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本来なら治るはずの白内障で、世界中の中途失明者が苦しんでいる——OUI Inc.を率いる現役眼科医・清水 映輔さんは、スマホアタッチメント「Smart Eye Camera」を開発し、眼科医が決定的に不足する途上国へと展開。「防げる失明」をゼロにする解決アプローチを語ります。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2027は、2027年3月1日〜3月4日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 11C 最新テクノロジ゙ートレンド゙ 徹底解説(シーズン10)
Supported by EVeM
(プレゼンター)
清水 映輔
OUI Inc.
代表取締役
スマートフォンに装着して眼科診療を可能にする医療機器「Smart Eye Camera」を開発・提供
田口 昂哉
Helical Fusion
代表取締役CEO
日本独自の「ヘリカル方式」による核融合発電所によって、2030年代に世界に先駆けたフュージョンエネルギー(核融合)の実用化を進めている。
秦 裕貴
AGRIST
代表取締役
ロボット技術やAIなどのテクノロジーで農業課題を解決するスタートアップ
林 正彬
LIFESCAPES
取締役副社長
BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)技術を応用し、脳卒中後の麻痺患者に向けたリハビリテーション医療機器を開発
(モデレーター)
尾原 和啓
IT批評家
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▶『最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン10)』の配信済み記事一覧
(本文)
尾原 田口さんと秦さんに解説いただいたように、核融合というものすごいエネルギーや農業という非常に広大な土地を使うものに対して大きな変容もあれば、小さいものの中で変容がされたら、世界中の人がものすごく助かる技術もあります。
そういったところを、OUI Inc.(ウイインク)の清水さんから、ぜひ解説をお願いいたします。
世界の失明を半分に減らす、OUI Inc.(ウイインク)
清水 はい、改めまして皆さん、こんにちは、OUI Inc.の清水と申します。よろしくお願いいたします。

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清水 映輔
OUI Inc.
代表取締役
スマートフォンに装着して眼科診療を可能にする医療機器「Smart Eye Camera」を開発・提供
2013年に慶應義塾大学医学部を卒業。眼科専門医・医学博士。豊富な臨床経験と研究実績を持つ起業家。東京医療センター,東京歯科大学市川総合病院,慶應義塾大学病院,南青山アイクリニック,横浜けいあい眼科での勤務経験を通じ,ドライアイ・眼アレルギー・眼科AI・遠隔診療・屈折矯正を専門とし,特に自己免疫疾患関連の重症ドライアイ,前眼部の眼科AIについて多数の研究成果を上げている。
2016年,OUI Inc.を設立,ベトナムでの無料白内障手術ボランティア活動をきっかけに,医療現場の課題解決に取り組み始め,「Smart Eye Camera」を発明。安価で携帯可能な眼科診察機器の実用化に成功し,さらに眼科診断AI・遠隔診療の研究開発でも世界をリードしている。「世界の失明を50%減らし,眼から人々の健康を守る」というミッションのもと,グローバルな健康課題の解決に挑戦し続けている。
現在は慶應義塾大学医学部眼科学教室特任講師も兼任,その功績は国内外で高く評価されており, The Outstanding Young Persons 2025, JCI JAPAN TOYP2024内閣総理大臣奨励賞(2024年),全国発明表彰未来創造発明賞(2023年),第5回ジャパンSDGsアワードSDGs推進副本部長(外務大臣)賞(2022年),国際失明予防協会のThe Eye Health Heroes award(2020年),ARVO/Alcon Early Career Clinician-Scientist Research Award(2018年)をはじめ,多数の受賞をしている。
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僕たちのやっていることは、「世界の失明を半分に減らす」ことです。

「これは何なんだ?」という、今までの話と全く違う、非日常なお話だと思いますけれども。
▶︎どこでも眼科診療が可能なスマホ装着デバイスで、世界を失明から救う「OUI Inc.」(ICC KYOTO 2021)【文字起こし版】
まず、実は僕は眼科医です。

