これまでに配信した、生き方に関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス STARTUP 2016 から、特別インタビュー「20代にチャレンジすることで人生は大きく変わる!」を3回に再編集してお届けします。3回シリーズその(3)は、ソラコム玉川さんとFiNC溝口さんに、起業を志す学生や若手社会人に向けた、「大事にしてほしいこと」のメッセージを頂きました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。参加者の募集を開始しました。
登壇者情報
2016年2月17日開催
ICCカンファレンス STARTUP 2016
特別インタビュー「人生を変えた出来事」
(語り手)
玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
溝口 勇児
株式会社FiNC
代表取締役社長CEO
(聞き手)
渡辺 裕介
その1はこちら:ソラコム玉川氏の人生を変えた出来事 – 海外留学で感じた「井の中の蛙」【SP-LF2 #1】
その2はこちら:FiNC溝口氏の人生を変えた出来事 – 20代前半に実施したスポーツジムのリストラ【SP-LF2 #2】
司会 学生の中でも、インターンをしている学生が多いと思うのですが、その中で、目指していきたい方向性が見つかっていない学生に対して成長のために、どのような言葉をかけてあげて、どのように可能性を伸ばしていくのでしょうか?
一つ一つの壁に果敢に挑んでほしい
玉川 僕自身を振り返ってみて、学生のときに、僕は何も分かっていなかったと思って。すごく小さな世界に住んでいたし、まだ何も積み上げていなくて実力もなかった。
僕の場合、そうだったんですね。それでも果敢に挑んで、ひとつひとつ前の壁というのと戦ってきたから、そういう風になってきたと思うんですよね。うちの会社にインターンで、いま学生でインターンしてくれている子がいるんですけど、非常に優秀ですごく活躍していますよ。
僕らの場合は、テクノロジーで世界をより良い場所に変えよう、という会社なので、ソフトウェア・エンジニアリングの力が非常に大事だと思っていてます。今の日本ってエンジニアがリスペクトされる環境は、すごく少ないんですよね。なので、学生の中でエンジニアになりたい、ソフトウェア・エンジニアになりたいという人がいれば、ぜひソラコムで育てたいです。
色々苦労をして高いレベルのエンジニアになっている人がたくさんいるので、その中で高みのエンジニアと働くことが大切だと考えています。そういうところで、ロールモデルを提供するのは、ひとつのやり方だと思っていて、それがソラコムでは出来るかな、と思いますね。
(ICCカンファレンス KYOTO 2016 登壇時の写真)
あと、結構大きな企業だと、定量的にやる、というか1年後にこうなりましょう、目標を立ててっていうのがすごくやりやすい。
既存事業だとそれが出来ると思うんですけど、僕らみたいなスタートアップは新しい市場を生み出すとか、新しいテクノロジーを創り出すという会社なので、どちらかというとプロジェクト自体が探索型なんですよね。何かを創るっていう。
定量的なことはできなくて、どちらかというと、もっと定性的な目標なんですね。
「リーダーシップっていうのはこういうことだよね」みたいな定義があるんです。「お客様のことを中心に考える」とか、「動きが速い」とか、「完璧を求めるよりも出来るだけ速くやる」とか、そういう新しいことを創る上でのリーダーシップというのは、色々な成功をしているスタートアップ企業を見たときに共通するものがあると思っています。
そういったところをメンバーに伝えることはやっていますし、今後もやっていきたいと思っています。
信頼を築き上げることが何より重要
溝口 僕は「信頼」がとても重要だなと思うんですよね。例えば、玉川さんは起業してすぐに、大きなお金(約7億円)を集めて、とても優秀な人材で構成されている会社を創られている。僕は、今の玉川さんの話の中で、なぜ玉川さんにそれが出来たのかというのをすごく理解したんですね。
まず、今まで積み上げてきた実績、経験は大きいですよね。信頼があるからこそ最初からとても大きな資金に恵まれた。
僕の場合だと、27歳のときに起業をしていますけど、玉川さんのような実績、経歴、経験をしてしていない訳ですよね。
小さなフィットネス業界、市場で4千億円くらい、そこでは執筆、連載、コンサルティング、講演などをやっていましたけど、そんなのは、特に誰にも知られていなかったわけです。
