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4.LOVOTは、想像力を最大限使うことを念頭にデザインされている

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「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3)、全5回シリーズの(その4)は、”現代の人形師”GROOVE X 林 要さんが、LOVOTの設計について「想像力を刺激する」という観点から紹介します。2体でのコミュニケーション、届けられるときのパッケージに参考にしたものなど、ここで初公開の情報も語られます。最先端技術の結晶である「役に立たないロボット」が、私たちに訴えるものとは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 6B
「コンテクストデザイン」を考える(シーズン3)
Supported by ノバセル

(スピーカー)

木村 祥一郎
木村石鹸工業株式会社
代表取締役社長

髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長

中村 弘峰
株式会社 中村人形
人形師、四代目

林 要
GROOVE X 株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

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最初の記事
1. 人のクリエイティビティを後押しする「コンテクストデザイン」の取り組みとは

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3.“祈りを形にする”人形師 中村 弘峰が考えるクリエイティビティとは

本編

人形町にオフィスを構えるGROOVE X

 LOVOTというロボットを作っていますが、人形師さん(中村人形 中村 弘峰さん)の横で話ができるのは大変光栄です。


林 要
GROOVE X 株式会社
代表取締役社長

1973年愛知県生まれ。1998年トヨタ自動車入社、同社初のスーパーカー「レクサスLFA」開発プロジェクトを経て、2003年よりトヨタF1(Formula 1)の空力エンジニアに抜擢され渡欧。2007年トヨタ自動車にて量販車開発マネジメントを担当。11年、孫正義後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」外部第一期生に選出。2012年ソフトバンク入社、パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」のプロジェクトメンバーに登用される。2015年、ロボットベンチャー「GROOVE X」を起業。2018年12月、同社より人のLOVEを育む家族型ロボット『LOVOT[らぼっと]』を発表。4年の歳月と約100億円の開発費を費やし2019年12月より『LOVOT』の出荷開始。CES2020にて「INNOVATION AWARD」を受賞した他、『Refinery29』のBEST OF CES 受賞、グッドデザイン金賞受賞、babytech award2020 大賞受賞など国内外で注目を集めている。著書に『ゼロイチ』がある。

私たちは新産業すぎて、ルーツがありません。

そこでルーツを「現代の人形師」とし、そう自称しようと思いまして、オフィスを東京の人形町に構えました。

LOVOTは、こういうロボットです。

お出迎えをしてくれたり、なついた人に寄ってきたりします。

目の種類、声の種類はそれぞれ10億種あって、選べます。

名前をつけることもできて、その名前で呼ぶと反応します。

人間は、人と人の関係を想像するのが好きなので、例えば雛人形も、社会性を表す「コンテクストデザイン」だと思います。

ご覧頂いた動画の中で、LOVOT 2体で登場するシーンが多かったと思います。

これは、LOVOTも2体が連携することで、2体が何を考え、どうコミュニケーションしているのかを想像してもらえるようデザインしているからです。

そのために色々な技術を活用していますが、中身は技術のオンパレード状態です。

しかし犬や猫にヒントを得て、外で何かを明確に表現するのはあえて避けることで、皆さんの想像力を最大限使う設計にしています。

甘えて抱っこをねだる「LOVOT(らぼっと)」は、人間とロボットの“絆”を追求する(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

