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「知性の核心とは何か?」8回シリーズ(その7)では、これまでの議論を踏まえて、いま一度、知性の根源に迫ります。ヤフーCSOの安宅さんは、「人間はつい、機械が得意なことが知性であると勘違いしがち」と語ります。人間だけが感じられる、本当の価値とは何か? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2018 プラチナ・スポンサーの レノボジャパン様にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2018年2月20〜22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 4E
知性の核心とは何か?
Supported by レノボジャパン
(スピーカー)
安宅 和人
慶應義塾大学 環境情報学部 教授 /
ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO (Chief Data Officer)
丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO
(モデレーター)
尾原 和啓
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最初の記事
1. 89.1%が“最高だった”と評価した伝説のセッション「知性の核心とは何か?」
1つ前の記事
6. AIが生み出す「未知の領域」が知性を拡張する?
本編
安宅 ちょっといいですか?
(先ほど石川さんから投げ込んでもらった)「人間の知性」と「神の知性」の話をずっと考えていました。
僕はさっきの話にあった、囲碁や将棋におけるソリューション・スペースを探索するというようなことは、知性だとはあまり思いません。
それは機械の方が得意なことなので。
「感情は知性のためにある」という話に近いのですが、「何を知りたいと思うか」「何に答えを出すべきだと思うか」、つまり問いの投げかけと一緒であり、「何に価値があると信じるか」というのが知性の本当の根源的なところだと思います。
「何に価値があると信じるか?」が知性の根源
安宅 あとは機械にやらせておけば良いわけです。
それこそが本当の知性のポイントなのに、人間というのはつい機械が得意な方向が知性であると勘違いしがちだと思います。
それは電卓が出たときに分かったのに、また間違っていると思います。
石川 何が本当に欲しいのか、知りたいのかというのはとても難しいですよね。
安宅 でもずっと問いかけていますよね。
石川 はい。
安宅 それこそが知的活動なんです。
丸 もともと欲しいものなんてないですよ。
だから、ぼーっとして、わーっとやって、家に帰ったらぱたっ、こんな感じです。
石川 丸さんは非常に知識を欲しがっているじゃないですか。
丸 知識は大好きです。気持ちがいいです。あれはなんだろうね。
新しいことを知ったり、後は、答えはないことを考えることで興奮しますね。
石川 北川さんはどうですか。
北川 僕もめちゃくちゃ好きですね。
石川 北川さんは、最近だとどういうことが知りたいのですか。
北川 東京から福岡に乗る飛行機の中で座っていたのですが、ちょっと眠かったので目を閉じました。
楽天株式会社 常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO 北川 拓也さん
目を閉じることが僕はとても好きで、その瞬間に僕は今解きたい問題を考えるんです。
丸 わかります!
北川 考えたかったのは、ポアソン分布からなる人の購買行動でどうやってうちのGMV(流通総額)を説明するのかみたいなことです。
丸 面白いですね(笑)。
北川 そういったことを考える、「知りたい、知りたい」と思う瞬間が一番楽しいですね。
尾原 ちなみに僕の一番大好きな大学教授はポアソン分布を使って、大阪万博でトイレの数をいくつ作れば小便を漏らさずに済むかということを計算していた人でした。
石川 安宅さんは何か知りたいことはありますか?
安宅 最近僕が関心を持っているのは「文明の滅び方」です。
滅び方系の研究をこの半年くらいずっとしています。
尾原 滅びないために研究しているのですか? それともいい滅び方をするために研究しているのですか。
安宅 もちろん滅びないためです(笑)。いい滅び方と滅ぶパターンと、なぜ我々老人のために文明が滅びつつあるのかということです。
なぜ老人のために文明が滅びつつあるのか?
尾原 最後にすごい話が出ていますが。
北川 答えが出ていますね。
安宅 もう少しましな未来はないのかな、残しようはないのかな、ということを最近ずっと考えています。
尾原 なぜその問いを立てるんですか?
安宅 それは今、僕が国の仕事をやりすぎているからだと思います。
非常に簡単に言っちゃうとですね、どうみても僕らの社会は65歳以上の方々と過去の残債に金を使いすぎて、滅びつつあるんですよ。
我々の未来を担う世代の育成や機会不均衡の是正、あるいは科学的な国力、技術や産業の開発、そして現在の働く人たちのスキル刷新に必要ミニマムなリソースを投下できないのです。
私の親も含むシニアな方々は、我々の恩人であり社会功労者であるので礼を尽くすべきなのは当然なのですが、国を1つの家族としてみた時に、このままで良いのかと。
たとえば2016年の場合を例にとると、一般会計予算に社会保険料と運用収入を合わせると我が国の使えるお金としては約170兆円と、世界的に見てもかなりのまとまった額があるのですが、この100兆円以上がそこに使われています。
具体的には120兆円近い社会保障費支出があり、国債、言ってみると昔の社会保障費の残債払い、24兆円を抜くと、正味、普通に使える国家予算が(170兆円のうち)26兆円しかないという衝撃の実態なのです。
社会保障費のうち、60兆円近くが年金、40兆円近くが医療費でかなりの部分はご案内の通りシニア層向けです。
防衛費は米中に比べると桁違いに低くギリギリの水準ですが5兆円、それを引いたら21兆円しか残らないのです。
▶参考:「平成最後の夏期講習」での安宅投げ込み資料、pp.18-20)
そうしたことを毎日考えていると、「これでどうやって国をまわすのだ」とそういう思いになります。
石川 もはや安宅総理ですね(笑)。
安宅 (笑)どうやって解決するかを考えています。
北川 そういうことを考える人がある一定数いないと、物事は解決しないですよね。
いまふと思ったのですが、「知性を持って問いを立てる人」を増やすためにはどうしたらいいのでしょうか?
