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5.「患者は低リスクの集団から発生する」という原理を発見したジェフリー・ローズ

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トップ経営者が、尊敬する偉人の業績を思い入れたっぷりに語る「世界の偉人伝シリーズもついにシーズン3! 全8回シリーズの⑤は、石川 善樹さんがお気に入りの偉人、ジェフリー・ローズについてプレゼンします。予防医学の大先輩であるこの人物、41歳のときに交通事故に遭ってから覚醒したといいます。そして今なお、私たちが誤解している健康・不健康の”思い込み”を覆してみせます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 10E
世界の偉人伝 (シーズン3)
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター
(登壇当時)

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

「世界の偉人伝 (シーズン3)」の配信済み記事一覧


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1.シーズン3、最初に紹介する偉人は“最強のベンチャーキャピタリスト”北条政子

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4.物理の直感を使い、数学の定理を証明したエドワード・ウィッテンの凄さ

本編

【石川 善樹さん選】予防医学の概念を覆したジェフリー・ローズ

井上 次は、(石川)善樹さん、お願いします。

石川 (北川)拓也が物理の話(Part.3~4参照)をするならば、自分は昔、予防医学をやっていたなと久しぶりに思い出して(笑)、ジェフリー・ローズ(Geoffrey Arthur Rose 1926〜1993)を取り上げることにしました。

彼は予防とは何かという、予防の概念を完全に覆した人です。

予防医学の授業は、最初にジェフリー・ローズから習うのですが、ところがこれがあまりにも直感に反し過ぎていて、そこでみんなつまずくのです。

予防医学は病気を予防しようという、極めて単純なことをしているので、なぜ、そんな逆説が生まれ得るんだ、と。

病気を予防しようと思ったら、検査してリスクが高ければ何かしましょう、何も無ければ大丈夫ですというのが、毎年受けている健康診断ですよね?

本当に、そうなのか?ということなんですよ(笑)。

山内 えっ、違うんですか?

石川 ジェフリー・ローズが1994年に『The Strategy of Preventive Medicine予防医学のストラテジー)』という本を出して、これが予防医学の研究者をびっくりさせたのです。

予防医学界におけるエドワード・ウィッテン(Part.3〜4参照)です、この人は。

交通事故で覚醒し、1秒でも時間を無駄にしないと決意

石川 なぜすごかったかについてお話ししたいと思います。どういう生い立ちだったかというと、イギリスで生まれてお医者さんになりました。そこまでは普通でした。

41歳のときに交通事故にあって、先ほどの写真を見ると、若干目が不自然なのに気づきますか?

片目が義眼なのです。

この事故によってジェフリー・ローズは、自分が生かされているのだという感覚を持つようになりました。

だから、自分に与えられた時間は、1秒たりとも無駄にしないのだと、強く決意したのです。

ここからなんですよ。

山内 偉人感がありますね。

石川 偉人感があるでしょう? 実はジェフリー・ローズは41歳から覚醒します。

井上 41歳からなんですね。

石川 時間を無駄にしたくないとみんな思いますよね?

時間を無駄にしないためには、どこから始めたらいいのかということを、ジェフリー・ローズは僕たちに教えてくれるのです。

根本原理にさかのぼって考える人はとても少ない

石川 根本原理にさかのぼって、そこから始めるということです。

これは、実はイーロン・マスクも全く同じです。

彼は「start with the first principle」ということで、根本原理にさかのぼります。

そこから始めると、無駄にならないのです。

イーロン・マスクの成功を支えるシンプルな戦略「第一原理思考」とは(NewsPicks)

井上 「急がば回れ」じゃないですけれど…

石川 本当にそうなんですよ。

イーロン・マスクもジェフリー・ローズも同様に言っているのは、根本原理までさかのぼる人がとても少ないことなんですね。

ジェフリー・ローズは、予防における根本原理とは何かと考えた人です。

彼が発見したのは、これは文章で言われるとパッと分からないと思うのですが、「ほとんどの患者は高リスクの集団からではなく、低リスクの集団から発生する」ということで、彼が見つけたことは「予防のパラドクス」と呼ばれるようになりました。

健康と病気の区別はどこにあるのか

石川 ジェフリー・ローズには、ピッカリング教授(G.W.Pickering)という師匠がいます。

1954年のことですが、ピッカリング教授が、「健康な人と病気の人がいるわけではない。むしろ医学上の幻想ですらある」という、とんでもない発言をするのです。

医者は患者さんを健康なのか病気なのか区別する仕事ですが、そんなものは幻想です、と。

当時は蜂の巣をつついたような騒ぎになったのですが、ではなぜピッカリング教授はこんなことを言ったのでしょうか?

例えば、縦軸に人数、横軸に血圧があって、血圧の分布がこういうふうになっています。

85mmHg以上は高血圧、85mmHg以下は正常といって、もしこういう分布になっていたら、健康な人と病気な人がいるというのはなんとなく分かります。

ただ、実際は血圧の正規分布は、こういう分布になっています。

人為的にいったん85で区切って、上を高血圧、85以下を正常にしましょうとしているのですが、じゃあ、84の人と86の人でそんなに違うのか?という話ですよね。

まずジェフリー・ローズの師匠のピッカリング教授は、血圧の分布は社会で見ると正規分布(※)していると発見した人なんです。

▶編集注:左右対称で平均を中心に左右に裾野を持つ、釣鐘や富士山のような形をしているカーブの分布図。正規分布とは(Albert)

僕らが当たり前のように、「それは正規分布しているでしょ」と思うのは、違うのです。

当時の人はこう誤解していました。

こういうふうに分布しているんだと。

ここまでがジェフリー・ローズの師匠、ピッカリング教授の功績です。

(続)

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続きは 6. ビジネスにも応用できる、予防医学の「ポピュレーション戦略」とは をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/戸田 秀成/小林 弘美

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