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熱狂的な顧客コミュニティはどう作る? ICCファン模擬ファンミーティングで学ぶ、その奥義

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9月4日~7日の4日間にわたって開催されたICC KYOTO 2023。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、最終日の午後の人気ワークショップ「長く支持され、愛されるための「ファンベース」集中講義と実践ワークショップ」の模様をお伝えします。”ICCのファン”として行ったファンミーティングの内容とは? ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回400名以上が登壇し、総勢1,000名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


 ICCサミットの最終日、DAY3は長尺だが魅力的なワークショップが4つラインナップされている。言語化やB2Bの営業、ソーシャルビジネスのプランニングなどがある中で、このレポートでお伝えするのは「ファン」を考えるワークショップ。ロイヤルカスタマーや熱心な顧客を「ファン」と見立てて、どう向き合うかを学ぶ。

 企業やブランドにとって「ファン作り」がいかに大切かはICCのセッションでもよく議論されているが、ファンになってもらった人たちをベースに、いかに中長期的に企業を支える存在になってもらい、企業価値の向上を目指すかというのがこのワークショップのテーマで、どの企業にも通じる課題である。

 講師はファンベースカンパニーの津田 匡保さんが務める。津田さんは2012年にネスレ日本で「ネスカフェ アンバサダー」を立ち上げ、もはや企業からだけの発信は弱いとすら感じさせる手法、というより、極めて説得力があり信用できるプロダクトの情報発信を、ファンとの共創で実現した。


津田 匡保
ファンベースカンパニー
代表取締役社長/CEO

2002年ネスレ日本入社。2012年ファンとの共創によるコーヒーのオフィス向け宅配サービス「ネスカフェ アンバサダー」を立ち上げ、その後も新規事業やEC事業を統括。2019年ネスレ日本を退社し、5月より発足したファンベースカンパニーに創業メンバーとして参画。「ファンベース」の考え方や自社ソリューションを軸に創業以来300以上の企業・ブランドの事業支援に従事。著書に「ファンベースなひとたち」(日経BP社)

 オンライン、オフラインのどちらでも活用ができ、ファンならではのポジティブな発信でさらに強固なコミュニティを構築していく、そのステップの最初の部分をこのワークショップでは体験できる。前回のICC FUKUOKA 2023が大変盛り上がったと聞き、京都の最終日、14時半から17時半のワークショップに足を運んだ。

 主なプログラムは月曜日の夜から始まっていることもあり、木曜日の午後まで残っている参加者はどれだけいるのかと思いきや、セッションの登壇者やカタパルトやアワードの入賞者がずらり。最終日は会場運営が少なくなることもあり、運営スタッフも数多く参加している。

 基本的に事前登録で、プログラムの案内の際にはこのようにテーマが伝えられている。

「参加者の皆さんには、実際に自社でもファンへの傾聴を行ってみていただけるように「ICCファンミーティング(模擬)」に、いちICCファンとして参加いただきます。

ICCを愛してやまない方は、ぜひご参加ください。最終日ですし、存分にICC愛を皆で語り合いましょう」

 つまり会場はICCのファンばかりで満たされている設定ということで、ワークショップは始まった。最初の1時間は津田さんからの座学で、残る2時間は模擬ファンミーティングの実践編となる。

「顧客コミュニティを強化したい」

ワークショップの冒頭では、開催前の参加者アンケートで集められた、どんなことを期待して参加するのかが紹介された。

 いずれも共感できるような疑問や課題ではないだろうか? 結論から先に言うと、このワークショップを通じて、その考え方のヒントはかなり得られる。ICCというおそらく他には被らない業態を介してでも、自社であればどうするかというのを、後半のワークショップで考え続けた参加者も多かったと推察する。

ファンベース実践7つのルール

 前半の座学は、津田さんが所属するファンベースカンパニーの事業紹介も挟みながら、以下のファンベースを実践するための7つのルールの解説が行われた。

 これは、いずれも至極当然で普通のことだと思うかもしれないが、言葉をはじめに定義し、ファンの行動を観察しながら、企業側からのプロダクトやブランドへの思い入れと切り離していかにフラットに考えられるかがポイント。そしてそれが非常に難しい。このワークショップでは全てわかりやすく解説してもらえる。

 たとえばルールの1番上にある「顧客の感情を見にいく」について、そもそも企業のファンとはどんな人か? たくさん買ってくれる人なのか、おすすめしてくれる人なのか、株主なのか。答えを明かすと、これらはすべて「行動」である一方、ファンになるというのは「感情」だそうである。

