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トップ経営者が、尊敬する偉人の業績を思い入れたっぷりに語る「世界の偉人伝シリーズもついにシーズン3! 全8回シリーズの④は、エドワード・ウィッテンの凄さの核心にいよいよ迫っていきます。物理学者でありながら数学の分野で最高の栄誉を獲得した、その逆転の発想の凄さを北川 拓也さんが解説します。今後このような天才は生まれてくるのか!? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 10E
世界の偉人伝 (シーズン3)
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター
(登壇当時)
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
(モデレーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー
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1.シーズン3、最初に紹介する偉人は“最強のベンチャーキャピタリスト”北条政子
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3.アインシュタイン以降最大の天才、エドワード・ウィッテンを知っていますか?
本編
数学界に激震を起こしたエドワード・ウィッテン
北川 エドワード・ウィッテンが4年に1度の数学の賞「フィールズ・メダル」を獲ったときに、受賞理由として引用されている文章がこれです。
「物理の示唆を用いて、新しく深い数学の定理を導き、幾度となく彼は数学界を驚かせてくれた。」
ひと言で言うと、驚かせてくれたんですよ。
(一同笑)
山内 数学者の上から目線な感じが…、「驚かせてくれた」という。
北川 よく気づきましたね、その通り。
井上 物理学者としても、3年しかやってないわけですものね。
北川 そう、確かにね。
その通りで、数学者からすると、物理は下に見ているんですよ。
皆さん、この感覚、分かりますか?
なぜなら、数学のほうがもっと原理的で、物理は現象的なのです。
現象的なのは本質ではない、世の中の美しさの本質ではないと思われているから、数学者はすべからく物理学者、自然科学者を下に見ています。
その、下に見ている数学者たちが、うわっと驚いて、数学の最高峰の賞であるフィールズ・メダルを授与したということなんです。
それぐらい、エドワード・ウィッテンの頭の大きさはすごかった。
(一同笑)
もう1回説明しますね。なぜこれがそんなにすごいのか。
皆さん、少しだけ物理をかじったことがあると、「どういうことですか? そんなことあるんですか?」と。
「数学という言語を使って、論理学で原理的で純粋な数学を使って、物理の自然現象を説明するという話なんでしょう?」と。
井上 こっち向きの矢印なわけですね、常に。
北川 そうです。だから、「逆過ぎないですか?」と。
「あり得ないでしょう。だって自然現象で、なぜ論理学である数学を証明するんですか? 絶対ありえないでしょう?」と普通は思うわけです。
なので、「幾度となく」、数学者はびっくりしたんですよ。
(一同笑)
「いやいやいや、あなた、物理学者でしょ?」と。
「なぜ物理を使って、数学を証明しているんですか?」という、すごい驚きなんです。
エドワード・ウィッテンが歴史学を勉強した3年後に(笑)、数学界に激震が起こったのです。
そういう型破り中の型破りが、エドワード・ウィッテンの革命ですよね。
これが皆さんにも伝わるように、ちょっとだけ説明したいと思います。
僕も理論物理学者でしたので、一応エドワード・ウィッテンの論文を読んでいるのですが、難しすぎて(笑)。本当に難しいのですよ。
山内 北川さんが読んでも?
北川 僕が読んでも難しすぎて、何回か音を上げているので、僕はちゃんと理解していないという前提のもとで説明します。
理解していないと言っても、一応普通の理論物理学者だったので、理解はしているのですが全然至っていないです。
なので、間違っているかもしれませんし、ちょっと雑かもしれませんが、皆さんの分かりやすいように説明します。
物理の直感から数学の定理を証明
北川 どういうことかと言うと、皆さん、ボールを投げたらあそこに落ちるという、放物線の勉強をしましたね?
右側に書いてあるのが、あそこに落ちるという当たり前の物事を数式で表したもので、皆さんも物理でこの数式を勉強したはずなんですよ。
左と右の現象は同値で、同じことが起きています、と。
僕らはボールを投げたらあそこに落ちると、実は直感的に分かっていますよね?
