいいというのを見て、トヨタの創業者の本田宗一郎さんが最初に乗り物を作っている場に立ち会ってるみたいな、そんな気持ちになりました。そういう大きな夢が、これが実装されたら、どんなにもっと素敵な社会になるだろうか。

今回をきっかけにもっと加速する可能性もあるでしょう。そこがまた楽しみですね。壮大がゆえに、それをどう普及させていくか、いかに社会がそれを当たり前にしていくか。ものづくりの素晴らしさと同じくらいすごく難しいチャレンジじゃないですか。

きっとこの中のいくつかは未来の当たり前になっていくと思うので、そのプロセスに立ち会わせていただけるのは贅沢なことです。生まれたときに立ち会えて、答え合わせができる。最初は当たり前じゃなかったものが、どうやって当たり前になっていくのかを目の当たりにできるんですよ。 

ICCのキュレーションは、非合理というかすごいですよね。デザイン&イノベーションは理解の範疇ですが、フード&ドリンクなんて、やったら面白いけど絶対やらなきゃいけないわけではない。それをやりつつ、一次産業とテックの人が出会う状況を作る場が存在しているというのが、刺激的だし素晴らしいことだと思います」

こんなふうに審査員が感じているのだとしたら、この投票はこれからの未来の社会に必要とされるデザインやイノベーションを選ぶ場となる。この翌日のファイナルラウンドでは、投票上位に選ばれた企業が最後のプレゼンを行うが、そこで審査員たちは実装への本気度を確かめることになるだろう。

(終)

ICCサミットや登壇企業の最新情報を随時お知らせ。公式Twitterをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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