 ファンとは「企業が大切にしている価値を支持してくれる人」と津田さんは定義づけている。こんなふうに、わかっていると思いこんでいることを丁寧に言語化し、さまざまな例を紹介しながらしっかりと腹落ちさせるこの1時間の座学だけでも学びは大きい。

 ファンの愛を育む「3つの価値」や、情報過多で逆に「情報が伝わらない時代」となった今、最強の伝達手段は、価値観の似ている“類友”、つまりファンということだ。

 これ以上はここでは説明しないが、興味があれば、次回のワークショップにぜひ参加してみてほしい。企業やブランドが誠実にコミュニケーションを積み重ねることがいかに大切かというのが、ファン心理や行動の研究を続けてきた津田さんだからこその説得力で語られ、期待以上の学びがあること間違いなしである。

 スライドだけでも学びの宝庫で、集まったファンたちは写真を撮り続けている。傾聴するときのコツ、なぜ自己紹介は熱くあるべきか、七色の相槌とは? それぞれには理由がある。普通のヒアリングより踏み込んだ、ファンミーティングで語られる言葉、ファンの心情には、企業にとっての成長の種や次の一手を考えるエッセンスが詰まっている。

実践ワークショップスタート!

 後半はいよいよ実践ワークショップ。ICCファンということで集まった設定の参加者たちだが、ここからは分刻みでワークショップをこなしていく。7人が座るテーブルが6つ並び、一斉にワークに取り組む様子は壮観だ。

後半冒頭はICC小林が挨拶をしてから、Wモデレーターを務める荒木 珠里亜さん、安藤 輝人さんが

お手本として”熱い自己紹介”をし、各テーブルでの自己紹介タイム。「ニックネーム」「ICCとの出会い」「最近はまっていること」を1人2分で語る。

スタッフも登壇者も全員対等とはいえ、ここで初めて同じテーブルに座ったばかりなので緊張が見えるが、そこは前半で学んだ傾聴の方法を意識しながら、皆真剣に自己紹介に耳を傾けていた。

それが終わるとグループトーク①として「ICCの好きなところ・愛しているところ」を語る。まずは個人ワークで付せんに書き出し、次の20分のグループワークで話し合って3つ程度に集約し、テーブルの代表者が発表する。

最初は座って語っていたものの、そのうちああでもないこうでもないと、立ち上がって付せんを分別し始めるテーブルも。ICCサミット3日目ともなると、さまざまに思うところがあるようで、さまざまな意見が飛び交っていた。

“ファン”が語るICCの好きなところ

こうしてファン同士で語り合うことは、自分の感情、好きだと思っていることを再確認し、さらに好きになるという体験となる。各テーブルの代表者からの「ICCの好きなところ3つ」の発表では、テーブルの総意だけでなく、参加した3日間に自分が感じたことも合わせて熱く語られていた。

ジョイゾー脇野寛洋さん「迎えてくれるスタッフの精神、開催期間中の学びと交流・応援、仲間との出会い」
ヤマシタの山下和洋さん「大人の全力、出会いの多様性、成長の変化点」
Co-Creations茂木さん「MASA、本気で関わるほど得られるものがある大きな炎、スタッフが後半に疲れている(=本気を表している)ところ」
運営スタッフ永田 翔さん「高い質と熱量の循環、出会い、共創」
Makuake松岡 宏治さん「世の中が変わるような熱量、スタッフ、出会い」
スタッフ北原 義也さん「多くの実践的な学び、挑戦を応援しあえる空気、日本の未来を感じられるところ」

前半の座学では、津田さんはユーザーへのグループインタビューよりも、ファンミーティングをおすすめし、「中の人」も参加することで熱量が伝播すると言っていた。

そのメリットは、参加者たちが「中の人」である運営スタッフからコアな話を聞き出して事情を知ることで情報量が増え、より親近感が増す。ここでの発表内容がより濃いものになる。一方スタッフは自分たちの活動を語ってファンからの愛を感じることで自己肯定ができ、モチベーションがアップする。まさに双方”沼落ち”の過程をたどっているようだ。

“ファン”が考えるICCをもっと好きになるには?

