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ICCサミット KYOTO 2020 スタートアップ・カタパルト 総集編に登壇いただいた、T-ICU 中西 智之さんのプレゼンテーション動画【ECMOや人工呼吸器を扱う集中治療医を、医療が手薄な地域にも届ける「T-ICU」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2020 プレミアム・スポンサーのTokyo Prime にサポート頂きました。
▶【ICCサミット10回開催記念特別企画①】歴代スタートアップ・カタパルト優勝・入賞者が再登壇!ライブ中継もあります!(ICC KYOTO 2020)
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【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 8A
第10回開催記念特別企画 STARTUP CATAPULT 総集編
Supported by Tokyo Prime
中西 智之
株式会社T-ICU
代表取締役社長・医師
2001年京都府立医科大学医学部卒業。心臓血管外科医として6年、麻酔科医として2年の経験を積んだ後に、都内救命救急センターに勤務。東日本大震災の際にはDMAT隊員として発災当日から岩手県大船渡市や陸前高田市での医療活動に従事。その後、集中治療専門医の存在の有無による病院間の診療格差に課題を感じ、遠隔集中治療(Tele-ICU)の普及に取り組む株式会社T-ICUを2016年に設立。設立後は三菱総研、500×KOBE、田辺三菱製薬×0→1Booster、ひょうごクリエイティブ起業創出事業、Microsoft Innovation Lab Award 2019など数々のビジネスプランコンテストやアクセラレーションプログラムで賞を獲得。Doctor to Doctor / Nurse to Doctorの遠隔医療の確立と普及に努め、遠隔医療を広めゆくシステム開発にも注力している。集中治療専門医、救急科専門医、麻酔科専門医、日本DMAT隊員。ICCサミット FUKUOKA 2020「カタパルト・グランプリ」優勝。
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2020年カタパルト・グランプリ優勝「遠隔医療」に取り組む「T-ICU」
中西 智之さん 株式会社T-ICUの中西と申します。
我々は「遠隔医療」に取り組んでいます。
「世界中の方々に、最高の医療を届けたい」という思いでやっています。
前回のICCサミット FUKUOKA 2020のカタパルト・グランプリで賞をいただき、たくさんの優勝商品もいただきました。
▶中西さんはICCサミット FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリに登壇し、見事優勝に輝きました。
Doctor to Doctorの遠隔医療で、患者を救う、医療従事者を守る。遠隔ICUの「T-ICU」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】
ありがとうございました。
その中で、ファクトリエのオーダースーツ仕立て券をいただきましたが、私たちの会社は兵庫県にあって新型コロナウイルス感染症の流行の関係で東京に行けないことと、さらにかなりコロナ太りしたので、今は作りたくないということで、それが今大きな悩みです。
集中治療専門医は不足・偏在している
我々が「遠隔ICU」に取り組んだのは、ICUに課題があったからです。
それは、専門医の「不足」と「偏在」という課題です。
日本に医師は32万人いますが、そのうちICUの専門医(集中治療専門医)は0.5%で1,800人しかおらず、不足しています。
そして、その少ない専門医が東京や大阪に偏在しているのです。
円グラフに示したとおり、日本には約1,000ヵ所のICUがありますが、実はそのうちの300ヵ所のICUに専門医が固まっていて、残りの700ヵ所にはいないのです。
この300と700の施設で、医療レベルにかなり差があるという問題があります。
これを解決するのが「遠隔ICU」です。
遠隔ICUはこのようなオフィスを構えて、専門医を集めて行います。
そして、いろいろな病院のICUを繋いで、CTやMRI、あるいはバイタルサインなどを共有した上で、遠隔から専門医が治療方針をアドバイスするという形になっています。
ECMOや人工呼吸器を扱う医師=集中治療医
アメリカでは遠隔ICUはもう20年前からあり、遠隔ICUによって救命率が上がり、死亡率が下がるという論文が出ていますし、合併症が減って医療費が下がることも発表されています。
日本でも今回の新型コロナウイルス感染症の流行で、遠隔ICUというのが、かなり注目をされるようになりました。
報道でよく人工呼吸器やECMO(エクモ)が足りない、さらに、エクモや人工呼吸器を使える医師が足りないということも言われています。
そのエクモや人工呼吸器を扱う医師がまさしく集中治療専門医ですが、彼らがいないということなのです。
私は会社を4年前に作りましたが、4年以上前からある課題が、コロナで浮き彫りになりました。
つまり集中治療専門医はコロナに関係なく、もともと不足していたのです。
COVID-19有識者会議が遠隔ICUの有用性を提言
では、集中治療専門医不足の問題にどう対処するのかということで、遠隔ICUしかないだろうと、現在注目されています。
こちらは、日本医師会が出したCOVID-19有識者会議の中間報告ですが、右側の赤線部分にあるように、遠隔ICUに取り組んでいったほうがいいと提言されました。
▶COVID-19 集中治療体制にかかわるタスクフォース中間報告書
