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ICC KYOTO 2024のセッション「Well-beingビジネスの今後(シーズン5 )〜日本発世界へ Well-being ビジネスのグローバル化〜」、全5回の④は、資生堂 中西 裕子さんが登場。産学連携で取り組むBeauty Wellness事業を語ります。化粧をすること、美しくなることが「社会的処方」になり得るのではないかという仮説や国によって異なる美へのアプローチを紹介します。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。
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【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 3E
Well-beingビジネスの今後(シーズン5 )〜日本発世界へ Well-being ビジネスのグローバル化〜
Sponsored by 住友生命保険
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
桑原 智隆
経済産業省
イノベーション・環境局 イノベーション創出新事業推進課長
中西 裕子
株式会社資生堂
ブランド価値開発研究所 グループマネージャー
松田 文登
株式会社ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO
(モデレーター)
藤本 宏樹
住友生命保険相互会社 常務執行役員兼新規ビジネス企画部長SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者
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▶「Well-beingビジネスの今後(シーズン5 )〜日本発世界へ Well-being ビジネスのグローバル化〜」の配信済み記事一覧
藤本 資生堂は、銀座の街の文化や美術の文化など、ずっと文化を作ってきましたよね。
「一瞬も 一生も 美しく」という有名なコピーがありますが、時間軸を分けながら文化を考えているすごい会社だと思います。
▶資生堂|新聞広告データアーカイブ(日本新聞協会)
今行っている取り組みをご紹介いただけますか?
「ビューティーイノベーションでよりよい世界を」
中西 はい、よろしくお願いします。
まず、ミッションについて話します。
資生堂は化粧品会社と思われがちですが、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD ビューティーイノベーションでよりよい世界を」をミッションにしています。
売上の約4分の1が日本市場のもので、残りはグローバルという利益構造です。
2030年に実現するゴールを、このように打ち出しています。
やはり美を大事にしてサステナブルな社会を作りたい、2億人の人生に寄り添いたい、また、実現に向けた事業の考え方として、東洋にある会社だということを大事にしています。
それをベースとした美のあり方を通じて、自分らしい健康美を実現するBeauty Wellness事業に手を広げていきたいと考えています。
Beauty Wellnessや美については、解釈が人によって違うため、私の主観としては、案外何でもつながるなと(笑)、そういうスタンスで働いています。
資生堂の研究所は世界に5つありますが、そのグローバルヘッドクォーター、資生堂グローバルイノベーションセンター(Shiseido Beauty Park)が横浜にあり、私はそこで働いています。
以前は、どういう研究をするかというR&D戦略を担当していましたが、それが進むと、もう事業をすればいいのではという話になり、研究所1階で事業の社会ローンチをするという仕事を、今年(2024年)1月から担っています。
資生堂グローバルイノベーションセンターはちょうどリニューアル中です。
オープン後は新商品や色々なWellnessに関わるサービスを展開するので、ぜひ来ていただければと思います。具体的には、羽田・身体・心の測定からそのつながりや、未来を可視化するBeauty Diagnosis Labの「美の検診」です。
また、オープンイノベーションを推進する活動も行っていて、そのプロジェクトを「fibona(フィボナ)」と名付けて活動しています。
これは、オープンイノベーションプログラムです。
スタートアップとのコラボレーションも行っていて、ヘラルボニーともご一緒しました(笑)。
松田 2年くらい前に、はい。
中西 そのプロジェクトは、汐留の本社玄関にあるアートにつながっています。
▶【資生堂×ヘラルボニー】資生堂クリエイティブと共同制作「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」をオリジナルアートで表現。(ヘラルボニー)
