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5. Well-beingで最も大事なのは共通点から入る姿勢である【終】

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ICC KYOTO 2024のセッション「Well-beingビジネスの今後(シーズン5 )〜日本発世界へ Well-being ビジネスのグローバル化〜」、全5回の最終回は、“日本発”でWell-beingビジネスをする時の注意点からスタート。経済産業省 桑原 智隆さんは、日本のスタートアップ政策の進捗状況について解説します。石川 善樹さんが伝えたいWell-beingでの最も大事な姿勢についての最後まで、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 3E
Well-beingビジネスの今後(シーズン5 )〜日本発世界へ Well-being ビジネスのグローバル化〜
Sponsored by 住友生命保険

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

桑原 智隆
経済産業省
イノベーション・環境局 イノベーション創出新事業推進課長

中西 裕子
株式会社資生堂
ブランド価値開発研究所 グループマネージャー

松田 文登
株式会社ヘラルボニー
代表取締役Co-CEO

(モデレーター)

藤本 宏樹
住友生命保険相互会社 常務執行役員兼新規ビジネス企画部長SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者

「Well-beingビジネスの今後(シーズン5 )〜日本発世界へ Well-being ビジネスのグローバル化〜」の配信済み記事一覧


桑原 これは、あえての問いですが、日本人のWell-being度がもし高くないとすると、社会バイアスというか、人が良いと思うことに自分を合わせていっている故の窮屈さがあるからではないでしょうか。

それよりも、自分が良いと思うことを選ぶ、選びやすい社会になっていくといいのではと思います。

これは受け売りですが、自分が良いと思うことをする、つまり、たとえ誰かが見ていなくても、自分にとって、自分がWell-beingな状態であるための言動を大事にしなさい、という意味の「恥を知れ」という校訓が大妻中学高等学校にはあるらしいです。

教育理念(大妻中学高等学校)

例えばメイクだと、メイクをして周りに美しいと評価されるよりも、自分のルーティンやライフスタイルを誇らしいと思えれば、それが自信になって、最終的にself esteem(自尊心)になるという考え方です。

「恥を知れ」という言葉を聞くとドキッとしますが、自分に正直に、自分が良いと思う生き方、自分のWell-beingを自分で高める、自立した人が良しとされているということです。

どういう生き方が正解なのか……コンプレックスビジネスでは、人が良いと思うところに自分を合わせに行くことを奨励するので…自分で話していて、矛盾しているようにも感じます(笑)。

日本発Well-beingビジネスで気をつけたいこと

石川 いえ、矛盾はしていないですが、日本人は、自分というものの概念が広いのです。

周りも含めて自分だと思っているのです。

個人という感覚があまりないというか、「I」より「We」が好きというか……ですから、周りと比べて自分がどうかということを常に考えています。

外から見えている自分を常に見ているのです。

日本人とアメリカ人に、「あなたのことを教えてください」という類の質問をするとします。

日本人は、「あなたはどういう人から影響を受けましたか」という問いが大好きなのですが、アメリカ人はそれを聞かれると、ポカーンとします。

アメリカ人が好きな問いは、「あなたはどういう人に影響を与えましたか」なのです。

皆さん、どう思いますか?

「あなたはどういう人に影響を与えましたか」と聞かれて、パッと答えられる人は、あまり日本人ぽくないのです。

日本人は、常に周りと自分の関係を見ているので、ネガティブなところが気になるわけです。

松田 なるほど。

藤本 どんな人に影響を与えたか、すぐに答えられるものでしょうか。

石川 試しに聞いてみてください、アメリカ人に。絶対、すぐに答えますから(笑)。

藤本 大谷に聞いたら、デコピンと言われますかね。

桑原 でも、ワールドチェンジャーになりたい、自分が変えられるという感覚が強いのではないでしょうか。

藤本 今日のセッションは、色々と勉強になりますね。持って帰れるものが多くて嬉しいです。

Well-beingビジネスを日本から世界に広げようとすると、その違いに気をつけないといけないわけですね。

石川 日本の固有性を訴求すると、それは日本国内でしてくださいという話にしかならないですよね。

普遍的価値を伝え訴求すると受け入れられやすい

石川 例えば、人間の尊厳は大事で、障がい者の尊厳も大事ですよね。

あるいは、震災など災害の被災者の尊厳も大事ですよね。

では、尊厳を規定するものが何か。

美は当然、そこに入ります。

美しくあることは、障害者でも被災者でも難民でも、人間の尊厳として大事なのです。

しかしですよ、美に関連する商品やサービスが、最初に被災地や難民キャンプに届くか?