ここに書いてある通り、医学部を卒業して眼科医になりまして、眼科医として育って、なぜかここに「起業」とかちょっと入っているのですが、実は今も週に3~4回くらい外来で眼科医としても働きながら、スマートフォンを使った医療機器を開発したり、アップグレードしたりして、いろいろなところに販売しようとしています。
というのも、これから起業しようという方、仲間をどんどん増やそうとしている方々に言うのもなんですが、医療機器って全然儲からないのです(笑)。
尾原 (笑)
清水 (林さんに)あっ、ごめんなさい、すみません。
林 いやいや、おっしゃる通りだなと思って。
尾原 (笑)
清水 先ほどインテグレーターの話がありましたが、僕は眼科医なので、特に眼科のようなマイナー科というか、ものすごい狭いジャンルは超大事だなと思っています。
一方で、インテグレーターになるのかみたいなことは、やはり医療の世界では、良くも悪くも既得権益が非常に強いので、そこに配慮しながらやる必要があります。
配慮という言葉は忖度かもしれないですがすごく大事なので、「みんなで手を取り合って頑張ってやっていこうね」みたいな感じなのですが、テクノロジーとしては突き抜けているみたいな絵を描くのが、自分たちのやりたいことに近いのではないかと思います。
尾原 なるほど。
清水 ちょっと概念のお話でした。
尾原 いや、大事です。
本人だけではない、失明・視覚障害がもたらす経済的損失
清水 これはピッチでよくする質問で、皆さん、「22億人」という数字、この数字はなんだと思いますか?

出典:Blindness and vision impairment(World Health Organization (WHO)
世界の失明と視覚障害の人口の数です。

尾原 実は多いのですよね。
清水 すごく多いです。出典を書くのを忘れましたが、これは全部エビデンスのある数字で、WHOが発表している数字です。
「失明」は全く目が見えなくなった方々、「視覚障害」は目が見えないことによって日常生活が送れない方々というのが定義です。
2025年時点での失明4,400万人が、何もしないと25年後の2050年には3倍になります。

この時には日本の人口を抜くぐらい、世界で多くなっていきます。
こんな数字は見たことがあまりないかもしれませんが、失明や視覚障害による経済的損失額です。
日本円で言うと、150円換算で750兆円となります。

22億人いるので、だいたいこれぐらいにはなります。
この経済的損失とは何なのか。
大きいところで言うと、「あなたは目が見えないので、医療費がかかります」、これは当たり前ですよね。
ただ、それだけではありません。
そういった方々を介護する、本来働ける家族が介護しなければいけないので、失明による経済的損失がどんどん増えていきます。
眼科医は開発途上国でも先進国でも遠い存在
清水 なぜ失明が減らないのかというと、この一言に尽きます。

尾原 へえ。
清水 眼科医が「遠い存在」だからです。
おそらく、眼科医の友人がいる方はそんなにはいないと思います。
国際的に見たら眼科医はすごく多いですが、国内に12,000人しかいないので、すごく多いわけではありません。
失明原因の半分にあたる「白内障」は手術すれば治ります。
尾原 そうですよね。
清水 見えるようになります。
ただ、特に開発途上国では、目が見えなくなるのは当たり前というか、「おじいちゃん、おばあちゃん、高齢になったんだから、目が見えないのは、僕たちが手伝うのでなんとかしましょう」みたいなマインドセットがあります。
尾原 受診できればいいのに、本当はね。
清水 2026年現在で、そんな国はまだまだたくさん存在します。
眼科医療にアクセスできない、これがすごく大事で、例えばネパールのポカラという第2の都市があるのですが、。現在はHimalaya Eye Hospitalという病院ができましたが、以前は人口30万人に対して眼科医が一人もいませんでした。

尾原 はー。
清水 日本だったら人口1億2,000万人に対して眼科医が12,000人いるので、ゼロと比べればという話ですけれども。
尾原 眼科医1人あたり患者1万人という計算ですね。
清水 例えばこういうところでは、最寄りの病院まで3時間かかります。

スライドのような道をてくてく歩いていくか、あとは公共のバスなどを使って揺られていって、たった5分の診察で、「はい、目薬出します」と言われて帰されるような状況が確かにあります。
失明が増えているのはすごく重要なことで、僕が今の事業をやっている大きな理由の一つとして、眼科医にとっての「失明」は、他の診療科の先生方にとって「お亡くなりになる」のと同じだということがあります。

眼科医の仕事は、患者さんの失明を防ぐことです。
失明後のケアも当然しますが、メインはあなたの目は治りますよと言って治療することです。
これからの眼科医の仕事としては、あなたの目は治るんだよということを「教える」ことだと思っています。
診察用機器がないベトナムでの医療ボランティア体験
清水 スマホを利用した医療インフラの可能性に着眼した経緯をお話しします。

