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2020年12月某日、ICC一行は、関西へとオフシーズン恒例の2泊3日CRAFTED TOURへ出かけました。訪問したのは、CRAFTEDカタパルトを中心に次回登壇いただく企業を中心に6社です。今回訪問したのは、CRAFTEDカタパルトの審査員を務めている木村祥一郎さんの木村石鹸です。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
東京のICCオフィスイベントに時々顔を出してくださる木村石鹸の木村 祥一郎さんは、前回ICCサミット KYOTO 2020が初参加。「以前はこういったカンファレンスが苦手だった」とあとでお聞きしましたが、とくにCRAFTEDカタパルトに集まる皆さんと意気投合したそうで、次回に登壇する堀田カーペットをご紹介いただきました。
今回のCRAFTED TOURは関西を訪問するので、木村石鹸の伝統の釜焚き製法を見学しよう!ということになったのですが、現在の状況を鑑みて工場見学は中止しているとのこと、今回のオフィス訪問は、商品の話や会社についてうかがいました。
木村石鹸のオフィスを訪問
ICC一行をお迎えいただいたのは、木村さんと入社2年目の尾崎 笑さん。木村石鹸の制服を着て、オフィスをご案内くださいましたが、失礼ながら大正13年(西暦1924年)創業の老舗にも似つかわしくないフレッシュさです。なぜ木村石鹸に入ったのかを尋ねてみました。
「就活アプリで見るまで木村石鹸を知りませんでした。会社説明の日に台風が来て、もともと5名出席の予定が、社長と1対1になってしまったのです。そこで話を聞いて、老舗なのに新しい商品を出しているところに惹かれました」
もともとは社員の平均年齢が45〜46歳の会社だったといいますが、それから新卒を採り始めて、今年は新卒4名、高卒2名の系6人が入社したといいます。
「最初の1人目が入ったときは、みんな嫌がるかな、どう反応するかな?と思っていたのですが、その子が歩いてきたら、みんなが手を振ったり、一生懸命仕事を教えてあげていた。まるで過疎の村に久々に生まれた赤ちゃん状態でした(笑)」
現在は若手中心に新しい商品のアイデアを出し、中堅社員が技術と経験でそれをサポートするという形が生まれているそう。詳しいお話をうかがう前に、尾崎さんにオフィスをご案内いただきました。
若手社員が、新しい商品や社内にいろいろなものを作っているといいます
商品を研究開発するオフィスを見学
見通しのいいオフィスには、整然と実験器具のようなものが並んでいます。一角には同業他社のさまざまな製品が収められた棚があり、その成分や効果などを常に研究する一方、実現したい機能を持つ自社製品を開発しています。
石鹸・洗剤に配合するさまざまな材料や実験器具が並んだスペースは、オフィスというよりは、まるで学校の理科室準備室のような雰囲気です。
洗剤は、異なる環境でも安定した性能を保たなければなりません。オフィスには冷蔵庫やヒーターのついた貯蔵庫があり、寒い地域と暑い地域での安定性を見るべく、開発中の洗剤が保管されています。右のドアポケットにはケチャップや焼き肉のたれなど、家庭で想定される汚れの素が入っていました。
洗剤で「除菌」とうたわれているものは、実際に除菌の効果があるかどうか試験をパスしなければならないそうで、別の貯蔵庫の中には、その検証に使うカビなども培養されていました。
汚れといってもいろいろあり、木村石鹸はなんと造幣局で硬貨を洗う専用洗剤まで作っています。
商店街の福引きのような機械に研磨石と洗剤を入れて回転させて汚れを落とします
この前日に訪問した、堀田カーペットの専用クリーナーも話に伺ったとおり、開発中の模様です。ウールのカーペットは遊び毛を取って掃除機でメンテするのが基本とのお話でしたが、それでもクリーナーで汚れを落としたいというニーズに応えるための商品だそう。
成分分析を行なう装置。サンプルを入れると他社製品でも成分の内訳が判明
オフィスを出ると、業務用洗剤の大きな容器が並んでいます。なんと1タンク1950kg入り。
オフィス見学を終えて戻ってくると、木村石鹸のハンドソープ『SOMALI』で手を洗いました。「植物オイル100%の純石けん」「天然ミネラル」「植物由来の成分」のみで作った、手肌への刺激を極力抑えた優しい石鹸で、洗っている最中から香りに癒やされます。
お話をうかがった会議室には、その「SOMALI」のシリーズが並んでいました。
大正13年の創業以来、BtoBでプロが使うクオリティの石鹸を納品してきた木村石鹸が、初めて自社ブランドを作った反響から、まずはお話をうかがっていきましょう。
縁遠い世界で評価されて「これはいける」と
木村さん「ずっとtoBでやってきたので、toCは社内でも想像がつかないだろうなと思っていました。社内で3人である程度形になってから公開したのですが、100〜200円が相場の台所用洗剤で1,200円という価格は、生協で販売しているものでも500円で高いと言われていたので、最初は営業担当が嫌がりました。
そこで直販サイトで細々と販売を開始したのですが、2ヵ月ぐらいして、とあるデザインの展示会に出品しました。こういった洗剤は普通はギフトや日用品の展示会などに出すのですが、インテリア家具やアパレルを対象とした展示会で、洗剤は木村石鹸だけでした。
用途で訴求して台所用洗剤のバイヤーを集めるよりも、インテリアの変わった雑貨や普通ではない展示会のほうがいいだろうと思って出してみたのですが、デザイン系だけに、出展のためのブースの規定が厳しくて大変でした(笑)。