ですから、最初から、何億円も何十億円も集まったわけではないんです。ひとつずつ実績を積む過程で、仲間や支援者が増えてお金が増えていった。実際大きな会社との提携するなど信頼を積み重ねてきたんですよね。
最近は起業願望のある若者がよくFiNCの門戸を叩きにきてくれますが、「僕は1年後に起業します」とか、「2年後に起業します」とか、「それまでこの会社で頑張りたい、色々教えて欲しい」ということをよく言われますけど、そんな都合のいい話はあんまりないんですよね。
やっぱりやる以上は、身を置いたところで結果を出す、実績を残すということがとても重要だと思っているんですね。
そんな最初から、あくまでステップだ、と言い張る人間、それは個人的には面白いなと思いますが、いざ経営者として冷静に考えるときには、そういう人間に大きな役割を与えよう、というのは思いづらいんですよね。いつ投げ出されるかも分からないですし、やりきるかどうかも分からない。そうすると、自ずと代替可能な仕事しか任せなくなる。
僕は、前の会社では、小さな会社の経営をさせてもらっていました。当時の自分のことを言えば、「投げ出さない」、「逃げ出さない」、「必ずやり切る」、「絶対裏切らない」といった印象は持ってくれていたと思います。
手前味噌ですが、だから創業者から信頼されていたのだと思います。そういう信頼をされると、どんどん大きな役割とかが回ってくるようになる。そうすると、多くの役割をこなしていく過程で、より大きな経験ができて、実績がそこに付加されていくんですよね。
いかに信頼されるかということを考えて仕事をすること、そして日々を生きることが大切だと思います。
玉川 信頼関係というのは、もちろんコミュニケーションというか、そういうのはもちろん大事なんですけれども、仕事の世界だと、仕事の結果で信頼を得るというのは、本当にその通りだと思いますね。
司会 信頼をひとつずつ得ていくことで、次の信頼につながっていく。そのためにも目の前のことを、とにかく一生懸命やる。
今すぐ頭を下げていくらのお金を集められるか?
玉川 最近「グリッド」と表現されていますけれども、学生に限らず、優秀な人は、なんとかして成し遂げる能力がありますよね。「僕はスキルがないから出来ません」とか、そういうことではなくて、今与えられたものを、あらゆる手段、あらゆるリソースを使って、人に助けてもらってもいいから、なんとしてでもやり遂げるという強さというのは、経営者としては、すごく有り難いし、任せられます。非常に好ましいなと思いますね。
溝口 やっぱり起業したいという若者がよく来るんですよね。「修行をさせてほしい」とか、「話を聞かせてほしい」とか来るんですけど、そのときによく質問するのが、「今すぐ自分の友だちやお父さんとかお母さんとかに頭を下げて、トータルいくら位のお金を集めてことができるか?」です。
司会 生々しい質問ですね(笑)
溝口 結局、その人が今まで構築してきた信頼というのは定量で置き換えられちゃう訳ですよ。
2011年3月11日に東日本大震災が起きましたけど、僕はいてもたってもいられなくなって、3月の終わり頃でしょうか、まだ震災の爪痕が大きな被災地に仲間と一緒にいったんです。
まだそれこそ道路には自衛隊とか、パーキングエリアにもガスマスクをした人しかいないような、そんな時に行ったんです。東京に戻ってからも何かやれることないか、と思って募金活動をしたんですよね。僕はトータルで300万円くらい集めたんですよ。だけど、その1週間後に、ソフトバンクの孫正義さんが100億円とか、楽天の三木谷さんとかユニクロの柳井さんが10億円とか募金していて。
はじめてそうした一流の経営者と自分の価値の差を定量で突きつけられた気がしました。孫さんに比べたら自分が集めた金額は1/3333だったわけですからね。もちろん金額の多寡ではないというのは頭ではわかっていますが、なんだかとても悔しくて。
孫さんは仮にソフトバンクがなくなっても、相当な資金も集まるし、相当な仲間を集めてリトライ出来ますよね。そういう意味で、信頼というのは事業を成功させる、自分の人生を豊かにする意味では、とても重要なキーワードだと思っています。そこを軽視せずに、ちゃんと向き合っていくことをされたらいいんじゃないかな、と思いますね。
(終)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり
【編集部コメント】
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