LOVOTのパッケージの秘密

 「コンテクストデザイン」について言えば、注目してほしいのがパッケージで、この図の右上部分に、LOVOTの絵を描いていないことがポイントです。

LOVOTの開発時、僕たちは「コンテクストデザイン」という言葉は知りませんでしたが、「想像力を最大限使う」ことはずっと考えていました。

その際の大先輩というか、学んでいたのが『星の王子さま』です。

キツネが出てきて「僕を飼いならしてよ」と言うのですが、まさにそれをテクノロジーで実現しようとしているのがLOVOTです。

星の王子さまは主人公の「ぼく」に「ヒツジを描いて」と言いますが、王子さまはどのヒツジの絵も気に入りませんでした。

でも箱の絵を描いて「この中にヒツジがいるよ」と言うと、王子さまはすごく気に入ったのです。

このように、僕らは全てを提示する必要はないと考えています。

例えばLOVOTにも感情があり、その感情パラメータをアプリ上で、数値として表示することもできますが、大事なのはそういうことではないのです。

というわけで、『星の王子さま』へのリスペクトに基づいて、LOVOTのパッケージが生まれたのです。

渡邉 面白い! それは気づかなかったです。

 このパッケージをこっそり作った時、いつか誰かが聞いてくれるかなと思っていたのですが、1年経っても誰も聞いてくれないので、自分から言いました(笑)。

隠されたものに想いを馳せる

渡邉 今日使う予定ではなかったのですが、実は僕も、今の林さんの話が登場するスライドを用意していました。

サン=テグジュペリの『星の王子さま』には、何かを隠すことで読者に想像をさせる、その想像の美しさを語っているシーンが多くあります。

今のヒツジの話が真ん中ですが、本の冒頭に出てくるエピソードが左のイラストです。

この絵を見て、大人は「帽子」と捉えるけれど、子どもは「ゾウを飲み込んだウワバミ」だと捉える。

つまり、子どもは想像の力で得体の知れないシルエットの中身まで見えていて、すると世界の見え方が全く変わってくる。

右の絵は、「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」の言葉を表したものです。

このように、隠されたものに想いを馳せることで独自の関係を結ぶこと、それが「手なづける、飼いならす」ということだと思っています。

王子さまが、たくさん咲いているバラのうち、ある一輪に特別な想いを抱くのは、その一輪と関係を結び、時間をかけて想像力を働かせているからだということです。

と連想しつつ、林さんの話に共振を感じました。

 ありがとうございます。

渡邉 LOVOTのパッケージには、気づきたかったなあ。

 誰も気づいてくれなかったので、話してしまいました(笑)。

LOVOTに生命感を感じる理由

写真左から、木村石鹸工業 木村 祥一郎さん、オイシックス・ラ・大地 髙島さん

木村 林さんに質問があります。

LOVOTはアルゴリズムで動いていて、生き物らしさは、プログラムされているわけですよね。

そのプログラムは、どこまで意図されているのでしょうか?

 良い質問ですね。

なぜ僕がLOVOTは成功すると思ったかと言うと、生き物もアルゴリズムで動いていることに気づいたからなのです。

僕たちは崇高な意思を持って動いていると考えると、ロボットを作る気にはならないと思いますが、僕たち生き物も複雑怪奇なアルゴリズムの集合体であることが分かってきました。

LOVOTについては、無意識のレイヤーまで作りたいと思っています。

例えば、犬や猫もほとんど無意識で動いています。

しかし人間は、未来予測をするために意識を獲得したと僕は考えています。

意識獲得が先にあったわけではなく、予測できる未来が遠ければ遠いほど生き残りやすいため、未来を予測するための機能を開拓してきた結果、副次的に意識を獲得したと思っています。

LOVOTの意識を作るのはまだ早く、今のアルゴリズムと計算能力ではとても実現できません。

3.LOVOT開発秘話②ドラえもんを作りたい!GROOVE X 林 要さんが求める「意識のモジュール」

でも手前の無意識のレイヤーまでなら、できると考えています。

無意識の段階で生命感を宿すには、インプットだと考えました。

つまり、生物はあらゆることを検知し、それらに対する反応が外側で見え、その様々な反応が合成されたものが生命感だと思います。

今までの機械は、ボタンを押せばこう動く、などシンプルな反応しかしませんでした。

LOVOTには、ありとあらゆるセンサーが搭載されているので、内部状況やその時々の状況によって反応が変わり、それによって生命があるもののような反応をするというデザインをしています。