眼科医2〜3年目の若い医師だった僕は、2017年10月にNPOの無料白内障手術のボランティアとしてベトナムに行きました。

ベトナムの恵まれない地域に対して、地元の金融機関だったり、篤志家の方々がファンディングしてくれて、日本から先生を呼んだりするものでした。
日本からすると修行感覚ですけれども、現地で手術を行います。
尾原 素晴らしい。
清水 面白いのが、機械が全部寄付されたものなので、それを全部手で持っていくのですよ。
尾原 うわー。
清水 先ほどクリニックまで3時間かかると話しましたが、ああいう道を借りたハイエースみたいな車に乗って、手術の道具や薬とか全部持っていくのですね。
基本的にお医者さんは診察をして、治療をします、手術をしますという流れになるのですが、診察する道具を持っていけないのですよ。
というのも、眼科で診察するための機械は「細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)」という大きい機械だったり、据え置きだったりで、日本で買うとだいたい1台500万円とか、ものによっては1,000万円ぐらいするものなので、こういった地域には当然ありません。
でも眼科医は、目に光を当てて、何かしら跳ね返ってきた光を拡大して見ることが診察のロジックなので、「ペンライトを持っていきなさい」と指示がありました。
なぜかなと思ったら、目に光を当てるためだったのですが、ベトナムで買うペンライトは電池がすぐ切れてしまうので、1時間くらいですぐ使えなくなってしまうのです。
その時にみんなが使っていたのがスマホで、スマホの光を出して、目に光を当てていました。
尾原 スマホはみんな持っていますからね。
清水 全員持っていました。
この2017年に行ったところでも、暇な時はみんなずっとスマホをいじっているのです。
この時に僕たちはスマホの光を使って診察しましたが、当然眼科の診察に最適化されたものではないので、この光に対して何かしらの工夫をすれば、目の診察ができるようになるのではないかと考えました。
2年ぐらいかけて作ったのが、このSmart Eye Cameraという機器です。

田口さんを「Smart Eye Camera」で診断
清水 すごくシンプルです。こちらをかぶせます。
尾原 会場の皆さん、見えますか? 本当にはめるだけです。
清水 専用のアプリがあるので、今アプリを開いたのですが、これで準備完了で使えます。
田口さん、ちょっといいですか?こんな感じになります。

田口 (笑)
尾原 白内障のリスクは…?
清水 大丈夫だと思います。若干充血しているぐらいですかね。
尾原 昨日飲み過ぎたんですかね(笑)。
清水 これで、このように田口さんの目を動画で見ることができます。

尾原 わー。
清水 これは、眼科の先生が見ているものと同じです。動画で撮影するので、素人でも撮れます。
尾原 なるほど、シャッターチャンスを逃さないですね。
清水 そうですね。
AIが最適なフレームを抽出してくれたりもしますが、拡大して、この角膜という黒目の部分だったり、水晶体という目の中の白内障の原因になるような組織も……。
田口さんは白内障は全然大丈夫だと思うのですが、これがわかったりしますね。
若干充血が認められますが、目は乾きますか?
田口 はい。
清水 そうですよね。涙の量が少し少ない感じがしました。
尾原 診断されてる(笑)。
清水 実際に、現場でもこうやって見せながら話すので、患者さんも納得感が出ますよね。
ポータブルだけれども既存の機械と同じようにというのが、このSmart Eye Cameraの特徴です。
尾原 しかもスマホはカメラのレンズと、カメラを活かすためのライトがあるから、これをかぶせることで、目を見るためのライトに自動的に調光して撮るという、こんな簡単なことで。
清水 スマホのライトを眼科の診断用の機械に変換します。
尾原 はー。
清水 これが一番の大きな技術です。
シンプルさに非常にこだわって、今の4ステップですぐに診察が終わりました。

最後にデータを送ります。
僕は眼科医なので、基本的に送ることはしないですが、全てのデータがクラウドに上がって遠隔診療できるようになっているので、この機械があることによって場所や時間、あとは人を選ばずに眼科診療をすることが可能です。

尾原 そうですよね。カートリッジだけ送ってしまえば、現地の人が撮影し合ってデータを送付していただければいいということですよね。
清水 おっしゃる通りです。
尾原 めっちゃいいですね。
清水 ベトナムやモザンビーク、ブラジルと書いていますが、今、東南アジア、中南米、あとはアフリカで使われています。
(続)
本セッション記事一覧
- エネルギー自給率15%の日本を救う、「核融合発電」の実用化構想
- 1,000兆円市場を勝ち取る戦略。要素技術を超えた「完成品」での勝負
- 農業×ロボットの先へ。まちごと変える「AGRIST」の地域実装モデル
- 温室を自動制御し、人間は収穫を楽しむ。「データ農業」が開く新たなビジョン
- 「Smart Eye Camera」で世界の失明リスクを低減。現役眼科医が挑んだデバイス開発
- 「オフィス眼科検診」から全身の健康へ。「OUI Inc.」が拓くネクストステージ
- 脳卒中後のリハビリの常識を根底から覆す。「LIFESCAPES」が描くBrain-Machine Interfaceの未来
- 課題解決の原点は純粋な楽しさと熱量、ディープテックが産業変革の未来を切り拓く【終】
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成


