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【最終回】イノベーションの生み出し方に再現性はあるか?【SP-MN2 #9】

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これまでに配信した、経営に関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 から、「新しい成長分野を創る経営とは何か?」を9回に再編集してお届けします。9回シリーズ(その9)は、イノベーションの起こし方に再現性を持てるか、といった問いを皮切りにイノベーションに関する各登壇者の意識を議論しました。是非御覧ください。

▶本セッションでモデレーターとしてご登壇頂いた岡島悦子さんの著作『40歳が社長になる日』(幻冬舎)が出版されました。ぜひ御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。参加者の募集を開始しました。


登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 5A
「新しい成長分野を創る経営とは何か」
 
(スピーカー)
川鍋 一朗
日本交通株式会社
代表取締役会長
 
川邊 健太郎
ヤフー株式会社
副社長執行役員 最高執行責任者
 
田中 良和
グリー株式会社
代表取締役会長兼社長
 
(モデレーター)
岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

「新しい成長分野を創る経営とは何か?」配信済み記事一覧

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【本編】

岡島 中竹さん、いかがですか?

質問者4(中竹氏) 今の話、非常に興味深いですね。

イノベーションをやっている人たちというのは、自分がイノベーションをやっていると思っているのか、そういう会社はイノベーションやるぞ!と言っているのか。

(クックパッドの創業者の)佐野さんを含めて色々な方が、「この世の中では、20年なんて当たり前なんだ」と言って、「これはイノベーションでも何でもなく、人間の原理なんだ」って。

イノベーションの再現性をどう創り上げていくか

質問者4(中竹氏) 要するに、私がすごく興味があるのは、イノベーションの再現性を、組織のリーダーがどんな風に考えて創り上げていくのかなということですね。

田中さんも川邊さんも、社内で色々なイノベーションを起こしてこられた訳ですけれど、本人もそうですけど、やらせている側のひらめきなのか、組み合わせの集合知なのか、そもそもこんなの当たり前だよねと思っているのか、不安の中でやったら何だか上手くいったよね、なのか。

そのイノベーションの再現性を、どういう風に見極めていらっしゃるのかをちょっとお聞きしてみたいですね。

川邊さんが仰った組み合わせのところなのか、逆に田中さんは違う意見を持っておられるのかというのをちょっとお聞きしたいなと思います。

川邊 イノベーションを早く成功させて、Facebookに自慢したいなくらいにしか思っていないんですけれども。(笑)

(会場笑)

要するに自己組織化するということを言っている本がありましたけれど、この数年は、組み合わせの妙で新しいものが生まれてくるといいなと思いながら挑戦してきました。

昔は、自分の感性とひらめきでやっていたんですけれど、やはりYahoo! JAPANやソフトバンクグループのように幅が広がってしまって、何でもやっているみたいな状態になってしまうと、自分の感性とひらめきだけでは収束がみられません。

ですから今は、「おもろい奴」と「おもろい奴」をぶつけたらどうなるかとか、すごく組織立ったチームの中に1人だけ変な奴入れるとどうなるかとかというように、チームのマネジメントの中でイノベーションが生まれてくることを期待しながらやっているところです。

だから、そういう「チーミング」で再現性をもたせたいなと思っていますね。

岡島 しかも、仲良しクラブ的ではなくて、切磋琢磨するような人たちを集めて、という感じですよね。

川邊 もちろんです。

所謂ダイバーシティですけれど、なるべく異なる知識や違うバックグラウンドを持った人たちのチーム、それも、そんなに大勢のチームだと拡散するだけですから、5人くらいのチームで何が起きるのかなと思いながらやっていますね。

当事者たちが夢中になってやっているのか

岡島 今そのリンダ・ヒル(Linda A. Hill)の提唱するコレクティブ・ジーニアス(Collective Genius)というのは、まさにそういう世界のことですね。

▶参考記事 カリスマのひらめきからイノベーション組織は生まれない(日経ビジネス)

異なる種類の人たちを集めて、がりがりやるみたいな。

川邊 けれども、恐らく率先垂範より間違いなく時間がかかると思いますよ。

質問者4 そういう時に、「イノベーションをやるぞ!」って具体的に言っているんですか?

川邊 そう、大事なことを言うのを忘れましたけれど、これは会社としてやっている訳ではなくて、私個人がベンチマークにしているのは、夢中になっているかどうかだけですね。

当事者達が夢中になってやっているのか、それとも四半期の目標のためにやっているのかを見極めて、夢中になってやっているのであれば、どんどん集中してやれ、と。

目標のためにやっているなと感じたら、組を解散してまた違うようにします。

夢中になってやっているかどうかというのは、要するにフロー状態に入っているかどうかで判断していますね、個人的には。

田中 ご質問を頂いている、イノベーションという言葉の定義にもよるなと思っています。

私が求めている意味でのイノベーションというのは、はっきり言って、Googleの検索エンジン一発作ったら、Facebookのアイデア一発作ったら、LINE一発作ったら、こうなる(うなぎ登り)訳ですよ。