「fibona」には4つのイニシアチブがあります。
まず、「Collaboration with startups」で、中国やアメリカ、フランスのチームも、それぞれローカルのスタートアップとコラボレーションするところまで発展しています。
先ほど、生活者の視点で事業を見つめ直すという話がありましたが(Part.1参照)、「Collaboration with consumers」、まさに生活者とコラボレーションをしようとしています。
研究所ではそういうことを始める際、実装の場がないと言われることが多いので、「Speedy trial」のため、ローンチすること自体をプロジェクトにしています。
これは大企業にありがちかもしれませんが、既存事業から外れたことをする際、心理的な障壁がある人が多いので、「Cultivation」ですね。
化粧が「社会的処方」になり得るという仮説
中西 Well-beingについて、私が今までしてきたことをお話しします。
国が投資するCOI-NEXT(共創の場形成支援プログラム)というプロジェクトに、弘前大学と一緒に参画させていただき、「ビューティーウェルネス学研究講座」を開講しています。
▶資生堂、弘前大学 大学院 医学研究科に共同研究講座 「ビューティーウェルネス学研究講座」を開設(資生堂)
例えば、どう疲労を感じるか、自律神経と肌の状態の関係など、肌と体と心がどうつながっているのかについて、研究を進めています。
肌と体と心が三位一体となって美しくなる、という仮説を持っているので、これら3つのつながり方や個性を研究しています。
もう1つは、アートの力で、共創拠点における孤独や孤立をどう変えていけるか、ということに東京藝術大学のチームと共に取り組んでいます。
▶共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点(東京藝術大学)
化粧をすることや美しくなることは、社会的孤独や孤立を防ぐための「何かをしよう」というモチベーションになっているので、化粧が「社会的処方」になり得るのではないかと考えており、その社会実装に向けて議論しています。
▶政府も推進する「社会的処方」 定義&具体例 リンクワーカーは何をする?(ナースペース)
藤本 社会的処方、一緒に行いませんか?
会社にしか居場所のない中高年のサラリーマンは、定年退職後に孤立しますよね。
これは日本の大きな課題だと思っていて、ぜひ一緒に取り組みたいです。
中西 ぜひ!
国際見本市でビューティーテクノロジー体験を提供
中西 そのほかでは、グローバル規模で表現することも進めています。
活動の一例としては、今年(2024年)1月のラスベガスで行われたCESにブースを出典し、それぞれの国の人がどういうことを言うかについて、プロトタイプを使って検証をしました。
▶資生堂、ラスベガスで開催された「CES 2024」に初出展(資生堂)
具体的には、鼻の骨格から、加齢シミュレーションができるという研究があります。
シワやたるみだけではなく、表情の癖から起こる現象、つまり心が作用しているという知見があるので、そのシミュレーションを色々な国の方々に見ていただき、フィードバックをもらいました。
また、資生堂では、触れ合うことが心身のWell-beingにつながるのではないかと考えています。
今はデジタルで遠くにいる人とつながることも多いですが、実際の触覚を介さず、ARで人とつながったときに、結果的にもたらされた心理的効果に基づいたサービスも、展示しました。
同様に、その展示へのフィードバックを、各国の方々にもらいました。
それが色々なメディアに取り上げられましたし、展示した際に受けが良かった国でのローンチを進めています。
桑原 その反応は、グローバルに、地域やエリアによって、カルチャーも違いますか?
中西 全然違いましたね(笑)。
藤本 どう違ったのでしょう?
中西 例えば、肌と心、体のつながりについては、欧米の人はそもそもそれらがつながっていると思っていないです。
松田 そういう考え方がないということですね。
藤本 ストレスが肌に表れるとか…?
中西 あまりないみたいです。食べたものが肌に表れることについても、今でこそ少しあるみたいですが、別もののように考えていて、「資生堂がそう考えるのは、東洋の会社だからなんだな」と思われている印象を持ちましたね。
藤本 それは面白いですね。善樹さん、何かコメントはありますか?
文化的背景による美へのアプローチ法の違い
石川 おっしゃる通りで、東洋ではボディとマインドが相互作用することは当たり前ですが、それが科学的に立証され始めたのは、1970年代くらいからのことなのです。
藤本 そんなに最近のことなのですか。
石川 はい、ですから、まだ新しい概念なのです。
日本の常識は意外と世界の非常識であり、そういうことは他にもまだまだたくさんあるのだろうなと思います。
藤本 Well-beingも、西洋的アプローチと東洋的アプローチは違うと考えた方が良いのでしょうか?
