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「創造と変革をドライブする経営とは何か?」【F17-5A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その4)は、新規事業立ち上げを成功させる人材と仕組みについて議論いたしました。ヤフー村上さんの孫さんに直談判したエピソードは必見です。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21日〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 5A
創造と変革をドライブする経営とは何か?
(スピーカー)
鉢嶺 登
株式会社オプトホールディング
代表取締役社長グループCEO
村上 臣
ヤフー株式会社
執行役員CMO
山口 文洋
株式会社リクルートマーケティングパートナーズ
代表取締役社長
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授
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【前の記事】
【本編】
鉢嶺 リクルート社の場合ですと、新規事業創造のRecruit Venturesなどの仕組みがありますよね。
あのような社内ビジネスプラン・コンテストのようなものは上手く機能しているのでしょうか。
社内コンテストから事業化を成功させる経営とは?
山口 そうですね、例えば、中古車を扱う「カーセンサー」は30年前、「ゼクシィ」は20年前の新規事業コンテスト「New RING(現・New RING-Recruit Ventures-)」 なんですね。
ゼクシィのブランドを使った婚活サービスをやり始めたのは8年前、スタディサプリは5年前ですが、現在の我々の基幹事業になっているものは、当時のボトムメンバーが「New RING」でグランプリを取ったものが事業化され、成長し、基幹事業になったという経緯があります。
HOT PEPPERもそうです。
最近でこそ海外M&Aを含めて新しい成長のオプションを増やしていますが、内部から「New RING」を経てブロックバスター事業にしていくということが、我々の存在価値の一つなのではないかなと思います。
鉢嶺 弊社でも同様に、「情熱ファクトリー」という社内ビジネスプラン・コンテストをやっていたのですが、全く上手くいきませんでした。
アイデアはたくさんでてくるのですが、あくまでもアイデアレベルですし、若手社員から出てくるのでやはり物足りない場合があります。
グランプリを取ったからと、いきなり彼らに任せても、ノウハウもビジネス上の人脈もないので、すぐつまずいてしまい、上手くいかないんですね。
その点は、どのようになさっているのでしょうか。
山口 ゼクシィやHOT PEPPERの場合ですと、新規事業の段階でグランプリになったチームメンバーで最初の一歩目を踏み出しましたが、やはりなかなか結果が出ませんでした。
そのため、途中でこのリーダーだったらとか、このメンバーなら、というように入れ替えを行っています。
鉢嶺 なるほど。
山口 変えた後に、5年、6年と粘って、ようやく花開いています。
スタディサプリは私が立ち上げ、最初のファウンダーチームのままで5、6年やらせてもらっていますが、そのようなケースの方が稀有だと思います。
村上 例えばメンターのような存在はいるのでしょうか。
最近よく「カタリスト的な人材」などと言いますが、ファウンダーのチームが中心となって事業を生み出すにしても、特にイントレプレナーのような場合ですと、執行役員にスポンサーシップ制度があったり、調整事など何かあった時に助けてくれる人、相談に乗ってくれる人がいるかいないかでずいぶん違うと思います。
その点については、リクルート社ではどのようになっているのでしょうか。
山口 そうですね、リクルートホールティングスの、Recruit Venturesでは、アーリーステージからレイトステージにわたり、このパイプラインをメンタリングしたり、リソースをサポートしたりするチームがあります。
弊社内の新規事業については、自分自身がこの5年、6年の間ずっと新規事業を立ち上げてきましたので、どちらかというと、私自身がメンターになってフォローとサポートを常にしているという感じですね。
村上 リクルート社の場合は、新規事業慣れしているというのがあるのかもしれませんね。
山口 それはあるかもしれません。
現在の経営陣にも、過去ゼクシィにいて、数百億円規模に広がっていくのをその目で見ていた人物がいますし、今でもホットペッパービューティーが急速に伸びていますので、どのような環境因子、事業内の打ち手、組織マネジメントであれだけスケーリングしているのかというところを、まさに体感しているメンバーやミドルがたくさん育っていますので。
琴坂 アイデアと人材を切り離しているという点もありますよね。
このアイデアがうまくいかなかったのは、チームとのミスフィットの可能性もあると考えて、かつ全体の人材のことが把握できているので、もしかしたらこの事業には別のメンバーの方がいいのではないかというように、組み換えをきちんとやっていく、そして丁寧に育てていくという発想があるのではないでしょうか。
孫氏に直談判。Y!mobile!立ち上げの裏側
鉢嶺 その関連で、村上さんもY!mobileを実質立ち上げられていますが、人選はどうされているのでしょうか。
何を基準に、「では村上さんお願いします」と選ばれたのでしょうか。
村上 Y!mobileの場合は、もともと私の思い付きの企画でして、私自身が初期のコンセプトを固めて、宮内と孫のところへ持っていき、やりましょうと提案したものなんです。
鉢嶺 直談判系と。
村上 直談判系です。結構珍しいケースなのですが。
琴坂 それは正式なプロセスではないのですか?