最初に届くのは……。

松田 食料ですよね。

石川 「Well-beingとは、尊厳のある生活である」と定義されつつあります。

ですから、「人間の尊厳は大事である、日本には、そのための商品やサービスがある」という訴求であれば、グローバルで受け入れられやすくなりますよね。

80年ほど前、アメリカのルーズベルト大統領がグローバルの普遍的大義として掲げたのが、表現の自由、恐怖からの自由、信仰の自由、欠乏からの自由という4つの自由です。

四つの自由(1941 年) (アメリカンセンターJAPAN)

これら4つの自由を掲げたので、世界がアメリカを支援したという、外交の歴史があるのです。

それに対して日本は、東洋というものを考えました。

西洋に対する東洋という考え方をずっとしてきたので、日本には、東洋で通じる大義しかなかった。

ですから、外交学の世界では、外交思想の戦争においても日本はアメリカに負けていたと言われます。

そういう意味では、日本とか東洋とかを言いすぎない方が良くて、尊厳など、もっと普遍的価値から捉えて、こんな商品やアートがあります、と訴求した方が良いと思いますね。

「スタートアップ育成5か年計画」が2022年にスタート

藤本 日本からの発信という点で、大阪・関西万博はチャンスですよね。

経済産業省としての見解があれば(笑)。

桑原 スタートアップの定義はこちらで、どんな意義があるかについては、これまで話した通りです。

スタートアップ、VC、大企業、アカデミア・有識者、自治体など、アクセラレーターなどによるN×Nの事業共創は、ライフワークだと思っています。

政策としては今、5か年計画(スタートアップ育成5か年計画)で、人材、資金、オープンイノベーションの3つの柱で、予算、税制や制度において、たくさんの支援策を行ってきました。

これまでに「裾野」は拡大してきましたが、今後は、より一段の「高さ」と裾野拡大の「継続」が大事。グローバルアジェンダに貢献する社会課題解決と経済成長のドライバーとしてのスタートアップへの期待です。

去年(2023年)、ヘラルボニーもこのJ-StarXというプログラムでパリに行かれて、STATION Fをご覧になりましたよね。

その後、1年間でそれだけの進捗があったというのは素晴らしいことですし、政府も施策を通じてサポートさせていただいたことは良い事例と捉えています。

他方、インバウンドも大事です。海外に展開するアウトバウンドも大事ですが、海外スタートアップが日本にエントリーしてくることも大事だと考えています。

万博については、皆さんに“Mark your calendar”をお願いしたいです。

万博自体は4月から10月ですが、9月17、18日にメイン会場でGlobal Startup EXPO 2025を行います。

「いのち輝く未来社会のデザイン」というWell-beingと親和性の高いテーマの万博ですから、地政学的な観点でグローバルで分断が懸念される中、リングに象徴されるように「つながり」、洋の東西を問わず色々なものがつながることの力を期待したいです。

Global Startup EXPOは、地球規模の課題の解決に向けて、共創によってスタートアップのイノベーションや価値を広げていくようなイベントになることを期待しています。

今日のセッションでもインサイトをいただきました。多くの関係者で力を合わせて良い機会になるように進めたいと思っています。

2025年の9月17、18日に向けて、今年の11月15日に大阪で、機運醸成のためのStartup Horizon 2024というプレイベントをしようと考えており、大阪府、大阪市と相談しています(※開催終了)。

【イベントレポート】Startup Horizon 2024-Countdown to Global Startup EXPO Event-~万博前夜~世界から見た関西スタートアップエコシステムのポテンシャル(経済産業省近畿経済産業局(公式)note)

昔は価値観の中に、明日は今日より良くなる確信があったと思いますが、未来に誇れる日本や世界を作るため、それについて我々がポジティブに考える機会になればと思っています。

