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ICC FUKUOKA 2026 クラフテッド・カタパルトに登壇した、KESIKI 内倉 潤さんのプレゼンテーション動画【文化継承型M&Aで、日本のものづくりからラグジュアリー産業創出を目指す「KESIKI」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
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【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
内倉 潤
KESIKI
代表取締役 COO
公式HP
株式会社KESIKI 代表取締役COO/WOOD YOU LIKE COMPANY 代表取締役。東京大学経済学部卒業。在学中より学生向け広告事業やeコマース事業など、複数のスタートアップを創業。卒業後は英バークレイズ証券にてM&Aアドバイザリー業務に従事し、小売企業のM&Aや金融機関の資金調達支援を経験。2015年にユニゾン・キャピタルへ入社し、主にホスピタリティ領域の投資およびハンズオン型の経営支援に携わる。2019年、日本独自の文化・技術を持つ企業をブランドとして再構築し、次世代へ継承することを目的にKESIKIを創業。2021年には家具メーカーWOOD YOU LIKE COMPANYを事業承継し、経営改革とブランド再構築を推進。日本発の新しいラグジュアリーブランドを生み出す挑戦を通じ、文化と経済の循環を生み出すことを目指している。
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内倉 潤さん 「文化承継型のM&Aで日本発の新しいラグジュアリー産業をつくる――KESIKI代表取締役 COO、内倉 潤です。

クラフトをブランド化し文化と経済の循環をつくる
「あと5年早く継いでくれれば…。うちの会社は、もう手遅れだと思うよ」――これは、私が事業承継をした、ある家具店の職人に言われた一言です。

その言葉を聞いた瞬間、故郷である愛媛県宇和島市の景色が頭に浮かびました。
実家の真珠養殖業は、輸入品と赤潮によって廃業しました。
もし、クラフト(技術)をブランド化し、文化と経済の循環をつくれていたら、もっとよい景色が残せたのではないか――これが、私の原点です。

文化を残すには、経済を知らなくてはなりません。
そのため、私はあえて資本主義のど真ん中である投資銀行とPEファンド(※)で事業承継を学んできました。

後継者不在の中小企業が直面する危機
事業承継に関わる中で知ったのは、後継者不在の中小企業が127万社という日本企業の1/3が廃業の危機にあるということです。

また、クラフト産業の規模として、直近40年で職人の数は1/6、産業規模は1/7にまで縮小しました。

日本では、5万人の職人が800億円の産業をつくっている一方、フランスでは、50万人の職人を抱え、その先には20兆円のラグジュアリー産業があります。

クラフトを、守る対象ではなく産業にしているのです。
経済的価値が国外に流れる「文化の植民地化」

そして現在、海外のラグジュアリーブランドが、日本の文化やクラフトへの投資を活発化させています。
資本とブランドが外にある限り、経済的価値は国外に流れてしまう――これは、「文化の植民地化」とも言えるような状況ではないでしょうか。

そのため、私は日本人として、自らの手で日本に文化と経済の循環をつくると心に決めて、2019年に、KESIKIを立ち上げました。

KESIKIは、IDEO Tokyo出身のデザイナーである石川 俊祐(Chief Design Officer)とPEファンドのユニゾン・キャピタル出身の私を中心に、デザインと経済の両輪で挑むチームです。

文化継承型M&Aとは、日本の文化やクラフトを承継し、デザインと経済の力を掛け合わせてブランドをつくる、そうして生まれた収益をもう一度日本の文化に循環させる仕組みです。

実践第1号は東京の家具メーカー
その初めての実践が、5年前に承継した東京の家具メーカー「WOOD YOU LIKE COMPANY」(ウッドユウライクカンパニー)です。

東京都昭島市の工房で、15人の職人が手仕事で分業をせずに家具をつくる、日本の木工技術を高いレベルで継いできた会社でした。
たとえば、家族4人で使ったテーブルを、子どもが巣立ったタイミングで半分にして親と子で使い続ける――そのような素敵なことを、続けてきた会社なのです。

しかし、現実といえば、月次受注金額は、2,300万円から1,700万円まで減少、美しいけれども継続できない状況で、前オーナーは70歳を超え、40年以上プロダクトも店舗も変わらない、顧客とともに年を重ねてしまった会社でした。