でも、フタを空けてみたら大絶賛で、面白いものだということでバイヤーさんたちが飛びついてくれたんです。懸念していた価格のことも、他に出品されているものが家具など比較対象が高かったので、安く見えたんじゃないでしょうか(笑)。
&SOAP(アンドソープ)は、ホームケア商品のブランド。機能性に加えてユニセックスなデザインで家事の平等分担をメッセージに込めている
その場でLOFTや中川政七商店、フランフランはやの社長さんも絶賛してくださって取り扱いが決まりました。縁遠い世界で評価されたことで、営業も『これはいける』とやる気になって、社内もそれを応援しようというムードになったのです。
加えて自社ブランドで認知度獲得ができ、生協以外にもOEMの案件が来ました」
現在は最新商品のシャンプー「12/JU-NI(ジューニ)」も含め、7つのブランドを展開。それ以外にも他の企業とのコラボを行っています。新卒の社員でも、やりたいことを見つけては、makuakeなどで新しい商品を発表するというチャレンジを続けているそうです。
現在展開中のクラウドファンディングは、入社2〜3年目の社員が考えたボディスクラブ
ベテランが若者を支え、自由にものづくりができる組織
オフィスをご案内いただいた尾崎さんに替わって、この取材の立ち会いは新入社員の林さん。「会社のことを知ってもらえるいい機会」と木村さんは言います。たしかに、社長が会社のことを部外者に説明するときに立ち会うのは、いいことかもしれません。
木村さん「組織としては、ブラジルの『セムコ』(※)という会社を、理想としています。ああいう感じのボトムアップな会社にしたい。そう思う理由は、大学4回生のときに起業した経験からです。
▶編集注:セムコ社の経営スタイルについて紹介
就業規則も序列もない!3000人の社員を管理せずに成長した企業の秘密~『奇跡の組織』(秦 卓民 著)を読む(DIAMOND online)
事業が成長して30人の規模まではよかったのですが、立ち上げたメンバーには誰も創業の経験がなく、あとから入ってきた人たちに、あの制度はないのか、この制度はないのかと言われて作っていったら、組織はしっかりしたけれど、ベンチャーではなくなってしまったんです。
人類が初めて月面着陸に成功したアポロ計画のの飛行士たちは、平均年齢26〜27歳だといいますが、その成功を支えていたのは、ベテランエンジニアやプログラムディレクター。彼らが若者たちを支えて輝かせたのです。
家業の木村石鹸に帰ってくるときは気が進まなかったのですが、そういう組織にできないかなと考えました。
そしてやり始めたら、うちの社員たちにはポテンシャルがすごくあった。信頼して自由に任せたら、すごく積極的に考えてくれるのです」
投資家と事業家のように、社員と向き合う評価制度
自律的に働く取り組みの一つが、評価制度。木村石鹸では給与は自己申告制で、社員がまず、自分が給与としてほしい額と、そのために何をするかを提案するといいます。
木村さん「投資家と事業家の関係と同じだと思うのです。半年後に◯◯をする、という未来に経営者は投資する。結果を評価するのは、評価側は気が重くなりますが、未来に投資だと明るくなります。
先にお金を払うと、提案をやりとげさせなければと周りもサポートします。仮に、提案した内容が達成不可能な状況に陥ったとしても、その報酬に見合った価値を別の何かで提供しなければ、社員もマネジャーもそんな風に考えるわけです。
事業プランだけでなく、失敗してもどういう経験を積んでいるか、熱意・能力・実績で評価するのです。その人の言う未来を信頼できるかどうかですね」
その結果、若手から中堅まで大きく意識が変わって、意見が上がってくるようになったのだそうです。オフィスを見学したときも、ICC一行が尾崎さんに質問していると、それに他の社員の方たちが自然と説明に加わってくださるなど、自然と助け合っている様子が印象的でした。
三重県伊賀市に建設している工場は、伝統の釜焚き製法によるものづくりや見学だけでなく、ユーザーも交えたイベントや、広い体験の場になる予定だそうです。映像を見せていただきましたが、一見工場には見えない博物館のような雰囲気でした。
その工場「IGA STUDIO PROJECT」にあたっては、一切デベロッパーに任せず、社員が鉄管から内装まで、個別発注でオーダーして作っているというのも驚きです。
木村さん「立ち上げメンバーが、工場長は置きたくない、みんなが工場長だと言い出したんです(笑)」
誰に要件を伝えたらいいのか、コミュニケーションに困るんですが、と木村さんは楽しそうに笑っていました。
「本当に汚れが落ちるので社員がみんな使っている」「プロ仕様だから一般のお客さんは買わないと思っていた」「くせ毛がまっすぐになってしまい、むしろ不都合」などと、社員のみなさんが愛をもって率直に商品を語る様子は、木村石鹸のブランドイメージそのまま。「くらし、気持ち、ピカピカ」と胸を張れる商品を届けているという誇りを感じました。
ICCサミットの手洗いスペースに「SOMALI」を設置
私たちが今回のオフィス訪問で体験した「SOMALI」ハンドソープの洗い心地の素晴らしさを体験していただきたく、会場の手洗いスペースには「SOMALI」を設置する予定です。会場で見かけたら、ぜひ使ってみてくださいね。
最後に、オフィス見学を受け入れてくださった、木村石鹸の皆さま、どうもありがとうございました! 以上、早速社員の皆さまイチオシの「お風呂まるごと洗浄剤」を使ってお風呂がピカピカになった、浅郷がお送りしました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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