石川 違うと思います。
例えば、美を考えた時、美しくなるためにネガティブなものを減らしたいと考えるのが東洋のアプローチです。
逆に、ポジティブなものをより良くしていこうと考えるのが西洋のアプローチです。
これは子どもの成績を見る時もそうで、アジア人は、成績の悪いところが気になりますが、西洋人は悪いところは気にならない。そうではなくて良いところばかり見るのです。
自分や世界を見る時、ポジティブとネガティブのどちらに注目するか。
絵については、中心が気になるのが西洋で、周辺や関係性が気になるのが東洋です。
松田 なるほど、それはありますね。
石川 顔を見ていても、西洋の人は、鼻がすごく気になるはずです(笑)。
松田 中心ですからね(笑)。
中西 西洋の方のほうが、鼻をすごく気にしていました(笑)。
石川 逆に東洋では、全体のバランスが気になるのです。
中西 東洋の人からすると、なぜ鼻で分かるのかと思うようです。
藤本 そんなに違うのですね。
石川 そうですね。僕らは同じように世界を見ていないというのが、文化心理学で明らかになった知見です。
これも不思議ですが、ストレスを受けた時に出る症状の順番が、西洋と東洋で違うと言われています。
松田 へー、面白い。
石川 西洋の場合、ストレスを受けるとまず心に来ます。
うつですね。心に来て、脳に来て、そして最後に体に来ます。
松田 なるほど。
石川 アジア人の場合、ストレスを受けるとまず、肩凝りなど体に影響が現れます。
その後、もやもやするなど脳に来て、最後に心です。
ですから、アジア人がストレスを受けて心に影響がある場合、それはもう最終段階というわけです。
松田 なるほど。
石川 同じストレスでも、症状が出る場所の順番が違うのです。
藤本 だから、アメリカの方と話すと、Well-beingと言えば「マインドフルネス」のことだと受け止められることが多いのでしょうか?
Well-beingはそれだけでないと思っていますが、ストレスの影響が最初に心に来るから、彼らはそう考えるのでしょうか?
石川 それもあると思いますね。
藤本 面白い。
石川 アメリカの場合、第二次世界大戦後、戦勝国なのに兵士たちが鬱々として引き上げてきました。
彼らを何とかしないといけないというきっかけで、心理カウンセリングの文化が広がったのです。
つまり、メンタルに関して専門家の力を借りることに慣れているのです。
藤本 中西さん、いかがでしょうか?
美しさを構成する要素は国によって違う
中西 何を美しいと思うのかや、美しさを構成している要素は、国によって違うのだなと思います。
あとは、美しくなった結果と、そのプロセスのどちらを重視するか…例えば日本人であれば、美意識が大事だとか。
藤本 日本人はプロセス重視ですか?
中西 プロセス寄りですね。日々の積み重ねやそれをいかにコントロールするかというところだったり。
一方で、全ては結果だと考える国もありますので、そういう考え方がだいぶ違うなと思いますね。
藤本 日本はナチュラルメイクがメインですが、欧米でははっきりしたメイクですよね。
中西 そうですね。作ったり、すぐ変えるところがあったりします。
例えば、フランスのビューティーの会社は、食べること自体はビューティー、ラグジュアリーではないので、Well-beingやビューティーに関して、食のアプローチはしないと戦略上決めている、大きな会社があります。
松田 食のアプローチはしないとは、どういう意味ですか?
果物を食べる、みたいなことですか?
中西 はい、他には、サプリメントを摂るなどですはラグジュアリーではなく、美しくなるための手段ではないから、経営戦略上しないと決めている会社もあって。
ヨーロッパの会社には、そういう傾向がありますね。
でもアジアにいるとむしろ、「医食同源」という言葉があるように、食は大事だと思うんですけどね。
根本的に違うと感じることが多いですね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/原口 史帆/戸田 秀成