誇りを持ち、続けてきた仕事なのに胸を張れない
事業承継の当日、ベテラン職人の草刈 智則(ウッドユウライクカンパニー)さんに言われた言葉が、私は今でも忘れられません。


「木工職人は、貧乏と木屑がついてくる こどもには、絶対継がせたくない」
当時、ベテランでも、月15万円しか給料を支払えないことがあったのです。

誇りを持って続けてきた仕事なのに、こどもに胸を張れない、これほど悔しいことがあるでしょうか。
このような状況を、自分の人生を懸けて絶対に変えてみせる――私は、そう決意しました。
家具づくりから空間・暮らしをつくる会社へシフト

改革は、トップダウンではなく、承継後の半年間は工房で現場のメンバーと飲食をともにして、会社として変えてはいけない核と、次世代に残したい景色を探しました。

そのために、情報はすべて開示しました。

受注・生産・KPI・資金繰りまで、会社を自分ごととして捉えてもらうための仕組みです。
すると、職人たちから発された言葉があります。

「家具をつくる会社ではなく、愛着がめぐる、暮らしをつくる会社になっていきたい」――この再定義によって、To Cで家具を売る会社から、To Bで建築家やデザイナーとともに空間・暮らしをつくる会社へと変貌を遂げていきます。

製品のデザインは、KESIKIのネットワークを生かし、外部のデザイナーとも連携しています。
5年で受注金額が月1,700万円から2,000万円に回復
5年がかりで、ようやく新しいラインナップも整い、我々のポリシーやクラフト、デザインに共感してくれる建築家やインテリアデザイナーも増えました。

その結果、家具単体にとどまらず、空間全体のリノベーションやオフィスも手がけるようになり、結果として低迷していた受注も底を打ち、2025年には月2,000万円まで回復させることができました。




業績の回復に伴い、低いときには月15万しか払えなかった給与は、最低でも25万円を支払えるようになりました。

五つ星ホテルのスイートルーム改装を受注
2026年は、我々のブランドを高く評価してくださった五つ星ホテルのスイートルームの改装も手掛けることになり、その受注は一般顧客と比較して、規模で500倍、粗利は10%以上を改善する見込みです。


文化承継型M&Aの特徴①共感承継
我々が掲げる文化承継型M&Aには、3つの特徴があります。

1つ目は、「共感承継」です。
承継文化を守ることを前提に、長期でコミットする、この姿勢に共感していただくことで、通常の半分以下であるEBITDA(※)の2~3倍で、事業承継をさせていただいています。
▶編集注:EBITDA(イービッター)とは、「Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」の略称で、利払前・税引前・減価償却費前の利益を指す指標のこと。

文化承継型M&Aの特徴②価値創造
2つ目は、「価値創造」です。
「WOOD YOU LIKE COMPANY」での実践を通じて、「ブランド再構築」メソッドを型化しました。

文化やクラフトをラグジュアリーブランドへ転換し、収益性を大きく改善します。
文化承継型M&Aの特徴③職人還元
3つ目に、「職人還元」です。
ベテラン職人の佐々木 淳史(ウッドユウライクカンパニー)さんは、次のように言ってくれました。
「俺が、この会社を背負っていきます」

我々は、給料を上げるだけではなく、職人が経営を担いオーナーになる仕組みをつくっています。

彼は、2027年、社長に就任し、事業承継に向けて準備を進めます。
次の30年間で売上5億~30億円規模のブランドを
我々は、この文化承継型M&Aにより、日本から新しいラグジュアリー産業をつくります。

次の30年間で、売上5億~30億円規模のブランドを30社、合計で500億円、これは伝統産業市場の半分以上の規模感です。

KESIKIには、年間200件以上の承継の相談が来ます。
家具に加えて、内装や照明、器など、日本らしい暮らしをつくる企業の承継プロセスを進めています。

北欧が、豊かさを再定義して産業を生んだように、我々も日本から豊かさやラグジュアリーを再定義します。

5年前、「あと5年、早ければ」と言われました。
現在、その職人の方々は、会社を背負うと決めてくださっています。

しかし、直近5年間で変えることができたのは、まだ1社です。
産業にするには、もっと早く、もっと大きく、日本から新しいラグジュアリー産業をつくる、この挑戦に、皆さんの力を貸してください。

よろしくお願いいたします。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成