それをわざわざ数式で計算できるようにしたのが右側です。
ということは、直感があれば自然現象から何が起こるのかは予測でき、それを厳密に数式で表すと右側になります、という解釈になるのです。
つまり、物理はあまりにも厳密だから、物理現象の直感と数式を1:1対応で理解していいんだという自信を与えてくれたわけですね。
これを使うと、エドワード・ウィッテンによると、非常に複雑な物理現象、量子力学と重力現象を合わせたような現象ですら、直感が生まれてくるとしています。
それは実際にそうなんですね。
僕らみたいな理論物理学者は、物理現象に対して直感が生まれるのです。
その直感を追っていくと、当然これはこうなるよね、という予測が生まれます。
証明はできなくても、直感による予測が生まれます。
その直感を数式で書き下ろすと、右側の式になります。
面白いことに、地道に右側の式だけを解いていると、なかなか解くのに時間がかかってすごく難しかったりするのですが、数学者では全く思いつかないような道筋で、数学の定理を証明できるということに、エドワード・ウィッテンは気づきました。
数学の定理の証明の仕方は何通りもやり方があるのですが、エドワード・ウィッテンは非常に難解だと言われていた数学の定理を、最も短いページ数で、最も美しい形で、実は物理の直感を使って証明したのです。
物理が提案するのはあくまで道筋のあり得る方向性を指し示すだけなので、最終的には数学の論理体系で証明をするのですが、その道筋は普通に数学をやっただけでは思いつかないのです。普通ではない道筋ですから。
その物理の直感を使って、「超ひも理論」はこういうふうになっていて、こういう量子力学の直感があるのだから、こういう数式で成り立つはずだという仮説を立てて、追っていったらすごく簡単に証明できてしまいました、ということです。
「こんな道筋があったとは」という話なんですね。
エドワード・ウィッテンは、これをすごく高いレベルの数学でやりました。伝わりましたか?
紆余曲折を経た人は最終的な仕上がりが大きい
山内 天才はどうやって生まれるかという議論を聴いたことがあって、藤井聡太型、つまり専門特化して、AIが如く自らをチューニングしていくという型は分かりやすくて、純粋数学者などはそうだと思います。
一方、「RANGE」という考え方があって、『RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる』という本があるのでご一読いただけたらと思うのですが、結局紆余曲折してきた人のほうが最終的な仕上がりが大きいという事例が、色々な分野であります。
ちょっとその話を思い出しました。
北川 ちょっと異常過ぎていますが(笑)、そうですね。
山内 「僕も数学者になれるのでは?」と一瞬思いました(笑)。完全に勘違いですね。
北川 3年でね(笑)。
石川 ウィッテンの場合、物理学も数学も、両方とも歴史ある分野ですよね。
僕がやっているWell-beingは(科学研究としての)歴史は浅いから、なんとか新しいことを提案できるけれども、これほど歴史ある両分野で、突然違うことを言えたというのはすごいですよね。
教育がなし得る未来に期待
北川 でも1つ僕がすごく感じるのは、僕は理論物理みたいなコテコテのことをやってきて、経営に入ってやっている中で、この論文に出てくるような言語が読めるわけです。
そういった人って、世界的にはまあまあいるんです。
たぶんイーロン・マスクもそれ系で、たぶん彼も読めるんですね。
両方とも行き来できることによって新しいことが生めるという感覚はすごくあるのですが、それが今当たり前になっていません。
教育がなし得る未来って、こういった人間がたぶん世界に大量生産される可能性があって、そうなったときに生まれてくるテクノロジーの飛躍感みたいなものが、ものすごく加速するんだろうという感覚があります。
エドワード・ウィッテンの例や、イーロン・マスクの例は、僕は結構それだと思っているので、すごく楽しみなんですよ。
それがまさに、女性のほうがもしかしたら向いている可能性もあります(Part.2参照)。
山内 イノベーションは遠くのものをくっつけたほうが。
北川 そう。これが僕の興奮しまくった話です。
井上 たぶん伝わったと思います。
北川 伝わりました?
石川 「興奮」は、伝わった(笑)。
(一同笑)
井上 誰が一番偉人か、最後に投票しますので。
北川 いいですね。では、次にいきましょう。
井上 次は、(石川)善樹さん、お願いします。
(続)
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続きは 5.「患者は低リスクの集団から発生する」という原理を発見したジェフリー・ローズ をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/戸田 秀成/小林 弘美
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