当たり前のことを、不思議に思う
慶應義塾大学 教授 / ヤフー株式会社 CSO 安宅 和人さん
安宅 どうしたらいいんですかね。答えの出ない問いをどんどんあげることがいいのではないでしょうか。
石川 違和感を覚えられるかというのが大事な気がしています。
北川さんが「人は、自分が不思議に思ったことは絶対に忘れない」と言っていました。
その不思議がどこから生まれてくるかっていうと、「当たり前の中の違和感だ」と北川さんが10年前に言っていました。
丸 きっともう忘れてるって。
北川 (笑)。
石川 僕らの脳というのは色々なことを「当たり前化」してしまうのだと思います。
パターン化してしまうことに長けているのです。
そこで当たり前を当たり前と思わずに、不思議だなと思えるかどうかが大事ですね。
安宅 それはある種の「気づく力」ですよね。
スルッと入って吸収できてしまう人は、僕は知的じゃないと思います。
その人の心の中に何もなければスルッと入るけれど、実際は心の中に色んなものがあるので、いっぱい引っかかって化学反応が起きる。
これが本当の知性だと思います。
尾原 その化学反応に手を出して、いっそ触った方が楽しいと思えるかどうかが知性ですよね。
プロゲーマー・ウメハラ氏の「波動拳」への考察
石川 僕が尊敬しているプロゲーマーがいます。
格闘ゲーム『ストリートファイター』のプロゲーマーである梅原大吾さん(通称:ウメハラ)という方は、世界で最も勝ち続けている男です。
彼の話は非常に面白いのですが、例えば『ストリートファイターV(ファイブ)』というゲームが3年前に出ました。
昨今ではゲーム大会の賞金も高いですし、普通は「どうやって勝つか」を考えるのです。
しかし彼は、勝つことには全然興味がないというのです。
では何を考えているかを聞いたら「このゲームにおける波動拳の役割ってなんだろうか?」みたいなことを考えていると言うのです。
それは周りのゲームプレイヤーからすると「ウメハラお前ちょっと哲学的すぎないか、そこまで考えるのか」と思われます。
でも、彼はそこから考えているのです。
考えるスタート地点が圧倒的に違うのです。
安宅 異常ユニークですね。
石川 そう、異常ユニークなんです。
丸 視点も違いますね。いい視点を持っていますね。
尾原 さっきの「どこまでできるかの限界を考える」という話は結構大事だと思っています。
例えば、ニュートン力学ができることの限界はニュートン自身は知らなくて、アインシュタインの時代になって初めてニュートン力学の限界が分かり、ニュートン力学の使い方が分かったという話があります。
もしかしたら梅原さんは、その波動拳があった世界となかった世界の違いが分かれば、波動拳の限界が分かると思っているのかもしれません。
小泉進次郎氏が語った「政治における勝利」とは?
石川 そういえば、他の友達にも彼と似たような考えをする人間がいるなと思いました。
それが小泉進次郎です。
そう思ったきっかけは、先日の選挙で自民党が大勝したことにあります(※)。
▶編集注:ここでは石川さんは2017年10月に行われた第48回第衆議院議員総選挙について言及しています。同選挙では自由民主党が単独で280超の議席を獲得しました。
テレビに出てキャスターの人に「自民党大勝でしたね。国民の声をどのように受け止めますか」みたいなことを聞かれました。
普通の政治家なら「ありがとうございます。皆さんのご期待に添えるように頑張りたいと思う」「一方でまだまだ至らないところもあります。精一杯尽くす所存でございます」と答えるのが模範的回答です。
しかし小泉進次郎はそう言われて、「あのね」と言ったんです。
「あのね、政治における勝利とは選挙に勝つことではないんです」と。
「政治における勝利とは、この国の持つ可能性を最大限に引き出した時。それが政治の勝利です」という素晴らしいことを言っていました。
キャスターの人は想定外過ぎたのでしょう。
ちょっと3秒くらい黙ってしまって「CMです」と、CMに入ってしまいました。
「おい、そこもっと突っ込めよ」と思いました(笑)。
安宅 かなり異質な見立て方ですよね。
石川 そうです。政治における勝利とは何か!
(続)
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続きは 8. 愛に答えは無い。答えのないものから、知性は生まれる【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成
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