藤本 ありがとうございます、9月17、18日はWell-being関係者は全員集合ですね。

では最後におひとりずつ、まとめコメントをお願いいたします。

普遍的価値を伝える必要性

中西 ありがとうございます。

今日は、まさに自分がヘラルボニーのデータの一部だったのだと気づけました(笑)。

松田 ありがとうございます(笑)。

中西 美には多様性があり、個性やユニークネスの象徴になりやすいですが、善樹さんがおっしゃったように、世界にブリッジをかける際、何か本質的なものを一つ置く方が共通言語になり得るのかもしれないという気づきがありました。

ご一緒できたらと思います、ありがとうございました。

「尊厳」を強く打ち出すことがWell-beingにつながる

松田 ありがとうございます。

ICCに来る前に、エリカ・チェノウェスの『市民的抵抗:非暴力が社会を変える』という本を読んでいたのですが、市民の3.5%が動けば世界は変わるという3.5%ルールについて説いていました。

『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』エリカ・チェノウェス(白水社)(SYNODOS)

その方は1900年から2020年頃までの、暴力運動と非暴力運動がそれぞれ目的を達成した割合を出していました。

Black Lives Matterや公民権運動など全世界の600ほどの暴力運動に対し、非暴力運動で立ち上がっている方々が意思を見せています。 

ヘラルボニーもインパクトスタートアップも、社会のマイノリティグループの、社会への非暴力運動を押し出しており、それが結果として、その運動を行う人のWell-beingにつながっていくと思いました。

今日話に出た「尊厳」という言葉にフィットすると思ったので、この本を紹介しました。

尊厳を社会に強く打ち出すことが、結果的にWell-beingにつながるのかなと思います。

今日は勉強になりました、ありがとうございました。

皆さんと一緒に政策を作りたい

桑原 最後のページに、皆様に縁のあるロゴを並べました。

他人と過去は変えにくいですが、自分と未来は変えられます。

変える中で、スタートアップの力はすごく大きいと私は思っています。

新規性や成長スピードなどで定義されるスタートアップですが、一番は、自分クレジットのライフワークを大事にし続ける企業です。

それに共感をした、パワートゥースケールを持った企業、善樹さんのようなビジョナリーな方、藤本さんのようにオープンにパワートゥースケールを色々な方に提供している方、経済産業省を含めた、霞が関の色々な面白い政府メンバー。

スタートアップが考える領域は、担当する省庁の垣根のない発想が多いと思います。明日は今日より良くなる、未来に誇れる日本を作るという感覚を持った仲間も多いので、皆さんのN×Nの輪に入れていただきたいですし、皆さんと一緒に政策自体もオープンイノベーションをしていきたいと思っています。

ありがとうございます。

Well-beingで一番大事なのは共通点から入る姿勢

石川 何が課題なのかは、時代や地域によってそれぞれです。

障がい者は分かりやすいですが、例えばアメリカ南部に行くと家族の名誉が何よりも重要であり、名誉を傷つけられたとなると、平気で殺人が起こります。

色々な地域で色々な人と話すと、まず、考えていることはバラバラなのだということがよく分かるのです(笑)。

でも、違いに目を向けると、どこまでいっても折り合いがつくことはありません。

一方、松田兄弟がヘラルボニーを始めた際、一番上のお兄ちゃんと自分たち双子が違うという感覚は持っていなかったと思います。

松田家の同じ人間だよね、と。

松田 それはおっしゃる通りです。

石川 双子といえど、お二人には違いがあり、また、お兄ちゃんと違うところもあります。

Well-beingに取り組む時、一番大事な姿勢として、「私とあなたは似ているよね、同じだよね」というところから入っていかないと、違いばかりが目について分断が進んでいくのではないかと、強く思います。

この続きは、Co-Creation Night(会期中に行われる夜間のテーマ別ディスカッション企画)で(笑)。

藤本 はい、今夜あります。

このセッションのシーズン6ができるかどうかは、皆さんのアンケートの結果次第です。

最後に歌を歌えず、申し訳なかったですが……。

石川 次回までに、Well-beingの歌を作ってきますので(笑)。

▶編集注:大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン12) 最終パートを参照

藤本 ぜひ、よろしくお願いします。

ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/原口 史帆/戸田 秀成

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