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ICC KYOTO 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇した、ノーベル 長谷 亜希さんのプレゼンテーション動画【家庭に合った支援の提案で、社会全体で子育てをする世の中を目指す「ノーベル」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。
▶【速報】アフォーダブルハウジング市場をつくり、母子家庭の暮らしを支える「LivEQuality大家さん」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2024)
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【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ
長谷 亜希
認定NPO法人ノーベル
代表理事
公式HP | 公式X
新卒でJTBへ、そしてその後、リクルートへ転職。子育てを理由に退職する同僚から、子育てと仕事の両立の難しさを知り、ノーベルを立ち上げる。10年2月から関西初となる共済型・地域密着型病児保育事業をスタート。ひとり親向け病児保育支援や行政との協働も積極的に取り組んでいる。また、子育て家庭の頼みづらさ、回りづらさを解消するため23年新事業「子育て家族のまるごとサポート」をリリース。 子育てを「家族だけで」から「社会全体で」を目指している。2022年、マサチューセッツ工科大学ソーシャルインパクトアワード ファイナリスト選出。
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長谷 亜希さん 皆さん、こんにちは、認定NPO法人ノーベル 代表理事 長谷 亜希と申します。
母親の負担を減らすため訪問型病児保育を立ち上げ
私が、ノーベルを立ち上げるきっかけとなったのは、2008年の出来事でした。
子育てを理由に、先輩や友人が会社を次々と辞めていくことに疑問を持ち、話を聞いていると、「子どもが熱を出して欠勤が多くなっているため会社にいづらい」ということでした。
私は、「なぜ、母親だけが負担に感じなければいけないのだろうか」と、勝手な使命感を持ち、ノーベルを立ち上げました。
2010年、私たちは、大阪で訪問型病児保育をスタートしました。
共済型の月会費制のモデルで、当日の朝8時までにご依頼いただければ、必ず誰かがお伺いするという、安心を提供しています。
無事故で安心・安全の病児保育を、現在まで約2.5万件、提供してきました。
また、私たちは、誰もがいつでも利用したい時に利用できる、セーフティネットを作っていきたいという思いで、提供エリアを大阪市を中心として16自治体に拡大したり、自治体と提携したりしています。
提供エリアを拡大し、自治体との連携も
そして、法人・組合と提携して、従業員の負担を、より軽減しています。
特に力を入れていたのが、寄付金を活用した、ひとり親家庭への安価な病児保育の提供や、障がいを持つお子さんに対するサポートです。
訪問型病児保育サービスの開始から14年間が経ち、これまでを振り返ると、社会は確実に変化しています。
国もあらゆる法整備を行い、企業も多様な働き方改革などに取り組み、個人も様々な社会ムーブメントを起こしてきました。
国も企業も個人も、本当に多種多様な取り組みを行ってきたのです。
他国に比べ、子どもを産み育てにくい日本
ただ、一方で、「日本は、子どもを産み育てやすい国か?」という問いに対して、「そうは思わない」という回答が、6割を超えています。
▶子育てに関する当事者の意識・声 (意識調査等から)(内閣官房)
理由としては、経済的な負担や時間がないといったこと、子育てによる、その心身の負担など、これまで様々な取り組みを行っているにもかかわらず、まだ、このような現状です。
そのため、私たちは、子育て家庭の約1,300世帯に対して調査を実施しました。
その調査によって得られた結果のひとつが、「いくら制度やサービスを充実させても使えない」ということでした。
経済的負担や精神的・心理的なハードルだけではなく、「いつ、誰に、何を、どの程度してもらうか、タスクを分解して考えることが面倒で難しい」という発見を、私たちは得ました。
頼りたくても利用できない、そのような家庭が多かったのです。
子育ては、1日が本当にあっという間に過ぎます。
子どもは親が思うようには動いてくれないですし、予測不能な事態が本当に数多く起きます。
そもそも、子育てとはどうすればよいのか、習ったことがない中で、検索して調べたり相談したりすることが、とても難しいのです。
調べたとしても検索して終わる、夫婦で話し合うと喧嘩で終わる、そういった経験をされている方も多いのではないでしょうか。
「子育て家族のまるごとサポート」サービスとは
そのため、私たちは、これらの問題を解決するために、2023年、「子育て家族のまるごとサポート」というサービスを、モニター実施でリリースしました。
簡単に言いますと、たとえば、介護制度はケアマネージャーが介護計画を立てて必要な支援をつなぐ、というものです。
そのような介護制度を参考にして、私たちは、1家庭あたり3~4名のチームを組みサポートします。
子育て家庭の困りごとについて、色々とお話を伺い、計画を立て、必要な支援につなげたり、また、私たち自身も、実際に掃除や買い物などの家事や育児のサポートをしたりしています。
こちらを、2024年1月から実験的にモニター実施でスタートし、2025年の正式リリースに向けて準備をしています。
こういった事業は、属人的になる傾向が強いのですが、その点を解決するための対策として、私たちは、行動経済学のパイオニアである先生方と連携して取り組むことになりました。
家庭ごとの悩みや考え方を知り、合理的な解決策を提案
そもそも、人間の意思や選択というのは、合理的ではありません。
そういった前提に立ち、また、人は、バイアス、思い込みや偏見があり、さらには、子育て世帯は時間がないため、知らない、わからないことが多くなってしまい、ゆえに、ほかの家庭よりも、合理的に考えて頼ることが非常に難しいのです。
しかし、もし、その子育て家庭のバイアスを知って、それぞれの特徴に合わせて、コミュニケーションを取ったり、解決策を提示したりすることができれば、子育て世帯は、何かしら頼ることができて、スムーズな日常生活を送ることができる可能性があるのではないかと私たちは感じました。
家庭の属性データをもとにした支援提案ツールを開発
そして、現在、私たちは、先生方とともに、子育て家庭の約1,300人世帯にアンケートを実施し、データを解析しています。
その解析によって、11パターンの属性に分けられました。
また、その属性データをもとに、50個ほどの質問に回答すると、家庭の特徴や計画がわかり、その家庭に合わせた支援方法が提案されるというツールを作っています。
そのため、属人的にならずに、各家庭の特徴に合わせた支援ができるようになっており、現在、実際に現場でも活かされています。
こちらのモニター実施を通して、現在、精度を高めている最中です。
私たちは、2024年1月からスタートして、モニター家庭の実に9割が、「病児保育にほぼ頼ったことがない」「制度を活用することができない」という状況から、「初めて頼ろうと思いました」「夫婦で冷静に話し合いました」「余白ができました」といったお声を頂いております。
活動をしている中で、第三者の存在は非常に大切だということを実感しています。
家庭だけでなく社会全体で子育てをする世の中へ
最後にお伝えさせていただきたいのですが、私たちは、いつから日本は子育てを「家族だけで」するようになったのでしょうか。
手厚い福祉が必要となる前に、子育て家庭の日常がまわるようにサポートする人たちが必要だということを、現場で強く実感しています。
子どもが生まれたら子育てのチームが組まれる、そのようなことが当たり前になる社会を目指して、私たちは取り組んでいきたいと思っています。
ご清聴、どうもありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成