そういうイノベーションを1個起こせれば、はっきり言って、Googleみたいなものを5個生み出さなくても、1個でも十分ですから。

という意味においては、イノベーションの破壊力たるや半端ない訳ですよね。

真のイノベーションを1回起こせるかが最大のテーマ

田中 これが1個あれば、隣接したレバレッジ領域をやっていくだけで、ある意味生きている限りにおいては十分ビジネスできてお釣りがくるぐらいのものが、真のイノベーションかなと思っていて、こういうものをどうやって作れるのかなということが最大のテーマです。

iPadだとかiPhoneを2、3回作れるスティーブ・ジョブズは超人ですが、我々一般人はそれを1回でもできれば人生の奇跡みたいなものかなと捉えています。

1回の奇跡をいかに掴むのかということが、最大のテーマかなと思っています。

そこで常に思っていることですが、自分がどういう考え方をしているのかということを、やはり周りの人たちに理解して欲しいなと思っています。

最近も新卒の人たちとチームを組んで、新しいサービスを作ろうという話をしていたのですが、その中の一人がポロッと漏らした言葉に、「私の言っていることを分かってくれているな」と感じたことがありました。

「田中さんは、バカバカしいほど、同じようなシンプルなことを突き詰めてやっているだけなんですね」と。

「周りの意見はこう違っていて…」とか「こういう話を聞いていて…」と言う人には、そういう周りの雑音に惑わされずに真理だと思ったことを追求するのみだ、ということを率直に言っている訳です。

私からすると、それがイノベーションにたどり着く考え方だと思っているので、実践を通して体験して欲しいと思っています。

そのようにして再現性を高めようと思っていますね。

川邊 私も、イノベーションをやろうぜみたいなことは言っていなくて、とにかく夢中になれることや、自分が楽しいと思えることをやろうということですね。

岡島 それは共通していますよね。

質問者4(中竹氏) 非常に腹落ちしました。ありがとうございます。

岡島 ありがとうございます。

時間になってきましたので、一言ずつコメントを頂いて、最後にしていきたいなと思います。

では川鍋さんから。

歴史の長い業界・新しい業界を行き来できる人材でつなぐ

川鍋 タクシーのような、既存の歴史の長い業界でイノベーションを起こしていくことには、相当な文化的軋轢がありますね。

ある意味分かりやすいのは、リソースを全て外からとってくるしかないということですね。

あとは接続人材を何人か、必死に両側からぎゅうぎゅう…

川邊 接続人材って何ですか?

川鍋 両側を行き来できる人材ですね。

そういう人材はすごく少ないんですけれど、そういう人材に蝶番になってもらうんです。

蝶番というのは非常にヘビーですが、その何人かで何とか繋ぎながら、新しい人たちをまとめていくしかないなと思っていますね。

私の場合は、タクシー業界でイノベーションを起こしたい人、可能性を信じる人を一生懸命集めているところです。

もともとイノベーションがない業界なので、皆、色々な可能性があることに大きな喜びを感じています。

そういう意味では、どちらかというと「イノベーションをやるぞ!」というタイプなんですけれどね。

来年、再来年、3年後にイノベーション起きているかどうかで評価を頂ければと思います。

ありがとうございました。

任せてみてイノベーションを起こすに挑戦する

川邊 この対談を通して、今やろうとしているマネジメントスタイルを再確認できてよかったです。

ただ一方で、ちょっとリスキーなことをやっているのかなという気もしました。

でも、そこはサラリーマン役員の身軽さでですね、田中さんみたいに失敗したら自分の資産が全部なくなってしまうみたいなことではない気軽さで、ぶれずに、人を押してイノベーションを起こす、チームを押してイノベーションを起こす、任せてみてイノベーションを起こすということに、もう数年はチャレンジしていきたいなと思っています。

今日はありがとうございました。

業界を二分して戦う時代がもっと加速する

田中 これから日本のネット業界では競合も増え、業界を二分した戦いになっていきます。

我々もどちらか一方につきますので、狭い業界でバトったらぜひご連絡下さい。(笑)

面白おかしく盛り上げるのは得意なので、その業界でイノベーションを起こしたいなという風に思っています。

我々も、ここにいらっしゃる方も、大きな会社も、業界を二分して戦っていくような時代がもっともっと加速していくのかなと思っているので、ここにいらっしゃるような方に負けないように頑張りたいなと思っています。

ありがとうございました。

岡島 ありがとうございます。

色々な角度からイノベーションについて議論してきました。

夢中になれることをリーダーが引っ張っていくことであったり、チームを作ってメンバーにやってもらう環境を整えていくみたいなことであったり、あるいは既得権益とどう戦っていくかといった政治の話、世論をどのように作っていくかというようなことも含めて、非常に多様な視点から本音で語って頂き、大変有意義な時間でした。

パネリストのお三方に、大きな拍手をお送り下さい。

ありがとうございました。

(会場拍手)

▶本セッションでモデレーターとしてご登壇頂いた岡島悦子さんの著作『40歳が社長になる日』(幻冬舎)が出版されました。ぜひ御覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子/藤田 温乃

【編集部コメント】

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