続くグループトーク②は「ICCをもっと好きになるには?」というテーマ。①と同じ流れで進むが、ここではICCの「もっと〜〜を知りたい」「ICCで〜〜な体験をしたい」「〜〜なら友人におすすめしやすい」「〜〜なら5年後・10年後も参加していると思う」などと発想を広げていく。

しっかり議論したあとは、各テーブルから発表となった。

稲とアガベ岡住 修兵さん「こんな良い取り組み、もっと多くの人に知られるべきです。子どもたちに伝えたり、本にして知ってもらうとか、地域や大企業の人にも取り組みを知ってもらいたい。

もっと多様な交流が生まれる場を作ればいいのではないか。初参加の人は緊張してなかなか交流できないので、それを解決するプログラムや、自分の事業と関係のない分野で積極的に交流が生まれる仕組みを作る。

運営スタッフのカタパルトが見たい。スタッフと参加者の交流の場があれば」

スタッフ森 俊貴さん「応援の可視化。カタパルトを見て応援したいと思ったとき、その形がなかなかない。その場でボタンを押して応援の数が見えるようにするとか、上がった応援の熱量を何らかの形で可視化する。

会場のWi-Fiやリモートワークの場などの環境面や、もっとDXできることがある。

出会いを偶然に任せず、合いそうな人をマッチングするノルマを設けるなどして、交流を活発化させる。過去の登壇者も含め、ネットワーク作りを強化する」

グランサーズ筧 智家至さん「3日間でなくても、1日の参加があったら、参加者はさらに増えるのではないか。もっと交流ができる仕組みや、毎回新しい取り組みを作っていくことで、5年後10年後も参加したくなるのではないか」

AgeWellJapan赤木 円香さん「熱量をキープする意味で、いい意味で排他的であること。本気で変わりたい人、経営を考える人が本気で集まる場所として、交通の問題はありますが、北海道や沖縄など、遠いところでの開催もいいんじゃないかと思います。

社長改造で1社を深掘りするようなコンテンツや、Co−Creation Nightのあとで、プライベートなことも含め女性起業家が共通の悩みを語れるような場を作ったり。

スタートアップにとっては、大きく変われる場だと思っていて、ICCがターニングポイントになり、こんなに変わったというのも事例になると思います。

スタートアップがICCに参加したあとの成長を追うようなコンテンツ。ICCサミットのプレイベントで経営合宿についてのセッションがあり、経営に悩んでいたので実施してみたらワンチームになった。今回ICCにみんなで1週間来ているのですが、ICCを軸に経営合宿を今回もしています」

初テーマに参加者興味津々! ICC KYOTO 2023のプレイベント「経営合宿 虎の巻 ー 課題別 経営合宿アジェンダ大公開」を開催しました

Gazelle Capital石橋 孝太郎さん「3つの価値に分けて考えました。

まず、機能的な価値として、美食体験やワークショップなどの予約体験のDXができれば、より参加しやすくなるかなと思います。あとはスタッフの昼と夜のお弁当がまったく同じと聞いて(笑)、スタッフとしての機能的価値として上がってもいいかなと思います。

情緒的価値としては、成長実感をいかに得ていくか。ICCはともに産業を創ることをテーマとして、継続的に開催して交流しているところで、実際にどのような事例、変化が生まれていくのかを発信することで、自分たちが関わっていることの情緒的価値が生まれるのではないか。

未来的価値としては、この場にいる皆さんがいかにレッドパス(登壇者)を目指して登壇し、還元していくかということです。レッドを目指すのがすべてではありませんが、今回のサグリの坪井さんのようにスタッフから登壇して優勝する、関わり方が変わり、還流していくのがいいのではないか」

eboard中村 孝一さん「1つ目がネットワークの設計。ここで会った人にFacebook申請をすると、共通の知人が70人もいたことがわかったりして、そういうネットワークが毎回蓄積していくなら、デジタルなどで設計されていればいいのではと思います。

2つ目は新陳代謝。初回参加のハードルが高いので、つながりを強くしていくと同時に、人やテーマの新陳代謝が同時に起きることで、いいコミュニティになると思います。

3つ目は受容。全員がそんなに強いわけではない。あとは初めて参加して、ジェンダーの偏りがすごくあるなと気になりました。ジェンダーに限らず、グローバルや、もっとさまざまな人、ダイバーシティが上がっていくことがあればいいなと思います」

課題や同じ志を持った人同士が助け合える「居場所」

 参加者全員で集合写真を撮った後は、津田さんからの本日のワークショップの総括となった。

スケッチブックに「自分にとってのICC」を書いて記念撮影

「みなさんお疲れ様でした! 模擬でファンミーティングをやってみましたが、こんなふうにファン同士が集ったら盛り上がるんだな、できるなと思っていただければと思います。ファンをどう選ぶか、どういう空気を作るかが非常に大事だと思います。