村上 正式なプロセスではなく、個人技です。
再現性があまりないので、さほど参考にならないかもしれません(笑)。
もともとボーダーフォンの買収の時に、立ち上げメンバーとして向こうへ出向し、そこから通信とOTT(Over The Top、動画・音声などのコンテンツ・サービスを提供する事業)を行ったり来たりしています。
そういった中で培ってきた人脈もありました。
当時、イー・モバイルとウィルコム、ソフトバンクモバイルと、1つの会社で3つのキャリア―を持っているという、よく分からない状況になってしまっていたんですよね。
そうしたら今度は、MVNO(他社から通信インフラを借り受け、リーズナブルな料金で独自のサービスを提供する事業者)が出てきて、下からは格安SIMを提供する事業者に叩かれ、3キャリア間ではMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ)で叩き合い、にっちもさっちもいかない状況に陥り、やはりブランドを集約しなくては勝てないということになりました。
もともとイー・モバイルとウィルコムを合わせて、もう少し割安なキャリアでアンドロイド専用のようにして、それをソフトバンクモバイルとツートップ事業にしようという戦略がソフトバンクにあったんですね。
ちょうどその時、私もソフトバンクで仕事をしていたのですが、エリック・ガンというイー・アクセスを作った人物がM&Aで入ってきたわけです。
彼が社内で統合プロジェクトを担当していて、私はWi-Fiをヤフープレミアム会員に提供するということで、MVNOの形でイー・モバイルの回線を売っていました。
そのような経緯でエリックと知り合い、ある時、統合は上手くいっているのかと尋ねたら、「厳しいです」という答えが返ってきました。
何が厳しいのか更に聞いたところ、「そもそもスマホといえば、サービスがあり、端末があり、ブランドがあって初めて成り立つのに、Wi-Fiの会社とPHSの会社がくっついて、アンドロイドを売れといってもどだい無理ではないか」という相談をされたんですね。
「どうしよう、名前もまだ決めてないよ」というような話をしている時に、「ん?」と2人で顔を見合わせるような瞬間があり、一緒にこれをやったらどうだろうかと、ヤフーにはブランドもサービスもアプリも十分にあるじゃないかということで、そこからスタートしたんです。
鉢嶺 ソフトバンクやヤフーの一つの特徴は、村上さんもそうですし、宮坂さんも一部そうかもしれませんし、川邊さん(川邊 健太郎、ヤフー副社長)、おざーん(小澤隆生、ヤフー執行役員)も、前の松本さん(松本 真尚、現在 ベンチャー投資会社WILに在籍)もそうでしたが、孫さんに直談判するような人が重用されますよね。
暴れ馬的な人材が引き上げられるように思います。
村上 そうですね。
それが汐留の文化なのだと思うのですが、我々よりも暴れん坊な人材はソフトバンクグループ内にはたくさんいます。
執行役員や専務が集まる、いわゆるソフトバンクの経営会議というのは、本当に動物園のようで、もう10人くらいが同時にしゃべっているんですよ。
鉢嶺 すると協調性というのはあまり…?