そして、赤線の部分ですが、十分な集中治療の経験がない医師は情報通信機器、テレビ会議などを使って、専門医から人工呼吸器の使い方などの指示を受けたり、連携して診療を行うことは差し支えないということが、厚生労働省の(2020年)4月10日の事務連絡で言われています。
神戸市と提携し、市内の病院に遠隔ICUを提供
これらを受けて、我々は神戸市と提携して、神戸市の予算で神戸市内の病院に遠隔ICUを提供します。
▶T-ICUが神戸市と連携してコロナ対策支援開始(PR TIMES)
普段は病院から契約をいただいていますが、コロナ対策の間だけは神戸市が負担で連携して、今、参加病院を募っているところです。
写真は、8月11日に神戸市長と一緒に会見させていただいたときのものです。
JICAとともに遠隔医療・人材育成の海外展開へ
また、最近は、JICA(独立行政法人 国際協力機構)といろいろな取り組みを始めています
日本からバングラデシュへ遠隔医療を提供するための案件化調査や、コロナを受けての医療機器の輸出、医療機器の使い方や遠隔での人材育成、医療教育などもT-ICUでやってほしいという依頼も受けています。
これらをブラジルやルワンダでもやってほしいというお話も、JICAからいただいています。
内閣府「スーパーシティ構想」に参加
次に、内閣府のスーパーシティ構想ですが、その中に遠隔医療はもともと組み込まれていて、意見交換などを求められるようになりました。
規制改革推進委員会や、地方創生推進事務局などからもお声かけいただいています。
半年前の2020年2月に福岡で登壇させていただいたとき、契約病院が20施設くらいでしたが、27施設(遠隔ICUサービスの「リリーヴ」のみカウント、2021年1月現在)です。
コロナの影響で我々も病院に入らせてもらえませんので、なかなか営業に行けないこともあって契約病院自体は増えていませんが、一方でこのように注目されているという点では追い風もあります。
JICAや内閣府などにも声をかけていただけるような会社になってきました。
遠隔ICUの良さを伝えるための3つのお願い
今日は、3つお願いしたいことがあります。
1つ目は、J-Startupに選ばれたいと思っています(※)。
J-Startup KANSAIのリコメンダーの方がいらっしゃいましたら、ぜひよろしくお願いします。
▶ICCサミット後の2020年10月21日、T-ICUはJ-Startup KANSAIに見事選定されました。
T-ICUがJ-Startup KANSAIに選出(PR TIMES)
2つ目は、遠隔ICUは自治体と組むことが最近増えてきました。
病院はもともと利益率が低いということもありますし、コロナで収益が下がっていることもあって、イニシャルコスト(初期費用)を出すのがなかなか難しいと言われます。
遠隔ICUは良いシステムだけれども、費用面で難しいということで、そこを神戸市のような形で、自治体に負担していただくことが多くなっています。
いろいろな自治体と繋がりのある方、あるいは困っている自治体がありましたら、ぜひご紹介いただきたいと思います。
3つ目は、僕はICUの漫画を作りたいと思っています。
なぜ漫画を作りたいかといいますと、遠隔ICUの良さを伝えたいのです。
集中治療専門医の中でもすごくいいと言われていて、皆さんから頑張れと言っていただいていますが、正直思ったより広がっていません。
僕は全然分かっておらず、“ビジネスあるある”で、「良いものをやれば広がる」という考えを持っていたのですが、実際は広がっていません。
集中治療専門医がいないデメリットを知ってもらいたい
なぜ広がっていないのかというと、ICUというものがあまり知られていないのです。
皆さんの中にもご存じない方が多いと思いますが、「救急」と「ICU」は別なのです。
救急の専門医もいるし、ICUの専門医もいるのです。
ここの区別が意外についていないのは、実は一般の方だけでなく、医療従事者もそうです。
なぜかというと、ICUが新しい領域だからです。
私が20年前に医師になるときに、外科になるか内科になるか選べましたが、実はその中の選択肢にICUはありませんでした。
医療の1つの領域として、まだあまり確立されていませんでした。
それが、15年前くらいからだんだん確立されてきて、そして専門医も増えてきているのが現状です。
つまり、20年前になかったということは、それより前の先生はICUがある状況で仕事をしてこなかったのです。
つまり、私より上の世代、50~60歳の先生はICUがある状況をあまり知りません。
そうすると、ICUの専門医がいないデメリットもあまり分かっておられません。
本来ICUの専門医がいない所を遠隔ICUでサポートするわけですが、ICUの医師がいなくても何とかなっていると思っているのです。
ですが、専門医から見ると全然何ともなっていないのです。そこを分かっていただきたいです。
そのためには、広く一般の方にも、医療従事者にも知ってもらいたい。
そのためには、漫画を作るのが一番いいのではないかと思っていますが、まだ全然手を付けていないので、お力を貸してくれる方がいらっしゃったら、ぜひお願いします。
広くICUの現状と課題を知ってもらうために、『ICU・集中治療室物語ープロフェッショナルたちの静かな闘いー 』という本も書いてみました。
ICUがどういうところかを紹介しています。Amazonでも買えますのでよろしくお願いします。
私たちには救える命がある。
我々は医療のど真ん中に取り組んでいるスタートアップです。
安全第一でしっかり進めていこうと思っています。
我々には救える命があります。
どうもありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/SNOWLIGHT
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