傾聴について話しましたが、ファンの言うことを全部聞けというわけではないです。あくまで皆さんの考えや想いに共感するのがファンなので、全てファンに迎合する必要はない。

いろいろなアイデアが出ましたが、皆さんのファンなので、皆さんの心が動いたものがあればやればいい。ICCファンの意見がたくさん出て、小林さんも少しは気に留めてくれるかと思いますが、ほとんどやってくれないと思います。それがICCだし、僕はそれがいいと思います。

最後にコミュニティの話をします。ルールの7つ目、『継続するコミュニティを共創する』。今回、コミュニティに関心のある参加者が多かったと思いますが、コミュニティとは、課題や同じ志を持った人同士が助け合えたり、励ましあえる「居場所」です。

コミュニティを作ることよりも、継続することに意義がある。それが大事です。そして、作るものでなくて、できるもの。恣意的に作るよりもだんだんとできるものなんだと思います。

ただし、今は熱量の高いファンが、「居場所」を求めている時代でもあります。

熱量の高いファンは、皆さんの作っている商品やサービスに、課題解決されてすごく好きになって、それが感謝に変わっています。人間はメリットをいただくと、恩返しや協力をしたいものなんです。

アルフレッド・アドラーの心理学でも、『幸福の3つの条件』の3つ目に、『他者への貢献』があります。みんな、何かに貢献したいと思っている。

企業と顧客の枠を越えて、ファンが何かしら貢献ができて、助け合って励まし合っていけるような『応援団』のようなコミュニティを作っていくのが最近は増えているし、そういうことができる時代になっています。企業ができることは、『居場所』や人が集うきっかけを作ること。そこから新しい価値が生まれていきます。

中と外の好循環を作りながら、まさにCo-Creation、共創をしていくことでいろんな価値が生まれていきます。

まさに、ICCですね。良いコミュニティを作りたかったらICCを勉強してください。ICCスタンダードもそうですが、素晴らしい理念が真ん中にあり、スタッフの方々はファンやボランティアという、こんなコミュニティは他にないです。

いいコミュニティを作りたかったら、ICCがやっていることを全部トレースしてみてください。ここにめちゃくちゃヒントがあります。ここは挑戦する皆さんの居場所があり、継続に意義があったり、理念があったりといろいろなポイントを押さえていると思います」

 最後に津田さんはコミュニティ継続のコツとして、「変に盛り上げすぎないこと」とその理由を伝え、3時間のワークショップを締めた。ここでお伝えしている内容は5分の1程度だが、最初から最後まで、ぎっしりと内容がつめられたワークショップで、ICCとしては棚ボタなことに、“ファン”の熱量を高めた形で終えていただいたのではないかと思う。

 ワークショップの手法自体は、特別新しいものではないと津田さんは説明していたが、これは捉え方の変化で見えてくる新たな発見であった。ユーザーのグループインタビューが仮説を検証するのに対し、ファンミーティングは、話しやすい雰囲気で好きなものについて語るので、盛り上がらないわけがない。

「中の人」はファンの生態、考え、どこをいいと思っているのかや要望を知れるうえに、間接的に自分たちのファンと会える幸福な経験ともなり、具体的なファン像をつかむことができる。要望に全部お応えする必要も、新事業の種を拾おうと血眼にならなくたってよく、ぶれずに自分たちの道を行けばいい。

 見学をしながら以前に参加した、よなよなエールの超宴のハッピーな雰囲気を思い出したりもした。たしかに彼らがファンにすり寄ったり、媚びるようなことをし始めたら嫌だ。彼らには、彼ららしく好きなようにやっていてほしい。ファンとしては愛や感謝を伝えつつ、彼らの作るものを「こう来たか」と受け止めて楽しみたい。

”よなよなエールの超宴”でブランディングの真髄を体験!井手さん、運営スタッフみんなで乾杯してきました

 コアファンのLTV向上が、新規開拓よりも効率的かつ効果的ということは、ICCの今までの数々のセッションでも語られてきた通りで、津田さんは今の時代のブランドやサービスとファンの関係、と念を押すことを忘れなかったが、多少の移り変わりはあっても、顧客の理解に加えて自分たちの強みを改めて理解できる鉄板ワークショップではないかと思う。

(終)

※「長く支持され、愛されるための「ファンベース」実践ワークショップ」は、事前登録制で、ICC FUKUOKA 2024最終日の2月22日に開催を予定しています。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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