村上 協調性はゼロですね。
合わせようというような発想は全くなく、とにかく基本的には動物園の中で「俺が、俺が」という文化です。
琴坂 そうだとすると非常に気になるのが、そもそもなぜそのようなタイプの人材が集められたのかという話と、そのようなタイプの人材が多い中でなぜ会社が回っているのかという点ですね(笑)
村上 そうですよね、不思議ですよね。
琴坂 不思議ですよね、それが鍵なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
アントレプレナーが経営をドライブする
村上 ソフトバンクグループもヤフーでもそうですが、新規事業の中には上手くいっていないものが結構多いんですよ。
琴坂 実は失敗がたくさんあると。
村上 はい、実はたくさんあります。
スター育成プログラムや、私がやっている社内ハッカソンなど、仕組みやパイプラインはいろいろと用意しているのですが、小粒のものはそれなりに生まれているものの、大きく変革を起こすには至っていません。
大きな変革を生んだものにしても、M&Aで入ってきた人材が花開くというパターンが多く、私自身がM&Aで買われてきた人間ですし、いろいろな事業を買収もしてきました。
今の執行役員でも、もともとアントレプレナーだった人が少なくありません。
事業をドライブして更に先に行く要因の一つは、その辺りのパワーにあると思います。
ソフトバンクも過去いろいろな会社を買収してきましたが、そこから来た人たちが今、執行役員レベルでやっています。
琴坂 それはつまり、アクハイアリング(企業買収による起業家人材の獲得)が鍵だったのではないかという話であり、そのような人材は皆経営者マインドを持っているから、なんだかんだ言っても事業を回してくれるということでしょうか。
村上 そうですね。
更に言えば、自分で事業をやっていた人たちというのは、基本的に言うことを聞かないじゃないですか(笑)
皆自分勝手なんですよ、基本的に。
人の話を聞かないですし。
こういう人材が熱くなって話の収拾が付かなくなっても、一瞬パッと空気がなくなる瞬間があるんですよね。
そのような時に、奉行役のように出てくる人がいるんですね。昔は孫さんで、今は宮内が国内を見ているので宮内が、パッと出てきて、「よし分かった」というようなことを言うわけです。
これとこれはこうして、これとこれをくっつければいいじゃないか、とか。
こういうことを繰り返していくと、磨かれて、最後には確かにそうだなと、納得できるものになります。
鉢嶺 例えば、両社には、アントレプレナー採用、将来独立起業したいんですというような人を積極的に採用するような制度があったりしますか?
村上 それはないですね。
山口 弊社も、やっていた年もありましたが、基本的にやっていません。
ヤフーさんはM&Aを通して、本当にキラ星の人材が集まっているなと思います。
リクルートの場合はどちらかというと、社内起業家タイプ、つまりイントレプレナーが現在の経営陣を占めています。
とはいえ、私も含めてですが、入社時に最初から経営者候補として目を付けられていた人が、上に立っているかというと、そのようなことは決してありません。
リクルートはM&Aではなくて、過去に大量の採用を行っていて、その当時から「かっこいいリクルートパーソン」というのは入社後に新規事業でのし上がるというようなブランディングがされていたので、その何百人の中から一人がイントレプレナーのごとく、様々な事業を創り出し、スケールさせ、経営メンバーとなり、今の経営チームを形成しているのだと思います。
(続)
続きは 「失敗」を前向きに評価する会社こそが変革できる をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子
【編集部コメント】
ヤフーはM&Aでのアクリハイアリング型のM&Aを含め、外部から続々と起業家を集めるのに対し、リクルートは内部から起業家を発掘し育てている、その対比が興味深いです(榎戸)。
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