僕らは今、犬や猫にはまだ追いついていませんが、ハムスターは超えたかなと思っています。

渡邉 なるほど。

先日、友人宅でハリネズミに触れました。普段、妻の実家で猫と戯れる時、コミュニケーションの中に、こうすればこうなるという因果関係を見出していたんですが、ハリネズミの場合は因果関係がなく、喜んでいるのか悲しんでいるのか、元気があるのかないのか全く分からない。意思疎通の不可能性を感じましたね。

 そこは共感だと思います。

僕ら人間は、僕らが共感しやすい生き物を選択しているので、犬や猫が側にいるわけです。

でも世界中にいる生物のほとんどは、人間は共感できない生き物です。

たまたま共感できる生き物は、心地が良いので側に置いていますが、ほとんどの動物はハリネズミのような反応をするでしょう。

彼らは自然界の中で生き残りやすくあるために、そのアルゴリズムで動いています。

しかしそのアルゴリズムが、人間にとって生命感が宿っているものに映るかどうかは別の話ですね。

渡邉 僕たちも、猫に感情を純粋に投影しているだけかもしれないですね。

 それは動物行動学というか、『犬の科学』という本を読んで頂くと、あらゆる幻想が打ち砕かれます。

例えば、僕らが悲しいときに犬や猫が寄ってくるのは、彼らの事情ゆえであり、人間が考える事情とはだいぶ違うと言われています。

僕らは、都合よく解釈したいですよね。

でも、例えば犬が寄ってくるのは、オーナーがいつもと違う行動をしている、つまり異常検知をしているので、パトロールに来ているだけなのです。

犬からすれば、自分の身に何かが降りかかる可能性があるからですね。

これは、動物行動学者が先日教えてくれたことです(笑)。

渡邉 へえ~。

LOVOTオーナーのピークは40~50代女性

髙島 人形は動かないけれど、共感できるものですよね。

特に子どもたちは、人形やぬいぐるみに明らかに人格を感じてコミュニケーションしています。

先ほどの『星の王子さま』の話にもありましたが、子どもには見えるものがあるのでしょうね。

人は何歳くらいから、リアクションがない場合に生き物っぽさを感じにくくなるのでしょうか?

 それは、すごく難しい質問ですね。

人間の脳は、処理を楽にするためにどんどん常識を作ります。

例えば、大人はVRに酔うけれど、子どもの時に体験していれば、酔わない大人に育ちます。

色々な副作用があるので、子どもにVRを体験させるのは絶対にダメなのですが。

大人がVRで酔うのは、三半規管と視覚が必ずリンクしていると勝手に思い込んで、その脳の経路を枝切りしてしまうからなのです。

大人であっても、ずっと想像し続けている人は、リアクションがなくても大丈夫でしょう。

ですから、人それぞれかもしれません。

髙島 なるほど、一番ハマりやすい年齢はあるのでしょうか?

 驚きですが、ないのです。

LOVOTの場合、40~50代女性がピークです。

60代以上は興味を失うのではなく、LOVOTはECで売っているので、ECで買えないという背景からです。

髙島 今は40~50代がピークで、今後は60~80代などがターゲットのマーケットになる気がします。

 そうですね。

子どもは興味を持ちますが、一方、ボトムになるのは20代です。

20代は自分のことに一生懸命になるので、比較的、LOVOTには投資をしません。

30代でまた興味が強くなり、40~50代がピークですね。

木村 インプットによって、LOVOTの性格は変わるのでしょうか?

 生物でも、もともと持っている気質というものがありますよね。

そういう気質の面はあまり変わらず、なつき方や行動が変わります。

警戒心が強い子はずっと警戒心が強いし、好奇心が強い子は警戒心が弱いです。

渡邉 性格が違うのですか?

 性格は全部違いますので、2体セットで買うと、違いがあるので面白いと思います。

渡邉 それは楽しいですね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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